ガーリー・エアフォース Sisiter's Vaportrail 作:liris
本来は一話に纏める予定だった海鳥島の一戦目ですが、長くなりそう&場面転換が多くなったので分割です。次話は出来るだけ早く上げるつもりです。
(残業のピークが終わったのでたぶん来週ぐらいには)
自分の執筆が止まっている間に新しい作品が投稿されて他の方々のアイデアには脱帽するばかりですね。
それではどうぞ。
「本日〇六三〇、東シナ海南西部の防空識別圏にザイが侵入した。侵入してきたザイは那覇基地の自衛隊機と嘉手納の米軍機がスクランブルしたが双方の被害が大きく撃墜はされていない。……問題はこのあとでな。観測機の報告によると近隣の無人島に落下したらしい」
「……落下? ザイがですか?」
鳴谷君が信じられない、という反応をするけどそれは私も同意見。あの連中が自滅してくれるとはどうにも思えない。
「本当にそうならよかったんだがな……。これ、なんだと思う?」
「これは……」
プロジェクターによって映し出されたのは山がちな小島の空撮写真。山に生い茂る木々の中にその“異物”はあった。
――――――水晶のような輝きを持つ正六角形の柱。それらが立ち並び、柱同士も光の線で結ばれて幾何学的な紋様を織りなす姿は幻想的ですらある。
……これが自然のものならよかったんだけど。
「……自然のものじゃない。というかどう見てもザイのものですよね、コレ」
「落下したっていうザイの破片ですか?」
ゲイザーの言う通りあれは間違いなくザイによるもの。そしてこのサイズで破片と言うのは考えづらい。――――――なら、どう考えてもロクなものじゃないでしょうね。
「そうであってくれればよかったんだがな。諸々の分析結果から判断すると山頂のものはレーダーサイト、地形を利用したシェルター、そして柱を結んでいるライン。間違いなくこいつは連中のFOBだ」
「「なっ!?」」
FOBっ!? だとしたら最悪だわ。スライドを見る限りまだ構築途中みたいだけど完成したら厄介な事になるのは目に見えてる。
「……あの、すいません。FOBってなんですか?」
「FOBはForward Operating Baseの略で……簡単に言うと前線基地の事よ」
「前線基地っ!? あいつらそんなことができるんですかっ!?」
鳴谷君が驚くのも無理はないわね。私――――――というよりE.F社でもザイが何らかの基地などを設営している事は予想していた。けど実物を見るとやっぱり驚きを隠せない。
「……意外だな。E.F社にいるおまえ達なら見た事ぐらいはあると思っていたが」
「南洋エリア――――――というか東南アジア方面はわたし達みたいな傭兵だけじゃなくてオーストラリアを中心に正規軍も結構な数が常駐していたのは八代通室長も室長は知ってますよね? だから現れたザイは全部撃破してこれたのでわたし達もザイのFOB構築を見るのは初めてです」
とは言っても私達もベトナムから先に進めていないから、そこから中国へ向かっていけばおそらく見つかるでしょうね。
ザイが初めて観測されてから約二年。その間無補給で動き続けた、っていうのはちょっと考えにくいし。
「画像を見る限り建築、というより予め構築されていたものを展開しているみたいですね。やり方としては
「なるほど。墜落したと思われていたザイは意図的に降下・突入したものだった。通常の制空型に混じっていた輸送型が地上に到達後、自動的に搭載物を展開して基地設備を構築中。そういうことですね?」
「そういうことだ」
私とゲイザー、そして八代通室長とファントムで話を進める。
……一般人の鳴谷君はともかくグリペンとイーグルはこういった事は苦手みたいね。頭の上?マークが見えるし。
「なら、上空にいるのは多分護衛ね。結構な数がいるからまともに相手をするのは骨が折れそうね」
「構築が完了するまで我々を寄せ付けないつもりかと」
「うわぁ、少しは手を抜いてくれたっていいのに」
ゲイザーの言葉には同意なんだけどそれをしてくれるなら
「構築が終わるのどうなるの?」
「いいか悪いかで言えば、まぁ最悪だな」
そういって八代通室長は画面を切り替え、東アジアの地図が映し出される。地図には等高線を思わせる複数のラインが重ねられてそのうちの一つ――――――沖縄・台湾・フィリピンを結ぶラインがハイライトされた。
……おそらくこれが日本の防衛ラインでしょうね。
「これが第一列島線。極東における対ザイの防衛ラインだ。ここを維持できているから太平洋側の航路と空路が今のところ守られている。少しばかり広いが『
大陸からのザイを表す矢印が本土を挟み込む。それ以上の説明はこの場にいる面子には不要だった。
「そして今回連中がFOBに定めた場所はここだ。台湾と沖縄の中間点、まさにこの第一列島線の直上だ。ここを継続的に押さえれると太平洋の防衛ラインが崩されるのと同じだ。どう控えめに見ても破滅的だな」
「更に付け加えるとここを押さえられて困るのは日本だけじゃないわ。ザイが太平洋に出ると南洋エリアも大陸方面だけじゃなくて太平洋側も警戒しないといけなくなる。そうなると最悪ザイ相手に戦力を割いて展開しないといけなくなるわ」
「……それ、マズいよね。南洋エリアは戦力を大陸方面に向けてるからアニマやAZCCが少なくても撃退できてた。けどそれを分散すると……持たないよね?」
実際のところ、オーストラリアを本拠とする私達にとってはそっちの方が重大だ。一度や二度の両面侵攻で陥ちるとは思えないけど何度もされると流石に厳しい。E.F社の人間としてもここにFOBが構築されるのは阻止しないと。
「それってかなりマズくないですかっ⁉」
「ああ。だから完成する前に潰す。こっちとしても部隊設立のために無茶をしたからな。戦果を挙げて実力を示す意味でもちょうどいい。連中に感謝したいぐらいだ」
……八代通室長、それは問題発言だと思うのですが。ほら、ゲイザーと鳴谷君は思いっきり引いてるし。
「ならお父様。イーグル達が行って蹴散らせばいいんだよね?」
なんて突撃思考。たぶんイーグルからしたら敵、見つけた、潰す、って感じなんでしょうね。
……そこがイーグルのいいところであり、悪いところでもあるんだけど。
「そう単純な問題ではありませんよ。私達は爆撃機ではありませんから精一杯爆装したところで地上に投射できる火力は知れています。島全体を無力化するほどの火力は積めません。加えて島の上空には多数の直掩機がいますから対空装備なしで向かうのは自殺行為です」
「ああ、だから基地攻撃そのものは自衛隊と米軍で行う」
「対地攻撃用の部隊を随伴させてわたし達は護衛にあたるんですか?」
確かに対地攻撃に特化した部隊が基地を攻撃し、私達がその護衛に就く方が基地を無力化出来る。
ただ――――――
「いくらアニマを中心とした部隊でもそれは無理だろう。攻撃隊が多ければそれだけ護衛対象も多くなる」
そう、八代通室長の言う通り攻撃隊が多ければ多いほど護衛対象も増える。そうなると最悪、攻撃隊の人達には片道切符を覚悟してもらう事になるけど……自衛隊の性質上それは難しいでしょうね。
「そうなるとかえって動きがとりにくくなるからな。第七艦隊の残存艦によるトマホーク巡航ミサイルと石垣島の陸自の一二式誘導弾改。この二つを百発単位で島に撃ち込む飽和攻撃で基地を破壊する。一目標に平均五発、計五十トンの炸薬が九十秒以内に降り注いで目標を破壊する」
――――――ミサイルによるアウトレンジ攻撃。手遅れになる前に最大火力で敵を殲滅する、か。自衛隊としてはずいぶん思い切った手段に出たわね。これだけの火力ならおそらく島の原形は残らない。
傭兵として何度か目にしてきたけどなりふり構わず敵を駆逐する時のヒトの獰猛さは他の獣の比じゃないわ。
「が、ここで一つ問題がある。目標周辺には強力なEPCMが確認されていて通常の誘導システムはあてにならん。よって中間誘導からドーターがナビゲーションを行い誘導する。誘導役は処理能力に余裕のあるファントムとゲイザーが担当、他のメンバーはその直掩だ。ただし、ゲイザー。米軍からの要請でお前には別任務も兼ねてもらう」
「別任務、ですか?」
別任務、ねぇ……。米軍からの要請、となるとロクな案件じゃない気がするわね……。
「ゲイザーには第七艦隊残存艦の護衛をしてもらう。壊滅させられたのがよほど堪えたのか、米軍に協力してもらう代わりにアニマ・ドーターの護衛をつけることを条件に出されてな。こちらとしてもあまり戦力は削れないからゲイザーを出さざるを得なかったんだ」
……そういう事。電子戦機ならジャミングで艦隊そのものを電子的に隠せるから単騎の派遣でも説得力を持たせられる。……私個人としてはあまりいい気はしないけど。
「お父様、一つよろしいでしょうか?」
「なんだ」
「話を聞く限り私は前線でミサイルを誘導するということですがザイへの対処はどうするのでしょうか。ゲイザーも管制にあたるとはいえ第七艦隊の護衛に就くのでしたら最終誘導を行うのは私でしょう。ですが空戦しながらそれだけのミサイルをさばくのは不可能です。警戒そのものも疎かになりますし」
……判りたくないけどファントムの言いたい事が読めてきた。外れてほしいけど困った事にこういう“当たってほしくない事”に限って当たるのよね……。
「はっきり言え。なにが言いたい」
「――――――お断りします。彼女達の護衛では命がいくつあっても足りないので。」
――――――可憐な笑顔そうで言い切ってくれたのだった。
「……ねぇ、ミュベール。今回の作戦……上手くいく?」
ブリーフィングが終わった私達はハンガーで出撃のための準備を進めている。
整備班の人達によって機体のチェックが進められる中、不安そうにゲイザーは訊いてきた。
「珍しいわね。そんな事を訊いてくるなんて」
「だってあの空気でまともな連携ができるとは思えないよ。……今だってあそこでイーグルがふくれてるし」
ゲイザーが視線を向けた先を見ると、ファントムの物言いが癇に障ったイーグルが文句を言いながら準備をしてる。
……エンジン音が響くこの喧騒の中で聞こえてくるからかなりの剣幕ね。
「単純な戦力じゃなくて味方の状態からも作戦の成否が判るようになるとは成長したわね」
「茶化さないでよ・・・・・・でも、そう言うってことはミュベールもこの作戦は失敗すると思ってるの?」
「残念ながらね」
皆には悪いけど私は今回の作戦が上手くいかないと感じてる。――――――不安要素が多過ぎるからだ。
味方内の不和、それに加えて事前情報がアテにならない基地攻撃。……マズい。冷静に考えれば考える程マイナス要素しか浮かばない。
「ま、勝ち目がない作戦でもその中でのベストは尽くさないとね」
「……ミュベール。それ、問題発言だと思うんだけど……」
ゲイザーの言う通り、部隊長を任せられる立場にあるまじき発言だった。
……出撃準備の喧騒でゲイザー以外に聞こえていないから言ったのかもしれないが。
≪――――――スタークス中尉、聞こえているか?≫
≪聞こえていますが……なんですか?≫
≪作戦海域を偵察中の偵察機から連絡だ。……連中が追加のコンテナを投下した。構築速度が上がり直掩機も増えだしたそうだ≫
「≪判りました≫……ゲイザー、聞こえたわね? 出ましょう」
「わかったっ!」
準備を終えた私達は
≪AQUILA01、02。クリアード・フォー・テイク・オフ≫
≪ラジャー。AQUILA01、クリアード・フォー・テイク・オフ≫
スロットル・オン。大柄な機体が地を離れ、空へ昇っていく。そこに続いて離陸したAQUILA02が合流してロッテを組むとバービー隊の三機も追いついてきた。
……
≪アクイラ、ならびにバービー各機へ。予定通り室戸岬沖の海上で空中給油機とランデブー。その後、作戦空域へ向かってもらうがゲイザーは第七艦隊の護衛へ。作戦空域到着後はファントム以外の三機で敵航空戦力の撃破し、ファントムは島の上空でデータ・リンクの用意ができ次第陸自・米軍に攻撃指示だ。いいな≫
≪≪≪ラジャー(了解)≫≫≫
噛み合わないまま想いのまま、彼女達は戦いへ向かう。
……致命的となりかねない不和を抱えたまま。
ミュベール「ところで仕事以外の遅れた理由は?」
Liris「……AC7の勲章集め。具体的にはキャンペーン4時間以内とノーダメージの平行クリアと機関砲オンリークリア。続けてやらないと感覚が鈍る気がして」
ミュベール「……その時間を少しでも向けなさいよ。で、達成したの?」
Liris「もちろん。前者はクリアタイムの関係で最短を狙える機体だったけど機関砲の方はよくある難易度Easy&MIG-21のMGP装備じゃなく難易度NormalのSu-47オンリーで達成した」
ミュベール「やるじゃない。で、その記録は?」
Liris「え?」
ミュベール「だから記録よ。機関砲をNormalのSu-47オンリークリアしてる動画なんてないでしょ? それに記録がないと証明しようがないじゃない」
Liris「…………」
ミュベール「まさか……残してないの?」
Liris「……………」
無言で逃げる作者
ミュベール「待ちなさいっ!」
――――――ゴメンなさい。一度こういう後書き書いてみたかったんです……