日常の中にチョコより甘い香りを   作:ぴぽ

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9話

8月15日。世間はお盆になっていた。潤とりみだが、2人は喧嘩をして別れてしまった7月下旬以来、1度も会っていなかった。Poppin`Partyのメンバーに励まされ、デビューも恋愛も頑張ると決めたりみ。紗夜と母親の麻里に励まされた(?)潤。2人とも「やっぱり別れたくない。」と強く思っていたが、行動には移せないでいた。お互いに「本当に嫌われていたらどうしよう…。」と考えていた為だった。

そんな中、潤はバイトの休みの日を利用して夏休みの課題に取り組んでいた。去年まではりみに助けて貰っていた為、スムーズに課題が終わっていたが、今はいない為、かなりの苦戦を強いられていた。

「りみがいないと…。やっぱり寂しいな。」

毎日会っていた恋人が急にいなくなり、潤は度々、空虚感に襲われていた。

「会いたい…なぁ。てか、早く仲直りしないとなぁ…。りみ、許してくれるかな…。」

持っていたシャーペンを置いて、思考をまた、りみの事でいっぱいにしていた。勉強していてもバイトをしていても、潤は度々、りみの事しか考えれない瞬間があった。その度にどれだけ好きだったか嫌でも分かってしまい、更に寂しさを募らせていた。

「潤!昼ご飯できたよ!」

潤の思考を現実に戻すように麻里が1階から叫んだ。

「はい!今行く!」

潤は立ち上がると、階段を降りてリビングに向かった。階段を降りている最中に、美味しそうな香りが潤の鼻腔を擽った。

「こんな時でもお腹は空くんだよなぁ。不思議だなぁ。」

と呟きながら、リビングの扉を開けた。テーブルの上には担々麺が準備されていた。

「母さんありがとう。えっと…。今日は普通の担々麺…で良いのかな?」

「え?麺が伸びちゃうから早く食べなさい。」

潤の質問に麻里は眉間に皺を寄せ、睨みながら言った。

「あ…うん。」

潤は麻里の気迫に押されながら麺を箸でつまむと一気に啜った。お食事中の方がいたら申し訳ないのだ、潤は啜った麺をそのまま器に吐き出してしまっていた。

「…辛っ!」

潤は立ち上がると、台所に走り、コップに水を注ぎ、がぶ飲みした。そのまま麻里を睨むと、麻里は涼しい顔で麺を啜っていた。精一杯、睨んだ潤だが、文句の1つも言う暇もなく、また辛さが痛みとなって襲ってきた為、水を注ぎ、がぶ飲みした。実は、りみと別れてから麻里の食事は潤にだけ嫌がらせをしていた。具が全くない味噌汁だったり、肉が生の青椒肉絲だったり、馬鹿みたいにお酢が入った酢の物だったりと潤の食生活を脅かしいていた。

「早く、普通の物が食べたかったら仲直りしなさい。」

未だに、辛さに苦しむ潤に、麻里は食べ終わった食器を片付けながら言った。潤は汗だくになった顔を拭うと、頷きながらまた激辛な担々麺に立ち向かった。基本的に真面目な潤には食べ物を残すという事はあり得なかった。その1時間後、無事に(?)完食するのであった。

 

─────────────────────

「潤くん…。何してる…かな…。」

一方、その頃、りみはと言うと、潤と全く同じ事を考えていた。Poppin`Partyのメンバーの協力も虚しく、なかなか行動に移せない自分に情けなく感じていた。ちなみにPoppin`Partyのメンバーのアドバイスはかなり掻い摘まんで言うと「とにかく、会いたいとLINEをしてみろ。」という内容だった。

「今日こそ…。LINEを送ろう…。」

りみはそう呟き、スマホを握り、LINEを開くも、そこから固まってしまった。潤と別れてから、毎日、LINEを送ろうとして、送れた試しが無かった。

「…本当に…。どうしたら良いの…。」

何度流れたか分からない涙を流しながらりみは呟いた。

「りーみちゃん!久しぶり!」

「きゃぁぁぁぁ!」

自分1人しかいない部屋から急に声が聞こえ、りみは人生の中で1番驚いたのでは無いかと言っても過言じゃ無いくらい驚き、座っていた椅子から落ちてしまった。

「ゴメンね。そんなに驚くとは。あはは!」

今まで、りみの部屋に漂っていた暗くて、重い雰囲気を壊すような明るい声が響いた。

「び、びっくりした…。って誰?」

りみは呟きながら、落ちた時に強打した腰を擦りながら立ち上がり、声のした方を見た。

「りみちゃん?覚えてる?」

「…え?あ、あ、あ、秋帆ちゃん!?」

りみはさっきと同じくらい驚き、叫んだ。

「良かったぁ~!覚えてくれてたんだね!後、私の姿、見えて良かったぁ~!」

ニコッと笑いながら言う秋帆にりみは驚きぱなしだった。

「…あれ?あ、秋帆ちゃん確か…。成仏したんだよ…ね?」

りみは2年前、潤と付き合う際に対面した幽霊になった秋帆との会話を思い出しながら言った。

「うん。そうだよ~。ほら、今ってお盆じゃん?里帰りだよ。抽選に当たったんだ!」

「ち、抽選?」

「天国にいる幽霊が皆、降りてきたら大変でしょ?だから毎年、抽選なんだよ?去年は外れたけど、今年は当たったんだよ!」

2年前と全く変わらない容姿の秋帆を見て、りみは「なるほど…。」と呟いた。

「りみちゃんに会いたかったんだよ?あの時はあまり話せなかったから。ゆっくり喋ってみたくてね!」

「私で良ければ…良いよ。」

「…りみちゃん、何かあった?なんか暗いよ?」

明るく、ハイテンションで喋っていた秋帆だったが、りみの表情を見ると、怪訝そうな表情に変わった。

「え?そ、そうかな?ふ、普通だよ?」

「…何があったの?」

隠しそうとしたりみであったが、元々、隠し事は苦手な為、すぐに秋帆にバレてしまった。

「ふぇ?だ、だ、だから何にも…ないよ?」

「はぁ~。りみちゃん、隠そうとしているのは伝わるけど、無理があるって。…潤と別れたとか?」

「な、な、なんで分かったの!?」

「…ゴメン。まさか正解とは思わなかった。」

秋帆がお茶目にペロッと舌を出すと、「秋帆ちゃん!?」と叫んだりみだったが、諦めてポツリポツリと話始めたのであった。

 

─────────────────────

「りみはどうしたいの?」

潤くんにそう言われて、私はますます分からなくなりました。Poppin`Partyの活動は本当に楽しくて、香澄ちゃんがいつも言っている「キラキラドキドキ」が沢山詰まっています。そして潤くんの事も、もちろん大好きです。きっと、潤くん以上に私の事を大切にしてくれる人はいません。もちろん私も潤くん以上に好きと思える人に出会えるとは思っていません。なので、スカウトの方に、彼氏がいるのかと聞かれ、それに答えて、嫌そうな表情をされ、「大丈夫?」と言われた時、私は頭の中が真っ白になりました。Poppin`Partyも潤くんも大好きなのにどちらか1つを選ぶなんて私には無理だったのかも知れません。なので、潤くんの質問に「分からない。」と答えるしかありませんでした。

「りみ…。」

デビューが決まった事を言った時にはあんなに喜んでくれた潤くんでしたが、今は悲しそうな、何とも言えない表情になってしまいました。

「だよね。すぐには分からないよね…。とりあえず、別れたくはないよ?」

「わ、私も絶対に嫌だよ。」

「でも、僕とこのまま付き合ったら…。デビューは諦めないといけないんだよね。」

「…うん。それも嫌…。」

私が自分の気持ちを伝えると、潤くんも「う~ん。」と腕を組み、考え込んでしまいました。こういう時、私は弱い人間です。つい、他の人に頼りたくなってしまいます。それが潤くんなら尚更、甘えたくなってしまいます。

「ねぇ…。潤くん…。本当にどうしたら良いのかな?」

「…今、考えてる。」

潤くんの姿を見ていると、本気で考えてくれているのはすぐに分かりました。でも、私はぶっきらぼうな潤くんの言い方にカチンとしてしまいました。

「…そんな言い方…。しなくても…。」

「…なにが?」

「…そんな冷たい言い方しなくても…良くないかな?」

今、考えてみたら、私も潤くんも目の前の問題が大き過ぎて、焦っていたのだと思います。明らかに冷静ではありませんでした。

「別に普通じゃん。考えてるんだよ。」

「だから、なんで、そんな言い方なの?私だって、悩んでて、ずっと苦しかったんだよ?」

「はぁ!?悩んでいた事を気付けって事!?気付けない俺が悪いの!?」

「そんな事言っているんじゃないよ。」

「じゃあ、何だよ…?」

潤くんはそう言うと深いため息をついて、頭を抱えてしまいました。いつも自分の事を「僕」と言っている潤くんが「俺」と言っていて驚きました。

「…言い方を優しくして欲しいかな…。いつもみたいに…。」

「…いつもと一緒じゃん。」

「違う…よ?」

「あーもう!今、どうしたら良いか考えてるんじゃん!りみも考えてよ!りみの事じゃん!」

「…私だって…考えたよ?でも、分からない…の。」

いつの間にか涙が溢れ出てました。どうしたら良いか分からず、潤くんまで怒らしてしまって、更に混乱してしまいました。

「…りみは、元々、デビューしたかったの?」

「…考えた事なかったよ。デビューなんて無理って思ってたから…。」

「それも分からない…か。」

「ねぇ!潤くん…!本当にさっきからなんでそんなにイライラしているの!?分からなくて悩んでる私が悪いの!?」

「…そんな事言ってないじゃん!」

「…もう良いよ。分かったよ。もう潤くんなんて知らない。デビューする。」

潤くんの態度に私はイライラしてしまい、気付いた時には取り返しの付かない事を言ってしまいました。途中で、口を止めようと思いましたが、私の言葉は壊れた機関銃のようにどんどんと発射されてしまいました。

「…つまり、僕とは別れるの?」

「…そうなる…ね。…じゃあね。」

私はそう言いながら立ち上がると、かなりの勢いで降っていた雨なんか気にせず、飛び出してしまいました。雨で、掻き消されていましたが、大声で泣いていました。

 

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「…って訳なの。」

りみが潤と別れた経緯を話し終えると「ふぅ。」と小さく息を吹いた。長い話に少しだけ疲労感が襲ってきたのであった。

「りみちゃん。辛い話をありがとうね。ちょっと、潤の奴を呪ってくるから。」

秋帆が笑顔で「ちょっとコンビニに行ってくる」と同じノリでとんでもない事を言った。

「あ、秋帆ちゃん!?ま、待って!潤くんは悪くない…から。」

りみは慌てて秋帆を止めた。

「なんで潤が悪くないの?話を聞いた限り、最初に喧嘩を売ったのは潤じゃん?」

「私が悪かったから…。私が別れてって言ったようなもんだから…。」

りみは俯きながら言うと、秋帆はりみに近づき、そっと肩に手を置いた。秋帆は幽霊なので、りみには触られた感覚などないが、秋帆が触れている部分には不思議と暖かさを感じていた。

「りみちゃんはやっぱり優しいね。そして、りみちゃんは弱い人間じゃないよ。」

「…そんな事ないよ。私は弱い…よ?」

「ううん。そんな弱い人だったら、私の事を引きずっていたあいつを支えようなんて思ってないよ。本当に弱い人間なら多分、諦めちゃってるよ。もし、自分の好きな人が、過去に大事な人を失って引きずってたら、私なら諦めちゃうよ?」

秋帆が微笑みながら言った。

「そ、そんな事ないよ。」

「そんな事ある!自信持って!後、潤が悪いってのは譲らない!」

「潤くんは悪くないよ…。」

「いいや!りみちゃんが大雨の中飛び出したのに、追いかけてないんだよ?あり得ないでしょ?」

秋帆は本当に怒った様子で、潤の自宅がある方向を見ながら眉間に皺を寄せていた。

「…でも追いかけて来なかったなら、やっぱり私に愛想を尽かした…んじゃないかな?」

りみは苦笑いしながら言った。

「そんな事ないんじゃない?死にそうな顔してたよ?」

「へ?」

「実はね、昨日、潤の所に行ったんだ。そしたら死にそうな顔しててね。あいつ、私の声が聞こえないみたいでね。いくら声かけてもダメだったからさ。本当に信じられない。りみちゃんには私の声が聞こえて良かったよ。」

秋帆があっけらかんと言うと、りみは唖然としていた。

「だから大丈夫。あいつも後悔しているから。」

「…本当…に?」

りみは潤も自分と同じ気持ちと知って、信じられない気持ちと嬉しい気持ちが脳内で行ったり来たりしていた。

「間違いないと思うよ?」

「あ、秋帆ちゃん!わ、私、LINEしてみる!」

「あっ。LINEならしたよ?」

秋帆はりみのスマホを掲げながら言った。

「え?えぇぇぇぇ!あ、秋帆ちゃん!」

「あっ。なんでスマホが持てるかだよね?ポルターガイストって知ってる?あれを使って出来るんだよ。文書を打つのにはコツがいるんだけど…。」

「そ、そうなんだ…。じ、じゃなくて!な、な、な、なんて送ったの?」

りみは秋帆からスマホを受け取ると、内容を確認した。画面には短く“潤くん…。”と表示されていた。

「ど、ど、ど、どうしよ!?」

「どうしよって。りみちゃん。今、思っている事をそのまま潤にぶつけてごらん?あいつはそんな薄情な人間じゃないから、ちゃんと答えてくれるから。」

秋帆はニコッと笑う。その笑顔は自信に満ち溢れており、この先の展開が分かっているようだった。

「秋帆ちゃん…。う、うん。分かった。いつかはちゃんと話さなきゃ。謝らなきゃって思ってたから…。ありがとうね?」

「ううん。りみちゃん、頑張って!」

秋帆は胸の前でぐっと拳を握りしめながら言った。

「本当にありがとう。」

「ううん。大丈夫だよ。それよりさ、潤から返信がくるまで、お話ししよ?」

秋帆はりみの回りを楽しそうにクルクル飛びながら回った。そんな秋帆を見ているだけで、りみの心は軽くなるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ぴぽ史上最高に重たい展開が続いています。
これが僕に出来る1番の重たい展開かなと思っています。
今回、久々に登場しました秋帆です。
覚えてましたか?笑

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