冬木。
何かが決定的に捻じれ、歪んだこの都市の郊外にある森にカツンカツンと言う骨が地面を叩く音が無数に響いた。
それはスケルトン達の足音であり、その先にはフードを被ったキャスターと盾のサーヴァントが走っていた。
彼らの更に前方には立夏とオルガマリーの姿もある
「ガハハハハ! 行け雑魚ども、あのキャスターを殺せー!」
「GURUAAAAAAAAAA!!!」
スケルトン達に担がれながら、ランスはカオスで目の前を走っているキャスターを指し示した。
ランスの采配に応えるようにスケルトン達は発声器官が存在しない喉で賢明に声を上げる。
「ハハッ、面白い事するじゃねえかセイバー!」
「面白くないわよ! あいつ本当に何なの!? ど、どうして敵と徒党組んでる訳!?」
「それが……いきなり訓練中に遭遇した敵を説得したみたいで……」
「なんなのよそれはーー!」
オルガマリーが必死に走りながら、スケルトンを扇動するランスを糾弾する。
「ら、ランスロット様ー! やめてーーー!」
「ガハハハ、この程度を切り抜けられないようでは今後は生き延びられーーん! 気合で切り抜けるのだー!」
「あんた絶対楽しんでるでしょー!」
だが、ランスは高笑いをしながら自らを担ぎ上げるスケルトンの頭部を前足で押し、更に追撃の速度を上げさせるのみである。
「うーむ……ミラクルの奴、こんな感じで動いてたのか……少し楽しいかも」
ランスは更に左足でスケルトンの頭を押すと、周囲のスケルトン達が一斉に弓矢を構えた。
「おっ、左の骨は弓を構えるのか。 じゃあこっちは──」
右手で真横のスケルトンの頭を叩くと、スケルトン達は矢を番え立夏達へ放たれる。
放たれた内、数本をキャスターとマシュが叩き落し、残りは樹木に遮られる。
「くっ……先輩、ランスロットさんは本気です! 迎撃しましょう!」
「って言っても……!」
四人はスケルトンに追われる内、完全に森の中へと迷い込んでおり此処が何処なのかも分からない状態だった。
足場は悪く、50メートルは離れた後方にはランスと彼が指揮するスケルトン達。
状況は芳しくなかった。
「迎撃案は賛成だお嬢ちゃん、マスター、もう少し踏ん張りな! そうすりゃ開けた場所に出る」
そんな中、キャスターが口を開いた。
「分かった! オルガマリー所長、行けますか?」
「い、行くしかないんでしょう!?」
木の根や泥に足を取られながらも、オルガマリーは懸命に走りながら答えると四人は更に速度を上げた。
後方から飛んでくるスケルトン達の攻撃を二度ほど掻い潜ると、木々が途切れる場所が見えた。
立夏達は木々を通り抜け、岩肌で覆われた洞窟の前へと躍り出た。
「こ、此処は……?」
「マスター、呆けてる場合じゃねえぞ! 魔力を回せ!」
「う、うん! 頼む、キャスター!」
天然に出来た洞窟にしてはかなり大きく、日本では滅多に見られないものに一瞬立夏が好奇心を走らせる。
だがキャスターは直ぐに立夏を現実へと引き戻す。
立夏は直ぐに右手を伸ばすと、か細いパスで魔力をキャスターとマシュへ送る。
「マシュもお願い!」
「はい、所長と先輩は隠れていてください!」
広場へ出ると、マシュはキャスターと立夏達の前で大きな盾を構える。
その後ろにはキャスターがルーン文字を浮かべ、迎撃の準備を整えていた。
「ガハハハハ、そろそろ追いかけっこも終わりだー!」
先ほど立夏達が出てきた場所から、ランスの声が響く。
それと同時、数本の矢が森から飛び出してくる。
「やぁぁっ!」
矢は無造作に放たれ、マシュはキャスターと立夏達へ当たりそうなものだけを叩き落す。
「お願いします、キャスターさん!」
「アンサズ!」
矢を防ぐと、マシュは即座にキャスターと位置を入れ替える。
キャスターは木々の奥に隠れ、次の矢を番えようとしていたスケルトン達へ向けてルーンの炎を連続で放つ。
それらは吸い込まれるように森の中へ飛んでいくと、着弾し一帯は炎に包まれた。
「っ……や、やりました! やりましたよキャスターさん!」
ルーン魔術の威力に思わず盾に身を隠したマシュが、顔を出し着弾点付近を視認する。
着弾点付近は一気に燃え、スケルトン達は一気に全滅していた。
だが…… 着弾点にはランスは居なかった。
「いや、セイバーが居ねぇ。 何処に──」
「ウオオオオオオ!」
ランスを探していたキャスターの右から、剣を持った黒い影が一体ずつ現れる。
「そこか!」
キャスターは影にすかさず反応し、残していたルーン魔術を行使すると魔術は標的へと直撃し、それは炎に包まれた。
「ラ────」
今目の前で燃えている存在に対する違和感にキャスターは即座に気づいた。
持っている武器や骨格が違う事に
そして何よりマシュ、オルガマリー、立夏やそこ等に無作為にある岩場は目の前で燃える炎で照らされているのに対し……自らだけは影で覆われていたのだ。
「キャスターさん!」
「ーーーーンスアタタターーーーーーーック!!!」
キャスターを覆っている影の正体は、ランスだった。
彼は空中でカオスを構えながらゆっくりと落下し、それをキャスターへと振り下ろしながら地面へ落下していく。
「キャスターさん!」
だがそのままキャスターへカオスが叩きつけられることは無かった。
マシュが其処へ割って入ると、盾でカオスを防ぐ。
「うぐ……! やぁぁぁっ!!」
気合の籠ったランスの一撃は重く、マシュの両足が足元の岩盤に少しめり込むが彼女はランスを半ば無理やり盾で弾き飛ばす。
「ガハハハ、甘いわー!」
しかし、無理な体勢で押し返したマシュにランスは着地すると即座に駆け寄り盾に大振りな一撃を見舞い盾ごと彼女を地面へ打ち倒す。
「あぁっ……!」
「次は────」
ランスはマシュが倒れていく最中も、キャスターへと突進を続けていた。
ゆっくりと倒れていくマシュの横をすり抜け、標的の顔が見えた瞬間。
ランスの眼前にはルーン文字が無数に浮かび上がっていた。
「あんたが燃える番だ!」
ルーン文字はキャスターの正面に横並びになっており、彼が手をかざすと一斉に炎と化しランスへ向けて放たれた。
「やばいぞ心の友! 避けろ!」
咄嗟にカオスが叫ぶ。
だが、ランスは口角を吊り上げ自らの牙のような歯を見せながら炎の中へ突っ込んだ。
瞬間、炎が彼を包んだ。
「死ねぇーーーーーーーっ!!」
しかしランスは止まらなかった。
炎に包まれながら前進を続け、カオスでキャスターを大きく袈裟切りにした。
「おいおい、ケルトの戦士……みてぇな戦い方しやがるな。 イギリスの騎士……」
キャスターは切られた後、数瞬を置いて膝から崩れ落ちながらそう呟くとゆっくりと前のめりに倒れる。
「ガハハハハハ! 俺様のしょーり! って熱いわー! ガキンチョ、水、水ーー!」
ランスは燃えながら高らかに笑い、地面を転げまわる。
一方の立夏とオルガマリーはキャスターが倒れた事に絶句し、動けずに居た。
「マシュ! キャスター!」
最初に動いたのは立夏だった。
彼は倒れるマシュへ手を貸すと彼女を抱き起す。
「心の友心配されないのウケるー」
「あぢぢぢぢ! 誰でもいいからさっさと消さんかー!」
「あいよ、それじゃあご要望にお応えしますかね」
相変わらず地面を転げまわっていたランスを包んでいた炎は、突如として消えた。
「あちちち……っておっ、消えた?」
「消火のルーンって奴だな、そんでこの勝負……」
地面に倒れ、肩から息を吐くランスの頭部に硬い杖が押し付けられる。
「俺の勝ちだな、セイバー」
「げぇっ!? な、何で生きてやがる貴様!」
「森の賢者を舐めんじゃねぇ、近寄られた時の対処法位考えてあるんだよ」
キャスターは地面を杖で一度小突くと、先ほど切られたキャスターの死体が樹木へと変わる。
「というかそもそもさっき令呪で俺を殺すなって命令与えられてたんだから少しは疑えよ」
「むぐぐ……お、おのれーー! 」
「ははは、ランサークラスの時と違ってこっちは小細工が豊富でな。 恨むなよセイバー」
キャスターはそう言って笑い、ランスの頭部から杖を退かした。
そして立夏に手当をされているマシュへと近寄っていく。
「(しかし土壇場で敵と手を組んだ上に奇襲戦法、おまけにキャスタークラスへの対処方法や正念場での肝の太さ……こいつは確かに英雄の器だ)」
その最中、キャスターの脳裏には先ほどのランスとの闘いの評価が行われていた。
勝負は水物であり、今回はキャスターの手がばれていなかったからこその勝利である。
これがもし全てのネタが割れていたら……そう思うと、キャスターはつくづく今回の自分がこのクラスで呼ばれた事を苦々しく思うのだった。
【プロフィール1】
身長/体重:173cm・65kg
出典:???
地域:???
属性:混沌・悪 性別:男
治世の暴漢、乱世の奸雄
世界を救う事と世界を破滅させる事がどちらも可能な劇薬の様な人物。
英雄とは色を好むものである。