ガーリー・エアフォース Sisiter's Vaportrail 作:liris
一番笑ったのは輝くX-02S。これ以前発見されたバグのヤツじゃんと思ったのは自分以外にもきっといるハズ
(その機体は確かF/A-18でしたが)
そして追加されたスキンを見て思った感想
『エスコンスタッフの方々……F-22とSu-37大好き過ぎない?』
(この二機だけやたらとラインナップが多い)
夜のうちに小松を出発した私達は硫黄島飛行場で一旦の休息を取り、そこから数度の空中給油を経て作戦空域になるマリアナ沖へ近づく。
日本とは違う空と海の色を見ると少しだけと帰ってきたと感じる。
(どうせなら本当に『帰る』時にこの空と海を見たかったんだけど……仕方ないわね)
もう少ししたらこの空も戦場になる。そうなれば景色を見る余裕なんてないし、作戦が終わっても無粋な黒煙が立ち昇るから自然な状態で見るのは今だけになる。
(……と、見えてきたわね)
作戦空域に近づきオーストラリア空軍のF-15S/MTDやE.F社で多く配備されているSu-47やYF-23、そして直線的な黄色のSu-37や赤を基調としたTyphoonといった独自のカラーリングの機体が見えてくる。――――――否、戦闘機だけでなく現在は高速輸送機として使われているXC-70もいるので軍用機の博覧会状態だ。
≪オーストラリアのXC-70がいるのは驚きましたが一番の注目はやはり『彼女』のようですね≫
≪でしょうね。なにしろ今のあの娘は目立つもの≫
そうして注目を集めている機――――――ベルクトに目を向ける。スカイロンを
なお、ベルクトのドーターは上昇する際の空力特性を向上させる為にその特徴的な主翼にも改装が行われている。具体的にはカナードが撤去され、特徴的だった前進翼はF-22のような形状に改造されてまるで巨大なエイのようになっている。
≪AQUILA03――――――ベルクトより各機へ。〈エウリュアレ〉の動作は安定。現在吸気モードで正常稼働中≫
ギリシャ神話に登場する女神で〈遠く飛ぶもの〉を意味する名前をつけられたスカイロン。白く輝きながら空を征くその姿は確かに神話から名を取るに相応しい威容だ。
――――――余談だが命名したのはE.F社の整備スタッフで、名前の元はギリシャ神話に登場するゴルゴン三姉妹から取っている。名前の意味もそれぞれを表している*1からいいだろうというのが理由である。神話に登場する姉妹から名前を取った事にゲイザーとベルクトを喜んでいたが、この姉妹の行く末*2を知っていたミュベールは複雑そうな顔をしていた。
≪こちらAWACSウルフィ。敵集団との接敵は約30分後。数は不明、というより換算不能のレベルだ。目撃した巡視船の船員は天の川が降りてきた、と言っていたそうだ。おそらく、ザイが発見されてから最大規模の侵攻だろう≫
≪了解≫
今回の作戦は練度に優れたオーストラリアの部隊が前衛に出て、空自の部隊はAMLR-AAM*3をはじめとした射程の長いミサイルでの後方支援という内容だ。
空自はAZCCの保有数が少なく、逆にオーストラリア側は開発元という事もあって今回の参加機の内約3割がAZCCとなっている。なのでオーストラリア機は格闘戦を重要視して装備は軽量な短距離型のAAMをメインにし、逆に空自の機体はミサイルベッドとして
とはいっても今回のように千単位で来ているザイ相手にミサイルの数はあまり重要じゃない。本命は
つまり今回の作戦はオーストラリア機が主な盾となってザイを誘引するベルクトを護りつつ、ザイを出来る限りこの空域に集めるフェイズ1。フェイズ2でベルクトが垂直上昇でザイを誘引し、彼女が安全圏に達したら無人機に積んだ戦略核を起爆させてザイを殲滅するというもの。
なお、今回の作戦ではアニマの中でもゲイザーとファントムは直接戦闘はしない。ゲイザーはミサイルの誘導管制とザイへのジャミング、ファントムはAWACSのデータを基に全体の指揮を執るからだ。アニマ二機が戦力に入らないのは痛いけど、それよりも戦域全体の指揮を執れるのと全機が電子支援が受けられる方がメリットが大きい。
≪AQUILA03から01へ。本当に私はこのままでいいんですか? 少しぐらいなら私も――――――≫
≪却下よ、ベルクト。ここは私達を信じてちょうだい? ――――――大丈夫よ。生き残る事にかけて私達は世界最高なんだから≫
自分が原因なのに私達だけ戦う事に忌避感を抱いてるベルクトの言葉を切り捨てる。
……正直こんな言い方をするのはあまり好きじゃないんだけど、言うべき時には上官として言わなくてはならない。この娘、意外と頑固なところがあるし。
≪世界最高とはずいぶん買ってくれてるじゃないか、ミュベール≫
≪それにずいぶん可愛い声だ。このぶんだと本人も可愛いんだろうな≫
≪おいミュベール。お前一人で今までこんな可愛い娘を独り占めしてたとかズルいぞ≫
私達の話を聞き、囃し立てるE.F社の傭兵組。オーストラリアの正規軍はこのノリに慣れているのか苦笑しながら聞いているが、空自のパイロットやBARBIE隊の慧やファントムは緊張感のない彼らのテンションに唖然としている。
≪貴方達ねぇ、ナンパするなら彼女が帰ってからにしなさいよ。一応日本の部隊もいるんだから≫
≪おい聞いたかお前ら。保護者から許可が出たぞ。必ず生き残って彼女の姿を拝むぞっ!≫
≪≪≪≪うぉぉぉぉぉっ!!!≫≫≫≫
無線越しに湧き上がる野太い歓声に流石にミュベールも苦笑する。あれで仕事はキッチリしてくれるから彼等を見ていると軍に規律が本当に必要なのか悩むところ。
……いや正規軍の人達があのノリになったら問題か、やっぱり。
≪展開中の全AZCC機へ。こちらAQUILA02。これからみんなの機体を
≪そりゃマズい。ミュベールが隊に入れたってことは可愛い娘なんだろ? 可愛い新入りを見るためにも気を入れないとな≫
……なにか凄く気になる事を言ってくれたわね。どういう判断基準で私が引き取ったと思ってるのよ。
≪ちょっと。ベルクトが可愛いのは認めるけど私が引き取ったなら可愛い娘だ、ってどういう意味よ≫
≪いやそのままの意味だが? お前そういう趣味だし≫
≪オープンチャンネルでそういう事言わないでくれないっ!? せめて私達だけの専用チャンネルに切り替えなさいよ!≫
≪おいおいミュベール。楽しい事はみんなで共有するべきだろう?≫
≪好き勝手言ってくれるわね貴方達……≫
彼等の意図としては参加しているパイロットの緊張を適度にほぐすつもりだったんだろうけど、話題にされた側としては文句の一つや二つは言いたい。耳年増なところがあるファントム辺りが気にしたら今後やりにくくなるじゃない。
(ちなみにさっきから可愛いと連呼されているベルクトは顔を真っ赤にして一連の会話を聞いている)
≪……こちらウルフィ。来たぞ、実際に見るととんでもない光景だ≫
心底呆れたようなAWACSに促され、西の方を見ると太陽の光に照らされて星の海のように空が煌めいている。何も知らなければ神秘的にも見えるがアレの実態は千単位で現れたザイの大群。夜空に見える星のように情緒のあるものではなく、人類の敵たる破壊の煌めきだ。
≪全機
≪こちらValkyrie01。攻撃を開始する≫
ファントムが戦いの始まりを告げ、XC-70で編成されたワルキューレ隊が先制攻撃を開始する。
オーストラリア軍とE.F社で高速輸送機として使われているXC-70だが、この機体は元々は爆撃機として設計された。だから今回のように大型のミサイルを大量に積み、発射出来るミサイルベッドとしての運用も出来る。
そして今回このXC-70で編成された部隊は
――――――そしてソレが炸裂したと同時に空に青白い光球が幾つも現れ、そこにいたザイが墜ちるどころか蒸発してさえいた。
≪今のは?≫
≪オーストラリアで開発していた新型ミサイル――――――MPBM*4だ≫
今回投入された新型兵器の威力に空自側だけでなく、私も含めたオーストリア側の陣営も驚きの声を上げている。それだけ今のMPBMの威力は衝撃的だった。
……話は聞いていたけどトンデモない威力ね、アレ。
≪もっとも、乱戦になれば友軍を巻き込みかねないから本来なら初撃以外では扱いにくいのが難点だがな≫
まぁ確かに乱戦であんなのを使われたら絶対に巻き添えになる。
……ん? 本来なら?
≪本来ならってどういうことだ?≫
≪今回みたいに敵が大挙して来てるなら前線より深い位置で起爆させればその心配はない。数秒ではあるが敵を分断することも出来るだろう≫
それは助かるわね。たとえ数秒でもザイを分断出来るのは大きいもの。
≪さぁ、ここからは私達の出番よ。行きましょう!≫
私の言葉を皮切りにE.F社所属の部隊が一斉に動き出す。左翼側に展開した部隊はザイに正面から向き合うように、そして右翼側の部隊は大回りをしてザイの側面を突くように動き出す。
先程まで軽口を叩いていたとは思えないほど統率された動きだった。
≪さてアステル。今日はオレ達と組んでももらうぞ≫
≪ええ、久しぶりね。サイファー、ピクシー≫
――――――サイファー、ピクシー。この二人はE.F社屈指のエース部隊ガルム隊のメンバーで、ガルム隊はこの二人で編成された小隊。部隊の規模としては最小だけど実力はE.F社と正規軍、双方の中でも最高レベル。機体は二人ともF-15を使っていて、サイファーが尾翼を含め両翼端を蒼く塗り、ピクシーの方は右主翼だけをを朱く塗ったシンプルなものだ。
≪それにしても俺達三人が組むってのも滅多にないよな≫
≪それだけ重要なポジションってことだ。実際今回のオレ達の役目は他の奴等には荷が重いからな≫
最前衛にいる隊が交戦を開始。無駄弾を使えない私達はミサイルによる先制攻撃を空自側のAMLR-AAMに任せ、私達は最初から格闘戦を挑むべく正面からの突入組に加わる。
≪さぁ、花火の中に突っ込むぞっ!≫
ピクシーの言葉と共に私達三機は機体をロールさせ、パワーダイブ。人とアニマが駆る戦闘機と無機質なザイが飛び交う空へと私達は斬り込んだ。
オーストラリア軍のF-15S/MTDがザイの放ったミサイルの直撃を喰らって火の玉と化す。敵討ちといわんばかりにE.F社所属のYF-23が機関砲を叩き込み、一気に加速して離脱。
軽く周囲を肉眼で見ると。見えるのはヒトによって生まれた鋼の鳥とザイというガラスの魔鳥ばかり。
≪サイファー、ピクシー。3時方向にザイに追われてる友軍機!≫
≪よし。行くぞ、二人とも!≫
ガルムの二人と共にザイに追われているTyphoon三機を追い回している五機に狙いを定め後ろを取る。こっちに気付いたのか執念深く追撃せずに散開して私達から逃れようとするけどそれでいい。目的を果たした私達は散会したザイを追わず、再びザイに狙われている隊や機の支援に入る。
――――――両軍入り混じっての格闘戦。本来なら数と機動性で人類側の戦闘機を上回るザイだが人類側はソレを戦術と連携でカバーする。
今回人類側の勝利条件は個別にザイを墜とす事ではない。出来る限りザイを引きつけ、ベルクトの成層圏脱出後の核爆発で殲滅する事にある。だから今回はザイを墜とすよりも生き残る事が重要になる。
その中でミュベールはガルム隊と共にザイに狙われた隊や機を救出する遊撃隊として動いていた。
ザイの方が数で勝るこの戦場。一機やられるだけで戦力比は大きく傾く。それを防ぐためにミュベールとガルムの二機は戦場を縦横無尽に駆け、ザイに狙われている友軍機を救出する。
≪こちらBARBIE03。AQUILA01、GALM01、02。貴方達に敵編隊が近づいています。方位2-8-0、高度6000≫
私達は編隊を解き、ブレイク。
上空から急降下してきた敵編隊の攻撃を回避すべく、私達はそれぞれ異なる方向へブレイク。私達を狙ってきたザイが猛烈な勢いで降りてくるけど機体をループさせてザイの突撃を躱し、後ろを取る。自分たちの失敗を悟ったのか、ザイは機首を上げて再加速。ヘッドトゥヘッドで突っ込んでくる。身体に猛烈な重みが圧し掛かるのを承知で機体を操り、大きく左へ振りながらバレルロール。270°回したところで急ロール、反対方向へと機体を向ける。
あまりの機動に身体の骨と機体の軋む音が聞こえてくるような錯覚がするけどまだ大丈夫。私の身体も、そして
戦闘機とミサイル、機銃の火箭やザイが飛び交う中、ザイが私の後ろを取る前にロック、ミサイルを発射する。
≪FOX2!≫
ゲイザーからの誘導を受けたミサイルは、ミサイル自身に目があるかのような正確さでザイを追う。そしてミサイルは逃げるザイが他のザイと接近したタイミングで起爆。直撃はしなかったものの二機を巻き込んだ爆発は互いの翼を砕き、高度を落としていく。
(流石ね。わざと追い回して一発のミサイルで二機墜とすタイミングを狙うなんて)
途端、コクピット内に警告音。私を追ってきたザイの片割れが仕返しとばかりに後方にへばり付く。
(今度はこっちの番、というわけねっ!)
舌打ちしつつ、スロットルを押し込んで加速をしながら急旋回。このぐらいで振り切れるとは到底思えないから今度はスロットルを緩めないままのスプリットSからシザーズへ繋げるも、多少距離が開いた程度で変わらず喰いついている。
(しつこいわね! 少しリスクがあるけどここで――――――!)
≪アステル、お前の後ろにいるのを片付ける。3カウントでダイブしろ。――――――3、2、1!≫
クラーケンを仕掛ける為にタイミングを計ろうとしたところで、サイファーからの通信でマイナスGをかけて急降下。視界が赤く染まるけどそれに耐えてサイファーのF-15を見つけ、一つ間違えれば正面衝突するようなギリギリのタイミングで彼のF-15の真下を潜り抜ける。一方のサイファーは、真正面から後方の敵機にガンアタック。回避するには距離も時間も稼げなかった敵機が、機関砲弾のシャワーを浴びて蜂の巣と化す。
≪よくあんな機動に耐えれるな、アステル。お前実はアニマだったりしないよな?≫
≪ピクシー、無駄口叩いてる暇があるなら仕事して頂戴?≫
≪案外余裕あるな、お前ら≫
乱戦の中をくぐり抜けて再び編隊を組み直す。サイファーが私とピクシーの軽口に呆れたように言うけど、私としてはこうして軽口でも叩かないとやってられないというのがある。
……予想はしていたけどやはりザイの数が多過ぎる。
≪クソッ! ケツにつかれた! 助けてくれっ!!≫
≪今行くっ!≫
圧倒的ともいえるザイの大群相手に善戦する私達だけど徐々に綻びが生じ、少しずつではあるが苦戦する隊や被弾した機が増えてきた。作戦前に出された計算ではこちらの戦力が7割を切ったらザイを抑えられなくなる。――――――こちらの現戦力は既に8割。かなりマズい状況だった。
≪これ以上やられるとマズいぞっ!≫
≪だがどうするっ!? 連中の数が多過ぎる!≫
ワルキューレ隊も隙を見てMPBMで攻撃してくれているがソレで減らせるのは敵の後方。今苦戦している友軍は助けられない。
≪こちらGALM01。ピクシー、アステル。散開して個別に支援するぞ≫
≪……正気か? 相棒。≫
≪いたってな。俺達が個別に動けば支援出来る範囲も広がる。今の状況だと少しでも多くの味方を助けるのが重要だ。……それとも、自信がないのか、相棒?≫
挑発的なサイファーの言葉だけど現状に対する有効打はソレしかない。
≪AQUILA01からGALM01へ。私は乗るわ。確かに私たちのリスクは高いけど……それはいつもの事でしょう?≫
≪違いない≫
私達はブレイクして個別に救助にあたる。個別に動く事で支援範囲自体は広がったけど代わりにザイに追われた時に振り切るのに必要な時間も延びた。
なんとか戦線を維持できてるけどそれでも戦力の空白域が少しずつ、けど確実に広がってそこにザイが浸透して空白地を埋めにかかってくる。
激しい
(せめて〈レイシア〉が来てくれれば……!)
――――――希望が見えたのはそんな時だった。
≪……どこか上位のコマンドがオーバーライドしてきた。『ASAT照準データリンク』……? なんだ、この表示は?≫
ウルフィからの通信で私は〈レイシア〉が間に合った事を確信した。
≪AQUILA01からウルフィ。そのデータリンクは友軍のモノです。レーダーに青い線が表示されているハズなのでそれを全機のレーダーに表示してください。その線は支援攻撃の攻撃範囲です≫
≪……後で説明してもらうぞ、AQUILA01。全機に告ぐ。レーダー上に表示した青の線上にいる機は退避しろ。……9、8、7≫
ウルフィからの忠告で一斉に友軍機が動き出し、射線から外れる。本当なら後退したいところだけどそんな隙を見せたらあっという間にザイが群がってくるだろう。
今はレイシアの照準精度を信じるしかない。
≪……4、3、2、1≫
カウントゼロと同時に光の斬撃ともいえるモノが空を焼き、レーダーに表示された射線から全くズレる事なくザイの群れを薙ぎ払った。
≪空が光ったっ!?≫
≪光が上から落ちてきたぞ!≫
≪なんだっ! なにが起こったんだっ!?≫
困惑するのは主に空自の人達とE.F社の一部のパイロット。彼等の困惑を他所に再び空を光が切り裂きザイを薙ぎ払っていく。
≪レイシア嬢の到着だ!≫
≪見たかよ今のっ!? 綺麗に味方がいるところを避けて攻撃したぞ!≫
困惑する自衛隊側とは裏腹に事情を知るオーストラリア組は盛り上がる。
そしてその光が薙ぎ払ったのはザイという目に見える敵だけではない。皆が抱えていた不安や恐れという見えない敵もその光で切り裂いた。
≪今のはアークバードによる軌道上からの支援攻撃です≫
≪軌道上……宇宙空間からかっ!?≫
――――――アークバード。
元々はオーストラリアが宇宙開発に使用していた機体で、現在はオーストラリア軍の国防用の衛星兵器となっている。宇宙空間から高精度で狙撃出来るを装備していて、その照準精度は飛行中のミサイルを捕捉出来る高さだ。
≪アークバードの軌道変更にはアメリカをはじめとした各国の合意が必要のはずですが≫
ファントムの言う通り軌道上からの狙撃、正確にはアークバードが軌道を変更するにはオーストラリア政府だけでなく米国をはじめとした各国の合意がいる。
そのアークバードがここにいる答えは一つしかない。
≪その承認が降りたって事よ。≫
≪……AQUILA01、その口振りだと貴官は知っていたな? なぜ黙っていた≫
≪私が聞いた時も承認が降りるかはまだ不明でした。……下手に伝えていざ来ないとなれば士気に影響が出ると判断しました≫
来ると信じていた援軍が来ない時のショックというのはかなり大きい。だから未確定だったアークバードの事を私達は伏せていた。
けどアークバードによるピンポイントでの支援攻撃が可能になった今、劣勢の機や隊をアークバードが即援護出来るようになったから戦況はだいぶ良くなるハズ――――――。
≪ッ! LR-AAMが来ますっ! みなさん逃げて!≫
ベルクトの悲鳴が混じった警告に考えるよりも先に身体が反応し、高度を上げながらブレイク。その数秒後に通常のモノよりだいぶ大柄なミサイルが後方に飛んでいき、炸裂した地点から距離があるハズなのにその爆圧に機体が揺さぶられる。前衛にいたオーストラリア陣営は被害が少ないけど後衛の空自の部隊は直撃されたらしく、黒い尾を引きながら何機も墜ちていっている。
……どうやら向こうのLR-AAMもこっちのMPBMと同じようなタイプみたいね。
≪な、なんだ? あれ≫
≪どうやら彼らはこちらの数をまとめて減らす方法に出たようですね。おそらく次は味方もろとも前衛を狙ってくるでしょう≫
そしてファントムの予想はおそらく正解であり、同時に私達が一番恐れていた攻撃だった。あんな威力の兵器で範囲攻撃をされたら逃げようがない。ザイは味方もろとも攻撃しても大した痛みじゃないでしょうけど私達は数を減らされるわけにはいかない。
今の攻撃で後衛とはいえ纏めて墜とされたからこれ以上の損失は作戦遂行の可否に関わる。取れる手段は――――――
≪アレに対処するには炸裂する前に撃ち落とすしかないわ。……AQUILA01からレイシアへ。先程のミサイルをそちらのレーザーで撃ち落とせますか?≫
≪こちらレイシア。可能だがザイの数が多くて識別が難しい。そちらで識別してくれれば可能だ≫
≪こちらAQUILA02。さっきのでミサイルのパターンを掴んだから大丈夫。次弾が来たらわたしの方で識別します≫
流石ゲイザー。先の攻撃でしっかりとデータを収集してくれてたみたいね。
≪……っ! 今のミサイルの第二波、来ます!≫
≪AQUILA02からレイシアへ。敵ミサイル、識別完了≫
≪こちらレイシア。ロックオン! データリンク! ――――――照射っ!≫
こっちに向かっていたであろうLR-AAMを青白い斬撃が周りにいたザイごと薙ぎ払う。ザイを墜としたのとは違う巨大な爆発がザイの群れの中からいくつも現れ、アークバードが迎撃に成功したのがここからでも判る。
≪ミサイル、全弾撃墜! やったぞ!≫
≪ウルフィから全部隊へ。もう敵のLR-AAMの心配はいらん! ここが正念場だ、踏ん張れっ!≫
アークバードが参戦する事でザイに傾きつつあった流れが変わり始める。〈誘蛾灯〉の有効範囲にこの戦域のザイが入るまであと二、三分。
終わりが見えてきた事で各機の動きに鋭さが戻る。
≪レイシアへ。こちらAQUILA02。先の攻撃でミサイルの発射点を特定。座標を送るから発射点を潰してっ!≫
≪こちらレイシア座標を確認。――――――照射!≫
群れの後方にアークバードの光が落とされ、一瞬遅れてMPBMの炸裂を遥かに上回る爆発が起き、周囲の大気が揺さぶられる。
≪アークバードが発射母機を撃墜!≫
≪もうあと少しだ! 陣形を組み直すぞっ!≫
MPBMとアークバードの支援が噛み合い、こちらの被害が目に見えて少なくなる。既にミサイル、機銃共に撃ち尽くしたけどけど私も含めそういった面子はワザとザイの前を飛んで機動だけでザイを引き付ける。
――――――そうして、とうとう待望の時間が来た。
≪こちらAQUILA03。これよりフェイズ2に入ります。――――――エウリュアレ、エンジン出力上昇。EPCM、最大出力で発信≫
ベルクトを背負ったスカイロンが大気を切り裂きながら高度を上げ、さっきまで私達と交戦していたザイもベルクトに引き寄せられて一つの柱となって後を追っていく。
≪BARBIE03から全機へ。――――――退避開始。最寄りの空軍基地まで全力で退いてください≫
ファントムの声をきっかけに一部を除いて全ての作戦参加機が戦域から離脱する。
残留した一部はバービー隊と私達アクィラ。小松でベルクトと関わってきたメンバーだ。
≪現在高度二万メートル……クローズドサイクルに移行。インテーク閉鎖、液体酸素注入開始≫
ベルクトの声が淡々とスカイロンの状況を伝え、別れの時が着実に近づいてくる。
≪……ベルクト≫
だから、彼女に言葉をかける事が出来るのは今だけだった。
≪私は貴女を、貴女が話してくれた民話のようにはさせない。必ず貴女を星から降ろす≫
それはいつか彼女が話してくれた星になったイヌワシの話。たった数日前なのに今はそれが遠い日のように感じる。
≪だから待ってて。私自身が行けなくても、必ず迎えに行くから≫
あの時彼女は星になったイヌワシに憧れると言っていた。あの時はお互いソレが現実になるなんて思ってもいなかった。
だけど私の答えは変わらない。私はベルクトに星にならず、ここにいてほしいと思ってる。
≪……はい。……待って、います≫
少しだけ涙を含んだベルクトの返事に私は微かに息を吞む。
≪ならミュベール。かける言葉はさよなら、じゃないよね?≫
ゲイザーの言う通り、この別れは一時のもので永遠のものじゃない。
――――――だから、別れの挨拶はこう言うべきだろう。
≪≪
≪
エウリュアレのメインブースターを点火したベルクトは更に速度を上げて戦闘機では追従出来ない速度になり、後を追っていたザイも大気密度の低下で速度を失って木が枝を伸ばすように先頭が広がっていく。
≪……AQUILA01からBARBIE03へ。最後の仕事よ≫
≪判っています。……起爆システムを起動しました。私達も安全圏まで退きましょう≫
ディスプレイに起爆タイマーのカウントダウンが表示され、私達も安全圏まで離脱する。
カウントダウンが始まって30秒。UAVに搭載された核弾頭が一斉に起爆し、機体を揺らす衝撃波と共にザイを構成していた水晶体が太陽の光に照らされ雨のように降り注ぐ。
――――――レーダーに映るザイの反応は皆無だった。
≪こちらBARBIE03。敵戦力の殲滅を確認。RTB≫
小松に戻った私はいつものように滑走路脇のに寝っ転がって星空を見上げていた。
「ミュベール、今日も天体観測?」
「半分正解ね。コレを探してるのよ」
そう言って私はスマートフォンの観測アプリを見せる。そこに記されていたのは特定の星や星座ではなくある座標だった。
「……探してるのはベルクト?」
「ええ。軌道上とはいっても低軌道だし時間帯と方角があっていれば見えるハズなのよ」
一応観測アプリによれば両方の条件を満たしているから見えるハズなんだけど、満天の星の中から見つけるのは戦闘機乗りの眼でも難しい。
「わたしも手伝うよ」
そう言ったゲイザーは私の隣に座ってもう見慣れた小松の星空を見上げる。普段一緒に星を見る時はお互いの声が絶えないけど、今日この時だけはお互い静かに星を見上げる。
「……ねぇミュベール。ベルクトは必ず帰ってくるよね?」
「ええ。必ず帰ってくるわ」
いつ戻ってくるかはまだ判らないけど必ずあの娘は戻ってくる。
あの娘の位置はアークバードが見ていてくれるから見失う事もない。
「……また三人、ううん、明華ちゃんも合わせて四人で出かけようね」
「そうね。ただその前に明華ちゃんに上手く言っておかないといけないけどね」
「そっかぁ。……そうだね」
当然の事だけど今回の一件は一般人である明華ちゃんには言っていない。暫くは社の都合で急遽帰国したと誤魔化せるけど、もしかすると真実を話す必要も場合によってはあるのかもしれない。
「……ゲイザー。確か軌道上に上がった後はエネルギーの消費を抑える為にスリープモードになってるのよね?」
「たぶんね。外界からの強い刺激があればそれで目を覚ますと思うけど、基本的には眠ったままだと思う」
「なら……いい夢を見ているといいわね」
「そうだね」
再びお互い静かになる。話す事がないんじゃなくお互い地上から見える彼女を探しに戻ったからだ。
そうしてお互い夜空を見上げ続け、ようやく探していた彼女を見つけた。
「ゲイザー見つけたわよ。多分アレだと思う」
「うそっ!? どこどこっ!!」
興奮するゲイザーに目印になるモノを教え改めて星の海に浮かぶ彼女を見上げる。
(あの時ベルクトは私の迎えに行くという言葉に待っているって言ってくれた。――――――なら、その約束は守らないと)
ベルクトがどんな気持ちでそう言ってくれたのか私には判らない。確実なのは彼女は憧れだった星になる事よりも私達といる事を選んでくれた。
――――――私にはそれだけで十分だった。
(それまでの間、ゆっくり休んでなさい)
戦いではなく人の『想い』に触れてきたイヌワシは星の海で眠る。
――――――その胸に、自身を想ってくれた彼と彼女達との思い出を抱いて。
MPBMにガルム隊、そしてアークバードとクロスオーバータグがこれまでにないレベルでの仕事をしてもらいました
タイトルの『白い鳥』はベルクトとアークバードのダブルミーニングだったわけです
アークバードはエスコンに登場する超兵器の中で一番好きなので絶対登場させると決めていました(笑)
後日現時点での設定集を投稿します