世界を救わない物語   作:west4610

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グッバイカオス

「ランスアタターーーーック!!」

 

 凄まじい衝撃波と共に、武器を持ったスケルトン達が薙ぎ払われていく。

 

「ガハハハハハ、雑魚では俺様の相手にはならんわー!」

 

「……最初にあの男を見た時はどうなるかと思ったけど、流石は最強の騎士ランスロット、スペックでは圧勝ね」

 

 オルガマリーは生唾を飲み込みながら、ランスの活躍を眺めていた。

 ランスがランスロットと勘違いをされてから暫く、彼らはこの冬木の街を探索していた。

 だが何処からか沸いてくる敵性生物が立ちはだかり、その度に彼らは戦闘を強いられている。

 

「……ふぅ。 戦闘終了です、マスター。 今回も何とかなって、安心です」

 

 立夏を守っていたマシュが盾を下ろし、額の汗を拭う。

 

「ありがとう、マシュ」

 

「……はい。 お役に立てて幸いです」

 

 素直なお礼を言われた為か、マシュは少し頬を染めながら照れ臭そうに返した。

 

「むむ……マシュちゃんと良い雰囲気になりおってあのガキめ……」

 

「心の友ー、流石にそれは心狭すぎじゃない?」

 

「うっさいエロ剣!」

 

 そんな初々しい二人を遠巻きに見てランスはカオスを二度地面に叩きつけると、不機嫌そうに立夏へ近づいていく。

 

「あ、ランスロットも戦闘お疲──」

 

 近づいてきたランスに、立夏は軽く手を上げると──。

 ポカッ、と軽い音が響いた。

 

「いたたた……」

 

「せ、先輩!?」

 

「ガキンチョが俺様の名前を呼び捨てにするなんぞ百万年早い、様を付けろ様を」

 

 ランスに突然頭部を殴打され、立夏は頭を抑える。

 マシュが立夏とランスの間に割って入り、立夏を心配する。

 そんな立夏を見てオルガマリーはため息を一つ吐くと、彼へ忠告した。

 

「はぁ……今のは藤丸、あなたが悪いわ。 サーヴァントは使い魔と言っても人格は過去の英雄と同じ、強力な英霊はそれだけ人格にも難があるのよ」

 

「成程……すみません、ランスロット様」

 

「うむ、次は無いぞガキンチョ。 では俺様は戦って疲れたので冷たいお茶を入れるのだ」

 

 頭を下げる立夏に気を良くしたのか、先ほどの怒りは何処かへ消えランスは地面に腰を下ろすと立夏へ右腕を突き出しお茶を要求した。

 

「えっ、すみません、ランスロットさん……今はそういった物資は」

 

「なんだとー! ぐむむ……では仕方ない、オルガマリーちゃんのおっぱいを堪能──」

 

「ガンド」

 

「おぇぇえええええ!!」

 

「(懲りないなー心の友)」

 

─────────────────────────────────────

 

「全く懲りない使い魔ね、逸話通りの男という事なのかしら……」

 

「ははは……」

 

 地面に倒れているランスを軽蔑的な表情で一瞥すると、オルガマリーは両腕を組みながらマシュへ向き直った。

 

「ところでマシュ。 あなた、もしかして宝具が使えないの?」

 

「……そのようです。 私は私に融合してくれた英霊が誰なのかもわかりませんし、その英霊が持つ切り札も発揮できません」

 

「宝具?」

 

 真面目な顔で話し合う二人の会話に、立夏は首を傾げる。

 

「先輩、説明が後になってしまって申し訳ありません。 サーヴァントには宝具という英雄たちそれぞれの伝承、偉業に因んだ格好良かったり微妙だったりする特殊技能が備わっています」

 

 ですが……とマシュは言葉を濁し、顔を俯ける。

 

「私はその宝具を上手く扱えません。 ですので、私の事は欠陥サーヴァント、あるいは成長性と可能性に満ちた出来る後輩、とご期待ください」

 

「なるほど……じゃあマシュの今後に期待だね」

 

「えぇ、あなたがマスターとして成長すればおのずとマシュと融合した英霊が何なのかやパラメーター、スキル、情報が解析できるはずよ」

 

 うんうんと首を縦に振り、頷く立夏がふと奥で倒れているランスへと目を向けた。

 

「それじゃあさっきランスロットの情報が見えなかったけど今なら……?」

 

「そうね、練習してみるのもいいかもしれません。 ランスロットの宝具と言えば十中八九あれでしょうが」

 

「そうですね、武器として有名なやはりあれかと思います」

 

 オルガマリーとマシュは倒れるランスが握っている剣へと視線を向けた。

 その視線に気づいたカオスが目を真上へと向ける。

 

「え? 儂?」

 

「「え?」」

 

 突然聞こえた声に、二人は顔を見合わせる。

 

「マシュ、あなた今何か言った?」

 

「いえ……声はあの剣から聞こえてきたと思いますが──」

 

「あっ、やべ、儂喋っちゃだめなんだった」

 

 思わず喋ってしまったカオスが、やってしまったという顔をする。

 

「す…………凄いわ! あのランスロットが持つ絶対に折れない剣、アロンダイトが実はインテリジェンスソードだったなんて!」

 

「逸話では単に刃毀れしにくい剣というだけの筈でしたが……伝説はやはり伝説、ということなのでしょうか」

 

「え、え? アロン……? あ、あーーー! そうそう、儂儂! 儂アロンダイト! 伝説の剣!」

 

 一瞬とぼけた表情をしたカオスだったが、直ぐに何かと勘違いされていることに気づくと即座に自らの素性を偽り始める。

 話す剣、という伝説の中でも滅多に表れない存在に魔術師としてオルガマリーは強く興味を惹かれたのか、いつの間にか倒れるランスの横に近寄るとカオスをまじまじと観察し始めた。

 

「本当に喋ってる……凄いわ、このアロンダイトを学会に提出すればそれだけで時計塔での地位が更に盤石になる!」

 

「おほほー、どう? 儂凄い? 凄い?」

 

「えぇ、凄いわ! あなたの価値は間違いなく素晴らしいものよ!」

 

「ノンノン、ところが儂様の価値のほんの一端。 儂の絶技を食らった女の子はまず間違いなく昇天、どんな不感症の子も満足させますよ?」

 

「満足……?」

 

 オルガマリーが、疑問を浮かべる。

 

「あ、通じない? 意味わからない? おう、じゃあ、いいや」

 

「??」

 

「お嬢ちゃんランス……もとい心の友に貞操狙われてたな?」

 

「そ、そうだけど……」

 

「儂ともやろ──」

 

 最後の言葉を言い切る前に、いつの間にかランスが自らを見下ろしていることにカオスは気づいた。

 

「……………………」

 

「あ、心の友」

 

「とーーーーうっ!」

 

 <ぴゅーーーん> 

 

「あーれー」

 

 哀れにも、カオスはランスに投げられ冬木の星になった。

 

「い、いけませーーーーーーん!!!」

 

 放り投げられたアロンダイト(カオス)を見て、マシュは全速力でその方向へ走り……。

 戻ってきたときには、息も絶え絶えの状態だった。

 

「じ、自分の武器を投げ捨てるなんて……ランスロットさん、正気ですか!?」

 

「そうそう、人間が魔人に対抗できる唯一のめっちゃ大事な武器ですよ儂?」

 

「ふん、そんな事知るか」

 

「……魔人?」

 

 そんなカオスとランスの会話の中で、魔人という単語が引っかかったマシュが思わず呟くとランスとカオスは一瞬目を合わせる。

 

「あー……あれじゃよ、伝説に載ってないんだけど儂らそういうやばいのと戦ってたの」

 

「うむ、俺様がこのエロ剣を使って迫りくる敵をバッタバッタと切り捨ててだな」

 

「もしかしてピクト人の事かしら……」

 

「あー何かそんな感じだった気がするな! うむ! というかこんな話はどうでもいいわ!」

 

 嘘を勢いで誤魔化すと、ランスはカオスをマシュの手から奪い去る。

 

「もう休憩も良いだろう、そろそろまた調査に行くぞお前等」

 

「……そうですね、この港湾区の辺りは調べ終わりましたし別の地区へ行ってみましょう所長」

 

「使い魔に仕切られているのが癪だけどその通りね、行きましょう」

 

 三人の間でそう話が纏まる中、ずっとランスを見続けていた立夏が首を傾げた。

 

「マ、イ、グロ、リ……………………?」

 

「せんぱーい! 行きましょう!」

 

「あ、うん! 今行くよマシュ!」

 

 途中まで解読できた宝具の名前は、そこで中断された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




サーヴァント プロフィール

【クラス】セイバー
【真名】???
【筋力】C
【耐久】C
【敏捷】C
【魔力】D
【幸運】B
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