自称機械技師の備忘録   作:アビャア

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3.契約

ーーーーーーside.『Vector』ーーーーーー

 

 

私ことvectorは、自分が生きていることにまだ驚いている。

 

当たり前だ、数日前に鉄血人形と交戦し敵リーダーであるハイエンドモデルの『処刑人』によってバックアップ不可能な程に大破していたのだから。

ソイツに私の右腕は切り捨てられるし、腹を太刀で貫かれるわで最悪だった。

 

その代わり、アイツの左目に隠し持っていた炸裂式のナイフで深く抉るように射し込んでやったけど。

あの不敵に笑っていた奴が叫びながら太刀を捨てて苦しむ数秒後に頭が爆発する様は最高だったわ。本当は焼夷手榴弾で焼き殺したかったけど片腕が切り落とされてたから仕方ないわね。

 

基本人形は壊れてもその人形のデータが無事なら、そのデータをバックアップし、新しい身体に意識データをコピーして復活出来る。

けど、私のシステムは処刑人との戦闘で多くのデータが破損しその機能が使えなくなっていた。

 

つまる所、私はあの戦闘で完全に壊れた訳ね。

 

しかし私は『戦士』。それに恐れることはなく『あぁこれが死か。』と意識が朦朧とするなかでそんな事を考えた。

 

痛覚が鈍くなり意識が朦朧とするなかで私は、『平日も戦闘、休日もやることがなくて戦闘訓練ばっかりだったな。』とか、『けど、何者でもない私に戦い方や生きる意味を教えてくれた"アイツ"に悪いことしたな。もしもあの世があるならその時に謝ろう。』とか考えながら、そのまま眠るように眼を瞑り私の人生が終わった。

 

 

しかし、私は生きていた。あの死闘が嘘かと思える程に五体満足でだ。

修復機械を用いても破損してた身体もデータも何事もなく修復していたのだ。

 

夢かと思った。人形は夢を見ないけど。

 

そんな私を夢から醒ましたのは、部屋にあるパソコンを見て溜め息を吐きながらやれやれとわざとらしいポーズを取るつなぎを着てココアを飲む一人の男『丈二・ニコフ』だった。

 

そんな、彼は一言で言うと『胡散臭い』。顎の髭が濃い無精髭とボサボサの灰色混じりの黒髪、整えば男前なのに疲れ顔で台無しという情けない容姿。

基本的にノリの言い男性の性格で明るい感じで話すが、観察眼がとても鋭く、まるで全てを見透かされているな錯覚に陥ってしまう底深いナニかを感じられる男といった所ね。

 

性格は違えど底知れない恐怖という面では"アイツ"にそっくりだわ。

 

そんな彼は私の後ろを向きながら、ニヒルに笑いながら起動してないデクストップ型のパソコンを見つめていた。

 

突然の発言に、最初はコイツの頭可笑しいのかと思っていたけど、彼の発言で電源が誰も触ってないのに勝手に起動しパソコンが動きだすと、パソコンのデクストップ内にモニター現れ一人のピンク髪の女性が現れた。

 

 

『やっぱりか、君の事だから私が隠しカメラで見ているのを気付くのは薄々分かっていたよ。』

 

その女性の名はペルシカ。

G&K社に人形を提供しているI.O.P社の技術開発部門「16Lab」の主席研究員。そして私達『第二世代人形』誕生を促し、代用コアや烙印システムといった私達戦術人形にとって重要なシステムの数々を開発した天才だ。

 

そして映像越でも分かる。彼女、凄く残念美人ね。

 

ちゃんと身だしなみを整えればかなりの美人なのに、目に隈があったり白衣をだらしなく着てたりと服がヨレヨレだったりと、丈二がマシに思える位にズボラで残念臭が漂ってた。

そして、人間に生える筈がないあの獣耳、質感と時々動く感じからして本物よね?凄く気になるのだけど。

 

 

「そりゃ人形を直している時にアンタ特有のねっとり視線をカメラ越で感じたからね。それに、俺を此処に連れてきた連中も高性能だが繊細なI.O.P社製の戦術人形に違法改造されているのに、キチンと不具合なく動いているとくれば、自ずと答えは限られて来るだろ?」

 

 

『変な所で頭の回転が早くてロマンチストな所は相変わらずね丈二。』

 

「アンタこそ凄い天才だが、引きこもりでズボラな所は変わってないな。たまには外の空気を吸って身体を動かしているか?アンタの私生活を知っている身としては、その不健康な生活が祟って早死にするのは勘弁して欲しいのだが。」

 

 

彼等はどうやら旧友らしく、お互い皮肉を言っているが何処か懐かしく楽しそうな感じがするわね。

.....会話に入りづらくて私が空気になっているけど別に良いか。そう思いながらオフィスに良くある回転式の椅子を座り髪を適当に弄ってこのやり取りを観察していた。

 

 

というか丈二、ペルシカに対して娘を心配する母親みたいになってるわよ。もしかして二人ってそういう関係?

 

 

 

『君が心配しなくても平気よ。一週間に一回はちゃんとした料理を食べるし、たまに外に出て缶コーヒーを飲みながら外の空気を吸っているわ。何度か一夜を共にした仲だからと言って彼氏面は止めてくれない?』

 

「違いますー。コミュ症なアンタの数少ない友人として警告しているだけですー。それにちゃんとした料理ってレトルト商品の事だろ。」

 

『......なんのことかなー。』

 

「おいおいおい、図星かよ....。まぁそれは置いといて....だ。ペルシカ、アンタはなんでVectorの修理を俺に任したんだ?アンタの技量なら片手間で修理出来るだろ。彼女を直すなら、こんな手荒な方法をしなくても良かっただろ。」

『簡単なことよ。今、極秘裏で進んでいる『あの計画』を君に任せて良いか確かめていたのよ。』

 

「極秘裏....っておいおい、ヤバい類いなら例えアンタでも容赦しないぞ。」

 

 

この二人の関係が凄く気になるけど、何故こんな荒事みたいな事をしたのかについては確かに私も思った。私を直すならI.O.P社経由で正式な依頼を彼に渡せば良いのに何が目的なのかしら?

 

そんな事を考えると、ペルシカはニヤリと笑いその訳話す。すると、さっきまでの明るい彼とは真逆の冷徹な表情をして睨み付ける丈二に対してペルシカは、動じることはなく彼を見つめる。

部屋の外で幾多かの駆けつける音が聞こえたが、ペルシカが別の通信機で何かを伝えると音が鳴りやみ彼女は話を再開した。

 

....極秘裏で進んでいる計画って私、トンでもないことに巻き込まれたわね。

 

 

『大丈夫よ、上の連中にも話は通しているから。それに、"

戦術人形をほぼ完璧に直せるのは現状、貴方と私しかいないでしょ?"まぁ、結果としては衰える所か以前より急成長してたけどね。』

 

 

 

『貴方も鉄血の勢力がどれだけ脅威なのは知っている筈よ。この計画が成功すれば、鉄血達に対する切り札になるかも知れないの。....だからお願い、私達に力を貸して。』

 

 

「......ハァ、分かったよ。それで、俺は一体何をすれば良いんだ?その代わり、()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

『....ッ!ありがとう。それについては手配しておくわ。それじゃあ、詳しい事は入社してからにして大まかな話をすわね。』

 

 

最初は言葉は出ずとも渋った様子で眉を潜めていた丈二だったけど、彼女の真剣な顔を見ると彼は手を頭で抑え溜め息を吐き渋々ながら条件付きで了承した

そのときの彼女は、心なしか長い主張から帰って来た親に見せる子供ような笑みを浮かべていた。

 

 

しかし、コイツがペルシカと同等の技術力...か。そりゃ私の身体を完璧に直せる訳ね。

ペルシカは平静を装っているが、子供がプレゼント箱を開けるかのようなウキウキ感を見え隠れしたしながら『例の計画』の一部を話し始めた。

 

『まぁ、貴方にはG&K社に技術者として入社して、あるはぐれ人形達を"保護"して仲間にして欲しいの。』

 

「もしかして『はぐれ鉄血人形』のことか?」

 

『ご名答。』

 

 

それってAIの深刻なエラーで暴れ放題のアイツ等を鹵獲しろって事?狂気の沙汰じゃないわね。

というか、敵側にもはぐれ人形がいたのね。鉄血人形の全てがマザーAIの配下だと思ったわ。

 

「必見必殺状態で人間殺戮マシーンと化した奴等を捕まえて味方にするのか?それにアイツ等、マザーAIと繋がっているから情報を盗まれる可能性があるだろ。」

 

確かに、そういえば最近ニュース番組の特集で、敵側の四足歩行型『Dinergate』が可愛いという理由だけでペットロボットとして拾って持ち帰った結果、鉄血が人類側の情報を得て更に勢いを増してしまった問題を取り上げていたわね。

そりゃ、あの四角いフォルムで懸命に走る姿を見たら可愛いと思うけど拾わないとは思わないわね。アイツ等何時も大量で襲ってくるから見飽きたのよねぇ。

 

簡単に壊れるからつまらないし。

 

 

 

『そこは安心して丈二。鉄血側の『はぐれ人形』は他のはぐれ人形とは違う事が最近分かったのよ。それも敵側がソレを恐れて見つけ次第最優先で破壊するレベルでね。』

 

「それは興味深いな、ふむ....それで何時俺は大先輩が経営しているG&K社に入社するんだ?」

 

 

 

ペルシカがその理由を話すと、丈二は顎髭を触りながら研究員特有の目付きになっているけど、鉄血のはぐれ人形は他のはぐれ人形とは違う?

 

....そういえば私と相討ちになった処刑人、最初に出会った時に『今日は運が良い。裏切り者達を殺した帰りにグリフィンの人形共も殺せるなんて、ハンターが知ったらさぞ羨むだろうな。』って言ってたわね。

まぁ、私に炸裂式ナイフを眼球に刺されて頭部が爆発四散したけど。

また、今度出会ったら煽る次いでに復讐もかねて丁寧に燃やしてやろう。

 

 

『明後日から、ちなみに働く場所はS020地区にある支部ね。』

 

「へぇーS020地区かぁ。S020地区........アッ。」

 

 

そんな事を考えるていると、彼は何時私達、戦術人形達が所属するG&K社に就職する日を訊ね、ペルシカはその日にちとその支部があるS020地区を伝えたのだが、働く場所を聞いた途端、彼は固まってしまった。

私が働いている支部に何かあるのだろうか?

 

 

Пожалуйста,снова(もう一度、頼む)。」

 

『何でロシア語になっているのよ。まぁいいわ、S020地区にあるG&K社の支部よ。それと、貴方の荷物は3日後、宿舎の●●号室に届く予定だからそれまでは隣部屋にある貴方の『同志達がいる』部屋で居候ね。ちゃんと彼女達に連絡しておいたから。』

 

「オォウ.....ウージャス(Ужас)、なんてこった。」

 

 

かなり狼狽えているのか、ロシア語で丈二はその場所を確認し再び頭を頭を抱えている。

私の部屋から近いわね...。って、あれ?

 

●●号室って"アイツ"が所属している『白い猟犬』がルームシェアで住んでいなかった?

......もしかして、彼女達がよく話していた『暴れ人形師』って彼のことなの?

 

彼女達を何度も修復,改修し強くさせ、戦地では外骨格式のEXOスーツを着て敵軍の兵器を壊す、若しくは盗んで大暴れ。

その暴れっぷりに敵からは『ロシアのグレムリン』と呼ばれて恐れられてたって言っていたわね。

 

......此は興味が湧いてきたわ。

 

 

『あっそれと言い忘れてた。君が直したVector、今日から君の部下ね。今回の報酬も貴方の銀行口座に振り込んでおいたから、明後日から社会生活頑張ってねー。』

 

 

「ちょっまっっっ!!」

 

 

よし!神様ありがとう!!神様が本当にいるかどうか分からないがありがとう!

心の中でガッツポーズをすると、電源が落ちて画面が暗くなったパソコンに片腕を伸ばして固まっていた丈二が腕をだらりと下げ『あー、マジかー。』『どうすっべこれ。』とか項垂れていた。

 

 

私はそんな事を気にせず立ち上がり、挨拶代わりの握手をするためにそして、これから起こるであろう体験に口元が僅かに歪めて小さく笑いながら私は彼に歩み寄った。

 

 

 

これは暫くの間、退屈しないで済みそうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「これから宜しく丈二。あんまり私を期待しないでよね。」

 

 

......あー握手をどうもありがとうvector。明日から、色々大変だと思うけどヨロシクな。

先ずは、コミュニケーションを築き上げるために君と色んな話をしたいのは山々だが、取り敢えず扉で臨戦体勢のまま盗み聞きをしている彼女達の警戒を解くのが先だな。

 

「そうね、私も珍しく沢山お喋りがしたい気持ちになっているけど、扉の向こうから若干ピリピリとした雰囲気が感じらるし、ソレを解決してから後でゆっくり話しましょう『暴れ人形師』さん?」

 

.....その渾名を知っているって事はアイツ等の知り合いってことか、全く世界は広いようで狭いな。今はコーラップスと核の汚染で世界は狭いけど。

 

「そのブラックジョーク笑えるわね。」

 

だろぉ?アンタとは気が合いそうだ。それじゃ行きますか。

 

「ええ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のんびり早めの余生を過ごしていた俺はこの任務以降、はぐれ鉄血人形を鹵獲するために、大先輩が経営しているG&K社に就職、本格的な戦場に舞い戻り鉄血vsグリフィンという大規模な騒動に巻き込まれる事となる。

 

どうやら俺の悪運は今でも健在みたいだ。

 

しかし、取り敢えず今はそんな事はどうでも良い。今は"彼女達"をどうにかするか考えないとな。部隊が解散してからの四年間、連絡していなかったからなぁ。

 

 

取り敢えずフライパンで作れるロシアのチーズケーキ『シルニキ』を作ろう。アイツ等シルニキが好きだったし、それに甘いものは心を安らかにする(謎の持論)。

これなら何とかなる筈だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





オマケ
炸裂式ナイフ(元ネタ:フルメタル・パニック)
戦術人形や無人兵器の対抗策に第三次大戦の中で生まれた兵器。ボタン式のセーフティが付いており、それを解除して突き刺すことで持ち手に内蔵した起爆装置が起動し、9秒後に持ち手に内蔵した火薬が爆発、それに伴い刀身と持ち手の破片飛び散り内部を徹底的に破壊するダムダム弾の性質を持つ兵器。
しかし、刺してから9秒後に爆発する性質上、使い所が難しく巻き添えを喰らう可能性が高い。
そして、誤爆を防ぐため構造を複雑にした結果、高価になってしまった。

それでも戦術人形や装甲持ちの兵器、ミュータントに対して効果的な為、終戦後もごく少数だが生産が続いている。
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