「ウウウラララララララララァァァァァ!」
大空洞に赤い閃光が無数に奔る。
常であればそれは一撃ごとに剣閃の数と同等か、それ以上の数の首を落とすのだろう。
だが現在相対しているのは常ならざる者である。
「伸び縮みする剣か、だが────フッ!」
縦横無尽に駆け巡る剣閃をアルトリアは聖剣を振るうことで掻き消すように目の前の赤い剣士ごと薙ぎ払う。
「同じような剣技を見たことがある、手数では私には勝てん」
横薙ぎによる致命傷を避けながら、忠の字が書かれた兜を付けた男が後方へ飛んでいく。
その最中、男は自らの傷を気にも留めず口角を上げた。
「ラーンスアタターーック!」
吹き飛ばされる男の頭部を空中で踏みつけ、ランスが背後から飛び掛かった。
男を渾身の脚力で蹴り飛ばし、勢い良くカオスを全体重を乗せアルトリアへと叩き付ける。
「っ……!」
アルトリアはその攻撃にも難なく対処するが、一撃の重さにたたらを踏んだ。
そのまま彼女の華奢な体は地面に沈み込むが、聖剣に魔力を籠め再びランスを振り払った。
「いてー! なんつー硬さだあの剣!? 儂も硬さには自信あるけどあれはちょっとないわー、心の友も負けてるかも」
「下ネタ言ってる場合か、黙ってろエロ剣!」
聖剣と打ち合う度にカオスが悲鳴を上げる。
そんなカオスを叱咤するランスの体も悲鳴を上げていた。
ランスが宝具を使用してからまだ三分程度しか経っていなかったが、既に傷の多さではアルトリアに勝っていた。
「痛いの痛いの飛んでけーーーーーーーーーーー! はーーーーーーーーーーーーーっ!」
「そしてこいつを呼んだのは誰じゃー! こんな強敵相手にしてる時に味方に禿の男なんざいらんわー!」
そんな傷ついたランスを、左手に少女の人形を嵌めた男が癒していく。
「我が心、ALICE様の導きと共にー!」
「うるせー!」
「セイバーさん!」
そんなやり取りをするランスへ向けて、アルトリアが迫る。
だがマシュがそれに割って入り、攻撃を防ぐ。
「くぅっ……!」
「ほう、よく防いだな盾のサーヴァント」
「まだ負けません……防ぎきってみせます!」
ぶつかりあう剣と盾。
そんな二人は突然何かを察知し、互いの飛び退いた。
直後、二人が居た場所に赤色の光線が地面を焼き焦がしながら奔った。
「むむむ、杖から枝を生やすなんて卑怯ですよ! それに何処からか攻撃も飛んできますしズルですズル!」
「空飛びながらバリア張る様なお嬢ちゃんに言われたかねぇな! 槍さえあればと思ったが、今回はこっちのクラスで正解らしい!」
そんなやり取りが、アルトリア達の頭上から聞こえてくる。
地上ではランスが呼び出した軍勢とアルトリア。
上空ではフードのキャスターと、ランスが呼び出した魔法使いが戦闘を繰り広げる。
その様子を戦場から少し離れた場所で、立夏は驚きの眼差しを向けながら見ていた。
「…………凄い」
「いや全くだ、正しくあれこそが伝説や神話に謳われる英雄達の戦いだ」
立夏の隣には、ロマニのホログラムが浮かんでいた。
彼の表情もまた驚きに満ちている。
「しかし藤丸君が呼び出したあのサーヴァント……一体何処の英霊なんだろう」
「え?」
「彼は自分の事をランスロットと名乗ったが、実際の名前は違うっぽいだろ?」
「そういえば……」
「それに彼の霊基もおかしい、剣を持っているからセイバーだと思っていたから調べなかったが……実際の彼のクラスは全く違う」
立夏はランスのステータスを調べた時の事を思い出していた。
あの時、彼はオルガマリーが言ったランスロットと言う名前に同意したが……。
「そしてあの宝具……何もかもが規格外だ」
宝具と言われ、立夏は大空洞内部に無数に発生した穴を見た。
その穴からは白い球体が放出され、人間へと変じていく。
それらは全て人の形を得るとすぐさま武器を構え、ランスの元へと向かっていく。
彼らは直ぐにアルトリアによって薙ぎ払われるが、そうされる度にまた別の人物が穴から生じていく。
「固有結界を発生させているわけでもない、本当に何処かへの穴を開けてるだけだ。 ……あんな英雄、僕は聞いたことが無い」
「あの男が何処の英霊だろうと構いません」
「オルガ?」
「あの聖剣使いを打倒出来るのなら、今はそれで良いわ」
それまで沈黙を保っていたオルガが口を開いた。
その言葉に立夏もロマニも頷いた。
同時に戦局は終局へと向かっていく。
「よく耐える、だがあまりに脆い!」
穴から呼び出された人物がアルトリアへ殺到するが、聖剣を振るい薙ぎ払われる。
50名超呼び出された筈の軍勢は、既にマシュとランスの二人だけとなっていた。
「ちっ、なんつー威力と連射性だ! こっちもそろそろ限界だぞ!」
「まだ、戦えます……!」
気丈に振舞うマシュだったが、足の震えをカオスは見逃さなかった。
「心の友、あのお嬢ちゃんはもう無理そうだ。 どうする?」
「むぐぐぐ……!」
追い込まれたランスは憎らし気に考えを巡らせ……一つの考えを浮かばせた。
「あっ」
「おっ、何か思いついた?」
「うむ、マシュちゃんちょっと借りるぞ」
「セ、セイバーさん!?」
と言うと、マシュの盾を強引に奪いランスは自らの前に構えた。
「ガハハ! この盾が奴の攻撃で傷つかない事は周知の事実! ならこれで奴の攻撃を防ぎながら前進するのだ!」
「えー……」
「そ、そんな無茶な! 無理です、セイバーさん!」
「えぇい、俺様がやるって言ったらやるのだ! 後俺様はセイバーじゃなくてランス様だ、いいな!」
「……下らん、盾を構えただけで我が聖剣の輝きを受けきれるとでも?」
ランスは歯を見せ、ニヤついた。
「おう、もちろんだ。 お前の攻撃なんざ俺様はちっとも怖くない、全部防いで叩き切ってやる!」
「よくぞ吠えた、侵略者、星の危機を招く男。 我が聖剣で今すぐ塵一つ残さず消し飛ばしてやろう!」
アルトリアが、聖剣を上段に構える。
竜の心臓から魔力が生まれ、聖剣に集っていく。
「ランスさん、貸してください。 私が受けます、その間に……!」
「横から避けていくのは無理だ、あの連射性だと横に飛び出した瞬間に狙い撃ちされる」
「ですが!」
「えぇいしつこいぞ! 俺様はやると言ったらやる男、信用するのだ!」
ランスは自らの後方に居るマシュを庇う様に盾を構えた。
「来るぞ心の友! 踏ん張りだ踏ん張り!」
「『卑王鉄槌』、極光は反転する。 光を呑め……!
本日五度目の宝具が放たれた。
「ぐおおおおおっ!!?」
盾を構えていたランスの体が一瞬浮き上がりそうになるのを、必死に彼は堪えた。
「おぉぉぉ! 心の友耐えてる! 耐えてるぞ!」
「こ、この程度で俺様が…………!」
浮かび上がりそうになる盾を必死に押さえつけながら、ランスは一歩足を前に踏み出した。
少しずつ前に進んでいく。
「ふん、付け焼刃で何処まで耐えられる?」
盾に浴びせかけられる魔力の量が一歩近付く度に増えていく。
そんなランスの行動に、マシュは彼の元へ駆け寄ると盾を握る手に自らの手を添えた。
「私もお手伝いします!」
「むほほ…………やわらかい手、この手で俺様のハイパー兵器を……」
「心の友! 盾浮いてきてるって!」
ランスに触れたマシュの手の柔らかさに思わずエロモードになりかけるが、カオスの助言で事無きを得るとランスは再び全身を開始した。
だが……。
「ぐおお……き、きつい……!」
アルトリアまでの距離半ばという所で、ランスはついに膝を突いた。
「ランスさん!」
「こ、この俺様がこんな所で────」
「もう……駄目なのでしょうか……」
距離によって減衰していた威力が、近付く度に減衰しなくなるのは当然の事である。
盾によって弾かれた魔力もまたランス達の体を傷つける。
元より無謀な試みであったのだ。
「終わりだな、侵略者!」
「か────」
限界が近づいていた。
そんな中で、呻き声とも取れるような微かな声をランスは発し……叫んだ。
「かなみーーーーー! 出番だーーーーーーーーー!!」
「あーれーーー!?」
瞬間、アルトリアへ向けてアニスが飛んできた。
宝具を使っていた彼女には、飛んでくるそれを察知できても防ぐことが出来る時間が残されていなかった。
無防備な状態でアニスの激突を受けたアルトリアはよろめいた。
「ぐっ……! 馬鹿な!」
「フード男ーーーーーーー!!」
「あいよ!!」
ランス達の上空に居たキャスターは、その隣に居る忍者とハイタッチを交わした後に地上へ跳んだ。
とっておきの呪文を詠唱しながら。
「我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社─── 」
着地した。
「よくぞここまで持ち堪えた」
「いいからさっさとやれー!」
「キャスターさん!?」
「倒壊するは────ウィッカー・マン!」
地面から起き上がろうとするアルトリアは、その振動で再び体勢を崩した。
次に衝撃が彼女を襲った。
「何……これは──」
「はわわわわ、な、何か閉じ込められてます!?」
アニスと共に巨人の檻の中に閉じ込められたアルトリアの視点が徐々に高くなり、そして再び下がっていく。
「オラ、善悪問わず土に還りな───!」
勢い良く地面に叩きつけられ、業火に二人は包まれた。
その業火は大空洞の天井から見える空を貫く様にに天高く昇り、消えた。
業火が消えた先で……アルトリアが一人立っていた。
「げっ! ま、まだ立ってるぞ!?」
「いや待てセイバー、どうやら……俺達の勝ちらしい」
「ふっ、結局どう運命が変わろうと私一人では同じ末路を辿るということか」
アルトリアの足元から、黄金色の光が立ち上っていた。
光が立ち上る度に、彼女の肉体が消滅していく。
「どういう意味だそりゃ、てめぇ何を知ってやがる」
「何れ貴方も知る、アイルランドの光の御子」
「グランドオーダー」
「ッ!?」
「聖杯を巡る戦いは、まだ始まったばかりだという事を」
「おい待て、そりゃどういう……!」
グランドオーダーと言う単語にオルガマリーが反応する。
キャスターがアルトリアに対し、問いを発するが……彼の肉体もまた消滅し始めていた。
彼は首を一度振ると、立夏へ向き直った。
「坊主、お嬢ちゃん、それにセイバー、後は任せた。 次があるんならそん時はランサーとして呼んでくれ」
と、笑みを作りながらアルトリアとキャスターは消滅した。
「キャスター……」
「キャスター、セイバー、共に消滅しました……」
「けっ、格好つけながら死にやがって」
疲労困憊の状態で地面に倒れていたランスは、キャスターの消滅を見届けると再び頭部を地面に横たえ天井へ視線を移した。
「兎に角、これで終わりだな」
横たわりながら呟いたランスの言葉に、パチパチと乾いた拍手の音と……。
「クスクス……」
という、子供の様な笑い声が微かに聞こえた気がした。
【プロフィール2】
魔剣カオス:B
喋る剣、所謂インテリジェンスソードの類。
元々は人間だったが自らの願いを曲解した(正確には理解していた上でだが)神がその願いを叶えた結果、剣にされてしまった。
無敵結界を断ち切れる世界で二本しかない武器。
だがこちら側の世界では無敵結界が存在しない為(発生する可能性はある)、こちらの世界のシステムに合うように性能が変えられている。
即ち、切り付けられた存在の魔力、魔術的防護を今後一切無効とする。
これにより対魔力Aを持つ相手ですら魔力に対して無抵抗と化す。
だがランスもカオスも効果が変わったことを知らない為、今のところ有効活用される未来は無い。
また魔人、魔王に類する存在に対して滅法威力が上がる。
これは名称の問題であり、魔王や魔人を名乗るだけで勝手にカオスの威力が上がる。
ノッブ涙目。