俺の第2の人生は戦車道と言う競技のある世界でした 作:ふみみん
放送で体育館に集められたと思っていたら……。
「戦車道……それは伝統的な文化であり、
世界中で女子の嗜みとして受け継がれてきました」
必修選択科目のオリエンテーションと言うのは名ばかりの、
戦車道の戦車道による戦車道のためのプロパガンダが行われていた。
「戦車道を学べば、必ずや良き妻、良き母、良き職業婦人になれることでしょう」
参考に出来るのは母さん、しほさん、千代さんか……。
……この文面に関しては再考の余地があるな。
だが、なれるかもしれないくらいでとめておけば問題ない。
そしてでかでかと表示される選択科目の用紙のデザイン。
戦車道だけ目立ってんなぁ……。
「数年後の日本で行われる予定の世界大会の為、文科省より
全国の高校、大学に戦車道に力を入れるよう要請があったのだ」
「んで、うちの学校も戦車道復活させるからね~」
まぁ、戦車道を復活させるのはわかるな。
今じゃ多くの高校もやってることだし、
戦車道での推薦や企業からのスカウトも珍しくないし。
世界大会があるのならなおさらだな。
「なるほどねぇ……さっきのみほの表情の原因はこれだな」
間違いないな。
また去年みたいに深みにはまってんだな。
ふむ、ちょっとだけお節介でも焼いてみるか。
今日の晩にでもみほに連絡しておいて
おそらく明日生徒会室に呼び出されるだろうから、
色々と場を和ますための小道具を用意しておかなければ……。
……しかし、ちょいと引っかかることがあるな。
戦車道成績優秀者への特典はやりすぎてないか?
食券100枚と遅刻見逃し200日と通常の授業の3倍の単位だろ?
胡散臭ぇ。
いくら角谷の姐さんと言えどこれはやりすぎだ。
そもそもこういうのって文科省じゃなくて、
高校戦車道連盟が言ってくるもんじゃないか?
それに今、戦車道をしていない学校に
いきなりやれって言っても無理じゃないか?
選手はまだしも車両どうやって調達するんだよ。
過去に戦車道をやっていた学校とはいえ、
パーツや車両は売却されたり譲渡されることがあるんだ。
そもそもこの学校に車両ってまだ残ってるのか?
……まさかなんか裏がある?
「……よし」
携帯を取り出しこっそりメールを打つ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
送り先:しほさん
件名 :文科省からの戦車道強化の要請
お久しぶりです。
ちょいとお聞きしたいことがあるんですが
高校戦車道連盟に対して
文科省辺りから高校・大学戦車道の
強化とかの要請ってありました?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ほい、送信。
……ポコン。
しほさん返信早ぇよ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
差出人:しほさん
件名 :(ヾノ・∀・`)ナイナイ
お久しぶりですね。
なんですか?その文科省からの通達とは。
こちらにそういったものは来ていませんが。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
はいダウト。
完全に裏に何かありますねこれは。
……いずれ角谷の姐さんからも話を聞かないとな。
その日の夜。
私は一人部屋で悩んでいた。
「……」
私の目の前には必修選択科目の用紙。
あの後、沙織さんと華さんは戦車道をやりたいと言っていた。
華さんはアクティブなことがしたかったから。
沙織さんは男性は強くて頼れる女の子がモテるから。
……沙織さんはちょっとだけ的が外れてる気もするけど。
正直に言えば私も戦車には乗りたい。
戦車道をやりたい。
でも、今私が戦車道をやったら……。
「黒森峰の人が……いい顔はしないだろうな……」
あの学校から見れば私はいわば戦犯で裏切り者だ。
お姉ちゃんやエリカさん、赤星さんだけが私の本当の気持ちを知っている。
そんな状態で私が大会に出たら……。
「どうしよう……」
私は……私は……。
[やってやーる!やってやーる!]
一人で悩んでいる時、携帯電話の着信が鳴った。
「……守矢君だ」
荒谷守矢君。
去年、私に少しだけ変わるきっかけをくれた人。
まさかこの学校に居るとは思わなかったけど……。
「……もしもし」
「よう、みほ。もう寝るとこだったらすまんな」
「起きてから大丈夫、どうしたの?」
「どうせ、今日の必修選択科目のことで悩んでると思ってな」
彼にはお見通しだったようだ。
「私どうしたらいいのかな……」
「やりたいならやる、やりたくないならやらないでいいんじゃねぇか?」
「沙織さんもそう言ってくれたけど……」
踏ん切りがつかない。
「なぁ、みほ。何がお前の中で引っかかってるんだ?」
「それは……」
「大方、この学校で戦車道はじめたら黒森峰の連中に
何か言われるかもとか思ってんだろ?」
「……うん」
「言わせとけばいいじゃねぇか」
「え……?」
「向こうが勝手にお前を排斥しただけなんだから。
知らん振りしてやりたいことやればいい」
「で、でも……」
「んで、見せ付けてやればいいだろ。
お前らが追い出した私はこんなに強いんだぞって」
それでいいのかな……。
「マホもエリカも反対はしないだろ……もしかしたら逆に火が付くかもな。
一番の味方だったのが敵になるんだからな」
そう言って守矢君は笑った。
「だが、やりたくないのであれば話は別だ。
無理に戦車道をやる必要はねぇさ」
それもまたお前の意思だ、と続ける。
「みほがどちらを取ろうが何も心配は要らないさ」
そう言って守矢君は一呼吸置いて、
「お前は間違っちゃいない」
小さい頃と同じ言葉で励ましてくれた。
翌日、朝のホームルームの前に私は生徒会に呼び出された。
「私達も行くから!」
「落ち着いてくださいね」
沙織さんと華さんも心配にだからと一緒についてきてくれた。
「さて、返事を聞かせてもらおうかな~?」
「それよりなんでみほには強制的に戦車道を取らせようとするんですか!」
「そりゃ~、戦車道に力を入れるから経験者が居た方がいいでしょ?」
「我が校、他に経験者は皆無です」
「終了です、我が校は終了です……!」
「勝手な事言わないでよ!」
「そうです、みほさんのやりたいようにさせるべきです」
「んな事言ってるとあんた達……この学校に居られなくしちゃうよ?」
「脅すなんて卑怯です!」
「脅しじゃない、会長はいつだって本気だ」
「そーそー」
「今のうちに謝った方がいいと思うよ?ね?」
「ひどい!」
……二人共、関係ないのに……私のために……。
私は……私は……!
「こんな横暴、スペイン宗教裁判じゃないですか!」
ジャーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!
言い争う生徒会質に響く謎の効果音。
そして勢いよく開かれる生徒会室の扉。
何故か赤い衣装を着てハイテンションな守矢君がそこに居た。
ただ酔った勢いのまま書いたため文字数少なめ。
ネタはそこそこ。
だめだね、そんな状態で書いたら……。
結構古いところからネタを持ってきたが、
知ってる人はいるんだろうか……。