日常の中にチョコより甘い香りを   作:ぴぽ

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6話

「暑っ。」

外に出た潤は額に皺を寄せた。何年経っても潤は暑さが苦手なままであった。すぐに額には汗が浮かび、何回も拭っていた。あれから、CiRCLEのオーナーに就職をするか、しないかを、保留したいと伝えた。オーナーからは「大事な事だからゆっくり考えなさい。」と言われた。りみの方の返事も保留しているが、潤はバイトをしながらも、死ぬ気で勉強していた。

「あぁ…。寝不足だ…。」

ボソッと潤は呟くと、目を擦りながら欠伸をした。潤はゆっくり商店街を歩くと、良い匂いが鼻を擽った。潤が匂いの方に目をやると目の前に「やまぶきベーカリー」が鎮座していた。

「あれ。ここまで歩いたんだ。…意識失いながら歩いて…た?」

無意識に歩いていた潤は虚ろになりかけた目を擦った。

「ち、ちょっと、潤君大丈夫?」

潤の目の前にあった、やまぶきベーカリーの扉が開き、沙綾が出てきた。珍しく、焦った表情をしていた。

「あぁ。山吹さん。おはよ。」

「おはよじゃないよ!ち、ちょっと入って!」

沙綾は叫ぶと、潤を招き入れた。そして、潤はやまぶきベーカリーにある椅子に潤を座らせた。

「山吹さん?大丈夫だよ?」

「大丈夫なわけないでしょ!目に隈作って!顔色も悪いのに。りみりんに聞いてショックだったとは思うけど…。」

「…何の話?」

潤は沙綾の言葉に首を傾げた。

「…へ?まさか…。ねぇ。りみりんから何か重要な話、聞いてない?」

「うん?一緒の大学に行きたいって話しか聞いてないよ?前のライブの後に…。ねぇ。なんの話?」

「へ?う、う~ん。さ、流石にりみりんから聞いた方が良いかな…。私の口からはちょっと…。」

口を濁す沙綾に潤は額に皺を寄せた。嫌な予感が潤の背筋を凍らせていた。

「えっと…。気になるけど…。分かったよ。りみに聞いてみるね。」

「うん。そうして…ね。」

沙綾はサッと目線を下げていた。その瞳は辛そうな、悲しそうな、なんとも言えないものだった。

「ありがとう。山吹さん。僕、バイトだから。行くね?本当にありがとうね。今度、パン、買いに来るね。」

「ダメだよ。潤君。」

沙綾に礼を言い、立ち上がり、CiRCLEに向かおうとした潤だが、沙綾に阻止されていた。沙綾が軽く潤の肩をポンと押すと、潤はいとも簡単に、椅子に腰掛けてしまっていた。

「…大丈夫だって。」

「大丈夫じゃなさそうな顔で言われても。今、りみりんをLINEで呼んだから諦めてね?家でゆっくり休んだ方が良いよ。」

沙綾が苦笑いを浮かべる。潤は焦ったような表情を浮かべながら「はぁ。」とため息をついた。

 

─────────────────────

りみは沙綾からLINEを貰った直後から走ってやまぶきベーカリーに向かっていた。ちなみに、今朝は潤の家に行かなかった。いや、ここ最近、潤は朝にりみが来る事を嫌がった為、行けなかったのだった。

「潤くん…。潤くん…。」

呟きながら、目を潤ませながらも、りみは急いで、やまぶきベーカリーに向かうのであった。

「潤くん!?」

息を切らせながら、りみがやまぶきベーカリーに到着すると、沙綾が「しー。」と人差し指を立てて、言った。りみが座っている潤を見ると、潤は「すーすー。」と静に寝ていたのであった。

「潤君、フラフラしてて、目に隈を作ってたし、顔色も悪かったんだよ。…私はてっきり、潤君にあの事を話したからだと思ったんだけど。」

沙綾はりみを見ながら言った。りみは目線を反らした。

「…早く言わないと、言いにくくならない?」

黙っているりみに、沙綾は言葉を続けた。

「…分かってる…よ?」

「分かってないじゃん。てか、りみりん、潤君の体調不良も気付かなかったの?てか、潤君は何に無理しているの?」

「…何かしているみたいだけど…。詳しくは教えて…くれなかったから…。分からない…よ?最近、朝は来て欲しくないって言われてから…朝は潤くんの家に行ってないし…。」

「…で?りみりんは何してたの?まさか、分からないままにしてたの?」

沙綾はりみに更に迫っていた。その様子はまるで、刑事と犯人のやり取り、つまり、取り調べみたいであった。

「沙綾ちゃんに何が分かるの!?わ、私と潤くんの事…だから…。」

「…そ。なら良いようにしたら良いじゃん?…でも、早く、あの話はしなよ?」

「わ、分かってる…よ。」

「…ごめんね。熱くなっちゃって…。そりゃ、言いにくいよね…。」

「ううん。悪いのは私…だから。このままじゃいけないのは…。分かっているから。」

りみは目を潤ませながら言った。その瞬間、「ガタン!」という音がやまぶきベーカリーに響いた。りみと沙綾がびっくりしながら音の方を見ると、潤がひっくり返っていた。

「じ、潤くん!?」

「だ、大丈夫?」

りみと沙綾が潤に近寄ると、潤は「痛いなぁ。」と呟き、ムクッと起きた。

「あれ?…寝てた?…って、バイト!」

潤は急いで立ち上がると、慌ててカバンを掴んでいた。

「潤君。今日、バイト、お休みだよ?まりなさんに連絡したから。」

「へ?山吹さん?大丈夫って言ったじゃん!早く…行かないと…。」

「潤くん…。」

立ち上がった潤の袖をりみは引っ張った。

「…りみ?」

「お願い…。ぐすっ…。今日は…。休んで…。そんなになっているなんて…。気付かなかったよ…。ぐすっ。」

泣きながらお願いするりみに、潤はやっと頷き、りみに手を引かれながら自宅に戻って行った。

 

─────────────────────

りみと共に、潤は自宅に戻ると、ベットに横たわった。顔色は幾分かマシになっていたが、怠そうな表情を浮かべていた。

「潤くん。どうしたの?体調…悪いの?」

りみは横たわる潤の手を握った。

「…大丈夫だよ。」

ボソッと呟くようにして潤は言うが、りみは首を振った。

「大丈夫じゃないよ…。見るからにボロボロだよ…。ねぇ、何があったの?私が朝に来て欲しくない理由と関係してるの?」

再び、声を震わせながらりみは言うが、潤は黙ったままだった。りみが潤の表情を見ると、何か考え事をしているようだった。

「…話さないと…ダメかな?…出来れば、あまり格好よくないから、話したくないんだけど…。」

「ダメ。聞きたい。秘密は無し…だよ?」

りみは潤の胸に額をくっつけた。握っていた手は更にギュッと握る。

「…分かったよ。…勉強をしてたんだよ。」

「…勉強?」

「うん。僕がりみと同じ大学に行くには本当に死ぬ気で勉強しないとダメだからさ…。出来れば、隠したかったんだけど、夜遅くまで勉強して、朝も早起きしてるんだよ。朝にりみに来て欲しくないって言ったのは、紗夜姉さんに朝は勉強を見て貰っているからなんだよ。…頑張ってる姿をりみに見られて、心配を掛けたくなかったから言わなかった…。でも、今、心配かけちゃってるよね…。僕はやっぱりダメだなぁ。」

最後は苦笑いをしながら潤は言った。りみは苦笑いした潤を見て、再び、ポタポタと涙を流し、潤のTシャツを濡らせていた。

「…わ、私の…ワガママで…ごめんね…。」

「ううん。りみは悪くないよ。僕だって、りみと一緒に少しでも長くいたいから一緒の大学に行くのも有りだと思ってるし、大学に行くことで、人生がプラスになるはずって思っているから。まぁ、まだ、働くか進学か悩んでるんだけどね。…でも、体調はもっと気をつけるね。体調崩して、バイトも勉強も出来ないと意味ないもんね。」

「…そうだよ。」

りみはそう言うと、立ち上がった。

「飲み物、何かいる?汗もかいてるから、着替えた方が…良いんじゃない?」

「あっ。うん。ありがとう。だったら、アイスコーヒーが良いかな?」

潤はそう言うと、着替える為に、身体を起こした。りみは頷くと、部屋から出て行った。

「…りみ?」

いつもと、様子が違うりみを見て、潤は首を傾げた。

「(なんか…。いつもより、よそよそしい?気のせいかな?)」

潤は着替えを取り出すと、サッと着替えるのであった。その頃、りみはアイスコーヒーを作りながら、ため息をついていた。

 

─────────────────────

「沙綾。大丈夫か?」

「…大丈夫。」

有咲は落ち込む、沙綾を見て、「はぁ。」とため息をついた。

「沙綾が落ち込んでどうするんだよ。」

「…だって…。」

潤とりみが帰った後、沙綾は店の手伝いを母親に変わって貰っていた。あまりにも落ち込んだ沙綾を見て、母親が助け船を出したのである。そして、部屋に籠もっていたが、あまりにも気分が落ち込んでしまった為、有咲に電話をした。有咲が電話に出た瞬間に、安心感から沙綾が泣き出してしまった為、有咲が飛ぶように急いで沙綾の家にやって来たのだった。

「りみの事でなんで沙綾がそこまで凹んでるんだよ。まぁ、気持ちは分かるけど。てか、りみはなんて?一宮さんの返事は何だったんだ?」

「…りみ、まだ言って無かったよ。」

「…はぁ?マジか…。」

「うん。だから私、カッとなっちゃって、りみに酷い事、言っちゃったんだよね。りみからしたら絶対に言いにくいことなのに…。りみの気持ちを理解してるつもりだったのに…。」

沙綾はクッションに顔を埋めながら言った。沙綾が落ち込んでいる理由を有咲は理解し、慰める為、頭をフル回転させた。

「…まぁ、沙綾の事だから、すぐに謝ったんだろ?」

「一応…ね。はぁ。なんであんな事を言っちゃったんだろ…。」

沙綾は深いため息をつきながら言った。

「明日、練習だろ?改めて、謝ったら大丈夫だよ。りみも沙綾の気持ち、分かってるよ。」

有咲はニコッと笑いながら言うが、沙綾は不安そうな表情を崩さなかった。

「有咲はさ。あの話聞いた時、どう思ったの?」

「ん?そりゃ、嬉しかったよ。沙綾は嬉しくなかったのか?」

「もちろん、嬉しかったよ!5人でこれからも一緒にいれるって思ったけど…。」

「まぁ、確かに、あの条件は厳しいよな。りみ、あまり私達の前じゃ出さないけど、相当悩んでるんだろうな。」

有咲は下の方に目線を下げながら言った。沙綾の家に来た時に、出された紅茶が入ったマグカップをギュッと握りしめた。

「…りみりん、どうするのかな?」

「わかんねー。でもさ、りみ、変わったよな。前のりみなら、あの話を聞いた瞬間に、絶対取り乱してたよな。でも、落ち着いて聞いてた。寧ろ、私達の方が取り乱してたよな。」

有咲がニヤッと笑って言うと、その時の状況を思い出して、沙綾も「あはは。」と乾いた笑い声を出した。

「潤君と付き合ってから、確かに、りみりんは強くなったよね。でも、やっぱり未だに言い出せない辺り、1人で悩んでるんだよね…。」

「りみが頼ってきたら、私達が全力でサポートしたらいいんじゃね?…でも、本当にどうなるんだろうな。」

有咲は今度は窓の方を見た。沙綾の部屋は冷房が効いていた為、快適そのものだが、外は紫外線をたっぷり含んでそうな日差しが降り注いでいた。

「りみりん、次第だよね。香澄とおたえはなんて?」

「香澄は、りみの助けになりたいっていつもみたいに暴走しそうだったから、りみの答えを待つように言った。おたえは…よく分からん。」

有咲はやれやれと両手を挙げながら言った。おたえはずっとこの件に関しては無言を貫いていた。

「そっか…。有咲、色々ありがとうね。」

「な、なんだよ。急に!べ、別に普通の事だし。」

顔を赤く染めながら有咲は言った。

「ううん。本当に感謝しているよ。有咲がいなかったらポピパがどうなっていたか分からないよ。」

「大袈裟なんだよ!…私がいなかったから沙綾が何とかしてたんじゃね?」

沙綾は更に有咲を褒めると、有咲はプイッと顔を反らした。

「私は無理だよ。あの時、何も出来なかったし…。」

少しだけ、声に元気が戻ってきていた沙綾だっが、再び、クッションに顔を埋め、声のトーンが下がった。そんな沙綾を見て有咲は「(りみもそうだけど、沙綾も重傷だな。…よし。)」と思っていた。そして、有咲はスマホを掴むと、LINEをタップし、文章を作り始めた。

 

“沙綾からだいたいの話は聞いた。

沙綾、りみに言い過ぎたって、かなり落ち込んでるんだけど、りみ怒ってるか?

怒ってないなら、沙綾にLINEして欲しい。

りみも、大変なのに、ごめんな。”

 

有咲は文章を読み直し、誤字脱字が無いかを調べると、直ぐに送信した。しかし、りみからは返信どころか、既読さえもなかなか着かなかった。

 

 




感想&評価お待ちしております!

最近、小説スランプ中です。
でも、負けない!笑

「日常の中にチョコより甘い香りを」ですが、リクエストを受けて、R18を書く事にしました。
ハーメルン内にあげます。
詳しい事は、Twitterの方にあげますので、よろしくお願いします。
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