「何処まで行っても焼け野原……住人の痕跡もないし、一体何があったのかしら……」
燃え盛る冬木の街の中で、ランス一行は教会近くまで歩を進めていた。
ランスは所々で見る元の世界には無かった物品を調べ遊んでいたが、その中でオルガマリーは独り言を呟きながら歩いていた。
「ガハハ、びろーんびろーん」
「そもそもカルデア巣を灰色にする異変って何なのよ……未来が見えなくなるって事人類がは消えるということ……」
そんなオルガマリーを立夏は大丈夫だろうか、と心配そうに見ていたがその心配は直ぐに消えた。
立夏の前に青いウィンドウが浮かび上がると、一人の男性が見えた。
「おや、所長の独り言が始まったね。 そうなると彼女は長いよ」
「あ、ドクター」
「立夏君、この辺りは安全そうだし少し休んだらどうだい?」
ウィンドウに映ったロマニは笑みを作ると、立夏へそう提案した。
「小規模とは言え戦闘続きで君も疲れただろうし、休める時には休んだ方が良い」
「私もドクターに賛成です。 先輩、レーション食べますか?」
一瞬躊躇した立夏に、マシュがロマニに同調する。
マシュも服の一部に汚れ等が付いており、立夏はそれを見て休息を取ることを決める。
「……そうだね、ありがとう。 マシュは疲れてない?」
「体、疲れ……もしかして、サーヴァントになって問題は無いのか、という質問ですか?」
レーションを受け取ると、立夏は近場の瓦礫に腰を下ろし彼女へ労りの言葉を掛けた。
するとマシュは意外そうな顔をし、照れ臭そうに少し小声で答える。
「……それは、なんとか。 戦うのが怖いぐらいで、体は万全です」
「というか、自分がマスターでいいの?」
立夏はマシュの答えに、英霊と融合したとはいえ彼女は先ほどまで普通の女の子だったのだと改めて認識し、罰の悪そうな顔をした。
「勿論です 私に不満はありません、先輩はこの春NO.1のベストマスターではないかと」
だがマシュはそんな立夏を励ますように、当然ですと言う言葉を返した。
その言葉に立夏も笑みを返し──続いて頭部に鈍い痛みと軽快な音が鳴った。
「いーや、俺様は不満だ」
立夏の後ろで、玩具のマジックハンドを伸ばしたランスが立っていた。
その顔は不服そうである。
「ら、ランスロット……様」
「さっきから街を探索してるけど何にも無いではないか、可愛い女の子も出てこないし俺様飽きた」
「飽きたって言われても……」
「うむ、だから俺様は帰る」
ランスはマジックハンドで何度も立夏の頭を叩きながら燃える街並みを指差す。
そして玩具を投げ捨てると、立夏へ背を向け歩き出す。
「え?」
「ま、待ってくださいランスロットさん! 今あなたに行かれたら……!」
ランスの発言に驚愕し、固まるロマニと立夏の代わりにマシュが言葉を紡いだ。
「知らん、オルガマリーちゃんもマシュちゃんも別にやらしてくれんしなー、そもそも良く考えたら俺様が守ってやる理由もないし」
「やらせて…………? それは一体──」
「すまんなーお嬢ちゃん、目の前でカップルにいちゃつかれるとすぐ不機嫌になるんだ心の友。 運が悪かったと思って諦めてくれ」
ランスの発言に怪訝な顔をするマシュだったが、その間にも距離はどんどん離れていく。
去り際、
考え事に没頭するオルガマリー以外の誰もが、呆然としていた。
「待って!」
そんな折、ロマニが叫んだ。
「人間の生体反応だ、それも近くにある!」
ランスの足が止まった。
「……其処には可愛い女の子も居るのか?」
「いや、流石に性別まではちょっと……」
「じゃあ知らん、帰る」
「あー待った! 居る! 居るよ! 絶世の美女も居る!」
ニヤりと口角を上げると、ランスは急反転しロマニの映るウィンドウの前まで来る。
「ガハハ! 未来の美女が俺様の助けを待っている! そして助けた後は……グフフ……」
「えー……」
先ほどまで漂っていた雰囲気は何処へやら、ランスは既にまだ見ぬ美女を助ける気満々でありロマニへ場所を聞き出していく。
そんなランスの代わり様に立夏は呆気に取られる。
「円卓崩壊の切欠、何となく分かった気がします……」
マシュもまた、ランスへ呆れ始めるのだった。
「よーし、美女を助けに行くぞ! 俺様に続けー!」
「「お、おー……」」
一足先に走り出したランスへ、マシュと立夏の二人は右手を弱々しく上げながら付いていく。
「……やっぱり駄目ね、これ以上考えても──ってあれ? ちょ、ちょっとあなた達何処行くの!? 私を置いていくのは止めなさいよ、ちょっと!?」
その後、一人残されたオルガマリーが走っていく三人へ追いつくのにはかなりの時間がかかった。
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「ガハハ、エロイパンティー履いてる! グーーッド!」
「…………」
冬木市街、教会近くの開けた場所でランスが無抵抗の女性のスカートの中を覗き込みながら笑っていた。
その光景を見る立夏、マシュ、オルガマリーの瞳は冷たい。
現代文明に生きる人間なら恐らく誰しもがそう思う光景だろう。
特に……それが石像と化した女性ならばだ。
「オルガマリー所長……これは一体なんでしょうか」
「わ、私が分かる訳ないでしょう!? いきなり何処かへ走り出したかと思ったらこんな如何にも危険そうな場所へ来るなんて……!」
マシュの問いかけに、慌てた様子でオルガマリーが返した。
彼女からは余裕が見えず、今にも此処を離れたいと言う気持ちが顔に表れていた。
だが戦力として肝心要のランスは、石像へのセクハラと此処に居るであろう美女を探すのに頭が一杯で離れられずに居た。
「びーじょー、びーじょー、まだ見ぬびーじょー、俺様のハイパー兵器がまーってるぞー」
「なぁなぁ心の友、儂この光景見た事あるんだが」
「む、何だエロ剣、俺様は今この辺りで恐怖に怯えながら俺様の到着を待っている美女を探すのに忙しいのだ」
「でもなー、前にこんな感じの雰囲気で石にされなかった?」
「むっ…………」
一瞬、ランスの記憶に引っかかるものがあった。
ランスの居た世界で魔法大国と呼ばれたゼス、その場所で起きた事件。
今彼らが居る場所はそれを思い起こさせていた。
「む、何かの気配……」
「美女か!? 何処だ!?」
カオスの視線が動いた。
その先に全身をフードで覆った女性と思わしき人間が噴水の上に立っていた。
フードの中で紅い瞳が煌めき、フードの外に紫色の長髪が見える。
「おぉ! 君、俺様が来たからにはもう──」
ランスが台詞を言い切る前に、女性はふわりと飛び上がると彼の少し前に着地した。
そしてゆっくりとランスへと近づいていく。
「お、おぉ……? 何だそんなに俺様に会いたかったのか? うむ、では今すぐ……」
「えぇ、今すぐ始めましょう!」
ランスが鎧へ手を掛けようとした瞬間、ランスの前髪が散った。
「な、なにぃーーっ!?」
驚きの絶叫が冬木の街へ響く中ランスとフードの女性を遠巻きに見ていた三人へ、ロマニからの緊急連絡が奔った。
「すぐに其処から逃げるんだ、三人とも! まだ反応が残っている! しかもこれは────」
三人の中で、一番最初にあの女性が何者なのかを理解したのはオルガマリーだった。
「な────まさか、あれって!?」
「そこにいるのはサーヴァントだ! 戦うな立夏君、マシュ! 君たちにサーヴァント戦はまだ早い……! ランスロットを下がらせるんだ!!」
「そんなこと言っても、逃げられないわよ! 立夏、ランスロットを戦わせなさい! マシュも同じサーヴァントでしょう、ランスロットの援護!」
「はい、最善を尽くします…………!」
そんな一瞬のやり取りの間に、ランスは女性の持つ槍の攻撃に追い詰められていた。
「ぐおお! な、なんなんじゃお前はー!」
「言動には気を付けなさい?
「俺様がやりたいのはセックスの方じゃー!」
鎌が先端に付いた槍の切り払いを大仰な跳躍で避けながら、ランスはカオスを振るう。
だが女性は身を即座に引くと、槍を回転させランスの胴体へ向け振るった。
「ちぃっ!」
槍の石突き部分が迫る中、ランスは空中で体勢を変えると足の裏でそれを受け止め、その衝撃で大きく距離を取った。
「心の友、こいつ強いぞ!」
一度、地面で転がると直ぐにランスは立ち上がりカオスを構える。
「ガハハ、俺様はまけーん! それに見ろ、あの子の顔!」
ランスは笑い、女性の顔を指差した。
今のやり取りでフードが捲れ、顔が露出したのだ。
「お、結構なかわいこちゃん」
整った相貌、赤い瞳に紫色の長髪……それは紛れもなく美人と評されるに相応しいものだった。
「うむ、終わったらお仕置きセーックス!」
下卑た笑みを浮かべるランスの元に、マシュと立夏が駆け寄る。
「マシュ・キリエライト、これより援護します!」
「ランスロット、大丈夫!?」
立夏の頭に、ランスの拳が落ちた。
「様を付けろと言ってるだろーが! それに俺様は無敵だ、誰にも負けん」
「ふふ……」
「む、笑った」
そんな立夏とのやり取りに、女は笑った。
「獲物を増やしていただいてありがとう、初々しい子に歴戦の強者……あなた達がこれから上げる悲鳴を思うとつい笑みが零れます」
「むぅ、変な子……だが顔が良いので許す!」
ランスは一瞬困惑した表情をするが、直ぐに表情を戻すとカオスを前へ突き出した。
「行くぞお前等、俺様に付いてこい!」
そして、ランスはサーヴァントへ向けて走り出した。
この後……ランスは悲鳴を上げて石となった。
「ぎゃーー! またかーーー!」
「あ、さっきから感じてた変な気配って魔人メディウサのか。 久しぶりすぎて儂忘れてた」
「この、役立たずの駄剣がーーーー!」
ランスの叫び声が、冬木の街に響き渡った。
【クラススキル】冒険B:自身が到達したことのない未知の場所、あるいは土地勘の無い場所における地の利を得られる。
戦闘開始時、先制判定で有利になり、被ダメージ時には自身へのダメージを1d3点軽減し、攻撃時には+1d3点ダメージが増える
また、一か所に長時間留まっておくことが出来ない、Bであれば最大でも一か月も居たらすぐに何処かに消えてしまう。
安定ではなく、変化を求める性格がスキルとなったもの。
尚、サーヴァント自身がその場所に楽しみを見出している場合はその限りではない。