俺の第2の人生は戦車道と言う競技のある世界でした   作:ふみみん

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以前お話したとおり、おふざけ成分があふれ出ています。
今更過ぎますがキャラ崩壊がとんでもないことになっています。
これ誰?となる思われる方もいらっしゃると思います。
でも……とまらなかったんやなって……。



面接の時、確かな手ごたえの無さを感じたので初投稿です。


17・奇襲開始です!

「戻りました」

「おかえりなさいませ、奥様」

 

外出から帰宅すると菊代が出迎えてくれた。

 

「私が不在の間、何かありましたか?」

玄関でパンプスを脱ぎながら菊代に問いかける。

 

 

 

 

 

『みほ、先日の決勝でのことについて話があります。

一度家に帰ってくるように』

 

 

……今日、みほに連絡を取った時自分の言った言葉だ。

 

 

正直、来るとは思えない。

 

 

今のみほの黒森峰での扱いや状況は知っている。

あの場からみほを離すために連絡を取ったのだが、

我ながらもっと違った言い方は無かったのだろうかと思う。

……明日にでもまほを通じて連れてきてもらいましょう。

 

「あぁ、先ほどお客様が尋ねてこられたので応接間にお通ししておりますよ」

「客?私に?」

 

誰か尋ねてくる予定などあったか。

そもそも私がいつ帰ってくるかわからないのに待っていたのか。

 

「えぇ、帰ってくるまで待たせて欲しいと」

「そう……わかりました、すぐに向かいます」

 

私は上着を菊代に預けると応接間へと向かった。

 

 

 

 

「おかえりなさい、お母様(さん)」

「お、お邪魔しています西住師範」

 

「菊代も人が悪いわね……」

 

 

応接間に居たのは、みほ、まほ、みほと同級生の逸見。

そして……。

「お久しぶりです、しほさん」

我が友人の息子、荒谷守矢君だった。

 

「いやぁ、唐突にまほとみほに会いたくなって、

会いにったら何の偶然か家の方に帰るって聞きまして、ご挨拶にと」

「……何故、このタイミングでみほとまほに会いに行ったのかは聞きません」

聞かなくてもなんとなくわかりますから。

おそらくまほ辺りからみほの事を聞いて会いに来たといったところでしょう。

 

 

それよりも今は大事なことがある。

 

「みほ」

「は、はい」

 

私の声にびくっとする娘。

 

「先日の全国大会の決勝、あれはなんですか」

「……道の崩落で戦車が1両、河川へと落ちて……」

「それで?」

「車両は特殊コーティングもされてるけど、

車両内への浸水ももしかしたらあるかもしれないって、搭乗員の救助を……」

 

やはり、この子は優しすぎる。

 

「西住流がどのような流派か、わからないわけではないでしょう?」

「それは……」

 

「あなたも、西住流の名を継ぐ者なのよ」

あぁ、私はこんなことを言いたいわけではないのに。

 

「西住流はどんなことがあっても前に進む流派」

みほにはできないとわかっているのに。

 

「強き事、勝つことを尊ぶのが伝統……」

「でも、お母さん……」

「犠牲なくして、大きな勝利を得ることは出来ないのです」

口から出るのは西住流師範としての言葉。

 

 

以前、彼にはっきりと伝えられた。

自分はまほとみほの味方だと。

もし、母親としてではなく西住家としての

立場を取るのであれば敵になると。

 

守矢君がこちらを見ている。

じっとこちらを見ている。

 

こういう言い方をすればみほは我慢してしまう。

わかっている、わかっていることなんだ。

だが私の口から出てしまった。

ごめんなさいみほ……ごめんなさい……。

 

 

 

 

 

「私は……私はそんな戦車道は嫌だ……!」

「!!」

 

だが事態は思わぬ方向へと転がった。

初めて、初めてみほが西住流師範としての私を拒絶したのだ。

 

 

驚いた私は、守矢君の口角が上がったのにも気づかなかった。

 

 

「私は!私の戦車道はみんなと戦う戦車道!

誰かを何かの犠牲になんてさせない!みんなで勝つ戦車道なの!」

 

隣に居る逸見は驚き、まほも眼を見開いている。

そんな中、顔色は伺えないが守矢君だけが落ち着いていた。

まるで、みほが西住流を否定するのを知っていたかのように。

 

……なるほど、彼がみほを立ち直らせたと言うことね。

 

 

お節介なところはあなたにそっくりね、照。

守矢君とあなた、姿がダブって見えるもの。

 

 

みほの目もいつもと違う。

何かを伺うようないつもの目じゃない。

何か決意をしている目だ。

 

「あなたは西住流を否定するのですか?」

「否定はしないよ……でも私の戦車道とは違うの!」

 

 

思えば、みほがここまで何かを言ってくることはなかったわね……。

 

 

「私は!私の戦車道がしたいの!」

 

 

 

まほは既に私の手から離れている。

私と同じような道ではあるが彼女は彼女なりの戦車道を進み、

そしてみほも自分の道を進もうとしている。

 

 

「ですが、あなたは黒森峰の生徒……あなたの勝手を許すわけには行きません」

「わかってる……だから……私は黒森峰を離れようと思うの」

 

衝撃的な一言だった。

 

「はぁ!?」

「み、みほ!?」

驚く二人。

この二人も知らなかったのね。

 

「おぉ、そこまで考えてたか。なかなか覚悟決めてんなぁ」

素直に感心する守矢君。

 

 

「あなたは黒森峰の副隊長……そんな勝手が許されると思ってるの?」

「みんなには悪いと思ってる……でも……」

「そう思うのであれば……」

 

だが、言い切る前に守矢君が割って入ってきた。

 

 

 

「自分の信じたい道に気づいたんだ、

その道を進みたいと思うことは別に悪くはないさ」

みほの頭をくしゃくしゃと撫でる守矢君。

 

 

 

「しほさん、このままじゃお互い平行線で結論は出ない。

しほさんは黒森峰から転校させる気はないんだろ?」

 

 

「当然です」

どういう道を歩もうが構わない。

だが、()()()()()()()()()()()のはみほだけなのだ。

 

 

 

「みほは、今後戦車道をやるかどうかは別として、

今の黒森峰に居る気はないんだろ?」

 

 

「そう……だね……もう、黒森峰に私の居場所ってなくなっちゃったし」

 

 

みほもみほで譲る気はないようね。

このままでは戦車道自体辞めると言い出しかねないわね。

守矢君もそれがわかってて戦車道をやるかどうかは別、

と言っているのでしょうし。

 

 

「だよなぁ……なら、もう勝負して白黒付けるしかねぇなぁ」

……ん?妙な方向に話が言ってないかしら……。

 

「さすがに今から戦車乗って勝負だ!とはいかねぇからな。

こちらで今からすぐに出来そうな勝負事を用意しておいた」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい。

守矢君、話の方向性がまったく見えないわ」

おかしい、我が友人(荒谷 照)とダブって見える。

 

 

「それでは……お願いします!!!」

お、お願い……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんながぽかんとしている最中、応接間の障子が勢いよく開かれた。

 

バン!バン!

 

そこに居たのは小さいシンバルのようなものを

打ち鳴らす赤星さん。

 

「あ、赤星?」

「何やってるのよアンタ……そして何させてんのよアンタ!」

「も、守矢君……赤星さんの顔真っ赤だよぉ……」

 

教えてなかったからか動揺してるのはしほさんだけじゃなかった。

ちょっと奇をてらいすぎたか……?

まぁいいか、面白い方がいいだろ。

 

しばらくシンバルを鳴らしていた赤星さんは

シンバルを床に置き赤星さんがポケットからメモを取り出した。

 

あれは俺が事前に渡しておいたカンペだ。

 

 

ちらちらとこちらを見る赤星さん。

本当にやっていいのかどうか聞いてきてるな。

 

俺はオッケーと言わんばかりに親指を立てた。

 

 

赤星さんがすーっと息を吸う。

勢いのままにやった方がいいんだぜ、こういうのは。

 

 

 

「やぁー!やぁー!西住ーっ!しほーっ!」

 

 

 

「「「「……」」」」

 

 

 

おー、これは完全に奇襲成功してしまったな。

敵にも味方にも。

 

「本年4月!忘れもぉしない!島田流家元との『お花見飲み比べ対決』!

貴殿のぉ、堂々たる飲みっぷり!情けない泥酔姿!

敵ながらぁ!あっぱれであった!」

 

 

ガタッ!と立ち上がるしほさん。

 

「待ちなさい!何でそのこと知ってるのよ!」

「ひぃ!?わ、私は荒谷さんにメモを渡されてこれを読んでくれって……」

「勝負にはまったく関係ないから大丈夫!」

「それだとただ、私が貶められてるだけじゃない!」

「だって勝負だ!じゃ味気ないだろう?」

 

面白くないしな。

 

「情報源は千代さんなンで、文句なら利用できる情報を流した島田流にどうぞ」

「おのれちよきちぃぃぃ!!!!」

 

情報源は千代さんとは言ったが、この現場に居なかったとは言ってないんだがな。

 

 

実はこの件、後片付けさせられたのは俺なんだよな。

母さんから、二人が倒れたと聞いたときは慌てたさ。

言ってみたらものすごい酒の臭いをさせて

人様に見せるにはちょいと刺激的な格好で、人様には決して見せられない顔をした

島田流家元と西住家師範がそこにはいた。

 

 

ちなみにそのときの姿は写メってありまぁす!

 

 

 

しっかしこの時点で十分動揺誘えてんじゃねぇかな……。

でも面白いし、しほさんのこの姿はみんな普段見れないだろうから放置だな。

 

 

面白いし(2回目)

 

 

「しかーし!みほの母親と言う立場上……これを聞かれようが、

おめおめとみほを黒森峰から転校させるわけにはいかない!」

 

 

「そ、そうよ!勝手なことはさせません!」

 

動揺しすぎィ!

 

「よって!ここに!『晩御飯どっちが美味しく作れるかな』を、この西住家にて!

執り行う事ぉ!ここに!もうしこーむ!!!!」

 

それだけ言うと赤星さんは障子を閉めてしまった。

 

 

「「「「……」」」」

静寂が部屋中を包む応接間。

 

 

「効果は抜群だったな!」

奇襲大成功!と。

「何よこれ!」

「ん?奇襲だろ?」

「違うそうじゃない、そういうことを聞きたいわけじゃない」

「戦車でドカンドカンするよりも、こっちの方が面白いじゃねぇか」

「えぇ……」

 

 

 

若干震えるしほさん。

的確にウィーク狙ったからな。

 

「今のは聞き間違いかしら?」

「なにがです?」

「晩御飯を作るとかどうとか……」

「俺らが行くことを菊代さん知らなかったンでな、

晩御飯の準備してなかったらしい。

じゃあ勝負のついでに作っちまったら早いなってな」

 

 

しほさんが固まった。

 

しばらくした後、俺に鋭い視線が刺さる。

 

 

「……図ったわね?」

「なんのことやら」

「答える気はないと……それはそれでまぁ、構いません。

西住流に撤退の二字はありません。

それに私も日々精進を重ねているのですから。」

 

まほと同じ事言うじゃないか。

流石親子。

しかしこの言い方……少しは任せずやっていたと言ったところか。

が、俺は知っているぞ。

付け焼刃でしかないということを。

 

 

「作る料理はお互いの評価を比べやすいようパスタにしようか」

「パスタかぁ……色々作れるけど……」

「パスタ……まぁ、そばみたいなものでしょう」

 

男でも作れる簡単料理だが、ソースや工夫次第でかなりバリエーションが増える。

俺も一人暮らししてる時にしょっちゅう作ってたな。

ちなみにしほさんから零れた危険な発言は無視する。

俺は何も聞いてない、いいね?

 

 

「今この場に居ない人にも審査の協力してもらうけど、

二人であんまり量作ると食べきれなくなる可能性もあるからな?

適量で頼む、足りなきゃ俺が追加で作るから」

 

 

その発言にエリカが驚いたような顔をする。

「アンタ料理なんか出来るの?」

「エリカ、守矢の料理の腕はすごいぞ」

「中学生の時に作ってもらったけど美味しかったよ」

「なんというか意外ですね」

「うちの台所は俺が仕切ってたからな」

 

母さんできねぇんだよ……料理。

 

 

「だが守矢、これで何を決めるって言うんだ?」

「そうだな、それも発表しておかないとな」

「は、発表?」

 

 

「よろしくお願いします!」

 

再び勢いよく開かれる障子。

 

プワァーと笛の音が響き渡る。

 

 

「やぁー!やぁー!西住ーっ!しほーっ!」

 

「ま、また赤星が犠牲に……」

哀れむような目で赤星さんを見るエリカ。

 

 

「このぉ!対決に勝てばぁ、みほは黒森峰に残ろう!

しかしぃ負ければぁ、みほはぁ黒森峰を去っていく!

もーうわかったであろう、西住しほ!

これよりー行うはぁ!みほのぉ残留を賭けたぁ!

調理対決とぉ!なるのだぁー!!!!」

 

バタンと障子が閉まる。

 

 

「なぁ、守矢。これは必要なことなのか?」

「んー?面白いだろ!」

「これ、赤星が哀れすぎない!?」

「俺がやってもよかったんだけど赤星がどうしてもみほの力になりたいって」

「それでオッケー出すってあの子ちょっとおかしいわよ……」

 

 

俺はしほさんとみほに激励を送る。

 

「しほさん、みほの残留を賭けて頑張ってください」

「ちょっと待ちなさい」

「みほ、自分の戦車道のために頑張れ」

「こ、これはいいのかなぁ……」

 

お互いひかねぇもの、しょうがないだろ。

一番初めにしほさんが引いてくれるようであれば、

俺だって奇襲するつもりは無かったさ。

そうじゃないんだから仕方ないね。

 

「どうした?しほさん」

「どうしたじゃないわ、勝手に決めて

そんなものを私が認めるとでも?」

「ほぉ、やっぱ認めないと?」

「当たり前です、こんなことで娘の人生を左右させられません」

素直になってりゃここまでする必要は無かったんだがな。

「……だったらいいんだな?この事、常夫さんに報告しても」

「あ、あなた何を……」

 

知ってる弱点、()()()()じゃないだぜ?しほさん。

 

「常夫さんにみほの意見をガン無視して

黒森峰で戦車道をさせようとしている、と」

「そ、それがどうしたのよ……」

「常夫さん、怒るだろうなぁ。

日頃からみほとまほに対して母親としての

接し方をするように言われてるんだろ?」

「あ、あなた汚いわよ!?」

 

この人、常夫さん好きすぎるんだよ。

世間体を気にして誰か居る時はキリッとしてるけど

二人きりだと割りと甘えて来るんだと常夫さん言ってたもんなぁ。

 

 

 

「こうなったらやばいよなぁ、

好きだった戦車を嫌いになるみほを見たら

常夫さんも考えるところが出てくるよなぁ……。

当時小学生の俺でさえ思ってたんだから、

大人の常夫さんはみほ連れて家を出る可能性もあるよなぁ……」

 

 

 

これは絶対にない。

そんなことするくらいなら徹底的にしほさんを説得する。

娘も溺愛してるがしほさんに対するものも負けてないし。

 

あの人、しほさん好きすぎるんだよ。

世間体を気にして誰か居る時はキリッとさせてるけど

二人きりなら徹底的に甘やかしたいって言ってたもんなぁ。

 

 

 

やべぇ、砂糖吐きそう。

 

 

 

「ぐぬぬ……」

「この勝負さえきっちり受けてくれるんなら、

常夫さんにも黙っとくんだけどなぁ?」

「い、致し方ありませんね……!」

 

もうこの時点でしほさんは一杯一杯なのがわかる。

俺はさっき()()()()()()()()()()()()()()()()って言ったじゃないか。

 

 

 

常夫さんをその中に含まないとは言ってないよね?(ニッコリ

 

 

 

 

 

「あぁ、そうだ。それともうひとつ言うことがあったんだった」

「ま、まだ何かあるのですか?」

「勝負に当たってこういう条件を付けさせてもらおうかな、と思ってまして」

「じょ、条件?これ以上何かあるっていうの?」

 

「お願いします!」

「ま、また!?」

 

三度勢いよく開かれる障子。

ピーッ!と勢いよく3方向に伸びるぴろぴろ笛。

 

 

「やぁー!やぁー!西住ーっ!しほーっ!」

 

「また赤星が……」

もはややぶれかぶれになってる赤星さんを見て、

ほろりと涙を流すエリカ。

アイツだってみほの為に頑張ってんじゃねぇかよ!泣くなよ!

応援してやれよ、応援してやれって!

 

「この対決に負けたならぁ、しほさんにはぁ!

生き地獄をぉー味わってもらおう!」

 

 

「な、何でそんなものを……」

 

「みほは負けたら居場所の無い黒森峰戦車道に逆戻りで

数人味方は居るとはいえ生き地獄に近いんだ。

それにみほを失って痛手を受けるのはあくまで黒森峰であって、

勝っても負けてもしほさん自身は何も痛むところは無いんだぜ?

ただ娘がちょっと遠いところに転校するだけ何だから。

危険性(リスク)ゼロでみほを手に入れようなんて……、

そりゃあ公平じゃないですよ」

 

 

娘が行きたい学校があるから県外に行きたいって、言ってるだけ何だよな。

何か二人共親子関係がマッハでやべぇみたいに感じてるけど、

俺からすればそれくらいで親子の縁は切れないだろ……と思うんだよなぁ。

親の方が勘当する、娘の方が縁を切るとかしない限りは、だけど。

 

 

 

「なに?みほがちょっと遠くへ行くことより、

苦しい生き地獄がぁ、あるものかって?」

 

 

いや、あるよな?

一生会えないとかならまだしも

ちょっと遠くに転校するくらいであれば

普通に他にも一杯あるよな?

自分でカンペ書いておいて何だがもうちょっと

他の事書けばよかったな。

 

 

「うは!うは!うはは……あるじゃあないか……、

あるじゃあないかぁ、西住しほぉ」

 

「な、何をさせる気よ……」

 

「おまえはぁ、フリフリヒラヒラが大嫌いだ!

露出度の高い服がぁ大嫌いだ!戦車道連盟の広告の一環で

コスプレをしたときはぁ、ずいぶん辛かったそうじゃないかぁ……」

 

「だから何でそんなことまで知ってるのよ!」

「色々と情報源を持っているので」

 

 

これの情報源は母さん。

戦車道連盟は様々な分野とコラボを行っている。

戦車のよく使われる陸自などであれば自衛隊員を。

交通安全週間であれば女性警察官を。

アパレルブランド等ともコラボしておりその際はそのブランドの

衣装を着たりしている。

 

しほさんは贔屓目で見なくても美人だ。

そらもうそういう依頼は殺到する。

クールでバリバリのキャリアウーマンの様な立ち振る舞いから

女性警察官や自衛隊、服であればスーツやパンツなどの

きちっとした衣装を着る依頼が多いのだが、

極稀にとんでもない依頼をぶち込んでくる企業も居ると言う。

 

つい最近、母さんと共にとあるアイドル育成ゲームを

手がけている企業の依頼を受けたという。

30秒程度のCM撮影だ。

 

衣装を着て、そのキャラの様に喋るだけ。

誰でも出来そうな簡単なお仕事。

だがひとつ問題があった、アイドル、すなわち二人の着る衣装だ。

 

その衣装がすげぇフリフリのアイドル衣装と

すげぇ露出度の高いドレスのような衣装。

 

 

身長の低く実年齢より更に若く見え、こういったことにノリノリな

母さんはアイドル衣装に着替えて振り付けまで完璧にこなしたと言う。

ちなみに演じたアイドルの設定は自称永遠の17歳。

発言にところどころぼろの出る自称永遠の17歳。

余談ではあるが、そのキャラクターと違い戦車道で鍛えられた母さんは、

セットリストを休憩無しで完璧にこなしたそうな。

そのゲームやってるんじゃないか?母さん。

 

 

こうなると問題はしほさんだ。

確かにまるでしほさんをベースに作ったようなキャラは存在する。

以前は戦車道で素晴らしい活躍をする寡黙な隊長だったが、

デビューしステージに立ってからは聴く者見る者を魅了する妖艶な女性。

キャラのデザインも長い黒髪で釣り目気味のキャラとまるで本人。

 

 

 

だが、それをしほさんがやるかと言うとそれは否だ。

こんな素肌の見える衣装は絶対に着ないと頑なに拒否。

スタッフや戦車道連盟の方、うちの母さんも説得をしていたが、

本人はそんなの知ったことかと拒否。

撮影が長時間止まってしまい、依頼した側も諦めようとした。

 

 

 

 

しかし、そこは長年の友人である母さん。

必殺の一言をしほさんだけにぎりぎり聞こえる程度で言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

『そうかそうか、つまり西住流(きみ)はそういう流派(やつ)だったんだな?』

 

 

 

 

 

 

 

と、非常にわかりやすい煽り。

わかりやすすぎてもはや苦笑いの出るくらいのものである。

 

しかし、その効果は絶大だった。

 

 

『っ!やってやろうじゃないの!』

 

 

 

とやけくそになったしほさん。

奪うかのように衣装を取って更衣室で着替え

無事依頼を完遂したと言う。

 

この件で母さんは、

「しぃちゃんマジチョロイン」

と、不適切な発言を残していた。

 

 

 

ちなみに、その動画の経済効果はとんでもなかったそうな。

 

 

 

 

 

「んん?なんだと?

1着なら大したことないだと?」

 

「言ってない!言ってないわよ!」

まぁ、1着でも絶対に嫌だろうな。

 

「ぬは!ぬは!ぬはは!誰がぁ1着と言った?

ん?じゃ2着かって?」

 

もうノリノリの赤星さん。

いいぞいいぞもっとやれー!

 

「ぬは!ぬは!ぬはは!

着せ替え放題だ!満足するまで!ずっと着せ替えさせてもらうぞぉ!」

 

 

「嫌、それは絶対嫌よ!」

「今後2年間のみほに比べれば満足するまでなんですから

よっぽど楽ですよ、僕()も鬼じゃないんですから」

 

 

「お母様、諦めましょう。これもみほの為です」

しほさんを慰めるまほ。

 

でもなぁまほ……お前は()()()()()()なんだよなぁ。

つまり、お前もどちらかと言えば()()()()なんだぜぇ……。

 

「なぁ、西住まほぉ……」

「どうした?赤星」

「人事じゃないんだぞぉ……お前もぉ一緒に着せ替えられるんだぞぉ。

みんな満足するまで!西住しほと西住まほのぉ!撮影会をぉするんだぁ!」

 

「な、何故私が参加しなければならないんだ」

 

「そら、隊長だもん。戦力の低下は防ぎたいでしょ?

みほも渡したくは無いでしょ?」

「だが……しかし……」

「なぁに、しほさんが勝ってもまほが黒森峰を変えれば、

みほのやりやすい土壌を作ってやればいいだけじゃないか……。

みほも助かる、黒森峰も強くなる、いいことしかないぞぉ?」

 

 

「頑張れ!頑張ってお母様!!!!」

 

よぉし、まほは抱き込んだぞ。

 

「エリカ、身構えてるがお前は別に着せ替えられないからな」

「そ、そうなの……安心したとかじゃないわよ!?

そもそもなによこの展開!絶対おかしいわよ!!」

「だって、どっちも意地があるだろ」

「いや、それはそうだけど……」

 

もう一押しだな。

 

「エリカ考えても見ろ、確かにみほが勝ったら同じ学校で

戦車道は出来なくなるかもしれないが友人関係まで破綻するわけじゃないんだぞ?

それにまほの着せ替えはもう2度と出来るチャンスは無いぞ……。

満足度にはお前の満足度も含まれてるんだからなぁ……」

「ま、マジ?」

「当然だろ?何で副隊長だけが責任負わなきゃならんのだ。

せめて隊長は犠牲になってもらわないとな、主に俺の為に」

 

「みほ!頑張んなさい!応援するわ!」

「エリカ!?」

「隊長、私は黒森峰戦車道履修生の前に、

みほの友人です!みほの意思を尊重します!」

 

 

エリカもオッケーだ。

 

 

 

「あのぉ、これでよかったんでしょうか……」

「お、赤星さん。今回は悪かったな」

「いえ、私がお願いしたことですので……」

「まぁ、後は野となれ山となれって感じだな」

「でも、ちょっとふざけすぎでは……」

「これくらいで丁度いいんだよ、この人達は。

普段がちょっと固すぎるくらいあるんだから」

 

 

 

外じゃそうもいかないだろうけど。

家でくらい、もっと砕けて接するべきだ。

 

 

家族なんだからよ。

 

 

 




王道を征く……迷いからの決意ですよ。
原作はよくこんな簡単に転校できましたなぁ、と思ってました。
僕の知らない媒体で解説があったかもしれないけど。

でもやっぱ決意決める方が……ええんやなって。

なお、その後の奇襲のひどさよ。

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