ガーリー・エアフォース Sisiter's Vaportrail 作:liris
そしてガーリーエアフォースの新刊とエスコン7の発売が間近に迫りました。
エースの皆さん、資金と時間の準備は整ってますか?
※抜け落ちていたアンロード加速についての説明を修正しました
雲は少なく、厄介そうな気流もないコンディションは良好な空。けどその空にいる私の気分は良くないを通り越して降下中だった。
「……憂鬱だわ」
ミュベールは傭兵なので
「……なんだってこんな事になったのかしらね」
ミュベールが文句を言いながらも飛ぶ理由。それは一時間前に
一時間前、小松基地・第三格納庫。
私とゲイザーがサンカクに来るともう見慣れた鳴谷君とグリペンとイーグル、そして八代通室長とその傍らにいるエメラルドグリーンの髪の少女がいた。
間違いなく彼女が三沢から来たアニマ、ファントムでしょうね。ゲイザーも彼女をみて「アニマ……」と私にだけ聞こえるような大きさで呟いてるし。
「よし、全員揃ったな。突然の発表になるが本日をもっておまえ達、小松基地所属のアニマとアクイラ隊は空自の指揮系統から独立することになった」
八代通室長の発表に私とゲイザー、そしてファントム以外のメンバーは頭に?マークを浮かべていた。
「言っておくが所属そのものは変わらず日本国自衛隊だ。ただ技本や統幕と同じく防衛大臣の直轄になる。正式には独立混成飛行実験隊、略称『独飛』。要はアニマ・ドーターを中心とした集中運用部隊だ」
「これから私達は一つの部隊として戦う、って事よ。これまで日本のアニマは個別に動いていたでしょう? それを一つに纏めてザイへ対処しやすくするの。同じ迎撃でもバラバラに指示を出すのと一度に纏めてするのとじゃ上がるのにかかる時間が違うでしょう?」
私の説明で判ってくれたのか納得してくれたようだった。そして私の説明をファントムが補足する。
「更に補足するなら私達は特殊なメンテナンスを必要としますから保守・整備の観点からも一つにまとまっていた方が運用しやすいわけです」
「運用、しやすい……?」
「自衛隊でドーターの維持管理ができる部局は現在、お父様の特別技術研究室しかありません。今までは技術者が各地に分散してアニマを見ていましたが、これでは保守部材も冗長ですし技術者同士のノウハウの共有も困難です。なにより私達と通常の航空隊では性能が違いすぎて共同ミッションが行えません。一部隊に集約することでそのあたりも解決できるというわけです」
私のS-32もだけど既存の機体がベースとはいえドーターは別の機体といえるほど
と、いうよりこれまで分散配置していた方がおかしいんだけど。
「ん? それじゃあなんで今までそうしなかったんですか? 話を聞いてる限りじゃ分散させてた意味ってあまりないじゃないですか」
「理由は二つ。一つはアニマの素体となった機体が各基地所属の機体だったことだ」
苦虫を噛み潰したような顔で説明する八代通室長。
――――――ってちょっと待った。
「……まさかとは思いますが……ベースの機体って各飛行隊から所属を変えずにそのまま使ったんですか?」
「……ああ、そうだ。
役所はとにかく動くのが遅いからな、とぼやく八代通室長。政治の割りを現場が背負うのはどこの国でも変わらないらしい。
「そしてもう一つは一つ目が原因でもあるんだが、各飛行隊が対ザイの切り札として手放さなかったんだ。防空の要としてな」
あー、それは仕方ないでしょうね。ザイを相手取るとなると通常戦力だけだとキツいものがあるもの。
「が、先の小松空襲でアニマが分散していることのまずさを上もようやく自覚した。だから今回の集結とアクイラの招聘が通ったんだ」
賢者は歴史から学び愚者は経験から学ぶっていうけど、それで言うなら自衛隊は間違いなく後者ね。いつか手遅れにならなければいいんだけど。
「はい、八代通室長。質問ですっ!」
「なんだ、ゲイザー?」
「指揮系統はどうなるんですか? 独立といっても好き勝手に飛ぶわけじゃないですよね?」
……訊こうと思ってたけどゲイザーに越されたわね。私が訊くかゲイザーが訊くかの違いだから別にいいんだけど。
「部隊全体の指揮は俺が執り、現場での指揮官は基本的にはミュベールだ。が、場合によっては分散して動いてもらうこともあるからな。その時はアクイラとバービーで分かれてもらうことになる」
――――――ミュベールの懸念は戦力としてではなく、アニマ達の性格にあり、そしてそれは正しかった。
「……ねぇお父様。その子、誰?」
イーグルにしては珍しく硬く、棘のある声と視線。……どうやらファントムが八代通室長の傍にいるのが気に喰わないらしい。
「あら、これは失礼いたしました。三沢基地より参りましたRF-4EJ-ANM ファントムⅡです。この独立混成飛行実験隊のメンバーとして、これからあなた方のチームメイトになります」
「F-4ぅ?」
ファントムの自己紹介に鼻を鳴らすイーグル。
……気のせいかものすごく嫌な予感がするんだけど。
「もう全部退役したと思ってたけどまだ飛んでたんだ? しかも偵察機改修型? そんな時代遅れの利用品がイーグルのチームメイト?」
「…………」
イーグルの言葉に傍にいるゲイザーの
……世代的に言えばF-15よりF-117の方が新しいんだけど、ゲイザーの素体になったE/F-117Gも実戦から離れたF-117を改修したものだからイーグルの言い方に思うところがあるんでしょうね。
「機体年齢二十歳そこそこのお子様が大口を叩くものですね。相手の実力を満足に測れないから先の防衛線で大恥をかいたのでは?」
「どっちもおばさ……むぐ」
余計な事を言おうとして即座に口を塞がれるグリペン。
……お願いだから空気を読んでちょうだい。
「少なくとも私が防空戦に出ていればもう少し味方の被害を抑えられたと思いますけど」
「……っ!」
あからさまな挑発と宣戦布告にイーグルは自身の激情を抑える事無く――――――
「それじゃあ勝負しよう。実際に飛んでどちらが強いのかはっきりさせる」
――――――ファントムに挑戦状を叩きつけた。
「あらあら、どうしましょう?」
困ったように笑うファントムだけど目は笑っていない。――――――アレ、どう見ても
「いいだろう。ファントムの試験飛行と交流を兼ねて
「あの、すいません。ダクトってなんです?」
……まぁ、民間協力者の鳴谷君は知らないわよね。
「DACTっていうのは異機種間空戦訓練……簡単に言うと違う機種同士で行う模擬戦の事よ。これから頻繁に聞くと思うからこういった用語も覚えていった方がいいわ。空を目指すならね」
「はい……」
民間の航空系を目指すならDACTや
「ああ、それとDACTにはグリペンとミュベールにも参加してもらうぞ」
「はい?」
待った。今の流れでなんで私とグリペンまでDACTに?
「お前とゲイザーはスクランブル待機には入ってもらってるがザイ相手に出撃したことはまだないだろう。俺もだがそれ以上に上がお前の実力を知りたがっているんだ。高い報酬を払って雇っているからな」
……それを言われると私としては断れない。私の現状は戦いもせずに報酬を受け取っている、という状態なので実力を見せろと言われると断れない。
「それに言っただろう。交流を兼ねて、と」
「……わかりました。そういう事なら仕方ないですね」
「よし、一時間に始めるから各自準備を進めておくように」
――――――以上がミュベールのテンションが低い理由。早い話、いろんな意味で『割りに合わない』からだった。
ちなみにゲイザーはDACTには参加していない。電子戦機にDACTをさせる意味は正直薄いので訓練空域の
(ま、やるからには負けるつもりはないんだけど)
気が乗らない模擬戦だろうが始まればスイッチが入ったように気持ちが切り替わるミュベール。こういった切り替えの早さは流石だった。
≪AQUILA01、ならびにBARBIE隊各機、訓練状況を開始する。タイム・アット・ワンエイト≫
開始三分前が告げられ、上がる前のブリーフィングで伝えられた内容を改めて確認する。
――――――集合ポイントに四方向から向かい、そこから軌道を交錯させてから交戦開始。使用出来る兵装は実戦同様各種
会敵ポイントに接近すると、ファントムから午後の紅茶を勧めるような上品な口調で通信が入る。
≪自信がなければ三対一でも構いませんよ。その方が早く整備に戻れますから≫
≪キーーッ! ホンッとにムカつくロートルっ!! いいよ、そんなに言うんだったら望み通りあなたから墜としてあげるっ!≫
そう言うなりイーグルは速度を上げて一直線にファントムに向かって行く。私とグリペンの事は完全に頭から抜けているようだった。
(あれだけ挑発されたからイーグルはファントムと先にやり合うつもりみたいね。グリペンは……イーグルと一緒にファントムを先に相手取るようね。)
グリペンとイーグルは何度も模擬戦をしているから互いの実力をよく知ってる。だから未知数のファントムか私を先に狙う、という考えは悪くない。
……イーグルは挑発されて気に入らないから、とかの
(彼女達には悪いけどファントムがどれほどなのか測らせてもらいましょうか)
そうしてミュベールはファントムを観察するために高度を上げて三機から距離を置く。
ミュベールが高度を上げると同時に≪FOX2-!≫というイーグルの声が入り、戦術マップにイーグルからファントムへ向けて放たれたミサイルの輝点が現れる。それらは全てファントムへ向かうも、戦術マップに変化はナシ。どうやら全て躱したらしい。
≪甘い、甘いっ!≫
嬉々とした声にマップを見るとイーグルのが完全にファントムの後ろを取っていた。先ほどよりも距離が近く、アニマの火器管制能力なら間違いなく必中距離。
なのだが――――――
≪これで! おしまい!≫
≪BARBIE02、ロスト≫
イーグルのフィニッシュ宣言と同時に聞こえる八代通室長の撃墜判定に耳を疑う。マップ上でもイーグルのマーカーは消え、ファントムは残っている。
が、次の瞬間ファントムのマーカーはあっという間にグリペンの背後に現れる。いくらアニマでもおかし過ぎる。
≪FOX2≫
(ECM? いえ、イーグルとグリペンの反応は正常だったから違う。ECMならこの二機の反応にも影響があるハズ……っ、まさかっ!)
≪BARBIE01、ロスト≫
ある事例を思い出したミュベールは一つだけ立ち上げていなかったディスプレイに
結果は――――――
(ビンゴッ! まさかとは思ったけど本当にデータ・リンクに細工しているとはね)
DACTでここまでやる?と思いつつもミュベールはそれを頭から追い出し、ファントムの相手に集中する。
――――――その前に、
≪ファントム。生憎だけど私に『ソレ』は通じないわ。貴女の位置――――――私には『見えてる』わよ?≫
一応イーグルとグリペンには聞こえないよう個別チャンネルで通告し、ループを描きながらファントムの上を取りに行く。
自衛隊側のデータ・リンクでは私とファントムの位置は離れているからマップで見るならあまり意味のない機動。が、今私が見ているデータ・リンクではファントムは私の背後につきつつある。それを判っているからこそファントムの上を取りにいく機動。これでファントムに私の言う事がブラフじゃない事が伝わったハズ。
(さぁ、お手並み拝見といこうじゃない)
そう言うミュベールはマスクの下で獰猛な笑みを浮かべていた――――――。
繰り広げられるミュベールとファントムの空戦。お互いの翼が白い尾を引くドッグファイト。レベルの高い空戦に慧は言葉がなかった。
「すげぇ……」
自分達がなにも出来ずにいたファントム相手にミュベールは互角に渡り合っている。
……あれが南洋エリアで最高レベルと言われるパイロット。『エース』と呼ばれる人達の技量なのか。
ふと、何気なくグリペンを見ると頭に?マークを浮かべていた。
「ミュベールの機動。あれ、おかしい」
「おかしい…ってなにがなんだ?」
いや、アニマと互角に戦えるっていう時点でおかしいと言えばおかしいんだが。
「9Gを超える機動を何度もしてる。アニマじゃない人間があんな機動をしたら普通失神するのにおかしい、変態」
「変態って……」
「私が同じことをしたら間違いなく慧は失神する。それを当たり前にやるミュベールは変態」
……一瞬納得してしまった。っていうかそれだけの機動をしてるのになんでミュベールさんは平気なんだ?
「それにミュベールはファントムの動きを捉えてる。私とイーグルはファントムを捉えられなかったのに」
「俺達より経験があるからじゃないのか?」
「そうかもしれない。けどなにか、変」
変、か。俺にはなんなのかさっぱりだがグリペンはなにか感じるものがあったのかもしれない。
――――――理解できない動きをしたファントムとそのファントムを捉えるミュベール。
疑問を抱きながらも少しでも自分達の糧にする為、慧は二人を見続ける――――――
一方、ミュベールとファントムはお互い有利なポジションを取れずにいた。
(流石にやるわね。このままだと決着がつかないか。なら――――――)
仕掛ける事にしたミュベールはファントムが上方に見えた瞬間、コブラで強引に機体をファントムに向ける。ミュベールが仕掛けに来た事を察知したファントムは加速してミュベールが機首を向けきる前にスプリットSでミュベールの背後をとる。
(なら、これで――――――っ!)
機体をそのままクルビットさせ、ファントムの
≪FOX2ッ!≫
AAMを放つもファントムはチャフとフレアを撒きながら高度を上げ、AAMを躱す。ミュベールもアフターバーナー全開でファントムに喰らいつく。
が、突如としてファントムの姿が視界から消える。
(消えたっ!? )
――――――次の瞬間、ロックオンアラートが鳴り響き、ミュベールは咄嗟に機体を右方向へバレルロールさせるもファントムはしっかりとついてくる。幸い、今のでアラートは止んだがファントムが後ろにいるのは変わらない。
ファントムが行ったのはアンロード加速と呼ばれるもので、旋回中に操縦桿を緩めて0G状態にし、そこから一気に機体をフル加速させてオーバーシュートさせた機体に喰いつくものだ。
(イチかバチかだけど……上手くいって、ちょうだいね……っ!)
右エンジンカット、左エンジンON、強烈な横方向のGに視界と意識が振り回されるも意識は手放さない。感覚に頼って両エンジン最大出力、ヘッドオンに持ち込み――――――
≪FOX3!≫
Gに翻弄された身体がギシギシと悲鳴を挙げるけどそれに耐えながら機体を加速させて機関砲を撃つ。水平版のクルビットと言うべきか、独楽のような水平方向での反転という荒業だったが目論見通りにはいかなかった。
ファントムの機体中央を狙った攻撃は右の主翼へに逸れ、ダメージ判定はあるものの撃墜判定には至らなかったからだ。
――――――時間にしてあとコンマ数秒。その僅かな時間を耐えていれば、撃墜判定までもっていけただろう。
両者の距離は大きく開き、仕切り直しとなったのでミュベールはマスクの下で乱れた呼吸を整える。本来ならここからまたやり合うのだが――――――
≪AQUILA01ならびにBARBIE03、状況終了だ、AQUILA02も含めて全機戻ってこい≫
――――――唐突に八代通室長から訓練終了の命が入ってきた。
≪……まだ決着はついていませんが?≫
≪ならこう言ってやる。――――――やり過ぎだ、アステル。確かに実力を見せろとは言ったが訓練であんな機動をするやつがいるか。降りたら即刻検査を受けろ。訓練でやり過ぎて本番で使い物にならんなんて認めんぞ≫
……確かに、今のはどう考えても訓練でやるようなモノじゃなかったわね。
≪……判りました。AQUILA01、RTB。AQUILA02、哨戒はもういいわ。戻りましょう≫
≪AQUILA02、了解。……アステル、室長の言う通り無茶し過ぎだよ? 見ているこっちが冷や冷やしたよ。あれだけやる気がなかったのにいざ始めるとコレだもん≫
心配半分、呆れ半分といったゲイザーに返す言葉がない。
……自業自得ではあるんだけど。
基地に戻った私は即刻医務室に連行された。どうやら八代通室長の『検査を受けろ』は強制だったらしい。
一通りの検査を受け、問題ナシと判断されると私はすぐに八代通室長の元に向かった。ファントムの採ったやり方について一言言う必要があったからだ。
「失礼します」
「なんなんですか、あのアニマは」
私が八代通室長のいる喫煙室に入ると、鳴谷君がファントムの事で問い詰めていた。
「鳴谷君? あなたもファントムの事で話があったの?」
「そうです。ミュベールさんも?」
「ええ。実戦で敵相手ならともかく、訓練であんな仕掛けをするなんて度が過ぎていますから」
「ミュベールさんはあいつがなにをしたのか分かってたんですかっ!?」
「データ・リンクに細工をされた、っていう程度ね。具体的に何をされたかまでは判らないわ」
「それなんですけど……」
私が医務室に連行されている間、彼らは彼らで一悶着あったらしい。その時、グリペンがファントムがした『仕掛け』を見破った。
ファントムの行った仕掛け――――――それはデータ・リンクに虚偽の位置情報を流し、誤認している内に有利なポジションをとっていた、というものだった。
私達は相手を常に視認出来るわけじゃないから、ただ相手に勝つという面でみるならこの上なく効果的な方法。
いえ、そもそも――――――
「あの方針を実戦に持ち込むなら私達アクイラは背中を預けられません。下手をすれば囮として切り捨てられます」
戦力として問題なくても信用出来るかは別問題。それでいうならファントムは問題アリとしか言えない。
「では訊くが、君達はあいつのことを悪人だと思うか?」
「……難しいですね。利用される側から見れば彼女は許せませんが……それで多くの敵を墜とせるなら大局的には正しいですから」
この判断は難しい。個人レベルと部隊・組織規模では見解が違ってくるものね。
「ミュベールの考えは少し近いな。……あいつの価値観・行動理念は人類の救済だ。『人間』ではなく『人類』を、というところが厄介なところだがな」
「……少数を切り捨てて多数を生かすという事ですか……」
「でもそれと今回の行動がどう繋がるんですか?」
「人類を護るためにはまず自分が生き残らなければならない。だから自分が戦いやすい環境を作る。……妨げになるものは排除し、反抗的な味方はねじ伏せてな」
……あまりの価値観に頭が痛くなった。確かにその考えは間違いとは言い切れない。
だけどそれは――――――
「……それ、戦えるのが『彼女』だけ、という前提ですよね?」
「……そうだな。あいつは自衛隊にとって最初のアニマで俺にとってのも処女作だったからな。周囲の期待も大きかったから一人で全て背負おうとしたんだろう」
「だから彼女は今日のような事をしたんでしょうね……」
戦力上の味方はいても背中を託せる『仲間』がいない……。一人で背負おうとしたが故にああなったんだとしたら――――――
「……なんというか、寂しいですね」
鳴谷君の言葉に私達の間に沈黙が降りる。二人も思うところがあるようだった。
「そんなわけで俺としてはなんとかしてやりたいんだが……どうだ? 俺相手だとあいつは猫を被っているから駄目なんだ」
珍しく疲れを含んだ投げやりの口調。普段の自信さが感じられない声だった。
「……すみません。俺とグリペンはもう決裂済みです」
「そうか……そっちはどうだ?」
「私達はまだ直接話していないのでなんとも言えないですね」
「なら頼む。ファントムのことでなにか気づいたら俺に上げてくれ。グリペンとゲイザーにもそう言っておいてくれ」
そう言って八代通室長は部屋から出て、私と鳴谷君も執務棟から出る。
――――――空は変わらず青いままだけど、私達の胸の内に立ち上がった暗雲は消えてくれるか判らなかった。
おまけ 執務棟から出てお互いのパートナーと合流した小話
「そういえばミュベールさんってなんであれだけの動きが出来るんですか? グリペンは9G以上の機動を何度もしてる、って言ってましたけど」
「私は訓練で瞬間的にだけど12.6Gまで耐えた事があるからね。11Gまでなら耐えられるから機体のGリミットも11なの。流石にそれ以上は危険域だけど」
「やっぱり変態」
「おいっ!?」
「……グリペン? 少しOHANASHIしましょうか?」
「あーあ。まぁ死ぬことはないから大丈夫かな?」
その後、グリペンはミュベールを見るとビクつくようになったとかならなかったとか。
キリのいいところを目指していたらここまで引っ張ってしまいました。
空戦描写の拙さには全力で目を瞑ってください、お願いします。
ちなみに12.6は某狙撃手Gの記録を参考にしています