ガーリー・エアフォース Sisiter's Vaportrail 作:liris
(今秋だったので11月かもしれませんが)
この三機も楽しみですが個人的にはPVにあったZEROのエース部隊のスキンも楽しみで仕方ありません
……Su-47をミミックにするかゴルドにするか悩ましいところです
そして今回の前半、皆様が想像されているようにベルクトの過去語りなのですがこれがまぁ手強い。
ベルクトの根幹にかかわる事なので当然カットはしたくない。が、手を加えられるポイントも少ないため原作との間違い探し状態に
やっぱり独白に手を加えるって難しい……
私の名はベルクト。Su-47のアニマです。
ロシアには私の他にニ機のアニマが居ますが私は彼女達――――――いえ、そもそも私の出自はゲイザーさんをはじめとした他のアニマと比べてあまりに異なっています。
どういうことかなのか説明しますね。
私は護衛戦闘や侵攻戦はおろか、迎撃戦も行わないドーターとして生まれたんです。
意味がわかりませんよね? 少し順序立てて説明します。
ザイ戦が始まってから数ヶ月後、ロシアの科学者達はあるシミュレーションを行いました。実戦の
――――――そうして出された結論は冗談じみたものでした。
ザイの戦力を最低限に見積もって……そうですね、仮に自衛隊と同数の三百機としてもその全滅には三十機以上のアニマ・ドーターか百機以上の
ロシアはこれに対して、通常戦闘機が千、私を除いたアニマが二機。AZCCは四十程度でエース級のパイロットは一桁しかいないと言えばどれだけ無理がある数字なのか分っていただけると思います。
つまりロシアは単純な戦力差だけで見れば、始めから勝ち目はないのです。この結果を重く受け止めた軍部や政府は直接戦闘ではなく別の方法で戦争勝利への道を模索したのです。
……オーストラリアがゲイザーさん――――――ザイとの戦力比をザイ一機に対し戦闘機ではなくミサイル一基という既存とは異なるアプローチをしたように、既存の空戦以外の方法でザイに対抗する方法を求めたのです。
――――――そうして彼らはその方法を見つけました。
彼らは旧ソ連時代に受け継いだ膨大な核戦力に目をつけました。政治的にはもちろん、倫理的にも使用できなくなったこの兵器を対ザイ戦に使えないかと。
彼らは大量破壊兵器で空域ごと吹き飛ばしてしまえば、ザイの高機動性能もEPCMも関係無しに殲滅できると考えたのです。ザイのジャミングは電子装備や人間の目を妨害出来ても物理現象――――――爆風や焔を防ぐことはできませんから。
ですが、この方法には大きな問題があります。
静止目標ならともかく、ザイは高速で動いています。戦果を出すにはできるだけ多くのザイを危害半径に収めなけばいせません。研究の目的はどうやってザイを危害範囲に留めるかという点に移りました。
――――――ミュベールさん達は気づかれたみたいですね。
ええ。私はザイを爆心地に引き寄せるためのモノとして生まれたんです。
ロシアの科学者達はこの計画を〈誘蛾灯〉計画と呼んでいました。
ザイのEPCMを分析した結果、EPCMには複数の役割がありました。皆さんもご存知の電子・感覚の妨害。そしてもう一つはザイ同士で行う信号です。
詳細まではわかりませんでしたが、ある特定のパターンでザイは編隊を組んだり散開したり、協調的な行動を取ることが分かりました。
ここまで言えばこの計画の内容は分ってもらえたと思います。ザイのコアを使用したアニマとドーターならEPCMを発生させる事ができる。通常は抑制されているEPCMを高出力で、それも意図した形で発生させれば――――――。
研究は想定よりもスムーズに進み、私は良好な成果を出し続けました。
しかし私に関して研究の内容はおろか、軍の装備リストからも抹消され、存在そのものが秘密にされました。
なぜならこの〈誘蛾灯〉は使い方を変えれば、ザイに他国を襲わせる攻性兵器にもなるからです。ザイによる災害を人事的に起こせるようになる。そんなことが表沙汰になれば国際社会からどれだけの非難を浴びせられるか考えるまでもありません。
だから私は存在そのものが秘匿されました。その時が来るまで決して外部に存在が露見しないように。万が一他国に私のことが漏れれば、同じ機能を持ったアニマにザイを仕向けられる可能性があったからです。
そうして私は研究施設の地下深くに封印され、その時が来たらザイ諸共核の炎に飲み込まれる。誰にも知られることなくその運命を待つはずでした。
――――――ええ、そのはずだったんです。ヤリックに出会うまでは。
彼は研究チームの中では若手でしたが、研究の中心メンバーだったと思います。
彼は私が物心つく頃には隣に居て、歴史などの座学だけでなく音楽や映画など色々な事を教えてくれました。
『――――――君は希望なんだ』
ある日、ヤリックは私にこう言いました。
『君から得られた技術を発展させれば、いつか僕達はザイと対話できるかもしれない。そうすればこんな〈誘蛾灯〉なんていう野蛮な計画は必要無くなる。彼らと僕達が共存していく上での折り合いのつくところを探ればいいんだからね。』
そんな明るい未来を語りながら、何度か彼は私を外に連れ出してくれました。ごく稀に、本当に短い時間だけでしたけど施設以外のところを歩かせてくれんたんです。
そしてその時の私は彼の立場が悪くなっていることに気づけませんでした。今思えばヤリックは自分の立場が危うくなっていることに気づいていたんでしょう。だから私にあんな話をしたんだと思います。
計画の方針を変更しようとしようとしたのか、テストの遅延を試みたのか、それとも上層部に異議を唱えたのか。もしかしたらその全てだったのかもしれません。
そんな真偽の分らない噂が増えると同時に彼と会える日も減っていきました。ヤリックがしてくれる予定だった検査が別の人になったり、施設の入口で追い返されるのを見たのも一度や二度じゃありませんでした。
――――――このまま別のプロジェクトに異動してもう会えないのかもしれない。そんな事を思っていたある夜、突然ヤリックが私を訪れて来たんです。
驚く私にヤリックはただ一言だけ『ついてくるんだ』と言ってドーターの格納庫まで連れ出されました。そして言われるままコクピットに乗り込んでダイレクトリンクを行った時にに何かの処置を受けました。今ならあれがなんだったのか分かります。きっとあれが記憶の封印措置とEPCM――――――〈誘蛾灯〉の無効化措置だったんだと思います。
『――――――これで君はもう普通のアニマだ。〈誘蛾灯〉なんていう馬鹿な兵器はもう存在しない。Su-47-ANM ベルクトはただのアニマ・ドーターとして生きていくんだ。そして、願わくば、いつか君の力を使ってザイと会話して欲しい。彼らは何を望んでいるのか聞き出して欲しい。いいね』
施設全体で警報が鳴り響き、私達に向けてたくさんの足音が近づいてくるとヤリックは微笑みながらキャノピーを閉じてしまいました。
『さぁ行け! 飛行ルートはドーターに入力してある。君は自由だ!』
その言葉が私が聞いたヤリックの最後の言葉でした。私の機体は搬送用のエレベーターに運ばれながらプログラムに従いエンジンが点火、全ての動翼がはためいてエンジン音が外の音をかき消しました。
そして離陸する瞬間に見えたのはネクタイをはためかせ、後ろからくる銃を構えた警備兵をきにすることなく満足そうな笑顔で私を見送るヤリックでした。
そして私は意識を失い、気がつくと雲海の上を月明かりに照らされて、ひたすら夜闇を排気炎で切り裂きながら飛んでいました。
この時はもう私に記憶は無く、亡命だけが私の唯一の目的になっていました。東に進み、ロシアの領空から逃れる事。
そうして追手を振り切る最中にミュベールさん達と出会い、その後に独飛の皆さんと出会いました。
私の話――――――失っていた記憶は以上です。
ベルクトの話が終っても私を含め、集まった誰もが口を開こうとはしなかった。……いえ、なんて声をかければいいのか判らない、といった感じね。
そんな中で私はベルクトを保護した時に交戦したSu-35のパイロットが言っていた事を思い出した。
(あの時、あのパイロットが言っていた『後悔するぞ』ってこの事を指してたのね)
そして私以外の例外――――――先に話を聞いていた八代通室長が端末を操作して一人の青年が映った画像ファイルを表示する。
「……ヤリックというのはこの人物か?」
表示されている人物を見てベルクトの息を吞む音が聞こえる。そして私も彼の事をはっきりと覚えている。
「「……はい(ええ、この人よ)」」
ベルクトと声がハモってベルクトよりも私の方に視線が集まる。
……やらかしてしまったわね。
「……中尉。ベルクトはともかくなぜ中尉が彼を知っている?」
あー。八代通室長の疑問ももっともよね。今更訂正なんて出来ないから正直に話すしかないか。
「ベルクトの中に潜った時に会いました。……正確には彼本人ではなく記憶の残滓と言っていましたが」
「……ヤリックの意識が、私の中に……?」
「えぇ。ずっと貴女を気にかけてたわ」
彼からベルクトに伝言を預かってるけどアレは彼が彼女に宛てた言葉。後で彼女と二人になる時間を作ってその時に伝えましょう。
「話を戻すぞ。隠し事をする気はないから事実だけを言うが彼は死んだ。――――――君が亡命した日にな」
「そう……ですか」
八代通室長の無機質な眼差しと言葉をベルクトは弱々しい笑みで受け止める。
……きっとベルクトは半ば予想していたんでしょうね。その笑みには痛々しさを感じるけど彼女が受け止めようとしているならその意志を尊重するべきなんでしょうね。
「――――――教えていただいてありがとうございます。ようやく――――――ようやくこれで自分の中で忘れていたなにかを思い出して気持ちの整理ができそうですから」
それはベルクトなりの決意表明だった。
……彼の伝言を伝えるべきか本気で迷ってきたんだけど。
「さて、ここいらで一旦状況を整理しておこう」
端末を胸ポケットに入れた八代通室長が話を先に進めるべく、身を乗り出す。
「今の話でベルクトの正体とロシア政府が沈黙している理由は分かった。残る問題は――――――」
「ベルクトがなぜまだザイを引き寄せているのか。ですね、お父様?」
ファントムの言葉を八代通室長は頷いて肯定する。
そう。ベルクトの話じゃ記憶と一緒に〈誘蛾灯〉としての機能は無効化され、EPCMの発信もされないハズだった。にもかかわらずベルクトは不定期にEPCMを発信している。唯一にして一番の問題だ。
「まぁ大体の想像はつくがな。おそらく準備期間がもう少しあれば絶対に起こらなかったミスだろうよ」
「……? あの、準備期間があれば起こらなかったミスってなんですか?」
「記憶の封印措置だ。おそらくこいつが〈誘蛾灯〉を無効化するプログラムまで封印したんだろう。時間をかけて調整していればこんなヘマはしなかっただろう」
鳴谷君のもっともな疑問にあっさりと答える八代通室長。
それでようやくこれまでの事に納得がいった。
「〈誘蛾灯〉を無効化するプログラムがうまく機能していなかったから不定期にEPCMが発信されてたんだ。わたし達が一緒に飛んだ時も発信されたのが一瞬だったから、パターンの観測はできても発信源がどこなのかはわからなかったし」
話の通りなら彼がベルクトを護るために行った事が今回の一件を招いてしまったとも言える。もし彼に封印処置等を行う時間すらなく、ベルクトがなんの処置も受けずに来ていたらここまでの事にはならなかったかもしれない。
――――――本当、なんて皮肉。
「直せるんですか」
「理論上ならばな。はっきり言って最低でも一ヶ月はかかる」
鳴谷君も問いに憮然と答える八代通室長。
……最低でも一ヶ月。という事は他に何らかの処置がしてあったりトラブルがあったら更に延びる。実質的な不可能という答えだった。
そんな中、部屋の外から騒々しい足音を立てて技本のスタッフが駆け込んできた。その顔色は真っ青で、走ってきたからではなく悪い知らせが入ったというのを思わせるには充分だった。
「室長、すいません、緊急事態、です」
ぜえぜえと息を切りながら報告する彼を見て、八代通室長は『またか』と言いたげなうんざりしているような表情だ。入ってきたスタッフも私達がいるのを見て内容を言うのを躊躇っているみたいね。
「構わん、ザイ関連ならどうせ話す事になる。さっさと説明しろ。今度は何が起きた」
「内調の衛星情報センターからです。市ヶ谷に送ったらしいんですがこちらにも送るよう指示されたようで」
そう言って彼は資料の束を渡し、八代通室長はそれを読み進めてると数枚目でその表情が怒りに染まった。
「おい。なんで今頃こんな情報が出てくる。データは定期的にレポートされていたはずだったろうが」
「も、元々オーストラリアから来た情報でして。その、あまりに信じられない結果だったので衛星の不調だと思われていたようで……」
「馬鹿どもがっ!!」
八代通室長にしては珍しい、あまりにストレートな罵倒だった。いつもの皮肉を言えない程頭にキているらしい。
「……一体なにが?」
この場にいる全員が気になっているので代表して訊くと持っていた資料を『読んでみろ』、とあっさり渡された。
資料に印刷されていたのは中国大陸の俯瞰写真。雲の切れ目からは砂色の大地がちらほら見え、一部分だけが都市の明かりのように煌いて――――――って待った。
猛烈に嫌な予感がして次、そのまた次とめくると問題の明かりは撮影の日付が新しくなるにつれて沿岸に向けて移動していてる。
「……八代通室長。まさかとは思いますがこれって――――――」
「中尉の想像通り、ザイの群れだ。衛星写真の縮尺でこれだけの大きさなら敵さんの数は千単位だろう。今まで小松に来ていたのはこの中の気の早いごく一部だったわけだ」
「せ、千単位っ!?」
――――――ああ、成程。だから衛星の不調なんてなんて言葉で片付けていたのね。確かにこんな数が来ているとなれば現実逃避したくなるわよね。
「お父様、今すぐベルクトを破棄しましょう。可能ならば小松――――――いえ、日本の領域外に動かして。このような事態になっている以上、早急に行うべきです」
俄かに騒がしくなった部屋をファントムの言葉が文字通り凍り付かせる。
彼女が本気なのはその剣呑極まりない表情が雄弁に語っていた。
「待って。ベルクトのEPCMは処置すれば止まるってハルカは――――――」
「それにどれだけの時間がかかると思っているんですかっ!」
慌てた様子で言うグリペンの言葉を一喝するファントム。その強烈な眼光と鬼気迫る表情にグリペンがすくみ上る。
私から資料をひったくったファントムの言葉はなおも続く。
「いいですか。この写真を見る限りこのザイの群れは二日を待たずに日本海に到達します。そうなればもう手遅れです。安易な博愛主義を振りかざしている場合じゃありません!」
「…………っ!」
グリペンと同じ事を言おうとしていたのか、なにか言おうとしていた鳴谷君もファントムの迫力に圧倒されて言葉が出ないようだった。
一方の私はファントムの言葉に“疑問”を感じている。そしてそれはゲイザーも同じだったようで私達は頷き合ってその疑問をファントムに問いかけた。
「――――――ファントム。貴女は本当にそれで解決すると思ってるの?」
私の静かな問いにファントムだけじゃなく全員の視線が集まる。
「ミュベールさん。いくらベルクトと親しいといっても貴女なら冷静な判断ができると思っていたのですが」
私に失望した、と言わんばかりの冷たい視線。が、その程度で私は怯むつもりはない。
「一応言っておくけど私はベルクトを破棄する事でEPCMを止めようとする貴女の考えを否定するつもりはないわ。私の疑問は
「……どういうことですか」
やっぱりファントムは冷静じゃなかったみたいね。普段の貴女なら気付いていたでしょうに。
「つまりね、ミュベールが言いたいのはベルクトを破棄してもザイが止まるのか、ってこと。たとえ誘導しているEPCMが途絶えても向こうが
私に続いたゲイザーの言葉にファントムは反論出来ずに視線を逸らす。
ザイの侵攻がここまで大規模だとザイの方でも既にここを“攻撃目標”と定めていたらベルクトを破棄してもなにも変わらない。むしろアニマ・ドーターをただ失うだけという結果になる可能性の方が高かった。
「そうなったら小松を破棄するだけです。いずれにしてもここで敵が現れるのを待つという選択はありません。一般人がパニックを起こす前に避難させないと」
「ファントムさん。その必要はありません」
静かに微笑みながらベルクトは言う。その微笑みはどこか諦めを含んだモノだった。
「ザイが私を目指しているなら私が移動すればいいだけです。ミュベールさんとゲイザーさんの言ってたように私が破棄されても侵攻は止まらないかもしれません。しかし私が誘導しながら飛ぶならザイの進行方向を変えることができると思います。――――――私はそのために作られたアニマですから」
「ベルクト、それじゃ――――――」
彼と出会った意味がないじゃない、と言おうとしてベルクトに遮られる。
「ミュベールさん、ゲイザーさん。かばってくれてありがとうございます。でもミュベールさんは言っていましたよね。私が人類の敵になったら他ならない自分の手で殺すと。……私は作られた意図からも離れ、制御できない災厄になってしまいました。だからこれ以上生きているのは――――――」
パシンっ!
気が付けば、私の右手はその先を言おうとしたベルクトの頬に平手打ちをしていた。
ここにいる誰もが信じられないものを見た、と言わんばかりの視線を私に向け、特に私にぶたれたベルクトは呆然としている。
「――――――ベルクト。貴女、彼の想いを無駄にする気?」
自分でも珍しく頭に血が昇っているのが判る。
確かに彼からの直接の伝言を言わなかったのは私の失敗だったかもしれない。けど――――――
「貴女は彼が命を懸けて自由になったのよ。それをそんなあっさりと捨てる気?」
「けど、もうこうするしかないんです。それにミュベールさんも――――――」
「ええ、確かに私は貴女が人類の敵になったら他でもない私の手で殺すと言ったわ。けど、それは貴女が自分から望んでなった事なの?」
「ち、違いますっ! 私は、望んでなんか――――――」
「ならこんなところで諦めないで。 彼は貴女を死なせるために命を懸けたわけじゃないでしょうっ!?」
「盛り上がっているところ悪いがな。中尉、一体どうするつもりだ。ファントムの言う通りベルクトへの処置は間に合わんぞ」
Mr.ギンツブルクがそうだったように、私達も時間が足りない。加えてザイの大群が押し寄せているというオマケ付き。
どうしたものかしら、と頭を悩ますも突如として天啓が降りる。……私とした事がなんであそこに気が付かなかったのよ。
「……八代通室長。ベルクトがEPCMを発信しても影響がなく、かつザイが手出し出来ない場所に心当たりがあると言ったらどうします?」
「「「「――――――は?」」」」
『そんなところあるわけない』と皆口にはしないものの、そう考えている事がありありと判る。けどそれがあるのよねぇ。
「おい中尉。まさか今からオーストラリアに連れて行く気か?」
「いいえ。それをするには沖縄の米軍がどう動くか、という不安要素があります。私のアテは近くて遠いところです」
「時間がないんだ。もったいつけずさっさと言ってくれ」
「大気圏外――――――宇宙空間です。宇宙空間ならベルクトがどんなにEPCMを発信しても被害を受ける国はありませんし、オーストラリアにはサルベージ出来るだけの技術とモノがありますから」
ついでに本来の〈誘蛾灯〉計画の案も一部頂いてしまいましょう、というと八代通室長はにやりと不敵な笑みを浮かべる。
「なるほどな。ザイの群れをベルクトが引き付け、成層圏ギリギリで吹き飛ばす。元々の〈誘蛾灯〉計画と違って帰還が難しいという点はあるがベルクトも生き残れる。――――――悪くないな」
高度が五万フィートを越えると大気の密度が一気に低くなるから通常の航空機での飛行は困難になる。いかにHi―matで変態的な機動性を持っていても翼を持っている以上、ザイにもこの原則は無視出来ないハズ。そこにベルクトが生き延びる
「そうなるとベルクトを大気圏外に運ぶ為のブースターが必要ですね」
「それに関してはツテがある。今から運ばせればベルクトの熱対策を含めてもザイの侵攻には間に合うだろう」
「では私も社に報告して日本に派遣されているE.F社の部隊を動員してもらうよう働きかけます」
方針が固まると八代通室長の思考と判断は早い。私以外の面子を置いてきぼりにして進めていく。
「希望が見えたわけだけどファントム、まだ反論はある?」
私の問いにファントムは数秒思案し、『ありませんね』と言うと鳴谷君とグリペン、そしてゲイザーの表情が明るくなる。ベルクトは未だ自分が生き残れる路が見えたことが信じられないのか、私と八代通室長を驚きの表情で見ている。
(……Mr.ギンツブルグ。少しの間この娘を一人にさせるけどそのまま見捨てる事は絶対にしない。必ず自由に飛べる空に連れて帰るわ)
――――――ザイの日本海到着まで、残り38時間。
ベルクトをひっぱたくオリ主ってもしかしてミュベールだけじゃないだろうか。
原作通りベルクトは宇宙へ。とはいえ帰還する事を前提にしているので再び戻ってきます
(なお、復帰するタイミングは一応決めています)