俺の第2の人生は戦車道と言う競技のある世界でした   作:ふみみん

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面接で見下されたような目をされ半分切れてしまったので初投稿です。


19・ぴすとる西住吶喊です!

「えー、こちらキッチンです」

通話中のスマホに向かって俺は喋る。

「みほの時はいろんな作業を任されたので喋りませんでしたが、

今回は喋る余裕があります」

 

だって何もしてないんだもの、この人。

 

 

「しほさん」

「……なに?」

微動だにしないしほさんに声をかける。

「台所まで来たのはいいですけど調理開始しないんですか?」

 

スマホ片手にしほさんに問いかける。

 

「何を作ろうか考えてるのよ」

「考えるほどレシピあるんですか?」

「あ、ありますよ!パスタなんて楽勝です!」

「でもさっきから食材を打ち抜くような目で見てるだけですよ?」

 

これには流石の食材も真っ青である。

 

「えー、特設会場の常夫さん。しほさんの手料理を食べるのはいつぐらいですか?」

「な、何てこと聞くの!?」

「いや、これじゃ間がもたないので」

 

さっさと作ればよかったものを……。

 

 

《そうだね……結婚してからは菊代さんにまかせっきりだったし……、

一度だけ学生の頃にお弁当を持ってきてくれたんだけどその時だけかな?》

 

「その時はどんなものを食べたんですか?」

 

《卵焼きやウィンナーが入ったオーソドックスなお弁当だったよ。

ちょっと見た目はあれだったけど美味しかったなー》

 

「卵焼きが焦げてたとかそんな感じですか」

 

《そうそう、何か半分スクランブルエッグみたいになってたんだ》

 

「鋼の西住しほにも可愛らしいところがある、と言ったところでしょうか」

 

《ごめんなさいって涙目でお弁当渡された時は何だと思ったけどね。

まぁ、そんなところもひっくるめてしほさんのこと好きなんだけど》

 

「もう辞めて……ッ!」

 

この西住流師範、完全に晒し者である。

 

《お母様にそんな一面があるとは……》

《何か意外だね、お姉ちゃん》

《何で私は隊長たちの親御さんの惚気話を聞いてるのかしら……》

《逸見さん!しっかりしてください!目に光がないですよ!》

 

「しほさん、早く調理を開始してください。

このままじゃ夜中になってしまいます」

「わかってます!」

 

《しほさん頑張ってー》

 

「常夫さんも応援しています、頑張りましょう。

微力であれば俺も手伝いますから」

 

「わ、わかったわ……それじゃあブロッコリーを使いましょう」

「無駄にならないで助かった、そちらに下処理の済んだブロッコリーがあります」

「無駄って……水で洗うだけでしょう?」

 

《お母さん……ブロッコリーって意外と手間がかかるんだよ?》

《む?そうなのか?みほ》

《隊長もご存じないんですか?》

《私も洗うだけだと思ってました……》

 

「意外と知らない人が多いんだな」

「え?違うんですか?」

「菊代さん、説明どぞー」

 

《ブロッコリーは蕾が密集しているお野菜なので水をかけただけでは不十分なのです。

あらかじめ50度くらいのお湯に逆さまにして20分ぐらい浸しておくと、

奥の方のゴミまでとれるのです。私はその後念の為振り洗いもいたしますが。》

 

「ちなみに重曹や野菜用の洗剤で洗ってもいいっすよ」

「ただ洗うだけじゃないのね」

 

また一つ賢くなったしほさんである。

 

「他に使うものは何があります?」

「そうねぇ……海老とトマトかしら」

 

そう言いながら先ほどパスタを茹でたなべに再度火をかける。

先ほどとそんなに時間が立っていなかったのですぐにお湯が沸いた。

「麺は細い方がいいわよね、多分」

言うが早いか早々にパスタを鍋に放り込む。

 

「ちょ、しほさん!パスタ早い!」

みほとは違うんだぞ!?まだソースのソの字もないんだぞ!

「大丈夫です、パスタが茹で上がるのに時間があります」

ふんす!とトマトを切り始めるしほさん。

大丈夫なのか確認のためしほさんの入れたパスタの袋を見る。

 

「……ちなみに何分くらい茹でるからその作業に入りました?」

「10分ないくらいでしょう?普通」

 

……ヤバイ。

 

これパスタ細いやつだぞ……1.4mmって書いてるぞ……。

 

 

そんなことを尻目にソースの材料を作るしほさん。

 

「しほさん……早め早めに麺の固さ確かめた方がいいですよ」

「まだソースの下ごしらえの最中ですが……守矢君がそういうのなら

念の為確かめておきましょう」

 

麺を一本菜箸で掴んで食べてみる。

 

「……あら?」

「ど、どうしました?」

「ちょっとこれ食べてみてくれないかしら」

 

そう言ってパスタを一本渡してくる。

 

「……いい感じですね」

「思ったより早く茹で上がったわね……」

そう言ってパンチングボウルにパスタを移す。

 

「何でこんなに早くゆだったのかしら……」

 

パスタの太さが違うからです。

 

慌ててフライパンに火をかけオリーブオイルをそこに垂らす。

 

「守矢君、そのパスタにオリーブオイルを振っときなさい!」

「伸びないように一応は手を打つんですね?」

「黙って手を動かす!」

 

怖ぇ……マジじゃねぇか……。

 

「ジュっとしない……フライパンの加熱が十分じゃないわね……」

先ほどのフライパンに海老を入れているが油の音がほとんどしない。

 

「そうだわ!守矢君にんにくを探して!」

「へあ!?」

「急いで!」

ブロッコリーをフライパンに投入しながら焦ったような表情で指示を出すしほさん。

「俺が台所に来る前に切ってないんですか!?」

慌ててにんにくを探す俺。

「急がないとパスタはもう準備万端なのよ!」

「あ、あった!これどうするんですか!?」

「このソースに使うから切って頂戴!」

「ちょっと待ってください!」

さっさと皮を剥いてにんにくをスライスしていく。

「切ったのはフライパンに入れますよ!」

にんにくをフライパンにそのまま入れていく。

「やっぱりイタリア料理ににんにくのパンチは必要よね」

「さ、先ににんにくじゃないんですかね……こういうのって……」

「切ってなかったから仕方がないわ!いつ入れても一緒よ!」

 

……もう何も言うまい。

 

おそらくパスタがちゃんと自分の時間通りに出来ていたのであれば

ここまで混乱することはなかったんだろう。

もう西住流を料理でも体現してるといっても過言ではないな。

 

「ここに赤ワイン」

炒めている具材に赤ワインをさっと振る。

「塩コショウで味を調え……あ」

「あってなんですか!あって!」

「今回のパスタはちょっと辛いわ」

塩コショウ入れすぎたな!?

 

 

「後は、ここにパスタを入れて絡めるだけね」

パンチングボウルのパスタをフライパンに放り込む。

 

 

 

 

 

その見てくれはまさにドームだった。

 

 

 

 

 

《な、何でそんなに増えちゃったの!?》

《何か焼きそばみたいだな、なぁエリカ?》

《わ、私に振らないで下さいよ!》

《ボウルに移してから大分経っちゃいましたから……》

《奥様……》

《ほんとしほさんは不器用だねぇ》

 

 

「大丈夫、ソースと絡みさえすれば全然挽回できるわ……」

が、増えすぎたパスタは一向にソースと絡まない。

 

「は、早くしないとまだ増えますよこれ!」

麺をかき回しソースと絡めていく。

「たっぷりあるから、みんなお腹一杯食べれるわね」

 

違う、そうじゃない。

そういう話ではないんです。

 

絡めたパスタを

 

お皿に盛り付ける。

 

「出来たわよ、パスタ 海老とブロッコリーのスパゲッティー ティーガー風」

 

「な、何がティーガーなんですか……」

「圧倒的存在感と攻撃力ね」

「存在感はともかく攻撃力ってなんですか、攻撃力って」

 

なんかお見舞いされんのか?

 

 

「まぁ、食べてみれば美味しいわよ。きっと」

「不安だなぁ……」

 

企画しといてなんだけどここまでとは……読み違えたなぁ……。

 

「ほら、行きますよ」

 

しほさんはさっさとお皿を持って会場の方へ戻っていった。

「まぁ、なるようになるか」

 

 

 

 

 

 

 

「では、こちらをご賞味ください」

全員の目の前にはこんもり詰まれたドーム型パスタ。

「少ない方がいいとかお腹一杯とかそんな弱音は聞きません。

みんな平等に食べるんです」

 

想定よりかなり増えてるからな。

ただ、気持ち多めに常夫さんには食べていただこう。

 

 

 

「……なんかもちゃもちゃしてますね」

「パスタがもはやおもちみたいな食感ね……」

 

赤星さんとエリカからは微妙な判定。

 

「お母さん、もうちょっと料理勉強頑張ろう?」

「奥様、私もお手伝いいたしますので」

みほと菊代さんからは応援の声が。

 

「私も料理は勉強した方がいいか……」

まほからは決意表明が。

 

「……」

一人黙々と食べ続ける常夫さん。

これにはしほさんも不安顔、

俺も食ったけど不味くはないんだよなぁ。

致命的なまでにパスタが伸びてるだけで。

まともな時間だったらそれなりのものが作られてるはず。

 

「ふぅ……」

他の人よりも若干多いパスタを完食する常夫さん。

 

 

 

 

「おいしかったよ、しほさん」

 

 

 

 

常夫さんの笑顔がしほさんにとっては何よりの報酬だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、結果は何となく察しては居ますが判定をどうぞ」

お皿を片付け審査員に問う。

 

「師範すみません、みほの方が美味しかったです」

「私も……」

エリカと赤星さんはみほに。

 

「私はお母様に、味は……察してください」

「僕もしほさんだなぁ、みほのも美味しかったけど、

やっぱり愛妻の手料理ってのはそれだけで価値があるもんだよ」

まほと常夫さんがしほさんに。

 

「おっと、これは菊代さんに全てが委ねられた!」

「あらあら、私ですか」

「さぁ、今夜の勝者は……どっち!」

 

 

「じゃあ、私はみほさんに」

 

 

 

「決まったぁぁぁぁぁ!!!」

少し予想外ではあったがみほの勝利に終わった。

「残念でしたなぁ、しほさん」

「くっ……パスタさえ……パスタさえ太ければ……」

確認しない方が悪い。

料理ってのはおおよそ手順どおり分量どおりにすれば美味しく出来上がるんだよ。

慣れないのに変にアレンジ加えたり目分量でやるから失敗するんだよ。

「さて、みほさん。これで黒森峰から転校することも出来るようになりましたがいかがでしょう?」

「えっと……勢いで言ったのはいいけどちょっと考えようかなって……」

まぁ、当たり前だよなぁ?

「当然だな、色々考えて決断すればいい、邪魔するもんはもうねぇよ」

「……うん」

「まほやエリカ、赤星さんはみほが出て行って欲しくなけりゃ

内部を変えろ。いい機会だと思ってやり直したらいいさ」

頭のお堅い連中がどこまでいうこと聞いてくれるかはわからんがね。

 

「しほさんは……」

「わかってます……この件に関して私は口を挟みません」

「いや、違いますよ?」

何言ってんだこの人?

そんな当たり前のこといちいち確認しませんよ。

「はぁ?ではいった……まさか」

「着替えはここにあるので早く着替えてください」

巨大なバッグを差し出す。

「嫌よ!絶対に嫌!」

「いや、長い髪ですしスタイルもいいのでこの衣装は映えると思うんですよ。

あ、安心して下さい。フリフリではないですよ」

俺はカバンから衣装を取り出す。

「何でしょう、この全身紫色のタイツのような……」

「そうですねぇ……あれです、母親の権化みたいなものです」

 

頼光ママは回す方のノッブのママとしても有名だからね。

 

「正直みほとまほは見ないほうがいいと思うんだ」

「ど、どうして?」

「これ、めちゃくちゃ体のラインというか……扇情的な格好?みたいな。

それを親がしてると想像してみ?」

「それは……ちょっとあれだな……」

 

しかもこの世界にはいないキャラクターである。

つまりオリジナルと言う扱いである。

 

「これ、ツブヤイッターでよく上がってるやつじゃない……」

「お、エリカは頼光ママ知ってるのか。

うちの学校のサークルで作られてる本のキャラだぞ、これ」

 

 

何人かのサーヴァントの絵を漫研に書いて見せたら

鬼のような形相でアイディアをよこせと詰め寄られた。

やっぱりあれほど売れたコンテンツはこちらの世界でも通用するようで、

ツブヤイッターでも軒並み好評、今年の夏コミにも参加していたようだ。

 

 

 

「なんですか、この格好……!無理です!絶対に嫌です!」

「そんなに嫌なんですか?」

「当たり前でしょう!」

「うーん……じゃあ、今から言う条件を飲むのであれば勘弁してもいいですよ?」

 

 

俺はしほさんにその条件を伝えた。

 

 

「……本当にそれでいいのですか?」

「そういいますけど出来ないからこうなってるんですからね?」

「そ、それはそうですが……」

「これは二人のためでもあります、俺はこっちをオススメしますがね」

「……わかりました」

「ではこれを」

俺は一枚のメモ用紙を渡す。

 

 

「これは……」

「後で見ておいてくださいね」

 

 

 

さって、俺は他の準備をしないとなぁ。




やばい……どんどん間延びしてるぞ……。
出来れば後数話で原作1話にしたいぞ……!

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