俺の第2の人生は戦車道と言う競技のある世界でした   作:ふみみん

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まだまだ、就活中なので初投稿です。

かなりのおふざけとどうでしょう成分が含まれております。


15・腹を割って話します!

 

 

 

 

 

 

間接照明のみが部屋を照らす薄暗い部屋。

クシャクシャになったシーツ。

生気を失ったような瞳。

何か棒のようなものを咥える影。

じゅるじゅるっと何かを吸う音。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねじねじゼリーは吸うだけじゃ中にちょっと残るなぁ」

「みふぉ、ふぉのうまいんふぁふぉうも食ふぇていいふぁ?」

「お前もう食べてんじゃねぇか」

私にお構いなしにお菓子を頬張る守矢君とお姉ちゃん。

 

「み、みほ……大丈夫……?」

唯一私を心配してくれるエリカさん。

 

「えっと……私は一体……」

「赤星さんだっけか、こっち座ってお菓子でも食べるといい」

「え、えぇ……」

 

 

いきなり呼ばれ困惑する赤星さん。

 

 

 

 

そんな状況を見て、私は今心の内にあるものを吐き出した。

 

 

 

 

 

「黒森峰学園艦の皆さん、じゃあ聞いてください。

今日今ここで何が起こったのかを、です。

私は一昨日はアレなんです、皆さんご存知の戦車道全国高校生大会の決勝戦を

敗北してしまった訳です。 皆さんもうご覧になったのではないでしょうか?

私はあの悪天候の中氾濫した河川に落ちた戦車に搭乗している選手を助けようとして

フラッグ車を放棄、敗北の責任を一挙に受けた副隊長の西住みほです。

副隊長の西住みほなんです」

 

 

「お姉ちゃんが副隊長に推薦したんだ」

「え”……隊長そんなことしてたんですか……」

「エリカを除けばその位置が順当だろ?

身内贔屓と言われるかも知れんがみほ以上のやつは少なくとも居ない」

「そうですね……隊長とアイコンタクトだけでついていけるのってみほさんくらいですし……」

 

 

「あの後に、みんなから色々な事を言われて

私は逃げるように部屋に帰ったんだ……。

そしたらもう全然眠れなくて、何も考えられなくて、

昨日の練習にも行けなくなって、どうしたらいいかわかんなくて、

もう戦車道をしたいって思えなくなって……」

 

 

 

「やっぱり一度お姉ちゃんが粛清した方がいいと思う」

「た、隊長!抑えてください!エリカさんも手伝ってくださいよ!」

「いや、そんなやつら消えたって誰も何も思わないわよ」

「まほ、ここはプラウダじゃねぇんだから座っとけや。

エリカは物騒なこと言うのは辞めとけ」

 

 

 

 

「どうしようって思った時に、お母さんから呼び出しがあったの。

何を言われるのか怖くなって、逃げ出したくて、

頭がごちゃごちゃになって……すると現れたのがこの3人なんですよ」

 

 

 

「しほさん最悪のタイミングじゃねぇか」

「西住師範も何かと忙しいのよ……きっと」

「菊代さんから聞いたところだと朝から月刊戦車道の出版社に行ったと言ってたな」

「そういえばあの雑誌、みほさんの事叩いてたような……」

「なるほど、しほさんも娘には存外甘いなぁ」

「嘘!?冗談でしょ!?何で今の会話でそれが出るのよ!?」

「あの人の内面知ってりゃ容易に想像はつくぞ。

内容は流石に見せられんがしほさんからのメールのほとんどが

みほとまほについてだからな。しかもかなり頻繁に送ってくるんだから。

しかし、言いたい事は直接言ってやれって言ったがここで実践しちゃうかぁ……」

 

 

 

 

「何でここに居るのか知らないけど、いきなり守矢君の声が聞こえて、

驚いて扉の鍵とロックを解除して扉を開けると、小さい頃に見た

ボコより遥かに大きい着ぐるみを装着した守矢君が居て

私は突然のことで頭が真っ白になってるのに、腹を割って話そうと

守矢君は部屋に乱入してきたわけです」

 

 

「アンタ、いきなり部屋に入って見られたくないものが

あったらどうするつもりだったのよ!」

「そん時は全身全霊でそれこそ流星一条(ステラ)撃つぐらいの気持ちで謝るだけだろ」

流星一条(ステラ)は辞めてくれ、私とみほに効く」

流星一条(ステラ)って何でしょう……エリカさん知ってます?」

「いや、私も知らないわよ……」

 

 

「私自身は別に守矢君に何も話すことなんてないですよ、

仲は良いですよ?尊敬もしてる砲撃手です。

でも別に彼と腹を割って話すことなんて何もないですよ。

こっちは結構な頻度で電話とメールで相談してるんですから。

ところが守矢君は私に「腹を割って話そう!」と言って、

何を話したいのか知りませんが、お姉ちゃん達と私の部屋に居座って、

どうか時計見てください。お昼過ぎ12時52分です。もうかれこれ守矢君達は

1時間お菓子を食べながら私の部屋を離れようとしないんですよ」

 

 

 

 

「お、もうそんな時間なのか」

「お昼食べ損なったじゃない!」

「晩飯奢ってやるから許してくれや」

「む、エリカだけずるくないか?なぁ、赤星」

「え?!そ、そうですかね……?」

「ちゃんとまほと赤星さんとみほにもごちそうするさ」

「さすが未来の伴侶だ」

「違うって言ってるだろ?」

 

 

 

 

「それで、私はそれで学園艦の皆さんまだ聞いてください、

私は再三「帰って」って言ってるんです。

もう大好きな人たちですよ、3人共。その人達にさっきから私は、

「関係ないんだから帰って!私なんか放っておいてよ!」と

再三罵声を浴びせかけているにも拘らず、帰ってくれないんです。

そして私は、苦肉の策で、これもまた関係ない人なんだけど、

寮監に、電話をしようとしたわけです。

「3人が 帰らないから連れて帰ってくれ」と言おうとしたら、

守矢君に電話を取られて、エリカさんにどこかに連絡するよう伝えて、

皆さん何て言ったと思います?

「あぁそうか わかったわかった じゃあ当事者も呼ぼう!」と言って、

それで赤星さんまで私の部屋に来てるんですよ!

どうですか!! 学園艦の皆さん、おかしくないですか!? この人達!!

私は、放っておいてくれって言ってるんですよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、水でも飲んで落ち着けって」

ぜぇぜぇと息も絶え絶えなみほに水を渡す。

「…………ぷは、そもそもなんで守矢君がここに居るの!」

おぉー、ペットボトル一気飲みとは。

相当喉渇いてたんだな。

 

「携帯の電源切ってるから、まほ経由でちょっとな」

「……お姉ちゃん」

「今のみほを見ていられなくてな……」

「でも、守矢君を呼ぶことはないと思うんだ!?」

「それにエリカだって心配してんだぞ?」

「うん……ずっと声は聞こえてたよ……ごめんね……」

「べ、別に、私が自分の部屋に入りたかっただけだし?」

あー、ここエリカの部屋でもあったっけ。

食い散らかして悪いことしたなぁ……。

「赤星さん、あの後大丈夫だった……?」

「ごめんなさいみほさん!私達のチームが迷惑かけちゃったから……」

「違うよ、あれはただの事故で赤星さん達のせいじゃないよ」

「でもそのせいでみほさんが……」

「あぁ、そこら辺は俺も納得してないな。

ちょいと釘刺したし問題ねぇだろ」

「何したの!?守矢君!みんなに何したの!?」

特に何もしてないがなぁ。

お前達も考えろって言っただけだぜ?

「特別なことは何もしてないさ。

中学の時、母さんと来た時みたいに思った事を言っただけだが」

「赤星さん、みんなの表情どうだった……?」

「えっと……何人かは思い当たった節があるのか下向いてましたけど、

大体の人は荒谷さんを睨んでましたね」

「何で守矢君は敵を作るのかなぁ!?」

「プラウダにも聖グロにもサンダースにも同じように

言ってるんだがなぁ……まぁ、校風ってこともあるだろうが」

 

 

聖グロもだがこんなこと言うと大体反発される。

共通点としては何かしら大きな力が働いてる高校だな。

 

黒森峰なら西住流。

こっちに関しては直接的ではないな。

自分達で校風と流派に縛られにいってるようなもんだからな。

そこらへんをまほ、みほ、エリカ辺りがどうにかしてくれると思ったが。

戦闘中の意識の違いがここまではっきり出るとはなぁ。

潤沢な選択肢があるにも関わらず選ばないしもったいねぇよなぁ。

 

 

 

聖グロならOG会だろう。

あれは手が付けられん。

完全に何か勘違いした連中の集まりだ。

ダージリンが頭抱えるのも無理ねぇわな。

運営や戦略、戦車の種類にまで口出してきやがって。

流石の横暴に母さんもキレたからな……。

最近はダージリンからクロムウェルが入ったって電話はあったな。

母さんの方にもえらくテンションの上がった電話があったって言ってたな。

……当時一番の驚きは電話一本でOGを沈静化させた母さんだが。

 

 

プラウダは思いのほか反発は少なかった。

ちびっこ隊長のカリスマ性は中学の時も健在で、

アイツにあれこれ言ってたから誰も何もいえなかった、

と言うのが真実かもしれんが。

だが、外から見るとちびっこ独裁政権に見えるが、

その実、部下のことはちゃんと把握し有用な意見に関しては

積極的に採用している。

 

 

 

サンダースも同じくだ。

ケイの隊長としての方向性はカチューシャとまったく違うが、

選手や車両の運用方法や部下の士気管理に関しては目を見張るものがある。

各車両の車長の自由度はかなりあり、

試合中でも、隊長のケイに対する反論は許されている。

勿論その反論の理由は言わなければいけないが。

何でも言える隊長って言うのは一歩間違えば舐められてしまうが、

上手くいけば自分に不足してるものをどんどん補ってくれる利点もある。

当然部下からの信頼も厚くなる。

俺本人としてもケイの指揮下で戦った時はやりやすい思った。

ただ「指示は出さないわ!どんどん撃破しちゃって!」

と指示と言えないオーダーが来た時は車長が頭を抱えたが。

遊撃隊の適正のある人間ばかりのチームだったので適当って訳でもないのだ。

それに車長が自分の適性も含めて気づいてなかっただけで。

 

 

 

 

 

「それに、みほの事言われてカチッときてな。

わかろうとしねぇ人間が何言ってるんだ?ってな」

キリッとした顔で決める。

 

 

 

「守矢、すごく決まったような顔してるが大部分がボコだぞ」

「ん?そうか?輝いてねぇか?ボコ」

シュッシュっとシャドーボクシングをする。

「廊下で取り出したときは頭がおかしくなったのかと思ったわよ」

「みほが喜ぶかと思ってな、持ってきたんだよ」

トイレとかないからな、廊下で着替えるしかなかったんだ。

で、着替えてみほの部屋のドアをノックして、

 

「西住ー戦車道しようぜー!」

の一言で一発よ。

 

 

「タイミングが悪すぎるよ……ボコで喜ぶ気分になれないよ……」

「これ肌触りもすごいんだぞ?泣いてる赤ちゃんも爆睡させる勢いだ」

実際高かった、俺のお年玉数年分と小遣いがつぎ込まれている。

「う……ちょっと気になるかも……」

「そうだろそうだろ……てなわけで、ほれ」

俺は両手を広げて受け入れ態勢に入る。

「……え?」

「どーんと飛び込んでこい、ボコの優しさで包んでやる」

ほれ、ばっちこーい。

「いや、いやいやいやいや!おかしくない!?」

「このボコの肌触りは気になるんだろ?」

「ぐぬぬ……抗いがたい衝動が……」

「なるほどなるほど、あれだ、恥ずかしいわけだな」

まほにアイコンタクトを送る。

 

(ちょっとみほには色々吐き出させるわ。初めは勢いでいけるかと思ったが、

これはダメだな、飲み込んで我慢しようとしてる)

 

いつも通りポンコツ発揮しておかしなテンションのまま

全部ぶちまけて自爆してくれればそれが一番楽な方法だったんだが……。

無意識だろうな、全部吐き出そうとはしてないからな。

 

 

(なら二人の方がいいな……同じ黒森峰の関係者より、

部外者の守矢のほうが話しやすいだろう……みほを任せたぞ)

 

アイコンタクト終了。

これくらいは朝飯前よ。

 

 

 

「エリカ、飲み物がなくなったから買いに行くぞ」

「え、隊長!これほっとくんですか!?」

「……あ、私も一緒に行きますよ。結構な数買いますよね?」

「こ、この空間に置いて行かないでくださいよ!」

「みほ、守矢が暴走しないよう見張っててくれ」

「お姉ちゃんがそれを言うかなぁ!?」

「はっはっは、では後ほどだ」

 

まほ、エリカ、赤星さんが部屋を出て行き扉を閉める。

 

 

 

 

「これで問題ないな」

「うぅ……でも……気になるし……」

 

遠慮がちにボコに抱きつくみほ。

俺はそのままみほを抱きしめる。

ふわぁ、と声を出すみほ。

最高級だぜ?このボコの毛並みは。

そんじょそこらのボコとは比べ物になりませんよ。

 

 

 

しばらくみほは黙ってボコを抱きしめていた。

 

「……あったかいね」

ボコに俺の体温も加わってるからな。

「こんな風にボコに抱きしめられたのは初めてだよ」

「俺もこんな風に女の子を抱きしめたのは初めてだな」

「そっか……」

 

 

 

少しの間、静まり返る部屋。

 

 

 

 

「ちっちゃい頃、みほに言ったこと覚えてるか?」

無言のみほ。

 

「自分の信念を貫き通す事が大事だと思うって」

「うん」

「赤星さん達のほうが大事だったから助けに行ったんだろ?」

「うん」

「ただ、他のみんながそうじゃなかったってだけさ」

「そう……だね……」

 

みほはただでさえ溜め込むタイプだからな。

 

「辛かったな」

 

ぽんぽんと背中を叩く。

 

「……うん」

 

溜め込むだけ溜め込んだら飲み込めないくせに

無理して飲み込もうとするからな。

 

 

「今ここには黒森峰とかまったく関係ないボコしか居ない」

 

 

どっかで吐き出さないと潰れちまう。

 

 

「今は思いっきり泣いていいんだ、ボコが受け止めてくれるからさ」

みほの頭を軽く撫でてやる。

「泣いて吐き出してからゆっくり頑張ればいいさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなの私を見る目が……」

 

ぽつりと

 

「みんなの言葉が……」

 

ぽつりぽつりと

 

「怖かった……怖かったよ……!」

 

みほの口から少しずつこぼれる言葉。

「私の……私のせいで10連覇できなかったって……、

1年のお前が副隊長なんかしてフラッグ車に乗ったからだって……」

「おう」

 

ボコの胸元が涙で濡れる。

 

「西住流家元の娘なのに自分の流派さえまともに使えない無能だって……」

まほが聞いたらマジで粛清もんじゃねぇか。

「練習に行かなきゃって……でも何か言われるんじゃないかって……

外に出るのも怖くなって……」

「頑張ろうとしたんだな」

自分は間違ってない、間違ったことはしてないって。

「でもやっぱり私が間違ってたのかなって……」

 

やっぱり、って……抱え込みすぎなんだよ、みほは。

 

 

「守矢君……私の戦車道って一体なんだったんだろう」

西住の名前を持つ者として周りが勝手に期待しすぎてるんだな。

 

 

戦車道をやってるただの女の子だって言うのに。

 

 

 

 

「何かを切り捨てるよりもみんなで協力して戦って勝ったほうが楽しいって、

子供の頃言ってたじゃないか、それがみほの戦車道の根幹じゃないのか?」

 

「でも……私は……」

 

「戦車道って正しいとか正しくないとかでやるもんか?」

「それは……」

 

「俺はそのままのみほでいいと思うんだ。

誰かに何か言われようが俺はみほのような

戦車道のあり方があってもいいと思う」

 

 

俺はあの時のように頭に手を置いてくしゃくしゃと撫でてやる。

 

 

 

 

 

「お前は、間違っちゃいない」

 

 

 

 

 

 

 

その一言を聞いてみほが我慢してたものが一気に溢れ出した。

苦しくない程度に抱きしめる力を強くして声を殺してやる。

 

 

 

 

 

とりあえずみほの胸の内も聞けた。

最悪のタイミングではあったが丁度いい機会でもあるし……。

 

 

しほさんとちゃんと話し合ってもらわないとな。




原作1話に追いつくのはまだ時間かかりそうですかねぇ……。
ここまで間延びさせるとやっぱうっとおしいですかねぇ……?

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