ガーリー・エアフォース Sisiter's Vaportrail 作:liris
そしてそれ以上に嬉しかったのがSu-47にようやくグラーバクカラーが登場。個人的には機体底部のカラーも再現してほしかったです
……そしてグラーバクカラーを見たとき思わず『ミュベールカラー』と頭に浮かんだあたり作者の頭は相当アレかもしれない……
※Order20と少しだけ21に登場したXC-70を情報マトリクスに追加しました
興味のある方はどうぞ
「ブロウラー……
ゲイザー達が厚木基地から戻り、私とゲイザーは早速お互い何があったかすり合わせをしていた。
予想していた通り厚木での話は上海奪還作戦の概要と、アメリカ軍がアニマ以外でザイに対抗する為に用意した新兵器の話が中心だったらしい。
ちなみに鳴谷君には『明華ちゃんに怪我人が出たから急遽連れて行かれたと説明してある』と伝えたからそれに沿った話をするでしょう。
当然、明華ちゃんに色々と話した事は鳴谷君を含めて誰にも話してない。あの話は私と明華ちゃんだけの秘密だから誰にも話すつもりはない。
「なんか不満そうだけど……ミュベールも八代通室長とおんなじでUAVを使うのは気に入らないの?」
「アプローチ自体は否定しないわよ。出来ないものに見切りをつけて出来るものでカバーするってのは間違いじゃないし。いかにもアメリカ的な発想ね」
とはいえ否定しない事と不満がない事は決してイコールじゃない。
戦力的にどうなのか、という疑問もあるけど私の懸念はそれ以前のところにある。
「私はUAV……というより私は
私がUAVの投入に否定的なのはそこだ。独立稼働するだけなら私はそこまで気にはしない。問題なのはそのA.Iが自己学習で進化するかどうか。制限のない『学習』をプログラムされたA.Iはいずれか人の手に余ると私は考えているからだ。
そしてもう一つ。仮に戦いの主軸が人から機械に変われば確かに戦場で死ぬ兵士の数は減る。けどそれは同時に戦争がゲームになる時でもある。
……人が戦争を忌避するのはそこに犠牲が出るからだ。なら、その犠牲がなくなりゲームと化した戦争を人は嫌悪しきれるだろうか? そうなれば利益だけを追求し、相手を踏み潰そうとする国が現れる可能性はゼロじゃない。
「でもそれ言うならわたし達アニマも似たようなもんでしょ? わたし達だって自分で学習していくんだし」
「それは違うわ。確かに貴方達は人間じゃないかもしれないけど……プログラムに則ってのみ動くA.Iとも違うでしょ?」
「まぁね。そのあたりはいいことも悪いことも教えてくれたミュベールやみんなの賜物かな?」
私がアニマが機械……プログラムで動くモノと思えない最大の理由がここだ。機械はプログラム通りに動き、そこから外れる事はない。けどアニマの思考は
「ゲイザーにとっては色んな人が先生だものね」
「うん。だからわたしは人が好き。そりゃあ嫌いな人もいるけどだからって人間そのものが嫌いになれるわけじゃないし」
ベルクトもそうだったけど人から純粋な想いを向けられたアニマは使命や義務感じゃなく純粋に人を好いているような気がする。ソレを証明してるのが私が知る限りゲイザーとベルクトしかいないから正しいのかは判らないけど。
「……話が逸れちゃったわね。アメリカが作ったUAVに話を戻しましょうか。実際に見た貴女から見てどう? 使い物になりそう?」
「はっきり言って無理。動きもだけど反応が鈍いから囮ぐらいにしかならないかな。戦力って意味ならAZCCじゃなくても
「そりゃ私達と比べたらそうでしょうね」
なんせオーストラリア軍はE.F社という世界で一番ザイとの戦闘経験が豊富なPMCと提携してる。正規軍はその性格上国外に出る事は難しい*2けど傭兵である私達は別。ザイと交戦した私達がデータを持ち帰り、ソレを訓練にフィードバックさせれば正規軍も相応の訓練が積める。AZCCの配備もあって現在オーストラリアは対ザイの戦力が最も整っている国となっていて、純粋な航空技術だけでもアメリカを抜いて今や世界でもトップだろう。
「ただブロウラーの強みは人的損失がないってとこかな。やられても『命』の犠牲なく戦えるのはやっぱり大きいと思う」
「……そうね。ソレは
UAVの最大のメリットはいくらやられても人的被害がゼロで抑えられる、という点に尽きる。
言い方は乱暴だけどパイロットは戦闘機が戦闘機として機能する上で最も高価で替えの効かない
けどUAVなら純粋に機体を製造する為のコストだけで済む。絶対にパイロットを失わないUAVはコスト面からみれば何物にも代え難い。
「だよね。だから予想だけどたぶん囮として使うんじゃないかな? 向こうの話じゃ二個飛行隊分――――――24機投入するって言ってたから囮として使うは十分な数じゃない?」
「……武装は?」
「一機につきAIM-9が6発と機銃だって。一応ミサイルを使いきった最後の手段として
「いや当たらないでしょ、ソレ」
無人機の究極的な運用だけど動的目標……それも自己より速い相手に仕掛けても当たるわけがない。それなら味方の盾になってもらう方がまだいい。
……アメリカがそれをしてくれるか怪しいところだけど。
「やっぱミュベールから見てもそう思うよねー」
「なんとかして対ザイでの主導権を握りたいんでしょ、向こうは」
アメリカはアニマ・ドーターの開発で出遅れ、更に第七艦隊の失敗もあってザイへの対抗という意味ではオーストラリア・ロシア・日本の三国に遅れを取っている。
今回の作戦もアメリカは航空戦力の他に第七艦隊の生き残りと第三艦隊が参加するけど指揮権はオーストラリアにある。ザイとの戦いで実績を出しているのはオーストラリアの方だから作戦の主導はオーストラリア軍が握る事になっている。
世界の警察を謳っていたアメリカとしてはブロウラーでこれまでの失態を帳消しにしたいんだろう。……正直、戦場に政治のパワーゲームなんて持ち込まないでほしい。大抵そういう時はロクな事にならないんだから。
「あ。それとアメリカのアニマにも会ったよ。機種はF/A-18Eで名前はライノ」
「どんな娘だった?」
アニマに関わってる身としてはアメリカのアニマがどんな娘なのか興味がある。
……独飛のアニマみたいにクセが強くなければいいんだけど。
「んー、一言で言うなら社交的でニコニコしてた。あ、それとミュベールが好きそうな話をしてたよ?」
「私が?」
私が好きそうな話、と言われても思い当たるモノが割と多いからどんな話なのかパッとは思いつかない。一体どんな話をしてたのかしら?
「うん。アメリカのアニマ・ドーター開発が進まないのはカワイイの文化がないからかなって」
「それがどうして私が好きそうな話なのよ」
もしかして私は可愛ければなんでもいいなんて思ってるのかしら、この妹分は。
「道具への思い入れがないと魂は宿らないんじゃないかって。そういう話、ミュベールは好きでしょ?」
「物凄く惹かれるわね」
確かに私はその手の話は好きなジャンルだ。
長く使い続けたモノや強い想いに晒された道具。それらは時に
……まぁ戦闘機に宿った想念がアニマだ、なんて言われると神秘学を少しでもかじった人間が見れば首を傾げざるを得ないだろうけど。
「話が合いそうね、彼女とは」
「でしょ? アメリカの思惑も喋ってくれたしねー」
「……は?」
待った。そんな重要な事まで話してたの? この娘達。
「アメリカは今まで絶対を誇ってた軍がザイ相手に負け続きでしょ? 今オーストラリアか日本のどっちかと開戦してもアメリカは不利だから、ブロウラーで巻き返したいんだって」
「……なんて莫迦な」
ザイという脅威が目の前にあるのにオーストラリアと日本のどちらかとの戦争を警戒? 考えている事のバカバカしさに呆れを通り越して溜息がでる。
勿論E.F社やオーストラリアの軍上層部もアニマ保有国との交戦という可能性は考えてる。けどそれはあくまで『仮想』に過ぎないし、現場の人間が口にして余計な疑念や警戒を抱かせていい内容じゃない。
「『最悪』の状況に備えるのは軍の基本だけど、他国の人間に喋っていい内容じゃないでしょうに……」
機密に関わるその娘が知っていただけなのか、それとも現場レベルにまでその意識が浸透しているのか判らないけど後者なら最悪だ。アメリカはベルクトの時も戦力を出す事を渋っていたから真実味がある。
「それとライノの言動っていうか……ライノ自身も少し気になったかな?」
「なにかあったの?」
「そういうわけじゃないんだけど……なんかちょっと違うなって」
「……?」
ゲイザーの言葉は要領を得ない。ゲイザーは思っている事を割とストレートに言う方だから言い淀んでいるんじゃなく純粋にどう表現するか悩んでいるんだろう。
「社交的で明るかったけど……同じ笑顔でもイーグルやベルクトとは違う気がしたんだよね。……どう言えばいいんだろ?」
うーんと頭を捻るゲイザー。
私としてはイーグルやベルクトのような打算のない笑顔とは違う、というところである人達の顔が浮かんでいた。
「……まさかとは思うけど社長達の対外用の笑顔?」
「あ、そうそれ。政府とか他の会社のお偉いさんと話してる社長とか重役会の人達の笑顔が近いんだ。こうパッと見は笑ってるけど内心は違う、みたいな?」
「……」
言っておいてなんだけど本当にそうだとは思わなかった。
……けどどうにも気になるところもある。
(どういう事かしら? なにか隠してるのだとしても、それだとわざわざアメリカの思惑を喋ったのが腑に落ちない。今回の作戦でまだ他になにかあるのかしら?)
取り合えずこの事は社長を通してオーストラリア政府にも伝えてもらった方がいいでしょうね。アメリカの思惑に気付いてない事はないと思うけど流石に捨て置いていい内容じゃないし。
……ライノという娘の真意については考える材料がない以上、今は置いておくしかない。
「……ゲイザー。その事は誰かに話した?」
「ううん。ミュベールだけだよ」
「ならこの事は他言無用よ。余計な軋轢を作りたくないからね。ただし社長には報告する事。政府筋にもこの事を伝えてもらうようにね」
「わかった」
先行きに不安がある作戦ではあるけど好機なのも事実。アメリカ軍がここまで纏まった戦力を出す機会はそうそうない。アメリカがこの作戦を利用しようとしてるなら――――――こっちが似たような事をしても問題ないわよねぇ?
夜、基地内でファントムの姿が見えない事が気になった私は星見を兼ねて基地内を探していた。
あまり時間をかけずに見つけはしたのだが、その恰好はジャージに深く被った帽子と明らかに無断で基地を抜け出していた格好だった。問いただしてみると『自衛のために慧さんを外そうとしましたが失敗しました』なんて澄まし顔でトンデモない事をしでかしていた事を暴露し、出た答えの走ってる車に突き出したという悪びれもしない答えに私は頭を抱えたくなった。
……どうしてこうも
「……詳しく説明してもらうわよ?」
「もちろんです。そのために話したのですから」
ファントムがそんな事をしたのは鳴谷君を作戦から外す事で、成功の目がない作戦に参加させないようにするためだった。ファントムから見てもアメリカは今回の作戦が失敗するという前提で立てている。組織や国がアテにならない以上自衛しなければならない。その為に彼女が採った行動が鳴谷君を車に突き飛ばすというものだった。
「もう少し穏便にする方法もあったでしょうに」
「ちなみにミュベールさんならどうします?」
「私? 私なら出発前に一服盛るなり腹に一発強烈なのを見舞って意識を無くしている間に出発するわね」
やるなら私は他人を巻き込みたくないし、私がその事への責任を全て負う。ファントムのやり方だと人身事故になるからその車のドライバーが関わってしまう。警察沙汰になって鳴谷君と空自の関係が露見したりすると面倒な事になるのは目に見えてるし。
……私のやり方にファントムは思いっきり引いてるけど。
「……さすがは歴戦の傭兵。取る手段も荒っぽく品がないですね」
「喧嘩を売ってるの?」
そうなら買うわよ、底値で。そもそも実際に車に突き出したファントムにだけは言われたくない。
……ま、それはともかく。
「ファントム、貴女の懸念は私……というよりオーストラリア側も似たような事を考えてるわ。だから私達は今回の作戦に乗ってるの」
彼女には私達オーストラリアの思惑を知っておいてもらおう。変に動かれて余計な事をされると困るし、そうされると作戦の成功が遠のく。
「……それはどういう意味でしょうか?」
「アメリカにどんな思惑があれ、オーストラリアとしても今回の作戦を成功させれば対ザイで大きな主導権を握れる。そうすればこれから先アメリカに変な横槍を入れられる事はないわ」
……個人的には鳴谷君を参加させないよう動いたファントムを咎めたくはないけど、アメリカから余計な干渉をさせない為には私達が主導権を握らないといけない。その為にはどうしても今回の作戦を成功させる必要があった。
「どの国も考える事は同じということですか」
「否定はしないわ。それで割りを食うのはどこの国も現場なのもね。違うのはアメリカは失敗してもいいと考えてるけど、オーストラリアは成功させる為にこの作戦に参加する事ね」
最悪アメリカ本土に引き上げればいいアメリカと、ザイの直接的な脅威に晒されているアジアでは危機感に温度差がある。オーストラリアも本土への襲来こそないがそれは東南アジアで食い止めているからであり、ソコが陥ちればオーストラリア本土へザイが襲来してくる可能性は十分ある。オーストラリアにとってザイの襲来は対岸の火事ではないのである。
「それに私達は貴女達を捨て駒になんかしないし、させない。それについては賭けてもいいわ」
たとえ作戦が失敗する事になっても後の事を考えるとアニマを失うわけにはいかない。そうなった時に彼女達を守るのは私達オーストラリアだ。撤退する時にアメリカはアテに出来ないだろうし。
アニマを失って人類の反攻戦力を失ったら人類はザイに
「……いいでしょう。ミュベールさんがそこまで言うなら貴女達を信じます。しかし裏切るようなら容赦はしませんよ?」
「ええ。その時は私を好きにしていいわ。中国本土への強行偵察でもなんでもしてやろうじゃない」
私は自殺志願者じゃないから本来ならそんな任務、どんなに報酬を積まれても普通なら請けたりはしない。
が、私達の方から契約を違えた場合は別。そうなったらどんな命令でも私達に拒否権はない。これは契約書にも記載されている。
「……そこまで言いますか」
「ええ。私達は味方である内は裏切らない。私達は金の亡者じゃないから、金を積まれて雇い主を変えたりはしない。雇い主が変わるのは結んだ契約を果たしてからよ」
私達E.F社が高い報酬を取っていても重宝されているのはその信用があるから。まだ傭兵が金次第で陣営を変えると思われていた頃から、先人達はその信用を築いてきた。その信用があるから今ではオーストラリア空軍の
傭兵である私達にも譲れないモノはあるのだ。
「そんな訳だから失敗しそうになったら貴女達は躊躇なく退きなさい。その時の足止めは私達がするから。……だから、今回みたいに鳴谷君に直接手を出すのはやめなさい。私達と違って彼が怪我をすると悲しむ人がいるから」
言うまでもなく明華ちゃんの事だ。私にも心配してくれる人がいないわけじゃないけど、傭兵の私と民間協力者の鳴谷君じゃ基準が異なると言えばいいのかしら。
私達傭兵は周りの人達も納得して(勿論例外の人もいるけど)くれてる。けど鳴谷君はそうじゃない。明華ちゃんに私がバラしたとは言ってもあの娘もまだ折り合いを付けられてるわけじゃない。私達と違って鳴谷君はまだ“こっち側”に来るべきじゃない。
「わかりました。これからは今回のような事を慧さんにはしないようにしましょう。……しかし、からかう程度ならば問題ありませんね?」
「勿論、そっちは止めるつもりはないわ。私もゲイザーもそういうのは見るのもするのも好きよ?」
当人である慧が聞いたら文句を言いそうな事を言っているが、残念な事にこの場に彼はいない。慧にとっては残念な事に、慧をからかうお墨付きをファントムは手にしてしまったのである。
「ではこれからも慧さんで遊ぶのを楽しむとしましょう。……そういえばもう一つ訊いておきたいのですが」
「まだ何かあるの?」
「――――――今回の作戦、成功率は決して高くはありません。それでもあなたが戦う理由はなんですか? 政府や社の思惑ではなくミュベールさん自身の理由を聞かせてください」
一転して真剣な
「……どういう風の吹き回し? 私が戦う理由を気にするなんて」
「少し興味が沸いただけですよ。私にとって勝負とは自分の勝ちやすい環境を整えて行うものです。しかし今回の作戦はそれがほとんど出来ません。ルールも舞台も固定され、成功率そのものも低い。まともな人間なら避けるであろう勝負に乗ろうとしているわけですから興味も沸くというものです」
まぁ確かに。
いくら三国の合同作戦とはいえ、絶対的な戦力で言えばザイの方が圧倒的に多い。練度でカバーするにも限度がある。ファントムの疑問も当然と言えば当然か。
「……私はね、ファントム。人の存亡は人の手で決めるべきだと考えてるの。こう言っちゃなんだけど、私は『人間』という種が絶滅するとしたら環境への不適合ではなく自滅だと思うのよ」
「それは私達が戦う理由の否定ではありませんか?」
私の暴論とも言える言葉にファントムが異論を返してくるけど、私はそうは思わない。
「違うわ。人間という種の絶滅が自滅であってもソレは人間という種の行き着く先。……少なくとも、ザイという『外敵』によって滅ぼされるものじゃない。貴女だって人類が永遠に存続するのは無理がある事ぐらいわかるでしょ?」
「それは……そうですが」
ファントムの価値観……最優先事項は人類の救済だから理屈では判っていても納得は出来ない、というところかしら?
「そう難しく考える必要はないわよ。要約すれば人間の行く末は人間で決めるべき、ってだけだから」
沖縄の時もだが時折傭兵ではなく学者のような事を言うミュベール。なんと言うか……人類の存亡に対して俯瞰的な考えである。
「ま、私がザイと戦ってるのは案外嫉妬かもしれないけどね?」
「嫉妬……? あなたがザイに……ですか?」
先程までとはあまりに違う理由に、珍しくファントムが困惑する。というのもザイに対して嫉妬する、という感性が理解出来ないのだろう。
「そ。私達パイロットより巧く空を飛ぶ事に対する、ね」
そう言いながらミュベールを見て、実はこっちが本心なのでは? とファントムは思わざるを得ない。
……少なくとも、先程の自滅云々よりは余程納得出来る理由である。
「いずれにしても私達が勝たないといけない事に変わりはないわ。――――――上海を奪還し、生きて帰る。作戦の規模が少しばかり大きいだけでやる事はいつもと変わらないでしょう?」
私達がどんなに考えを巡らせても、ソレが政治的なモノなら私達に出来る事は直属の上司に進言する事まで。そこからは政治家の仕事であり、私達の手が届くところじゃない。
「そうですね。確かにその通りです。……これだけの規模の作戦を指して『少しばかり大きい』というのには賛成しかねますが」
「ふふ、いいじゃない。貴女達は今回それぐらいの意識でいいのよ。――――――血を流すのは私達大人の役目だから」
遠回しに“子ども”扱いされた事があまりに予想外だったのか、珍しくファントムがきょとんとした表情で見上げてくる。すぐに再起動して子ども扱いした事に抗議してきたけど、それを軽く受け流して早朝の出発に備えて休みなさいと言うと渋々ではあるけど退いてくれた。
ファントムと別れても私は宿舎に戻らず、曇が出ていつもより星の見えにくい空を見上げながら各国の思惑が絡み合う今回の作戦に一人思いを馳せる。
(……何も問題が起きなければいいんだけど)
――――――そう願うミュベールはまだ知らない。
この作戦で初めて人類はアニマを失い、更に各国のアニマ研究に大きな影響が出る“事件”が起きる事を。
――――――もっとも、彼女自身ソレを知るのは事件が終わってからになるのだが。
内容としては慧とライノがしていた話の焼き直し&上海奪還作戦における各国への所感回
お互いを利用しようとしているオーストラリアとアメリカ。違いとしては失敗ついでにオーストラリアと日本の戦力を削れればと考えているアメリカに対し、オーストラリアはアメリカの戦力を使って作戦を成功させ対ザイでの主導権を握ろうと考えています
そしてファントムと二人だと色々と饒舌になるミュベール。この二人の会話を考えるのは少し楽しみでもあります
ライノからナニカを感じ取ったゲイザー。果たしてゲイザーがライノに感じたモノはなんなんデショウネー