世界を救わない物語   作:west4610

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https://www.youtube.com/watch?v=HmZE5dUGm7c
RanceX OST 06 -カッコいい雑談


俺様の名前は────

 

「──────。」

 

「……モニター越しでも感じる、この緊張感。 所長の機嫌は相変わらずかい藤丸君?」

 

「斜めどころかむしろ断崖絶壁です」

 

 立夏の視線の先、空中に浮かぶモニターに一人の男性が映っていた。

 ロマ二・アーキマン。

 瑪瑙(めのう)色の髪に何処となく三枚目な雰囲気が漂うこの白衣を着た男性は、モニターの中で少し困った顔をしていた。

 

「仕方ないよねぇ、呼び出したサーヴァントにいきなり襲われて貞操の危機を迎えたってんなら……」

 

「サーヴァントって皆あんな感じなんですか?」

 

 立夏の視線の先には、地面にうずくまっているサーヴァントが居た。

 その少し先に、怒りの形相をしながらガンドを掛け続けるオルガマリーと何時でも彼女を守れるようにマシュが盾を構えていた。

 

「いやぁどうだろう……でもレオナルドも変人だし、英雄って言うのは皆何処かおかしいのかもね」

 

「今後付き合っていけるか不安になってきた」

 

「ははは、大丈夫」

 

 ロマニは立夏の言葉に笑って返した。 

 

「君が戻ってきたら今凍結保存されてるマスター候補達を一人ずつ治療する。 後は彼らが治ったら彼らに任せればいいさ」

 

「…………でも、今は僕が何とかしなきゃ」

 

「そうだね、辛い仕事を君に押し付ける事になってしまったが今は三人で無事にカルデアまで生還してほしい」

 

 ロマニは急に神妙な顔になると頷いた。

 もし彼が今その場に居たのなら、きっと立夏の肩に手を載せていた事だろう。

 

「僕、あの人と話してきます」

 

「え、本気?」

 

「はい、僕が呼び出した人だから……僕はきちんとあの人と話をしたいと思います」

 

 立夏は、そう言うとロマニの次の言葉を待たずに走り出した。

 

「…………大丈夫かなぁ」

 

─────────────────────────────────────

 

「ぎ、ぎもぢわるい…………!!」

 

「この! この!! 使い魔風情が私を襲うなんて……!」

 

「オルガマリー所長……そろそろこの辺りで止めておいた方が──」

 

「駄目よ、こういう奴は一度徹底的に──」

 

「ぎゃー! これ以上はやめろー!」

 

 地面に這いつくばる男に対して、更に魔術を掛けようとするオルガマリー。

 そして、それを止めようとするマシュ。

 かれこれ最初の邂逅から三十分以上が経過していたが、その間ずっとガンドを掛け続けられて男もそろそろ限界の様だった。

 

「あのー……ちょっといいです?」

 

 そんな三名の間に、立夏が割って入った。

 

「先輩」

 

「何? 今は何処かのマスターのサーヴァントを躾けている途中なんだけれど」

 

「ぎゃー!」

 

 オルガマリーはそう言うと、男へ向けていた右手へ更に強く魔力を送った。

 

「そろそろ許してあげるべきかなと……」

 

「許す!? このサーヴァントを!?」

 

「私も先輩に同意見です、オルガマリー所長。 我々の任務はあくまでもこの特異点の調査であってサーヴァントの懲罰ではない筈です」

 

「………………はぁ」

 

 立夏にマシュが助け船を出す。

 毅然とした表情で言う彼女に、オルガマリーは少し黙った後魔術を解いた。

 

「あくまでも罰を与え終わっただけです、もう一度このサーヴァントが何かする様ならその時は藤丸、あなたがこのサーヴァントを令呪で自害させなさい」

 

「それは────」

 

「出来ないとは言わせないわ、令呪はサーヴァントに対する絶対命令権、これがあるからこそ私たちは強大な力を持つサーヴァントを従えることが出来るのよ」

 

「…………なら、もう何かさせなければいいんですね?」

 

「え? え、えぇ……その通りよ」

 

 自らの指示に頷くと思っていたオルガマリーは、立夏のその態度に少し驚いた。

 そして自らの返事を聞くと、立夏は恐れることもなく未だに地面で倒れている男へ近寄った。

 

「すみません」

 

「………………」

 

「すみませーん」

 

「……………………………」

 

「もしもーし!」

 

「がー! 聞こえとるわー!」

 

 最初は少し離れて。

 だが返事が無いので更に近づいて。

 更に返事が無いので今度は耳元で大きく立夏は声を上げると、男はいきなり剣を握ったまま飛び起きた。

 

「全く……この俺様に何か気持ち悪くなる呪文を掛けるとか何なんだ、カラーの呪いか?」

 

「カラー?」

 

「む、何だ知らんのか? そういや何か未来とか何とか言ってたな……もしかしてカラー絶滅した?」

 

「聞いたこと無い」

 

「ふーん……じゃあきっと絶滅したんだな、ガハハハハ、パステル涙目」

 

 カラーという聞き覚えはあるが違う意味合いを示す単語について話していると、突然男は大きく口を開けて笑い出した。

 口の中に少しだけ尖った牙の様な歯が見える。

 

「で、俺様に何の用事だガキ。 俺様は世界中の女の子を抱くのに忙しいのだ、こんな燃えてる街に俺様は用事は無いのだ」

 

「えーと、それなんですけど……」

 

 ひとしきり笑った後、男は立夏へ視線を向けた。

 表情は能天気そのものだが、何となくこの男の機嫌を損ねれば自分はすぐに切り殺されるだろうという予感が立夏にはあった。

 

「さっきもお願いしましたけど、僕たちを助けてほしいんです」

 

「やだ」

 

 男は即答した。

 

「そんな無意味に疲れる事はしたくない、大体男を助けるなんて無駄だ。 後ろの女の子達なら助けてやってもいいぞ」

 

「本当ですか!?」

 

「あ?」

 

 至極当然の提案だとでも言うように、男は立夏の後ろに居るマシュとオルガマリーを示す。

 すると立夏は自らが守護の範囲に入っていないにも関わらず、諸手を挙げて喜んだ。

 

「お願いします! 彼女たちを、助けてあげてください」

 

「むぅ……」

 

 男は立夏の喜びように少し不安を覚え、彼から背を向けると剣を顔に近づけしゃがみ込む。

 そのままひそひそと誰かと話すような声が聞こえたが立夏には詳しい内容は聞こえなかった。

 そして少しして立ち上がると……。

 

「うむ、よかろう! この俺様にドーンと任せるのだ!」

 

 男は英雄っぽいポーズを取って、胸を張った。

 

「良かった……」

 

「但し! 俺様はお前は守らんからな」

 

「構いません、彼女達を守ってくれるのなら」

 

「変な奴だなお前」

 

 男の感想に立夏は苦笑いをすると、彼は右手を差し出した。

 

「僕、藤丸立夏と言います。 セイバー、あなたの名前は?」

 

「ふん」

 

 差し出された右手を男は跳ね除ける。

 

「誰が男と握手なんぞするか!」

 

「あたた……」

 

「先輩、大丈夫ですか!?」

 

 跳ね除けられた右手を左手で軽く摩っていると、二人の話し合いを離れたところから見ていたマシュが駆け寄ってきた。

 その顔は心配そうである。

 

「ありがとうマシュ、今名前を聞くついでに握手を求めたんだけど……」

 

「今手当しますね、先輩」

 

「俺様は男とは仲良くはせんのだ、だが……ほほ~ぅ?」

 

 マシュが近寄ってきた途端、男の顔がにやけ始めた。

 舐めるように上から下、下から上へ視線を動かす。

 

「…………? 何でしょう、セイバーさん」

 

「ちょっと目の保……いや、何でもないぞ」

 

「いやらしい視線で眺めてたのが丸わかりね、ほんと低俗なセイバーね」

 

 そして、少し遅れてオルガマリーが合流した。

 セイバーからはやはり離れた距離を保ちながら、軽蔑した表情を彼へ向ける。

 

「ん~、何の事かな? 俺様は今後守るか弱い女性をちゃんと頭に入れておこうと思って見ていただけだ」

 

「あ、それじゃあ交渉は上手くいったんですね先輩」

 

「うん、セイバーにはこの特異点に居る間君たちを守ってもらえる様にお願いしたんだ」

 

「本当に役に立つのかしらね……そうだ藤丸、マスターであるあなたならこのサーヴァントのステータスや真名が見える筈よ。 試してみなさい」

 

 オルガマリーの言葉に、以前軽くレクチャーされた事を思い出し立夏は何とかそれを試してみることにした。

 両目に力を入れ、男をじっと見つめる。

 するとぼんやりと文字の様な物が立夏には見え始めた。

 

「真名……ラ……ンス……」

 

「ランス……? 所長、もしかして──」

 

「嘘……もしかしてこの男、円卓最強の騎士、ランスロット!?」

 

 

 うすぼんやりと見える名前の様な物を読み解いていると、マシュとオルガマリーはほぼ同時に声を上げた。

 ランスロット。

 円卓の騎士の一人で最高の騎士と謳われた英雄である。

 

「えーと……そんなに凄い人なの?」

 

「知らないんですか先輩?」

 

「全く、何を勉強してきたのかしら。 だから素人は嫌なのよ……良い? ランスロットと言えばアーサー王伝説に終止符を打った不義の騎士にして、最強の騎士なのよ」

 

「へー……それがこの人なんですか?」

 

 二人の説明を聞いて、立夏は改めて眼前に立つ男へ視線を向けた。

 茶色がかった髪の色、両方の鍔が蝙蝠の翼の様に広がり一対の目が付いた黒い剣を持つ男。

 その男は今、後ろで驚きの視線を向けられることに不思議そうな顔をしていた。

 

「ん? 何だ、俺様未来でもそんなに有名なのか?」

 

「有名も何も……ランスロットを知らない人は殆ど居ないと言っても過言ではないと思います」

 

「ガハハハハハ! 成程! 俺様は大英雄だからな、それも当然だな!」

 

「こんな低俗そうな男が円卓最強の騎士……いえ、不義の騎士だからこそ私は襲われた……? そう考えれば確かに辻褄があうような……それに戦力としては申し分ない……」 

 

 何となく納得できない様子のオルガマリーだったが、アーサー王からギネヴィアを寝取ったランスロットだからこそ女性に目が無いという理論を脳内で構築し先ほどの行為の辻褄を合わせていく。

 そして一頻り考えを巡らせると頷き、男を見た。

 

「分かりました、あなたの先ほどの行為は不問としますランスロット」

 

「む?」

 

「円卓最強の騎士としての腕の見せ所です、名に恥じぬ活躍を期待します」

 

「おう、俺様に任せておけ! ガハハハハハハハハ!」

 

 ランスロットと呼ばれた男の高笑いは、この後暫く続いた。

 その高笑いに掻き消されては居たが、彼が持つ剣がぼそりと呟いた。

 

「あーあ、本当はランスなんだけどなぁ……後でばれても儂しーらね」

 

 ランス。

 此処とは違う別の世界から来た大英雄は……名前が似通っていたというそれだけの理由でランスロットとして地球に降り立つことになるのだった。

 

 

 

 

 




手早く投稿すると言ったな……あれは嘘だ
ウワアアアアアアアアア!

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