日常の中にチョコより甘い香りを   作:ぴぽ

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最終話

「5、4、3、2、1…。明けましておめでとう!」

「うん。おめでとう。」

テレビでは紙吹雪が飛んだり、色々な芸能人がぴょんぴょんとはしゃいでいる姿が映っていたが、潤とりみは静かに新年を迎えていた。

「初詣…行こうか?」

「…うん。でも、もう少し、このまま…。」

りみはご飯以外、潤に抱きついたままであり、このままずっと離れないつもりなのかと潤を困らせていた。しかし、困りながらも、愛されている幸せをしっかり感じていた。

「りみは、甘えん坊さんだね。」

「今は、甘えん坊で…いいかな。」

りみはそう言うと、更にギュッと強く抱きしめた。

「そうだ。りみって、今日、泊まるんだよね?明日は何時まで大丈夫なの?」

「ちゃんと決めてないよ。何かあるの?」

「家具、見に行かない?」

「…家具?」

「うん。新しい家で使う家具だよ。実は父さんから祝いの先払いって言われて、纏まったお金を貰ったんだよ。…だから、見に行かない?」

潤がそう言うとりみの顔がぱぁっと明るくなった。

「行く!絶対に行く!」

「あはは。なら、明日って言うか日付が変わったから今日か。朝から出るから早く初詣に行こう?」

「うん!」

りみはパッと潤から離れるとコタツから出た。先程まで、潤に離れたくないと抱きついていたのに、今は潤の腕を持ち引っ張っていた。さっきとは真逆のりみの行動に潤は「あはは。」と笑った。

「結構、混んでるね…。」

「そうだね。」

りみは寒いからと人が多いからという理由でここぞとばかりに潤の腕に絡みついていた。

「りみは、何をお願いするの?」

「う~ん。なんだろ。決めてなかったなぁ。潤くんは?」

「…これからも幸せがずっと続くように…かな?」

潤はりみを見ながら言った。潤の言う幸せがりみと一緒に過ごすことだと言うことにりみは気づくと、俯いてしまった。

「りみ?」

「い、今はダメ!うぅ…めっちゃ恥ずかしい…。」

普段、あまり自分の気持ちをストレートに言わない潤。その為か、たまにストレートに言うとその言葉はかなり重みを持ってしまう。本人は無自覚だから更にたちが悪い。

「わ、私も…。潤くんといる時が幸せだよ。」

「一緒で良かったよ。今年から改めてよろしくね?」

「うん!」

2人は雪がまう中、見つめ合うと微笑んだ。寒さのせいなのか、照れているのか分からないが、2人の頬は真っ赤に染まっていた。

 

―――――――――――――――――――――――――――

「潤くん!これどうかな?」

「う、う~ん…。か、可愛すぎるかな?」

潤が苦笑いをするとりみは「そっか…。」と呟いた。家具を見に来た2人だったが、りみが良いという家具は女の子らしい家具ばかりだった為、潤はどうしたものかと困っていた。

「で、でも!部屋は明るくなるよ?」

「そうだけど、もうちょっとさ?僕も暮らすんだし…。でも、りみが楽しそうで良かったよ。そんなにテンションが高いりみはライブ以外だったら久々に見た気がするよ。」

潤がニコッと笑いながら言うと、りみはハッとした表情になった。

「そ、そんな…に?」

「うん。だから、僕も楽しいよ。」

「うぅ…。なんか恥ずかしくなってきちゃったよ…。」

りみは頬に両手を当てると、小さくなっていた。

「ほら、他に探そ?」

「何かお探しでしょうか?」

潤がりみの手を取り、移動しようとした時、女性の店員が声をかけた。

「えっと…4月から同棲を始めるので、そこに置く家具を見に来たんです。」

「同棲!良いですね!今日、ご購入して頂けるとキャンペーンでかなりお安くなりますよ!家具のお届けもお客様のご希望日に配達出来ますよ!」

店員の言葉に潤はりみに相談する為、どうしよっかと言いながらりみを見た。しかし、りみはキラキラとした目で潤を見ていた。りみは何も言ってないのだが、目が明らかに「買ってもいい?」と言っていた。

「…りみはどれが良かったんだっけ?」

「え?でも…。潤くん、可愛すぎるって…。」

「うん。そう言ったけど、絶対、りみの方が忙しくなるはずだからさ、りみが落ち着いてリラックス出来る空間の方が良いかなって。」

潤はそう言いながら、りみが可愛いと言っていたソファーに目を向けた。薄いピンク色で女の子が好きそうな外見をしており、自分が座っている姿があまり想像出来なかったが、そのうち慣れるだろうと思った。

「それに…。」

潤は薄いピンクのソファーに座ると店員と喋っているりみを見た。テンションが高くなり過ぎて、人見知りな性格が吹き飛んでいる様子で、笑顔で喋っていた。

「…りみが選んだ物に囲まれたら…。りみがこの先、忙しくなってすれ違いになっても…寂しくないよね。」

こんな恥ずかしいこと、本人には聞かせれないと思いながら、家具を選ぶりみを眺めるのであった。

 

―――――――――――――――――――――――――――

「…やっと終わったよ~…。」

「りみお疲れ様。」

時は更に進み、2月になっていた。学校も3学期に入り、ほとんど登校する事がなくなっていた。そして、やっと、りみの受験が終わったのである。終わったその日に潤の家に行き、潤にベッタリくっ付いていた。

「じゅーんくん!えへへ~。」

「なに?」

「ううん。何でもないよ?呼んでみただけだよ。」

「そっか。」

潤はそんなりみを抱きしめると、頭を撫でた。気持ちよさそうに目を瞑るりみを見て、潤はまた微笑んだ。

「本当に…良かった…。」

「どうしたの?」

「りみと別れなくて、本当に良かったなぁって。もし、あのまま別れたら、ずっと後悔してたなぁって。」

潤が言い終わるとりみは人差し指を立てて、潤の唇に当てた。

「そんな未来はなかったんだから、言わないで欲しいかな?」

「…だね。ごめんね。」

「ううん。私、今、幸せだよ。同棲もいよいよ始まるし、本当に楽しみ!紗夜さんとかポピパの皆も言ってたんだけど、本当にあっという間だったよ。同棲の話を聞いた時はまだまだ先って思ってたけど。」

「この1年、本当に色々なことがあったね。これから、りみはPoppin’Partyのベースとして、忙しくなるだろうけど、なるべく一緒に過ごそうね?」

潤はそう言うと、またりみの頭を撫でた。りみはまた気持ちよさそうな表情を浮かべながら「うん!」と返事をした。

「ちょっと良いかしら。」

「うわっ!」

「きゃ!」

2人の背後から麻里が声をかけた。麻里は今まで、買い物に行っていた為、2人は完全に油断し、イチャイチャしてた。なので、声をかけられた時は飛び上がる程、驚いていた。

「そんなに驚かなくていいじゃない。」

「母さんも帰って来たなら言ってよ!」

「言ったわよ。2人の世界に入ってたんじゃない?」

麻里は大袈裟に「はぁ。」とため息をついた。

「それで、なんの用?」

「潤。貴方は死んでも、りみちゃんだけは守りなさい!良い?」

「そ、そのつもりだよ。」

「そして、りみちゃん?」

「は、はい!」

麻里の真剣な表情にりみは背筋をピンと伸ばした。

「あのね。たまには遊びに来てね?りみちゃんならいつでも大歓迎だから!」

「…は、はい?」

もっと厳しいことを言われると思ったりみだったが、言われた事が拍子抜けだった為、へんな返事をしてしまった。

「来て…くれないの?りみちゃんが受験で来てくれない間、私、あんなのしかいなくて寂しかったんだよ?」

「あんなので…って、もういいや。」

何回もこのやりとりをしている為、潤は最後まで言わず、諦めたように言った。

「そ、そう言う訳じゃなくて…。びっくりしちゃって…。あ、あの。私も麻里さんが大好きなのでまた遊びに来ますね。また料理、教えて下さい!その…。お義母さん?」

りみは恥ずかしそうに言うと、麻里は驚いたように目を丸くした。そして「りみちゃん!」と叫びながらぎゅっと抱きしめた。そんな2人を見ながら潤はニコッと笑った。ちなみに、この日の夕飯は大量のチョココロネとステーキであり「おいひぃ~!」と言いながら幸せそうにりみは頬張っていた。麻里の機嫌が良いと、夕飯に顕著に現れる為、潤も麻里が喜んでもらって良かったと思っていた。

 

―――――――――――――――――――――――――――

「本日は私たちのためにこのように盛大な卒業式を開いていただきましてありがとうございます。また先程は校長先生をはじめ来賓の皆さん、在校生の皆さんからあたたかいお言葉を頂き、胸が熱くなる思いがしております。」

3月。花女では予定通り、卒業式が行われていた。ある者は泣き、ある者は高校生活を思い出しているのか微笑んでいた。卒業生答辞では有咲が選ばれ、堂々とした答辞にりみは素直に「凄いな。」と思いながら聞いていた。

そして、卒業式終了後。りみ達Poppin’Partyのメンバーは集まり写真を撮っていた。

「香澄。目が真っ赤だよ。うさぎみたい。」

「だってぇ~。」

「あはは!あっ。香澄!目を擦ったらダメだよ?ほら、ハンカチ。」

「沙綾~!」

相変わらず、仲の良いPoppin’Partyのメンバーに他の生徒も微笑ましく見ていた。

「有咲ちゃんもお疲れ様。とっても良かったよ?」

「バッ!や、止めろ!」

りみの賛辞に有咲は顔を赤くしていた。

「市ヶ谷さんは何をしたの?」

「あっ。潤くん!有咲ちゃんね。卒業生代表…。へ!?じ、潤くん!?な、な、な、なんで花女にいるの!?」

突然の潤の登場にりみを始め、Poppin’Partyのメンバーも驚いていた。

「卒業式が終わったからりみを迎えに来たんだよ?」

「そ、それは嬉しいけど…。よく女子校に入れたね…。」

「あぁ。それはね…。」

「私が許可を先生にとったんですよ。」

潤が後ろをチラッと見ると、紗夜が立っていた。

「さ、紗夜さん。」

「皆さん、卒業おめでとうございます。」

微笑みながら言う紗夜にPoppin’Partyのメンバーは「ありがとうございます。」と頭を下げた。

「りみ。おめでとう。」

「ありがとう。潤くんも卒業おめでとう。」

2人もニコッと笑い合う。その時「パシャ」と言うシャッター音が響いた。その音がした方に2人が向くと有咲がスマホで写真を撮っていた。

「…ごちそうさま。」

有咲は無表情でそう呟く。後ろにいた他のメンバーもニヤニヤと笑っていた。その中でも、1番ニヤニヤしていた香澄。突然後ろを向いたと思うと大きく息を吸った。

「…嫌な予感がする…。」

「へ?嫌な…予感?」

「皆ー!りみりんが彼氏連れてきたよー!」

よく通る声で叫ぶと、そういった話が大好物である女子高生達が一斉に近づいてきた。

「か、香澄ちゃん!?」

りみは叫び、潤は逃げようとりみの手をとったが、時既に遅し、あっという間に2人は囲まれてしまった。更に、香澄やたえが2人が同棲を始めるなど情報を流してしまった為、さらに質問攻めは加熱していた。

「…困ったね。」

潤は諦めたようにため息をつくと、りみもぎこちなく頷いた。

「…でも。懐かしい…かな?」

「懐かしい?」

「うん…。付き合ったばっかりの時に…CiRCLEで…。」

「あぁ!確かにそんな事あったね。」

2人は懐かしさに再びニコッと笑った。しかし、2人の世界に旅立つのを阻止するように、沙綾が「潤君、あっ。りみの彼氏さんの告白がね、ロマンティックでね…。」と聞こえてきた。

「や、山吹さん!ストップ!それ以上は!」

潤は慌てながら叫ぶも、バッチリ教えてしまい、聞いた女子生徒達は苦笑いをしていた。

「…勘弁してよ…。」

「あはは!」

項垂れる潤に対してりみは腹を抱えて笑ってしまった。

 

―――――――――――――――――――――――――――

卒業式から数週間後、潤もりみも無事に大学に合格し、いよいよ同棲1日目を迎えていた。

「はい。大丈夫です。ありがとうございました。」

潤が引越し業者に頭を下げると、引越し業者も爽やかな笑顔を向けて帰って行った。

「さて、これからが大変だよ?」

「そうだね…。思ったより荷物増えちゃって…。」

リビングや寝室に山のように積まれたダンボールを見ながら2人は喋っていた。

「でも…なんか楽しみかも。」

「なにが?」

「ダンボールを開けて、2人であそこに片付けようとか決めるよね?それが、本当に一緒に暮らすんだって思っちゃって。」

りみはそう言うと、1つ目のダンボールの封を切った。

「そうだね。とりあえず、手分けする?どのダンボールに何が入ってるか把握しないと。」

「そうだね。潤くんは寝室をお願いしていいかな?」

「了解。重たい物があったら言ってね?」

潤はそう言うとカッターを取り出し、寝室に向かった。2人が暮らす部屋には予定通り、可愛らしい家具が並んでおり、家具達も2人の門出を祝っているようだった。

「あっ。」

りみはあるダンボールを開けた際にある物を見つけていた。

「…アルバム。ここに入れてたんだ。」

りみはダンボールからアルバムを出すと、ピカピカの机の上に置いた。

「後から見ようかな。」

りみはそう呟くと、優しくアルバムを撫で、ニコッと微笑むのであった。

 

~日常の中にチョコより甘い香りを~

第2部「高校3年生編」完

 

 




第2部、無事完結しました。
第1部と違い、かなり重たい話だったので、最終話くらいはと2人にたくさんイチャイチャしてもらいました笑
2人の物語はこれにて終わり…ません!
第3部、外伝と色々と考えています。
まだまだ長い付き合いになりそうですが、これからもよろしくお願い致します。
そして、ここまで読んで下さった皆様、本当にありがとうございました!
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