日常の中にチョコより甘い香りを   作:ぴぽ

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14話

「…紗夜姉さん、お疲れ様。」

「えぇ…。本当に疲れました…。」

潤の家に用があり寄った紗夜は珍しく弱音を吐くと、困ったように眉を下げた。

「…まぁ、何はともあれ、デビューおめでとうございます。」

「ありがとうございます。」

「本当に…ぷっ。凄い…ふふふっ。」

「潤さん?」

賛辞を贈っていた潤だったが、途中から肩を震わわせていた。紗夜から見たら必死に笑いを堪えているように見え、怪訝な表情を浮かべた。

「す、すいません。で、でも…あははっ!」

潤は一応、謝ったが、とうとう、腹を抱えて笑ってしまった。そんな潤の姿を見た紗夜は「はぁ。」と小さくため息をついた。

「始めの「お疲れ様」で理解はしてますが…見たんですね?」

「はい。ちゃんと録画もしましたよ?」

潤はブルーレイのリモコンを掴むと、慣れた手つきで操作した。すぐにお目当ての録画した内容を見つけると再生ボタンを押した。また思い出しているのか、ボタンを押した指はプルプルと震えていた。潤のリビングのテレビにはRoseliaの5人がいつもとかなり違う服装、山登りをするような完璧な装備で映っていた。そして字幕には「頂点を目指すガールズバンドが日本の頂点で堂々デビュー宣言!」と出ており、更には友希那が死にそうな表情で「頂点へ狂い咲けっ!」と叫んでいた。

「これ、本当に富士山に登ったんですか?」

「登りましたよ。あんなに辛いとは思いませんでした。」

思い出したくないのか紗夜には珍しく、眉間に皺を寄せながら言った。

「まぁ、話題になってるみたいだし、良いんじゃないですか?」

「音楽で話題に上がるように頑張ります。ところで潤さん。あなた、進路はどうするつもりですか?あまり勉強もしていないようですし。」

「あぁ…。実は就職しようと思いまして…。」

潤はそう言うと、紗夜は「ふふっ。」と微笑んだ。

「紗夜姉さん?」

「いえ。すみません。そんな気がしていたので…。何故、就職しようと思ったのですか?」

「えっと…。高校を卒業したらりみと同棲することになっているじゃないですか?一緒に暮らすならやっぱりお金は必要なので…。それに、CiRCLEで紗夜姉さんや、りみを見て、こんなに輝ける人達のサポートをしたいと強く思ったからです。CiRCLEで働くとなれば、今までバイトで長年働いているので、すぐに戦力になれますし。」

「…ん?」

「紗夜姉さんどうしました?」

「潤さんはCiRCLEで働くのですか?それに…同棲?」

「そうですよ?正社員で働かないかと誘われてまして…。あれ?言ってなかったですか?りみと同棲する話も…。」

潤はそう言うと、紗夜から物凄い圧を感じた。恐る恐る紗夜を見ると、紗夜は潤を睨んでいた。

「(あっ…。詰んだ…。)」

潤はそう思うと、椅子から立ち上がり、フローリングに正座をするのであった。

「だいたい、貴方はいつもいつも!心配してるから報告しなさいと何度言ったら分かりますか!?」

「ほ、本当に申し訳ありません。こ、今回は言ったとばかり思ってて…。」

「言い訳はいりません。」

ギロっと睨む紗夜に震えながら潤は反論してみるが、紗夜にそんな反論が通用するはずもなく、火に油を注ぐような状態であった。

 

─────────────────────

「お姉ちゃん!それくらいにしてあげなよ!」

「本当に申し訳ありません…。」

「全く…。」

紗夜の説教が始まって30分後、紗夜のため息により説教は終わりを告げた。途中で遊びに来た日菜の助けもあり、いつもよりかは短い説教で済んでいた。

「あ、足が…。」

潤は立ち上がろうとしたが、ずっと正座をしていた為、痺れてしまっていた。…フローリングの上で30分も正座していれば痺れるのは当たり前であるが…。

「なになに!?潤君どうしたの!?足がどうしたの!?」

潤の様子に気付いた日菜はニコニコしながら潤に近づいた。

「ひ、日菜姉さん?どう…しましたか?」

「えい!」

「あぁ!い、い、い、今は足を突かないで!今はダメ!」

「あはは!潤君が悶えてる!るんってきたよ!」

潤の「止めろ!」という叫びは日菜に届かず、暫くの間、日菜に足を突かれ続けた。

「さ、紗夜姉さん!た、助けて!」

日菜を唯一、止める事ができる紗夜に潤は助けを求めた。しかし、聞こえているはずなのだが、紗夜は無視をした。それから10分後、潤が悶える姿に飽きた日菜は「お姉ちゃん!」と言いながら潤から離れた。

「酷い目にあった…。」

ぐったりとした表情で「はぁ。」とため息をつくと紗夜と日菜が座ってるソファーに移動した。

「ところで潤さん。」

「は、はい。な、何でしょうか…。」

「…そんなに構えないで下さい。」

紗夜に声をかけられ、ビクッと身体を震わせた潤を見て、紗夜は悲しそうな表情を見せた。

「ご、ごめんなさい…。」

「お姉ちゃん、潤君を怒ったんでしょ?無理ないよ!」

潤と紗夜のやり取りを見て、日菜はケラケラと笑っていた。

「はぁ。まぁ…良いです。潤さん。潤さんが就職するという話しは牛込さん…。いえ。りみさんは納得なのですか?」

「り、りみさん?」

「えぇ。このまま行けば、貴方と牛込さんは結婚しそうなので、今のうちから慣れておこうかと。で、どうなんですか?納得してますか?」

「してますよ。この間、きちんと話しましたから。」

「本当に…ですか?」

潤がりみとのやり取りを思い出しながら言うと、紗夜は怪訝そうな表情で潤に詰め寄った。

「そ、そう言われると…自信が…。」

「潤さん。もう1度話し合った方が良いかと思います。りみさんは潤さんと同じ大学に行きたがってましたから。」

最後に紗夜はニコッと微笑みながら言うと、潤は小さくコクッと頷いた。

 

─────────────────────

有咲の蔵ではPoppin`Partyのメンバーがソファーに座っていた。主催ライブに向け、練習をしていたのだが、りみの調子があまりにも悪く、いつも間違えない箇所で盛大に間違えたり、1番なのに、2番の歌詞を歌ったりと散々だった。そんなりみに対して、Poppin`Partyのメンバーが何があったのかと、問い詰め、りみが悩みを抱えている事を知った為、こうして話を聞くのであった。

「何から話そう…。」

りみがボソッと言う。他のメンバーの視線が嫌でも刺さり、りみを焦らせていた。

「りみりん?ゆっくりで大丈夫だよ。」

「ありがとう。沙綾ちゃん。…あ、あのね。潤くんの事…なんだけどね…。」

「だろーな。」

「有咲っ!りみりんが話してるんだから!」

「お、おぅ。す、すまん。」

いつもとは逆で、香澄に有咲が怒られるという姿に、沙綾とりみは苦笑いを浮かべた。

「りみ?続きは?」

「あっ。そ、そうだよね。…あのね。わ、私、潤くんと同じ大学に行きたかったの。」

「一宮さんとりみが同じ大学?なら、一宮さん、相当勉強しないと無理じゃないか?りみ、大学のランク下げるのか?」

以前、潤の勉強を少しだけみた有咲はその時の事を思い出しながら言った。

「ううん。私は志望校、変えないよ。だから、潤くん、勉強を頑張ってたんだけど…。やっぱり就職したいって…。い、一緒の大学に行きたいって言うのは私のワガママなんだけどね?」

「ワガママじゃないよ!」

カバッとりみに抱きつきながら香澄は叫んだ。

「香澄…ちゃん?」

「ワガママじゃない!だって好きな人と長くいたいって思うのって普通の事じゃん!」

「香澄。落ち着いて。」

りみを締めて落としてしまうのではないかと思うくらいギュッと抱き締めていた香澄。そんな香澄を見て、沙綾が香澄の肩を叩いて落ち着かせようとしていた。

「だって!沙綾はどうなの!?」

「わ、私?う~ん…。そ、それは、まぁ、好きな人とは少しでも長く一緒にはいたいかな?」

「ほら!沙綾だってこう言ってるじゃん!だからりみりん!潤君を説得しよ!私達も手伝う…痛っ!」

興奮し、りみに迫りながら叫ぶように喋っていた香澄だったが、その途中で、有咲にチョップを食らっていた。

「あ、有咲?何するの?」

香澄は涙目になりながらチョップをされた頭を押さえた。

「何じゃねぇよ!おめーは本当に落ち着け!」

「だから、落ち着いてるって!」

「じゃあ、喋るな!」

「有咲?」

「喋るな!」

睨みながら有咲は言うと、いつもとは違う怒気に香澄は不満そうな表情を浮かべながらも、口をつぐんだ。

「はぁ。りみ、大丈夫か?」

「わ、私は平気だよ…。私の事なのにごめんね。」

りみは表情を暗くさせ、俯いた。

「別にりみを責めてる訳じゃねぇよ。話、聞いたけど、大学どうするんだ。正直言って、一宮さんの成績じゃあ、現実味がねぇぞ?」

「…出来れば一緒の大学に行きたい。ダメでも挑戦はして欲しい…。それに、Poppin`Partyがデビューに向けて、忙しくなったら、なかなか会えなくなっちゃうから…。大学が一緒だと、会う事も増えるから…。」

辿々しく潤と一緒の大学に行く理由をりみは答えた。その言葉を聞き、有咲は腕を組み、「う~ん」と考えた。たっぷりと間が開き、Poppin`Partyのメンバー全員が有咲に注目していた。

「…そっか。」

「…へ?有咲?そ、それだけ?」

有咲の短い返答に沙綾は目を丸くして言った。

「わ、悪かったな。だってしょうがねぇだろ?これはりみと一宮さんの問題だ。」

「そうだけど、あれだけ考えこんでたじゃん?」

沙綾は苦笑いしながら言うと、有咲はプイッと顔を横に向けた。

「…りみりん、ごめんね。有咲の言うとおりだね。」

「香澄ちゃん?」

「私、熱くなっちゃってゴメン…。でも、一緒の大学に行きたいって、もう1度潤君と話し合ってみたらどうかな?」

先程の反省があるのか、香澄は言葉は選びながら言った。香澄の意見に他のPoppin`Partyのメンバーも頷いていた。

「うん。…そうして見るね。でも、私も自分がこんなにワガママとは思わなかったよ…。潤君、悩みに悩んでCiRCLEの就職を決めたのに…。それに会えないって言っても、同棲するから、家に帰れば会えるようになるのに…。まだ一緒にいたいって思うなんて…。…あれ?皆…どうしたの?」

りみは愚痴っぽくため息をつきながら喋っていた。しかし、他のPoppin`Partyのメンバーから反応が無かった為、辺りを見回すと、全員、驚いた表情を浮かべたまま固まっていた。

「あ、あれ?ど、どうしたの?」

「はぁぁぁ!?い、一宮さんがCiRCLEに就職!?そ、そ、それより!ど、同棲って!?」

「そ、そうだよ!?りみりん、いつから同棲するって決まってたの!?」

「おめでとう。…で良いのかな?」

「ビックリしたよ…。」

メンバーそれぞれがりみに迫りながら感想を述べると、りみもビックリしたような表情を浮かべながら首を傾げた。

「あ、あれ?…私、言ってなかった…け?」

「聞いてねーよ!」

有咲が顔を真っ赤にしながら叫ぶと、他のメンバーも「うんうん」と首を縦に動かした。

「ご、ゴメンね。わ、私、言ったとばっかり思って…。」

この後、りみはしばらくの間、質問責めにあうのであった。始めは困惑していたりみだったが、だんだん、幸せそうな表情になり、他のメンバーをほっこりさせたのであった。

 

─────────────────────

潤が紗夜に怒られた翌日、潤は放課後にいつも通り、CiRCLEでのバイトに勤しんでいた。ガールズバンドパーティーの影響なのか、はたまた世間の流行りのお陰なのか分からないが、スタジオは全て埋まっており、嬉しい悲鳴をあげていた。

「一宮君。お久しぶり!」

受け付けにいた潤は自身の名前を呼ばれ、作業していた手を止め「はい?」と返事をし、顔をあげた。

「あっ!神楽坂さん!お久しぶりです。」

顔を上げ、相手の顔を見た瞬間、誰だか気づき、頭をガバッと下げながら言った。

「うん。急に来てゴメンね?近くまで来たから寄ったんだけど…。忙しかったかな?」

「いえ!大丈夫です。えっと、今日はどうされたんですか?」

ニコニコしながら喋るひとみに事前にアポイントメントも無かった為、潤は驚きながら対応をしていた。

「うん。ちょっと、お喋りしたくて。本当に近くまで来たから、寄っただけなんだよね。だから、忙しかったら出直すつもりなんだけど、本当に大丈夫かな?」

「はい。少しなら大丈夫ですよ。…えっと、ここで話すのは不味いですか?」

「うん。出来れば…。」

「でしたら、外のカフェテラスに行きましょう。打ち合わせとかはそこでやる事もあるので。」

潤はそう言いながら、カウンターを出ると、神楽坂の横で立ち止まった。

「うん。分かったよ。ありがとう。ちなみに、まだ、バレてないかな?」

「はい。りみはもちろん、Poppin`Partyのメンバーにも話してませんよ。」

潤がニヤリと笑うとひとみもニヤリと笑った。2人の表情はとても悪い笑顔をしており「お主も悪のよぉ。」「いえいえ。お代官様ほどでは…。」とやりとりが始まりそうであった。

「では、行きましょうか。」

「うん。よろしくね。」

潤が手をカフェテラスの方に向けると、ひとみも頷きながら外に向かった。外はまだまだ残暑が厳しかったが、暑さなど気にならないくらいに潤はワクワクした気持ちを抑えられず、思わずまたニヤリと笑ってしまっていた。




フィルムライブ良かった!
もう1回みたいなぁと思っています!
まだまだ企画書の内容は分からず…。
そして、進路ではお互いの意見が纏まらず…。
本当に終わるのかな?笑

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