日常の中にチョコより甘い香りを   作:ぴぽ

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16話

「ありがとうございました!」

ステージの中央でPoppin`Partyの5人は深々と手を繋いでお辞儀をした。額には汗が滲んでおり、肩で息をしていたが、表情はとても晴れやかだった。

「お疲れ様でした!最高…でした!」

ステージの袖に戻って来た5人に潤は目に涙を溜めながらも、笑顔で迎えた。

「潤くん。ど、どうだったかな?」

「りみ?聞かなくてもわかるだろ?一宮さん、泣きそうじゃん?」

有咲はニヤリと口角を上げながら言った。

「あはは…。いやぁ…。Poppin`Partyのライブは不思議な感覚になりますね。楽しくて、自然と笑顔になるのに、こうやって…か、感動…まで…。」

潤はさっきまでライブが行われたステージを見た。ステージの責任者である潤はステージ上をくまなく把握している。しかし、今は涙で視界がボヤけて、何が何か分からなくなっていた。

「もぉー。潤君、泣きすぎだよ~。」

「そうだよ。これからも何回もライブするのに毎回泣いちゃうの?」

そんな潤の姿にPoppin`Partyの面々はここぞとばかりに弄っていた。その時「パシャリ」と言う音が響いた。

「いやぁ~。青春してるね!」

音に反応して、そこにいた全員がパッと見ると、まりなが満面の笑みでデジタルカメラを構えていた。

「つ、月島さん!け、消して下さい!今すぐ…グスッ…。デ、データを消して下さい!」

「こんないい写真を消すわけないじゃん。ところで潤君?次の準備しなくて良いの?」

まりなはデジカメを操作しながら言った。

「次の準備?この後、またライブがあるの?」

まりなの言葉にいち早く反応した香澄が首を傾げながら潤に尋ねた。

「いえ。ライブはありませんよ?ただ、Poppin`Partyの皆さんにはまだ仕事が残ってる…と言っておきます。」

潤は涙を拭うと、顔を引き締めながら言った。潤の言葉にPoppin`Partyの面々は顔を見合わせた。

「何があるの?」

おそらく、全員が疑問に思っていることを代表して沙綾が潤に尋ねた。

「それはお楽しみです。…まぁ、ヒントを出すとしたら…今日、カメラがありましたよね?」

「…カメラ?」

潤がニヤリと笑いながら言うとりみは首を傾げた。

「りみ、気づかなかった?沢山、カメラがあったよ?」

たえがりみに言った。他のメンバーも気づいていたようで頷いていた。

「ふぇ!?わ、私だけ気付かなかったの!?」

りみは焦ったように言った。

「潤君!カメラ何なの!?教えてよ~!」

香澄が潤に詰め寄りながら言うも、潤は唇に人差し指を当て、またニヤリと笑うだけだった。

「一宮さん。これって、前言ってた企画に関係あるのか?」

内緒にされるのが面白くないのか、有咲はジト目をしながら言った。

「そうだね。関係あるって言うか、それだね。さてと…。そっちはどうですか?」

潤は有咲の質問に答えるとインカムを口元に持った。左手はイヤホンを触っており、聞き漏らさないようにしていた。その様子を不安そうな表情でPoppin`Partyの全員が眺めていた。大成功だったライブ後とは思えない変な空気が包んでいた。

「…了解です。」

潤は小さく呟くと、Poppin`Partyのメンバーを見渡した。そして、再び、ニコッ…ではなく、ニヤッと口角をあげた。今からイタズラを仕掛ける子供のようだった。

「Poppin`Partyの皆さん。再び、ステージまでお願いします。」

「ステージ?」

5人は顔を見合わすと、ゆっくりステージの方に向かった。潤はその隙にインカムでひとみに連絡をとっていた。

「Poppin`Partyさん、ステージに向かいました。」

「OK!潤君。完璧だよ!」

ひとみの明るく元気が良い声を聞いて、ホッと胸を撫で下ろした。ひとみの声に今のところ大成功だと感じたからだった。

「さて…。りみ達の勇姿を見ますか。」

潤はそう呟くと、同時にりみ達の叫び声が響いた。

 

―――――――――――――――――――――――――――

「あ、あ、有咲!な、な、なんか大人の人達が沢山い、いるけど、何!?」

「ば、バカ!それだけじゃねぇ!めっちゃ写真撮られてる!な、な、何事だっ!?」

「沙綾?ピースした方が良いかな?」

「お、おたえはマイペースだね。」

Poppin`Partyのメンバーが各々、反応を見せる。顔や体にはプロジェクションマッピングをされたように次々とフラッシュの光が映し出されていた。

「ただ今より、Poppin`Partyのデビュー会見を始めます!」

戸惑っているメンバーを他所に、司会者が高らかに宣言した。

「え?」

司会者の言葉にりみ以外の4人は驚いた表情を浮かべ、司会者の方を見た。そして、りみは舞台袖にいる潤を見た。潤はニコニコしながら見守っていた。

「会場にいるマスコミの皆様にはお知らせしましたが、今日のデビュー会見はサプライズとなっています!初々しいPoppin`Partyの姿を是非、ご覧になって下さい!それでは、自己紹介をお願いします!」

戸惑っているPoppin`Partyのメンバーとは裏腹にテンションの高い司会者。なんともアンバランスな空気感だったが、それがなんともおかしな雰囲気を作り出していた。

「あっ…。あ、ありがとうございます。み、皆さん、こ、こんにちは。ぽ、Poppin`Party、ボーカルの戸山香澄です!」

初めは戸惑い、言葉を詰まらせていた香澄だったが、徐々に普段のペースを掴み、にこやかに自己紹介を進めた。他のメンバーも、始めは緊張感を漂わせていたが、だんだんと笑顔が出始めていた。和やか雰囲気なデビュー会見が進んでいき、潤もホッと胸を撫で下ろしてした。しかし、事件は突然起こってしまったのだった。

 

―――――――――――――――――――――――――――

潤は自分の家のリビングでコーヒーを飲んでいた。1口飲み、小さな声で「ふぅ。」と息を吐いた。普段であれば、コーヒーの美味しさにホッとする瞬間であるが、潤の表情はその真逆で顔が強ばっていた。

「潤…くん?」

そんな潤を見ながら、対面に座っていたりみはコーヒーカップを握りながら、苦笑いを浮かべていた。

「りみ?どうしたの?」

「怒ってる?」

「いや。怒ってはないよ。ただ、驚いたし、その後、こんな大変な思いをするとは思わなかったよ。」

「ご、ごめんね?」

「りみは悪くないよ。」

潤はそう言うと、椅子に背中を預けた。りみと普通に会話をしていたが、かなり疲労感を感じているようだった。その証拠に、背中を預けたまま動かなくなっていた。

「はぁ~。香澄ちゃんがまさか言うなんて…。」

りみはそう呟くと、机に伏せた。

「りみ?大丈夫?疲れてるでしょ?さっきまでライブやってたんだし。先に寝ても大丈夫だよ?」

「嫌…。潤くんと寝る…。それに、お風呂も入りたい…。」

「……そうだよね。りみ?僕達、これからどうなるの?」

「分からないよ。」

りみは力なく、机に伏せたまま言った。2人の間に沈黙が流れる。しかし、そんな沈黙は許さないと言わんばかりに、りみのスマホから着信を告げるアラームが鳴り響いた。

「…もしもし。」

潤は「誰から?」と聞こうとしていたが、それより早くりみが電話に出てしまった。

「はい…。はい…。大丈夫です。」

りみの相槌を打ちながら会話を進めていた。潤はその会話が気になってはいたが、あまり気にするのもどうかと考え、スマホを持ち、ニュースを開いた。

「げっ。」

ニュースを開いた途端、トップニュースを目にした潤は思わず呟いた。そして、その記事をタップして読み進めた。

「ふぅ~。……潤くん、どうしたの?」

「あぁ…。これ。」

潤はスマホをりみの方に向けた。りみはスマホを覗き込むと、また苦笑いを浮かべた。そこには…。

「新生!ガールズバンド!Poppin`Party!堂々デビュー!ベース牛込りみの原動力は彼氏!?」

とでかでかと書いてあった。そして、潤とりみは数時間前に起こった事件を思い返すのであった。

 

―――――――――――――――――――――――――――

人間、目の前でとんでもない事件が起こったらどうなるか。固まってしまう者、慌てる者、怒る者、様々である。そして、今、事件を目の当たりにしたりみは固まってしまっていた。

「ベースの牛込さんの好きな物はなんですか?」

全ての事件は記者のこの一言から始まった。

「わ、私はち、チョコレートが大好きです。と、と、特に、や、沙綾ちゃんの所のチョココロネが大好きです…。」

「私の実家はパン屋を営んでいるんです。」

りみの補足と言わんばかりに沙綾も笑顔で答えた。絶えずフラッシュが光り、りみは「綺麗だなぁ」と思っていた。

「えぇ~!りみりん、それだけ!?もっと好きな者があるじゃん!」

「へ?」

香澄が元気よくりみの方を向いて言うと、りみは首を傾げた。

「潤君だよ!潤君!」

「へ!?」

ONマイクで香澄は言った為、取材陣がザワザワと騒がしくなった。普段なら香澄の通る声はバンドのボーカルとして大きな武器で、りみも羨ましいと思っているのだが、この時だけはその声を激しく恨んだ。

「香澄!バカっ!」

有咲が香澄を肘で軽く小突いた。しかし、その行動もまずいものであった。香澄の発言だけで止まっていれば、親戚の名前や飼っているペットの名前など、誤魔化すことは出来た。しかし、有咲が香澄を注意するように小突いた為、これは言ってはいけない事なんだと取材陣に伝わってしまったのだった。

「その…潤君とは誰ですか?」

取材陣の1人がPoppin`Partyに向かって質問する。こうなっては誰も答えることが出来ず、わたわたするだけで、取材陣に「ベースの牛込りみには潤と言う名前の彼氏がいる」という事が伝わってしまっていた。

「あらら…。やっちゃったなぁ。」

舞台袖から潤は苦笑いしながら、慌てているPoppin`Partyを見ていた。そして、自分の胸に付いていた「一宮潤」と書かれている名札をそっと外し、ポッケに入れ、隠していた。その後、なんとかデビュー会見を終えたPoppin`Party。潤は取材陣の見送りの為、受付に立ち「ありがとうございました。」と言いながらお辞儀を繰り返していた。そこで、もう1つ香澄が事件を起こしてしまう。Poppin`Partyも取材陣の見送りの為、受付のあるロビーに顔を出した。その時、潤を発見した香澄が大きな声で「潤君!お疲れ様~!」と大きく手を振りながら言ったのだった。香澄の大きな声に取材陣が気づかない訳が無く、潤はあっという間に取材陣に囲まれてしまったのだった。

 

―――――――――――――――――――――――――――

長い長い回想が終わると、潤は机に伏せた。

「潤くん?…どうしたの?」

「記者の人に囲まれた事を思い出したら…余計に疲れた…。」

潤の姿を見たりみは「ふふっ」と微笑んだ。

「どうしたの?」

「ふふっ。笑ってごめんね?確かに、疲れたけどね…。楽しかったなぁって!」

「ライブ?それともデビュー会見?」

「両方だよ!あっ。そういえば、この会見が企画書の内容だったんだよね?」

「そうだよ。企画書にはRoseliaに負けないくらい、インパクトがあるデビュー会見にしたいって書いてあってね。」

潤がそう言うと、りみは富士登頂で死にそうな顔でデビュー会見をしていたRoseliaを思い出していた。

「で、その他にも、Poppin`Partyの初々しい姿を見せたいとか書いてあったなぁ。」

「そうなんだ。あれ?書いてあったのそれだけ?私たちに秘密とかは書いてなかったの?」

「書いてなかったよ?実は、神楽坂さんとはちょくちょく会ってて、会見の打ち合わせとかしてたんだよ。そこで、Poppin`Partyの初々しい姿を見せる為には、慣れた場所で、それに準備が出来ないサプライズが良いだろうって事になったんだよ。」

りみは驚いた表情で潤の話を聞いていた。

「私たちの知らない所でそんな話をしてたなんて…。」

「バレないように打ち合わせするのもなかなか大変だったよ?」

潤はニヤリと笑みを零しながら言った。

「…主催ライブも、神楽坂さんと話し合いで決まったの?」

「あー。主催ライブは…。神楽坂さんとの話し合いもあるけど、本当になんの予定も入ってなくて、焦っていたのは事実。」

「そうなんだ…。」

「まぁ、ライブも記者の人に見て貰えたから丁度良かったって神楽坂さん、言ってたよ。」

潤は企画書の件についての説明を終えると、フッと寂しそうな表情を浮かべた。その表情の変化を約2年間、潤の傍にいたりみが気づかない訳がなく「どうしたの?」と心配そうに言った。

「ご、ごめんね?今日のライブを思い出して…。あんなカメラの前で堂々と演奏したPoppin`Partyを見ていたら、なんか遠くの存在に感じちゃってね。…あはは!しんみりさせてごめんね?」

潤はそう言うと、頭を掻きながら言った。

「潤くん…。」

「大丈夫だよ!勝手にしんみりしているだけだから。」

潤はりみを安心させるようにニコッと笑って言った。その言葉を聞いたりみはゆっくり立ち上がり、潤の後ろに立つと、ギュッと抱きしめた。

「りみ?」

「何処にも行かないよ?私が帰ってくる場所は潤くんのところ…だよ?」

「りみ…。」

潤の右耳から入ってくるりみの囁き声に、背中をゾクッと震わせながらも、静に目を瞑った。

「…だ、だから…。例え、潤くんが私を遠くに感じても、必ず帰ってくるから…。約束…。」

「…ありがとう。なら、僕はりみがいつでも帰って来れるようにしないと…だね。」

潤はそう言ったが、りみからの返答は無かった。代わりに、抱きしめる力が更に強くなった。

「じ、潤…くん。」

「なに?」

「お風呂…一緒に…。」

「…そんなこと、したら…。我慢できないけど…。」

「……い、良いよ…?わ、私は…だ、だ、大丈夫…。」

声を震わせながら言うりみに潤は「本当に大丈夫かな?」と思いながらも、りみの好意に甘える事にした。お互い、恥ずかしさで沈黙してしまったが、この沈黙さえも心地よく感じるのであった。

 

 

 

 

 




書いても書いてもクオリティが上がらない……。
最近の悩みです…。

今日からバンドリのアニメが始まりますね!
楽しみにしてます!
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