ガーリー・エアフォース Sisiter's Vaportrail   作:liris

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ISもまだ序盤なのに手を広げるなんて我ながら莫迦だなぁー、と呆れるしかない。

多くの皆様初めまして。そして一部の方々いつもありがとうございます、lirisです。
一応メインはISの方なのでこちらはいつストールしてもおかしくないレベルの更新速度です。
そんな作者の作品ですがお愉しみ頂ければ幸いです。


Order1 南洋のある姉妹

 ――――――南太平洋。

 突き抜けるような蒼い空と、そこから降り注ぐ光によって彩りを変える海。その空に似つかわしくない鋼の鳥が舞っていた。

 

≪こちらAQUILA01。空域に異常なし。これより帰投します≫

≪了解AQUILA01。帰投を許可する≫

 

 コールサイン、アクィラ01と呼ばれたパイロットは哨戒空域にザイがいない事を確認して帰投する。

 

 ――――――ザイ。二年前、中国のタクラマカン砂漠に現れた正体不明(アンノウン)の飛行体。中国語で『災厄』を意味する名を付けられたソレは、僅かな期間で中国大陸の空と大地、――――――そして多くの命を蹂躙した。

 ザイはHiMATという人間の乗る戦闘機では不可能なレベルの超機動と、電子システムはおろか人の感覚すら妨害するジャミング能力――――――EPCMを持っているため通常の戦闘機・パイロットでは瞬く間に墜とされてしまう。

 そのため現状ザイに対抗する手段は二つ。一つは既存の戦闘機を改修し、HiMATならびに対EPCM能力を付与した機体である『ドーター』に『アニマ』という自動操縦機構を搭載した一種の無人機によるもの。もう一つはドーターと同じく、既存の戦闘機を改修したAZCC(対ザイ戦闘対応機)をアニマではなく技量が突出しているエースパイロットが運用するというものだ。

(アクイラ1は後者にあたる)

 

 ――――――もっとも、南太平洋にザイはほとんどいない。防衛ラインになっている東南アジアには正規軍やPMCの航空隊が多数配置されていて、ザイといえども簡単には突破出来ないからだ。なので実質的にパイロットや機体のテスト飛行になっている。(稀に遭遇する時もあるので対空装備はキッチリ積んでいるが)

 

 

 何事もなく基地に戻り、ヘルメットを脱いで機体から降りると顔にあたる風が心地いい。この開放感だけは空の上では味わえないものだった。

 

(空の上もいいけどあそこじゃ風を肌で感じれないものね。……ベイルアウトするなら別だけど)

 

 その時は風を感じる余裕なんてないだろう。……世界には出撃=ベイルアウト、なんてパイロットもいるみたいだけど。

 

「お疲れさん、スタークス。今回もザイはここいらにはいなかったみたいだな」

 

 風にあたっていたら整備スタッフの主任からさっきの哨戒の様子を当てられる。消耗らしい消耗をしてないから当然と言えば当然なんだけど。

 

「ええ。やはり東南アジアを越えてくるザイはほとんどいませんね。……全くないわけじゃないのが面倒なところですが」

「確かにな。ゼロならわざわざ武装して飛ばなくてもいいものな。ああ、それとさっきお嬢がこっちに来たぞ。『ミュベールはまだ戻ってない?』って」

「ゲイザーが?」

 

 お嬢ことゲイザーはエルジア・ファーバンティ(E.F)社の保有しているアニマで私の僚機だ。今日はドーターのチェックで待機だったけど。

 

「戻ったら社長室に来るように、ってさ。またなにかやったのか?」

「またって……人が飛ぶ度に何かするような言い方はやめてくれません?」

 

 ここ最近は特に何もしていない。……シュミレーターでやった機動を実際に試してオーバーGしかけたけど。

 

「ま、負担はかけても壊れるような真似をしない限りは大目に見てくれるさ。それじゃあな」

 

 そう言いながら主任はハンガーの方へ向かって行く。主任は私達アクイラ隊の整備責任者でもあるから私の機体のチェックに入られるんだろう。

 ……私も社長室に行かないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

「あ、ようやく来た」

 

 社長室に入ると既にアニマであるゲイザーが社長と一緒に待っていた。

 

「申し訳ありません。少し遅れました」

「構わんぞ、スタークス。……さて、お前達アクィラを呼んだのは他でもない。名指しで任務が入ってな。アクイラの両名には日本の小松基地へ行ってもらう」

「日本に?」

「あぁ。数日前ザイが戦力を整えて日本へ仕掛けたのは知っているな? 日本はこれまでアニマを分散して配置していたが、今回の一件で小松にアニマを集中させ運用性と即応力を上げる方針にしたようだ」

 

 ……その一件なら知っている。ザイは散発的に現れる事が多いが、それを逆手に取られたカタチになる大規模の襲来だったためかなり危うかったと聞いている。

 

「と、同時にPMCで唯一アニマとドーターを保有している我が社にオファーが来た。オーストラリア()正規空軍()とも協議した結果、両者からの了承も得た。対ザイ戦の最前線でその技量と身体能力を発揮してこい」

 

 視線だけゲイザーに向けると口に手を当ててクスッと笑っている。……自分でも対G能力がアレな自覚はあるけど少しは隠してほしいわね。

 

「行くのは私達アクィラだけですか?」

「ああ。東南アジアの防衛を考えると他の連中には残ってもらう必要がある。何より実戦アレルギーとも言える日本だ。大規模で派遣してもいい顔はしないだろう」

 

 私とゲイザーのアクィラだけ派遣するのはそういうわけね。……しかし日本は対ザイの最前線になってる自覚があるのかしら? 非戦を謳うのは悪い事ではないけど、戦うべき時と相手にはそうすべきだと思う。でないと本当に護るべきものを喪う事になるのだから。

 

「ミュベールの機やわたしのメンテナンスやサポートはどうなるの?」

 

 ゲイザーがサポートの事を訊くけどアニマである彼女にとって重要な事だ。いくら雇い主とはいえ公開出来るモノとそうでないモノがある。とりわけゲイザーの事は基本的に後者だ。アニマである彼女とそのドーターは機密の塊だし。

 

「それに関してはアクィラの整備班と機材を輸送機で同行させる。無論、日本に着くまではお前達以外の護衛もつける。予定としてはベトナムで補給を行い、その後沖縄まで護衛させる」

 

 社の護衛部隊はそこまでだ、と言外に語る社長。……本当は小松までほしかったけど仕方ないわね。沖縄にPMCの航空隊が入れるだけマシと考えるしかないか。

 ……と、肝心な事をまだ聞いてなかったわね。

 

「報酬と向こうでの待遇はどうなっていますか?」

「報酬の方は相場の4割増しといったところだ。当初向こうの提示額は相場と大して変わらなかったんでな。ウチのトップとアニマを最前線で働かせるのにそれは安過ぎるという事で交渉人(エージェント)が釣り上げた」

 

 交渉人(エージェント)が報酬を増額させた、という事はそれだけ私達の実力を評価しているという事でもある。

 ……ゲイザーの分も請求してたのには驚きだけど。

 

「待遇は中尉相当で場合によっては現場での指揮を執ってもらう。あまりない事だが」

「……いいんですか?傭兵が正規軍の指揮を執って」

「通常の航空隊ならともかく、アニマで構成される部隊だ。並みの指揮官ではアニマを持て余す。お前ならゲイザーでアニマの現場指揮に慣れているだろう」

 

 それ、全然『場合によっては』じゃないわ。結構な確率で指揮官決定じゃないっ!

 

「ミュベール」

「なに? ゲイザー」

「わたしはミュベールが指揮を採ってくれた方が安心できる。だから……諦めて♪」

 

 笑顔でそんな事を言ってくれるゲイザー。最後の一言はどこで覚えてきたのかしら……。

 

「可愛い妹分からのオーダーだ。……やってくれるな?」

 

 ……社長までそう言いますか。

 仕方ない、覚悟を決めますか。

 

「わかりました。アクィラ隊、小松での任務を受諾いたします」

「ではアクイラの両名は日本の小松に赴き、同地で対ザイの作戦にあたれ。以上だ」

「「はいっ!」」

「なら、ゲイザーは下がっていい。ミュベール、お前にはもう少し話がある」

 

 はーい、と言って部屋から出て行ったゲイザー。……あとで持っていく私物をまとめさせないとね。

 

「……それで私への話とは?」

「ゲイザーに関する話だ。今回の仕事でゲイザーは他国のアニマと初めて会う事になるわけだが……お前から見てどうだ? 問題なくやっていけると思うか?」

 

 あー、そう言う事ね。早い話社長は――――――

 

「心配なんですね。ゲイザーを外に出すのが」

「……子供のいない私にとってゲイザーは娘のようなものだからな。……私に限った話ではないが」

 

 それは確かに。ゲイザーはウチの社員……特に子供のいない人達からは男女問わず可愛がられてるし。

 ……私も人の事は言えないけど。

 

「それなら大丈夫でしょう。あの子は社交的……というより誰とでも仲良くなりますから。それに空戦能力も最初は危なっかしいところがありましたが、今では単騎でもある程度は対処出来るようになりましたし実力的にも大丈夫でしょう」

 

 それにあの子には空戦における切り札がある。先制攻撃なら確実にザイを墜とせるし、味方のフォローもあの子の演算能力があれば私達より上手く使える。

 

「それを聞いて安心したよ。ではミュベール、ゲイザーの事を頼むぞ」

「ええ、大事な妹分ですから言われなくてもそのつもりです。……というより彼女が墜とされたら私、みんなからリンチされかねませんし」

「そうだな。そうなったら私も止めるかどうか怪しいがな」

 

 私も社長もお互いの言葉に思わず笑ってしまう。それだけゲイザーはみんなから好かれているから何かあったら一大事だ。(戦力的にも私の身の安全的にも)

 

 ――――――だから、あの子は決して墜とさせない。彼女のパートナーとして、そして何よりあの子の姉代わりとして。 

 




時間軸としては一巻の小松空襲からファントムが小松に来る間です。

ちなみにゲイザーはある機種のオリジナル派生機です。
オリ主であるミュベールの機も次話で公開します。
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