今回はキズナカナタさんのモカ小説「いつも通りの日常に夕焼けを」とのコラボです。
キズナカナタさんの方にも全く違うストーリーが上がっています。
よろしくお願い致します。
https://syosetu.org/novel/175206/
ある日のやまぶきベーカリー。今日も様々なパンが並び、その1つ1つが輝き、そしてかなり良い香りを店内に漂わせていた。
「ありがとうございました!」
看板娘でもある沙綾がペコリとお辞儀をし、お客様を見送ると「ふぅ。」と息をついた。休日でも平日でもいつも人気があるやまぶきベーカリー。朝のラッシュを終え、ようやく一息つける所まで落ち着いていた。しかし、今日はパン屋の神様が沙綾を休ますつもりがないのか、すぐに客が店内に入った事を告げる鈴が店内に鳴り響いた。
「いらっしゃいませ!ってりみりん!」
「沙綾ちゃんおはよ。」
一息つけないと思った沙綾だったが、来たのがりみと分かると、途端に営業スマイルではなく、満面の笑みを浮かべた。
「チョココロネ買いに来たの?」
「うん。まだあるかな?」
「あ~…。今日はよく売れたから…。」
沙綾は困った表情を浮かべながら売り場の方をチラッと見た。チョココロネのコーナーにはポツンと遠慮の塊のように1つだけチョココロネが寂しそうにたたずんでいた。
「い、1個…だけ?」
「うん…。今日はよく売れたから。」
先程も言ったが、今日はお客の入りがとても良かった為、チョココロネに限らず、他のパンも残り少ない状況であった。
「さーや~。」
りみがチョココロネが残り少ない事にガッカリして「早く来たら良かった」とため息をつくと同時にまた1人、新たな客を扉の鈴が告げた。
「いらっしゃいませ!ってモカ!」
「やぁ~さーや。美少女モカちゃんが来たよ~。」
沙綾は自分の知り合いがどんどん来店して来て、嬉しさでいっぱいになっていた。
「さーや~?なんか~パン、少ない~?」
いつものように間延びしたしゃべり方をするモカであったが、表情は残念そうな、悲しそうな、なんとも言えないものになっていた。
「さっきりみりんにも言ったんだけど、今日、お客さんが多かったから…。」
「そっか~…。」
「チョココロネも一個しかないんだ。」
りみも残念そうに言うと、トレイとトングを持って、チョココロネの売り場に向かった。沙綾の言った通り、大きいお盆の中にポツンと寂しそうに1つだけチョココロネが置いてあった。
「はぁ。本当に1つだけだ…。」
「りみりん~。」
「モカちゃん?なぁに?」
ため息をつきながらチョココロネを眺めていたりみにモカが肩をちょんちょんと突きながら声をかけた。
「そのチョココロネ~。買うの~?」
「へ?う、うん。そのつもり…だよ?」
「そっか~。」
ニヤリと笑いながらりみに声をかけたモカだったが、りみの返答を聞いて表情を曇らせた。
「も、モカちゃん?どうしたの?」
「実はね~。モカちゃん、今日、ど~してもチョココロネの気分なんだよね~。」
「ふぇ!?」
モカの発言を聞き、りみは目を丸くして驚いていた。そして、チョココロネとモカを交互に見ていた。
「ごめんなんだけど~。チョココロネ、譲って欲しい~なぁ~。」
「…え?だ、ダメ…。」
「なんで~?りみりん、いつも食べてるじゃん?」
ニヤリと笑いながら言うモカにりみは困ったように眉を八の字に下げた。
「まぁまぁ。2人とも落ち着いて。」
2人の様子を見ていた沙綾は2人の間に割って入った。
「沙綾ちゃん?チョココロネって今、焼いてる?」
「ごめんね。他のパンも少ないからそっちを焼いてるみたいだから…。当分先になっちゃうかな?」
「りみりん~。譲ってよ~。」
「え!?」
りみとモカも性格的には譲り合うタイプであると思うが、今日に限っては2人とも余程食べたいらしく、2人の間に火花が散ってもおかしくない雰囲気になっていた。
「だから、2人とも落ち着いて!…そうだ!2人とも彼氏とはどう?」
沙綾は2人が喧嘩をする前にとりあえず、違う話題を振った。違う話題をする事で雰囲気を変えようとしたのだったが、これがやまぶきベーカリーを戦場に変えてしまうとは今の沙綾には知る由もなかった。
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突然沙綾ちゃんから「彼氏とはどう?」と聞かれ、目を丸くしてしまいました。モカちゃんも「遼~?」と沙綾ちゃんに聞き返しています。表情はビックリした私とは違い、ニヤリと笑ったままでしたが…。
「私は~、順調だよ~?」
「わ、わ、わ、私だって仲良くしてるよ?」
潤くんの話になるのは、Poppin`Partyのみんなといるとよくする話題でしたが、何故かまだ顔が暑くなってしまい、つい上擦った声になってしまいます。そんな私を見て、モカちゃんはまたニヤリと笑いました。
「ほぅほぅ。りみりんは、いっくんの話題になるとまだ恥ずかしいみたいですなぁ~。」
「い、いっくん?」
「モカ?一宮さんだからいっくんって呼んでるの?」
私がモカちゃんだけが呼んでいるあだ名にクエスチョンマークを浮かべていると沙綾ちゃんが解決してくれました。モカちゃんは分かってくれたのが嬉しかったのか、更に口角をあげ「そーだよ。」と言いました。
「で、りみりんは~、まだ恥ずかしいの~?」
「は、恥ずかしくなんてない…よ?」
「そっか~。でも、顔、真っ赤だよ?リンゴみたいで美味しそう~。」
モカちゃんはそう言うと、私の両肩に手を置きました。本当に食べられちゃうと思ってしまった私はギュッと目を瞑ってしまいました。
「あははー。本当に食べるわけないじゃん~。」
「ふぇ!?」
モカちゃんの言葉に慌てて目を開けると、ニヤニヤと笑ったモカちゃんの顔が目の前にあり、騙された恥ずかしさや、同性から見ても美人なモカちゃんの顔が近くにある状況にドキドキしたり、色々な感情が入り乱れてしまいました。
「モカ?あまりからかわないの!」
「さーせん。」
沙綾ちゃんが苦笑いをしながらモカちゃんはスッと私から離れました。
「も、モカちゃんは遼君と、普段は何をしてるのかな?」
「ん~?散歩したり~、Afterglowの練習に付き合ってもらったりしてるよ~?」
何かモカちゃんに仕返しをしたい一心で私は口を開きましたが、モカちゃんは人差し指を顎に当てて、「う~ん」と考えながら淡々と答えまさした。恥ずかしがる私とは大違いです。
「そういえば遼君…。Afterglowのマネージャーしてるんだよね?」
「そうだよ~。6人目のメンバーだよ~。でも、それだけじゃなくて~。ギターも上手なんだよ~。」
モカちゃんは誇らしげに言いました。私のか、か、彼氏の潤くんもギターを持っています。でも…。
「そー言えば、いっくんもギター始めたんだよね?この前、CiRCLEで~、教えたよ~?理解してないみたいだったけど~。」
モカちゃんの言うとおり、潤くんは親戚である紗夜さんや日菜さんからギターを誕生日のプレゼントで貰い、ギターを始めました。確かに、始めたばかりなのでお世辞にも上手とは言えませんが…
「も、モカちゃん!じ、潤君だって始めたばかりで一生懸命頑張っているんだから!」
「知ってるよ~?りみと一緒に弾くんだって言ってたよ~?頑張ってたね~。」
「…あぅ。」
ちょっとだけムッとしてモカちゃん強く言ってしまいましたが、それをサラリとかわすようにモカちゃんが潤くんが言っていた事を私に伝えてくれました。そんなことを言われたらまた恥ずかしくなり、言葉が出てきませんでした。
「りみりん愛されてるね~。」
「うぅ…。は、恥ずかしいから…。や、止めてよ…。」
「えー?でも~、いっくんってあまり勉強は出来なさそうだよね~?」
「ちょっとモカ!?」
モカちゃんはまた顎に人差し指を当てながら言いました。モカちゃんの癖なのかな?
「そ、それに関しては…否定できない…かな?」
「りみりん!?」
沙綾ちゃんが慌ててフォローしてくれようとしましたが、私は苦笑いを浮かべてしまいました。
「りみりんは~、普段、いっくんとは何しているの~?」
モカちゃんがさっき、私がした質問をしてきました。さっきのお返しという事かな?
「う~ん。毎日会ってるから…他愛ない話をしたり、ショッピングモールに行ったり…かな?」
「ほぅほぅ。毎日会うって凄いねー。モカちゃんびっくりー。」
モカちゃんは本当に驚いているのか分からないですが、大好きな人に毎日会いたくないのか?モカちゃんの言葉を信じるなら毎日会ってないんだよね?
「モカちゃんは毎日会ってないの?会いたくない?」
「んー?毎日は会ってないかな~?会いたいけどー、遼も忙しいだろうし~。」
「そ、そっか。私は、料理の勉強の為に毎朝と毎晩、潤くんの家に行ってるんだよ。潤くんのお母さん、料理が凄く上手だから。」
私がそう言うと、モカちゃんは目を見開きなが「料理!?」と言いました。
「いいなぁ~。モカちゃんも美味しい料理食べたぁい~!」
「じ、潤くんに聞いてみるね?」
「おぉー!りみりん!今日から神と崇めよう!」
モカちゃんはそう言うと手を私の手をギュッと握って来ました。突然のモカちゃんの行動にドキドキしてしまいました。さっきからモカちゃんに振り回さぱなしです。
「でも~料理なら遼も上手なんだよね~。」
「へ?遼君も料理するの?」
「そーだよ。美味しいんだよ。いっくんは~?料理するの~?」
「じゅ、潤くんはしない…よ?」
潤くんが包丁を握っている姿を見たことはありません。料理、したことあるのかな?
「ふっふっふ~いっくんより遼の方が良い彼氏ぽいねぇ~。」
「へ?」
またモカちゃんがニヤリと笑いました。その表情に私はムッとしてしまいました。
「そ、そんな事ないよ!」
「えー?あるんじゃない?」
モカとりみがギャアギャアと言い合いを始めると、側で会話を聞いていた沙綾はため息をつきながらスマホをそっと取り出すのであった。
─────────────────────
「潤くんはとっても優しいんだよ!私の事を1番に考えてくれるし!」
「それは~遼もだよ~?」
2人の言い争いは終わらず、お互いの彼氏自慢になっていた。最早、当初はチョココロネのせいで始まった言い争いだったが、すっかりチョココロネの事は忘れ去られ、トレイにちょこんと置かれたままであった。
「りみ!?」
「モカ!?」
やまぶきベーカリーの扉の鈴が鳴った瞬間にお互いの彼氏である潤と遼が息を切らしながら入店してきた。
「じゅ、潤くん?な、なんでここに?」
「やぁやぁ~遼。息を切らしてどうしたの~?」
りみとモカがそう言うと、2人の彼氏はそれぞれの彼女の首根っこを掴むと離れた位置に移動した。
「りみ!青葉さんと喧嘩してるって山吹さんから聞いたよ!?やまぶきベーカリーで何してるの?」
「…うぅ。」
「モカ!牛込さんをずっと煽ってるって沙綾さんから聞いたぞ!?やまぶきベーカリーで何してんだよ!」
「さーせん。りみりんの反応が楽しくてつい~。」
「「全く…。」」
潤と遼がため息をつきながら宥めると、2人は振り返り、近づいた。
「遼君、うちのりみが本当にごめん。」
「いやいや。うちのモカもすまん。煽ってたのはモカらしいから。」
2人がペコペコと頭を下げると、りみは罰の悪そうな表情を浮かべ、流石のモカも眉を八の字に下げていた。
「モカちゃんゴメンね。」
「ううん~。私もやり過ぎた~。でも、りみりんの反応、可愛かったよ~。」
「も、モカちゃん!?」
モカの発言に再び、りみは顔を真っ赤にした。
「山吹さんもすみませんでした。お詫びにパン買って帰りますね。」
「俺もそうする。」
「そんな気にしなくて良いよ。私はりみとモカが大事にされている事が分かって満足だよ!いやぁ~。ラブラブだね~!」
潤と遼の提案と謝罪に沙綾はニコニコしながらそう返すと、2人はポリポリと頬を掻いた。
「2人とも知り合いだったの?」
「そうだよ?」
りみの質問に潤はそう言った。横で遼も頷いていた。
「へぇー。いつの間に。」
「まぁ。色々あってな。モカ、好きなパン、選んで。迷惑かけたから貢献しなくちゃいけないから。」
遼がモカにそう言うと、モカは目を輝かせトレイとトングを持ってパンに飛びついた。
「りみもパン選ぼう?」
「うん…。ゴメンね?」
こうして、お互いの彼氏によって、この騒動は収まりました。めでたしめでたし。
にはならなかった。
「潤。俺が払うから。」
「いやいや。僕が払うから。バイトしているし気にしないで!」
「俺もしてるから。」
「でも、多分、僕の方が時給良いはずだから!」
潤と遼のどちらが払うかという押し問答はしばらく続くのであった。
「自分のだけ払えば良いのに~。」
「だよね…。」
りみとモカはそんな2人を見て、ボソッと呟いた。沙綾はなかなか買ってくれない客に頭を抱えていた。
キズカナさん!
ありがとうございました!
本編はまだまだ続きますが、今、仕事とプライベートの方がかなり忙しい為、執筆が遅れています。
申し訳ありません。