黄金の狼。それはISと言うよりも鎧だ。それをまとった一夏がアリーナの中心に立っていた。それを見た千冬は管制室でニヤリと笑い、他の人は全員ポカンとしている。
「ま、まさか本当に……!?」
静まり返ったアリーナで、一夏は独特の金属音を立てながらオルコットへとゆっくりと近付いていく。すぐさまビットを一夏の周りに配置して一斉にレーザーを発射した。しかし、全く効いている様子がない。足を止める様子すら無かった。
「クッ!」
ならばとスナイパーライフルを使って照準を頭に合わせた。自身に向かって歩いてくる相手の頭を撃つくらい簡単な事。ISをまとっていれば容赦は必要ない。数発連続で発射し、ダメージを与えようとする。だがそれも無駄な様で、至近距離からの狙撃であるにも関わらず、意図も簡単に剣の柄の部分で防がれてしまう。
「ハッ!」
「ッ!?キャッ!」
柄を握り剣を振るうと、鞘が飛んでいきオルコットのライフルにヒット。ライフルが弾き飛ばされたのを見ると、走って一気に接近し真一文字に斬る。たった一撃だった。その一撃で勝負が決まった。
『セシリア・オルコット。シールドエネルギー0。勝者、織斑一夏!』
アナウンス終了と同時に、一夏が剣を空に向かって突き上げると、そこにスッポリと飛んでいった鞘がはまった。その後鎧を解除し、アリーナをあとにした。
「相変わらずの強さだな。一夏」
「あ、姉さん。仕事は良いの?」
「今日はもう終わりだ」
「そう。あのさ、俺1回家に帰りたいんだけど?」
「何故だ?」
「いや、最近あれ使ってないじゃん?」
「あぁ。あの斧か。その事で話があるんだ。ちょっと着いてきてくれ」
斧とはあれだ。一夏が家で鍛練に使っていた巨大な斧が付いた振り子の事だ。基本的に一夏はあれで訓練している。一応他にも一般的なトレーニング器具で運動はしているが、今となってはあれでなくては何か物足りない感じがするくらいまで体が鍛えられている。
「この前ようやく工事が終わってな。倉持技研の大神博士たちも手伝って、家の訓練所と同じものを作って貰った。ただ、ゴンザがいる訳じゃないから、壊したら自分で直せよ」
案内されたのは学園の外に新設された建物。説明では新しい物置小屋と言われていたが、無理がある。結構な大きさの建物だからだ。増築された寮と言われた方が納得できる。
「おぉ~!家と全く同じだ」
「あぁ。広さも同じにして貰った。ここはカードキーと4桁のパスワードで入ることができる。パスワードを無視できるマスターキーは私と大神博士の2人しか持っていない。危険な場所だから、基本的には誰も入れるな」
「分かった。じゃ、今日はここに入ってるよ」
「ただし、48時間以上は籠るなよ?昔みたいに不眠不休で鍛練してぶっ倒れられたら助けられる自信がない。あの中から助け出すのはもう無理だ。腕1本で済むかどうか……」
遠い昔を見るような光のない目をしながら、一夏に忠告してカードキーを手渡した。早速一夏はパスワードを設定して中に入っていく。
「しまった。時間経つと勝手に斧の振り子が止まるの伝えるの忘れた……まぁ良いか」
ヤベっと言う顔をしたが、楽観的に考えて伝えずに職員室へと帰っていった。一応教師故、仕事を片付けなくてはならない。
「さぁと……オルコットの件を報告するべきか否か。報告したらしたで説明が面倒……しなかったらしなかったでクラスの連中への報告が面倒……クラス代表にして晒すで良いか。うん、そうしよう」
自分の中で完結させ、もう考えるのを放置した千冬であった。
ここまでで良いや。それじゃ次回で会いましょう。