世界を救わない物語   作:west4610

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我が栄光

 

「セイバー、キャスター、共に消滅を確認しました。 ……私たちの勝利、なのでしょうか?」

 

「ああ、よくやってくれたマシュ、藤丸君! 所長もさぞ喜んでくれて……あれ、所長は?」

 

「……冠位指定……あのサーヴァントがどうしてその呼称を……?」

 

「……所長、何か気になる事でも?」

 

「え……? そ、そうね。 よくやったわ、藤丸、マシュ。 不明な点は多いですが、ここでミッションは終了とします」

 

 アルトリア、そしてキャスターの消滅を確認した藤丸達は大空洞の中で互いの無事を喜び合う。

 そんな中オルガマリーだけが何か別の事を気にかけていたが、直ぐにそれを振り払うといつもの表情に戻りミッションの終了を告げた。

 

「兎に角、これで終わりだな」

 

 地面に仰向けに倒れているランスが、そうぽつりと呟いた。

 先ほどまで彼の周囲に開いていた穴はすっかり消え去り、今は通常の空間に戻っている。

 

「まずあの水晶体を回収しましょう。 セイバーが異常をきたしていた理由……冬木の街が特異点になっていた原因はどうみてもあれのようだし」

 

 オルガマリーはランスを一瞥した後、アルトリアが居た場所に残されたある物体に目を付けていた。

 彼女はマシュへ回収の指示を出す。

 

「はい、至急回収────な!?」

 

「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。 計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ」

 

 拍手と共に、男の声が響いた。

 

「48人目のマスター適正者。 全く見込みのない子供だからと、善意で見逃してあげた私の失態だよ」

 

「レフ教授!?」

 

「レフ────!? レフ教授だって!? 彼が其処に居るのか!?」

 

 マシュの視線の先には、先ほどまで居なかった緑色の服を着た男が立っていた。

 男は飄々として笑みを浮かべながら、話し続ける。

 

「うん? その声はロマニ君かな? 君も生き残ってしまったのか」

 

 やれやれ、と言った雰囲気で肩を竦めると──。

 

「すぐに管制室に来てほしいと言ったのに、私の指示を聞かなかったんだね。 まったく──どいつもこいつも統率の取れていないクズばかりで吐き気が止まらないな」」

 

 その閉じていた瞳を開いた。

 

「人間というものはどうしてこう、定められた運命からズレたがるんだい?」

 

「───! マスター、下がって……下がってください!」

 

「────おい心の友」

 

「エロトークなら今は付き合わんぞ俺様はー、今は疲れた」

 

「いや儂の声のトーンで分かるでしょ、マジな話よマジな。 あいつから魔人の匂いがする」

 

 魔人、という単語にランスは仰向けの体勢から上体を起こしレフを見つめた。

 

「……ボケたか駄剣」

 

「いやいやマジよマジ、儂が魔人の匂いを嗅ぎ分けられない訳ないでしょ」

 

「さっき街で嗅ぎ分けられなかっただろうが!」

 

「────レフ……! ああ、レフ、レフ、生きていたのねレフ!」

 

 そんなランスの目の前を、オルガマリーが走り抜けた。

 なりふり構わず、肉体が許す限りの限界の速度で彼女は駆けた。

 あっという間にオルガマリーとレフの距離は近づいていった。

 

「よかった、あなたが居なくなったらわたし、この先どうやってカルデアを守ればいいか分からなかった!」

 

「いかん……心の友、やばいぞ!」

 

「だーっ! こっちは戦闘の後だっつーのに!」

 

 必死な顔をして、何かに縋る様に、助けを求める顔でオルガマリーはレフの元へと走っていく。

 それに遅れて、ランスも立ち上がった。

 

「やあオルガ。 元気そうでなによりだ。 君も大変だったようだね」

 

「ええ、ええ、そうなのレフ! 管制室は爆発するし、この街は廃墟そのものだし、カルデアには帰れないし!」

 

 レフの声を聞き、オルガの顔に初めて笑顔が灯った。

 

「予想外のことばかりで頭がどうにかなりそうだった! でもいいの、あなたが居れば何とかなるわよね?」

 

 レフもまた、笑みを浮かべ駆け寄ってくるオルガマリーの言葉を聞いていた。

 

「だって今までそうだたもの。 今回だって私を助けてくれるんでしょう?」

 

「ああ、もちろんだとも。 本当に予想外の事ばかりで頭にくる」

 

 レフの表情が一変した。

 

「その中で最も予想外なのが君だよオルガ。 爆弾は君の足元に設置したのに、まさか生きているなんて」

 

「─────、え? ……レ、レフ? あの、それ、どういう、意味?」

 

「いや、生きている、というのは違うな。 君はもう死んでいる、肉体はとっくにね」

 

 目を見開き、悪意を見せるレフにオルガマリーの足が止まった。

 

「トリスメギストスはご丁寧にも、残留思念になった君をこの土地に転移させてしまったんだ」

 

「え、え……?」

 

「ほら、君は生前レイシフトの適性がなかっただろう? 肉体があったままでは転移できない」

 

 オルガマリーは、レフがこの先紡ぐ言葉を理解した。

 

「わかるかな、君は死んだことで初めてあれほど切望した適性を手に入れたんだ」

 

「────」

 

「だからカルデアにも戻れない。 だってカルデアに戻った時点で君のその意識は消滅するんだから」

 

「え……え? 消滅って、わたしが……? ちょっと待ってよ……カルデアに、戻れない?」

 

「そうだとも、だがそれではあまりにも哀れだ。 生涯をカルデアに捧げた君の為に──」

 

「話が長いわーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

 

 ざくーーーーーっ!

 突如、オルガマリーの影からランスが現れレフを両断した。

 

「いやーーーーーーーーーっ!?」

 

「レフ教授ーーーーーーーー!?」

 

「えーーーーーーーーーーっ!?」

 

 頭から真っ二つになったレフの死体が、ゆっくりとランスの前に倒れた。

 

「おおう、快感……こいつやっぱ魔人だったわ。 いや何か半分くらい違う気もするけど、まぁ魔人だったわ」

 

「ガーハッハッハッハッハ! 元彼……もとい悪は滅びた! これでオルガマリーちゃんは俺様のものだー!」

 

 そうして、オルガマリーを抱き寄せるとランスは豪快に笑った。

 

「いや、レフ、レフ!!」

 

「ガハハハハ、そう恥ずかしがるなオルガマリーちゃん。 これからもっと恥ずかしい事を二人でするのだからな! ムフフフ……」

 

 スケベ顔でオルガマリーを更に抱き寄せるが、彼女は目の前に横たわるレフの死体に手を伸ばす。

 

「しかし心の友、割とシリアスな感じだったけど良かったの?」

 

「あんな長い話これ以上続けてたら俺様がどうにかなるわ、俺様の仕事は終わったので後は好きにやるのだ」

 

 だが彼女の抵抗虚しく、ランスはオルガマリーを担ぎ上げると大きな岩の陰を目指して歩き始める。

 

「さぁお楽しみタイムだ! ガハハハー!」

 

「いや、離して……! レフ、レフ!!」

 

「ガハハハ、あいつはもう死んだわ! これからは俺様が奴よりももっともっと良い事をしてやるぞー!」

 

 そんなランスが起こした行動を、マシュ、立夏、ロマニは呆然と見ていた。

 ランスはこれからオルガマリーと行う行為について考えながら、ルンルン気分でスキップしながら移動していく。

 

「ガハハハ、まずは何からしよーっかなー、やっぱりまずはそのお口に俺様のハイパー兵器を……ぐふふふ──ん?」

 

 妄想をしていたランスは、途中である事に気づいた。

 足が地面に触れていないのだ。

 

「ん? んんーーーー!? お、俺様浮いてる!?」

 

 ランスは空中に浮いていた。

 抱えたオルガマリーごと。

 

「な、なんだ!?」

 

「嘘……」

 

 ランスの背後を向いて担がれていたオルガマリーが、信じられないものを見たような声を上げた。

 いや、事実信じられないものだったのだろう。

 

「実に……不愉快だ。 私の体に傷をつけるどころか、それが癒えない等と」

 

 真っ二つになったレフが、真っ二つになったまま起き上がり喋っていた。

 

「嘘、あいつあれで生きてんの!? あんな魔人見た事ないんだけど儂! あっ、でもよく考えたら魔血魂出てないし生きてて当たり前か」

 

「アホかー! 仕留め損なったとかそういう大事なことはもっと先に言えー!」

 

 空中に浮かび上がりながら、ランスはカオスと喧嘩を始める。

 その間にも高度は上がり続け、一定の高度になると停止した。

 

「こらー、下ろせー! 今すぐ下ろせば次は横一文字に切り裂いて殺してやる!」

 

「そんな脅し文句で下ろす奴は居ないと思うなぁ儂」

 

「実に不愉快だ……人間相手に、それも外の世界の存在に切りかかられる等到底耐えられる屈辱ではない」

 

 ランスを見つめるレフのその目は、憎しみに満ちていた。

 

「あ? 外? 何だ、こいつ何言ってんだ?」

 

 そんなレフを理解できないと言う表情で見るランス。

 

「自分が何故ここに居るのかも理解していないというのか? 実に滑稽だな、こんな男にこんな宝具があること自体がやはり不愉快だ」

 

「だーっ! 俺様に分かる様に説明しろー!」

 

「良いだろう、死ぬ間際に少しだけ聞かせてやるとも」

 

 空中で暴れるランスは徐々にレフの方へと近づく様に移動し始めた。

 レフは更に右手で持っていた聖杯を握ると、彼の頭上の空間が歪み真っ赤に染まったカルデアスが現れた。

 

「嘘、カルデアス……!?」

 

「君はこの世界の英雄ではないということだ、何時、どうやって英霊の座に登録されたのかは知らないが」

 

「英霊の座ぁ? そんな椅子俺様は座った事無いぞ」

 

「理由などどうでもいい、外の世界、それも外の神と繋がった宝具を持つ存在は許容できないのだよ」

 

 ランスは徐々に、カルデアスに近づいていく。

 

「うおお、何かよく見えないけど近づいたらやばいものに近づいている気がする!」

 

「あ、当たり前よ! カルデアスはそれ自体が高密度霊子の集合体、次元が異なる領域なのよ!? ブラックホールや太陽みたいなものなの!」

 

「だー! よくわからんがやばいんなら何とかして止めろー!」

 

 むやみやたらに暴れるランスに、オルガマリーは必死にしがみつきながら遠くに見える立夏を見た。

 

「っ! マシュ、所長を──」

 

「邪魔はさせんよ」

 

 半分に別れたレフの左半身が睨みつけると、立夏達の前に岩壁がそそり立った。

 

「このサーヴァントだけは確実に葬り去る、そうでなければ我々が人理焼却を始めた意味が無い」

 

「人理、焼却……? レフ、あなた一体何を──」

 

「ぎゃー! 近づいてくるー! 壊せないのかこれ!」

 

 レフの呟きに、オルガマリーが反応するが直ぐにランスの叫びでそれは掻き消えた。

 二人は太陽の如きカルデアスにゆっくりと近づいていく。

 

「む、無理よ……これはほぼ地球そのもの、同じだけの質量をもつような物凄い何かでもないと──」

 

「物凄い何か?」

 

「その通りだ、ブラックホールや太陽を止められるほどの聖遺物など存在しない。 大人しく──」

 

 ランスは空中で暴れるのを止め、首を捻った。

 

「あるぞ」

 

「え、えぇ……そうだけど、そんなもの──あるの!?」 

 

「ガハハハ、何だあれをぶつければいいのか。 それなら簡単だ!」

 

鬼畜王!!(マイ・グロリアス)

 

 ランスは、再び宝具を用いるとカルデアスの前に無数に穴が開いた。

 

「何を────」

 

「ガハハハ! こんなもの持っててもしょうがないから粗大ゴミにしてくれるわー!」

 

 その穴の中で、一際大きな穴から巨大な赤い球が転がり出るとカルデアスに激突した。

 魔血魂である。

 それも通常の物ではなく、巨大な。

 

「(殺せ────虐殺せよ────凌辱せよ────苦しめよ────絶望せよ────)」

 

「な────」

 

 レフは、否、その場に居たランス以外の全ての人物が呆然としていた。

 

「な、な────」

 

「今だ、隙ありー!!」

 

「巨大魔血魂────!? ってどわー!」

 

「何っ……!!」

 

 呆然とするレフに向け、ランスはカオスを勢いよく投擲した。

 意識が巨大魔血魂に向いていたレフは、聖杯を持つ手をカオスによって両断されるとランス達のコントロールを失い、ランスとオルガマリーは地上へ落下した。

 

「きゃーーーっ!」

 

「いたたたっ……だが作戦成功だ! ガハハハハ!」

 

 岩場に強かに体を打ち付けるが、ランスは直ぐに起き上がると大きく歯を見せて笑い出すと同時に走り出した。

 

「カオーーース!」

 

 カオスを持たない状態で、ランスはレフへ向かって大きく跳躍する。

 ランスアタックの体勢を取りながら、ランスは自らの頭上に開いた穴へ手を入れると先ほどレフへ投擲したカオスを取り出した。

 

「ラーーーンス!」

 

「魔人を殺せ! 儂に魔人の血を吸わせろ!」

 

「アタタターーーーーック!!」

 

「くっ、おのれ! おのれぇぇぇ!」

 

 断末魔の叫びと共に。

 巨大魔血魂とカルデアスの激突が激化し、魔血魂が弾ける音と共に。

 ランスアタックがレフへと叩きつけられた。

 

 

 

 




【プロフィール3】
主人公:B+
世界によって与えられた称号、ルドラサウム世界では三人居る主人公の内の一人。
このスキルを保持する者はあらゆる行動判定に若干のプラス判定を与えられる。
具体的には大成功が出やすくなる。
が、別にファンブルが出ない訳でもないので死ぬときは死ぬ。
所謂主人公補正をお約束するが場面を弁えない場合は利かなかったりする効果が実感しにくいスキル。
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