「本日、朝、大阪府の難波にて、謎の集団が現れてから半日が経ちました。 この危険な集団は────」
「どうしよう健太郎君…………私たち、国家反逆罪になって────」
夢を見ていた。
自分の──藤丸立夏のものではない夢を。
2015年ではない日本で、セイバーと見知らぬ誰か達が話している。
「どうだスチールホラーの恐ろしさ────」」
スチールホラー?
「ミサイルだーー!」
「全員、余の後ろに──」
黒髪の女性が杖を翳すと、飛んできたミサイルを不可視のバリアが遮った。
…………興味深い。
「────何?」
僕は今、何と言った?
「────登録を」
登録?
頭の中に、自分の物ではない声が響く。
いや、これは声なのだろうか。
声というよりは、意思の様な物なのだろうか。
そんなものが頭に響く。
「──────登録を────」
その声を境に、意識が遠ざかっていく。
何もない空間から、セイバーを眺めていた光。
その光から僕は離れていく。
「──────座への登録を──────」
そして、僕は目覚めた。
─────────────────────────────────────
「
刀身に纏われた魔力が放たれる。
目に見える形で迫る『死』を、私は自らの盾で防ぐ。
「ぐっ…………ウウウゥゥゥゥゥ!!」
しかし力が及ばない。
盾が浮かび上がっていく。
押し寄せる魔力の奔流が、盾ごと私を持ち上げこの世から何処か別の場所へ吹き飛ばしてしまいそうになる。
「おっほー! キタキタキター!」
声が、聞こえた。
これはアロンダイトさんの声だ。
いや、彼は違うのだったろうか。
どちらにせよ、もうそれについて思案する力もない。
「(もう────耐えられない、先輩、すみません…………!)」
まず最初に盾が浮かび上がった。
次に手が。
そうして、体が浮かび上が─────
「バリアーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
─────らなかった。
盾を持ち上げていた魔力の波は遮られ、勢いよく元の位置へ落下した。
それと同時に、私も大地に膝を突く。
「え──────?」
視線の先に、誰かが立っていた。
押し迫る死そのものとも言える魔力を、青い髪をした人物が全て防いでいたのだ。
「キャスター、さん…………!?」
私は最初、そう思った。
先ほど大空洞に入る前に、アーチャーと戦闘に入ったキャスターさんが助けに来てくれたのだと。
だがそれは違った。
この人物はキャスターさんと似ているが、明確に違う部分が二つあった。
一つは髪がポニーテールであること、そしてもう一つは…………その身に蓄えられている魔力量が膨大であることだ。
「いいえ、違います! ぺちゃぱい千鶴子様の1の子分、アニスですよ! お間違いなく!!」
「アニス……さん…………?」
「よくわからないけどチャンスよマシュ! 体勢を立て直して!」
呆気に取られていた私に、所長が指示を送る。
全身に力を込め、もう一度大地を踏みしめる。
大丈夫…………大丈夫!
「先輩が後ろで見守ってくれているのなら、私はまだ戦えます……!」
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立夏が意識を取り戻した時、まず初めに見えたのは宝具を防ぐ見知らぬ女性──アニスだった。
次にマシュ、オルガマリーが。
そして最後に、ランスが。
だが立夏にはランスの隣に、先ほどまで存在しなかったあるものを発見した。
「それが、セイバーの宝具……?」
空中に無数に穴が開いていた。
その穴の先は、一面の白を映していた。
「とーーーー!」
だが質問の答えをランスが返す前に、宝具を防いでいたアニスはそのまま威力のベクトルを変え真横へ跳ね返した。
凄まじい揺れと轟音が大空洞に響く。
「し、信じられない……あのアーサー王の宝具を逸らすなんて! それに目の前の炉心並みの魔力……一体何なの彼女?!」
立夏の隣にウィンドウが浮かび、ロマニはアニスがやった離れ業に驚嘆する。
「それにその穴の先から凄い質量の魂が検出されてる! 何だこれ──神霊か、もしくは本当の神様でも居るのか!?」
「ガハハハ、これが俺様のスーパーパワーだ! この穴から俺様の手下どもを呼び出せるのだ!」
「えぇ……」
「ランス様ー! 助けに来ましただー!」
「お前はいらん」
ランスの言葉に半信半疑な表情を浮かべるロマニだったが、直ぐにその意見を翻す事になった。
空中の穴から白くて丸い何かが放出されると、それは変形を始め最後には人間へと変わった。
だがランスは近寄ってきた男を無造作に蹴り飛ばすのだった。
「あれ?」
白い塊が斧を持った兵士へ変わる瞬間、立夏は聖剣の輝きが更に増すのを見た。
まるで、この世界に侵入してきた異物を排除する役目を誇示するかの様に。
「凄い──本当に呼び出せるのか……」
「ほう、初撃を防いだか侵略者」
ロマニの驚きの声が響く中、周囲に漂った土煙が晴れた先では聖剣を構えたセイバーが立っていた。
「やはり生かしてはおけぬ様だな、その宝具を見れば分かる」
セイバーの語気が強くなる、と同時に剣もまた赤黒い光を増幅させた。
「それは星を危機に招くもの──いや、危機そのものと言っても良い」
「危機……? 一体、何を言って──」
忌まわしそうにランスを見るセイバーは口を開き、そう吐き捨てた。
事情が飲み込めない立夏は疑問を口にしたところで、ランスにそれを遮られた。
「ふん、俺様だってこんな奴に頼りたくは無い。 恨むんなら呼び出させたそこのガキンチョに言うんだな」
困惑する立夏に、セイバーの顔は更に額の皺を深めた。
「愚かしい男だ、自分が何を呼び出し、何を使わせたのか理解していないとは」
「え────?」
「いや、これ以上は言うまい、そいつがこちらへ出てくる前にお前たちを消し去るだけだ」
そいつ、という単語が穴の向こう側の何かを指し示している事は明白だった。
だが少なくとも、今はそれを考えているような場合ではないと立夏は己に言い聞かせる。
「ガハハハ、俺は死なーん! 逆に返り討ちにして捕まえてからお仕置きしてくれるわ! 行けアニース!」
「よーし行きま──ってぴぃっ!? 緑の人です!!」
ランスは豪快に笑うと、セイバーを指差しながらアニスへ指示を飛ばした。
後方に居るランスから指示を受け、返事の為に振り返ったアニスの顔がランスを見た瞬間強張った。
過去の記憶を思い出しているのか、数秒の硬直の後彼女は大空洞の天井付近まで魔法で飛び上がった。
「緑の人…………痛い痛い痛い怖い怖い怖い!!」
そしてアニスはランス達へ杖を向けた。
「ちょ、ちょっと……こっちに向けて魔力が集まってるんだけど……!」
「集中している魔力は先ほどの敵セイバーの宝具と同じかそれ以上です!」
「ちょっとセイバー、あんたが呼び出したんでしょ! あなたの宝具なんだから何とかしなさいよ!」
「こらーアニース! 俺様の言う事を聞けー!」
「ひえええっ、緑の人は嫌いです怖いです! ゼ、ゼットーーン! 火炎流石弾絶対零度メタル・ライン雷神雷光白色黒色破壊光線ーー!!」
ランスは怒鳴ってアニスを咎めるが、それは逆効果となり余計にアニスを怯えさせる。
結果として、アニスは滅多矢鱈に魔法を放ち始める。
「ひぃぃぃ! ぽまーどぽまーど!」
「先輩、所長、私の後ろに!」
「緑の人、成敗ー!」
あらゆる種類の魔法が放たれ、それは大空洞の天井や周囲を崩落させ、ついでにさっき呼び出されたロッキーの命も奪い去った。
下手に身動きが出来ずランス達は一か所に固まるが、それは敵のセイバーも同じ事だった。
「何なのよあいつはー!」
「味方殺しって言われてる子だな、うん。 心の友なんであんな生きる災害呼んだの」
「俺が知るか!」
「見ィつけた……………敵、四つーーーーー!!」
「ひっ! く、来るわよ!?」
周囲に魔法を乱射しまくった狂乱状態のアニスは、遂にランスを発見する。
今の彼女の脳内ではランスは既に敵であり、その周囲に居る人間もまた敵である。
空中から杖を向けられ、絶対絶命の状況となったその時、一人の声が響いた。
「派手に盛り上がってるじゃねえか!」
「むむ、杖が何かおかしなことに! 誰ですか!」
突然、アニスが持っていた杖から蔦が生えだし彼女の腕を拘束した。
「キャ…………」
「キャスターさん!!」
「げっ、生きてたのかあいつ……」
大空洞内部から見える地上に上半身裸の格好をしたキャスターが立っていた。
「信奉者は片づけた、後はこっちの祭りを盛り上げるだけだと思うんだが……手伝いは必要かいマスター?」
「お願いキャスター!」
「あいよ!」
「アイルランドの光の御子か、あなたが来たという事はアーチャーは敗れた様だな」
ゆっくりと降りてくるキャスターに、セイバーは目線を向けた。
「あぁ、奴さんならもう先に逝った。 次はセイバー、てめぇの番だ」
「────フ、ではその言葉が真実となるかどうか、我が剣を以て試してやろう」
「コラー! 俺様を無視するなー!」
「アニスの事もお忘れなく! 緑の人の成敗はお任せを!」
セイバーの前方をランスとマシュが、左側をキャスターが。
そしてその四人の頭上に拘束を破ったアニスが陣取った形で、全員が武器を構えるとランスは息を大きく吸い込み言葉と共に吐き出した。
「突撃ぃぃぃぃーー!!」
決戦が、始まった。
【宝具】 鬼畜王(マイグロリアス)
【ランク・種別】対人(自身)宝具
【効果】宝具とは世界において活躍した英雄の逸話や武具が昇華されたものである。
だが今回別の世界から徴集されたランスにはそのような物は存在しない。
しかし彼にも宝具は存在している。
即ち、自身の逸話や英雄性を世界に広げる宝具である。
この世界に俺様の逸話が無いのなら作ってしまえば良いという訳である。
この宝具が発動された場合、現在の状況に適した逸話、あるいは人物や武具が彼と繋がっている■■■■■■から引きずり出され、最適解として世界に召喚される。(逸話や人物を選ぶことはできない)
事実上こちらの世界を別の世界に塗り替えていく宝具である。
また、逸話を再現するという性質上彼が辿った途中経過も再現する。
それは即ち……。