騒がしい自己紹介が終わると、早速授業へと突入した。本来なら入学式後は授業をやらずに学校の紹介などに入るのだが、この学園は寮生活と言うことで普通の学校よりもある程度時間を取ることが出来る。無理して紹介に回す必要は無いのだ。
そして授業の内容だが、殆ど入試の復習みたいなものだった。ISに関する法律、基本的なメカニズム、適性に優劣がある理由等の座学だ。しかし基本の復習と言えどもこれはISに関する最重要事項。この日は午前中の全てを使って復習をすると千冬が言っていた。
(うん。問題ないな。殆どザルバが昔教えてくれた通りだ)
ザルバには大量のデータが入っている。教えるのは朝飯前なのだ。一区切り付けると副担任の山田先生が全員着いてきてこれているかどうかを確認したが、全く問題は無いようだ。
「織斑くんは大丈夫ですか?」
「問題ありません」
「そうですか。それは良かった。ここは基本ですが、とても重要な所ですので分からないところがあったらいつでも聞いてくださいね!」
『なら1つ教えてもらおう』
教師としてはりきっていつでも質問するように言うと、真っ先にザルバが声を出した。授業を聞いていて、いくつか気になるところが出てきてしまったのだろう。そう言った物が出ると聞かずにはいられないと言うのがザルバの悪い性格だ。
「え、え~っと……」
「ザルバ……自己紹介してないんだから驚いてるぞ」
『そいつは悪かった。既に知っている事だと思っていたからな。俺は魔導輪ザルバ。コイツと一緒に行動している。よろしく頼む』
「よ、よろしくお願いします……」
『あぁ。じゃあ質問させてもらう。アンタは今アラスカ条約と言うもので、ISの軍事的運用は禁止されていると言った。しかし、世界ではどの軍隊もISを配備している。どことは言わんが、とある国がとある大国にミサイルで挑発していたとき、大国の首相は軍のIS部隊をチラつかせその国を黙らせた。これは軍事的運用と言っても間違いないだろう。何故これが容認されてるのか、それを教えて貰いたい』
「そ、それは……」
『まだあるぞ。ISが誕生してからは世界の人間に対する倫理観が損なわれた。非人道的な実験も数多く行われたが、ISのためと言う理由で無罪になったのがいる。これはどう言うことだ?そして、この国では昔あるISが開発された。それが完成すると、性能を知った周りの国も同じことをした。その結果生まれてしまった―』
「ザルバ、その辺にしておけ」
止まることのなかったザルバの疑問。その全てをぶつけようとしたが、途中で千冬に止められてしまう。
「真耶をあまり虐めてやるな。教師としての腕は確かだが、まだ新人だ。答えられない事は当然ある。それと、そこから先はまだ言うべきではないぞ」
『そうか。ソイツは失礼した。悪かったな』
「い、いえ。お気になさらず」
とは言っているが、顔色が少し悪い。IS学園の教師故に、ザルバの言っていたこと全てが事実であることを知っている。千冬に止められた部分まで知っているかは定かではないが、ISの軍事的運用や非人道的な実験、戦争へのIS部隊投下は知らない筈がない。だが無意識にそこを避けてしまっていたのだろう。
「ザルバの質問には卒業までにでも答えをまとめておこう。電話帳2冊分程の論文になるが、構わないか?」
『暇な時間に読む。別に問題はない』
電話帳2冊分程の論文の作成で話がまとまると、止まっていた授業が再開された。しかし、ザルバの質問で結構精神的に抉られてしまったのか、何処と無く真耶の言葉が途切れたりしている。が、そんな精神状態でもこの時間の授業は予定の位置まで終わらせてくれると言う意地を見せてくれた。
「一夏、ちょっと良いか?」
「ん?あ、箒?」
「そうだ。久し振りだな」
「あぁ。小学4年の春に引っ越したから、ちょうど6年くらいか?」
「そのくらいだ。……うん。昔よりも強くなったな」
「分かるのか?」
「私だって剣を習ってるんだ。それくらい分からない筈がない」
「成る程。自分じゃ強くなったって言う実感が無いから、すこし安心できたよ」
「そうか。どうだ?放課後にでも剣道所にでも行って打ち合わないか?」
「良いのか?もう剣道でもなければ篠ノ之流でも無い。俺が使うのは完全な我流だぞ」
「構わない。頼めるか?」
「分かった。授業が終わったら行こう」
積もる話もあるようだが、ザルバと言う喋る指輪の存在のお陰か一夏の周りには人集りができている。それを考えてか、箒は放課後の予定を決めるとその場から立ち去り自分の席へと戻っていった。
『知り合いか?』
「小学校の頃の幼馴染みだよ」
『篠ノ之か。父親は烈か?』
「正解」
箒とは初対面のザルバは、名字を聞いていて烈と言う男を思い出した。同姓のため気になって聞いてみたのだろう。結果は予想通りだったようだ。
「しかし……予想以上に辛いな」
『だな』
周りは女子だけ。同性はいない。IS学園と言う特殊な環境故に当然の事なのだが、まずそもそも自分以外が全員女性と言う環境に立たされることはない。間違って電車の女性専用車輌に乗ってしまった時位だ。それはすぐに出れば良いだけの話だが、ここではそんな訳には行かない。
「ある意味、ザルバの特訓受けてたときよりも辛いんだけど……主に精神的に。いつか気が狂いそうだ」
『休みの日にでも出掛けるんだな』
別に女性に対して耐性がないと言う訳ではない。女性恐怖症でもない。だが、まともな神経をしている人間にはある意味キツい様だ。
「ちょっとよろしくて?」
「『ん?』」
「ッ!?なんですの?!その口の聞き方は!!わたくしに声をかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度と言うものがあるのでは無いのかしら!?」
いかにも。な感じのお嬢様が出てきてしまった。一夏もザルバもこの様な人に対しては良いイメージを持っていない。特にザルバはこんな人が視界に入っただけで気分が悪くなってしまう。一夏もザルバ程では無いにしても気分が悪くなる。
「この私自らが態々声をかけて上げたのですよ!なのにその返事は一体―」
『あ、お前さんブルーか?』
「は?」
『久し振りだな。元気にしてたか?まさかイギリスに行ってるとは。驚きだ』
「な、何を言っているのですか?」
「あぁ。ザルバはISと会話が出来るんだよ。正確にはコアの人格とね。昔どこかで会ってたんじゃないかな」
ザルバは豊富な知識を持っている以外にも、この世界で現場ISのコア人格と会話をすることができる唯一の存在。殆どのコアと面識を持っている。
『成る程。イギリスで試作機のコアになったのか。どうだ?今の操縦者は?……ほう~。そうか。ハハハ。確かにな。初対面だがそれは思ったよ。俺?今はコイツと一緒にいる。中々に面白いヤツだぞ。この前放送された映画に感動して泣く程ピュアなヤツだ』
「おい。なに余計なこと言ってんだ?」
会話が弾んでいるのか、お互いの近況を話している。少し弾みすぎて言わなくて良いことまで言ってしまった。一夏にその事を咎められるが、気にすること無いだろと一蹴り。再び話が再開し、次の授業が始まるまで続いてしまった。
『いや~。スッキリした』
「何でこの前映画見て泣いたの知ってるのさ」
『金曜日の夜9時の映画だろ。俺も見てた。お前のあのシリーズの映画だと大体泣くよな』
「だから余計なこと言うなって」
千冬と真耶が教室に入ってくるまでの間に会話が行われていたが、2人が入ってくると話を止めて授業を受ける体勢を取る。しかし、千冬が切り出した一言で、授業どころでは無くなってしまった。
「この時間も入試時の問題の復習に使う予定だったが、クラス代表を選出したいと思う。クラス代表はIS対抗戦や集会等への参加が仕事だ。所謂クラス委員。自薦他薦は問わない」
「織斑君を推薦します!」
「私も!」
「右に同じく!」
「拙僧も!」
このクラスには坊さんでもいるのだろうか。1人が一夏を指名すると、その後も連鎖的に一夏を指名していく。次第にそれはクラス全体に行き渡り、クラスの大多数が一夏推しになった。
「現状は織斑1人だが、織斑は良いのか?拒否権も当然あるから―」
「お待ちください!納得行きませんわ!!」
一夏に決まりかけたその時、1人の生徒が机を叩きながら声を上げた。一波乱来そうな予感だ。
次回もよろしくお願いします!感想や評価、お気に入り登録もついでにお願いします!!
この前放送された「もののけ姫」面白かったですね~。個人的な考え、と言うか受け取りですけど、アシタカがカヤから貰った玉の小刀をサンに渡したこと、マイナスな感じで解説されてますが、個人的にはカヤの思いがアシタカへ、アシタカの思いがサンへ、サンの思いがその先の誰かへと言う感じに、相手を思う生きていて欲しいと言う願いが人から人へと受け継がれてる。と言う風に受けとりました。なので、個人的には余りの悪い感じには思いませんでしたね。