俺の第2の人生は戦車道と言う競技のある世界でした   作:ふみみん

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やっぱり初投稿です。


24・戦車、探します!

「どこに戦車があるって言うのよー!!!!」

明後日来るかっこいいという触れ込みの教官に釣られた武部が叫ぶ。

 

そもそも戦車道の教官なんだから女性なんじゃないか……?

そこまで考えが回ってないとは……やはり残念女子。

 

「駐車場に戦車は止まってないかと……」

各グループで戦車を捜索しているのだが、

俺はその中でみほたちのグループと一緒にいた。

「守矢君、私達と一緒でよかったの?」

「1年のいるグループにいきなり入るわけにもいかんし、

鈴木達は同学年だが連中の対応は正直めんどくさい」

「いろいろあるんだね……」

「関わっていくうちにわかってくるさ」

選手間のコミュニケーションは大事だからな。

 

「じゃあ、裏の山林に行ってみよ!何とかを隠すなら林の中って言うしね!」

「それは森です……」

 

ポンコツ武部と五十鈴さんが先行する。

 

 

「俺達も行くか」

「うん」

 

それに続こうとするが、

 

「……」

 

木の陰からこそこそと誰かが付いてきている。

さっき、戦車の種類を桃ちゃんに聞いてた子だな。

 

 

(みほ、あの子ずっと付いてきてないか?)

(そうみたい……どうしたのかな?)

(一緒に探したいんじゃないか?本人に聞いてみなよ)

(えぇ!?)

(同じ戦車道チームなんだ、勇気出してみほから一歩踏み出してやれ)

(う、うん……)

 

 

「あ、あの!」

意を決して、みほはその子に話しかける。

 

「はいぃ!」

驚きすぎじゃねぇか?

 

「よかったら、一緒に探さない?」

「いいんですか!?」

 

おっと、テンション爆上がりだ。

 

「あ、あの……普通Ⅱ科2年C組の秋山優花里と言います」

 

普通Ⅱ科か、道理で知らんわけだ。

 

「えっと……不束者ですが、よろしくお願いします!」

「こちらこそお願いします、五十鈴華です」

「武部沙織~!」

「あ、私は……」

「存じ上げてます!西住みほ殿ですよね?」

「あ、はい……」

 

戦車に興味があるんならみほの事知っててもおかしくないか。

この感触なら悪い方向ってわけでもないだろうし。

 

「俺は、さっき自己紹介したし大丈夫だよな?」

「えぇ!以前から存じ上げておりました!」

 

……()()()()存じ上げており()()()

 

なんか言い方が妙だ。

自己紹介する以前より知っていたような言い方だ。

 

「では、よろしくお願いします!」

 

秋山はびしっとしたいい敬礼を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、裏の山林も広いよなぁ」

俺達は武部の言う通り校舎裏の山林を探していた。

「……あら?」

先頭を行く五十鈴が急に立ち止まる。

「どうかした?」

武部が五十鈴にそう聞くと、

五十鈴は何かを鼻で探っていた。

「あっちから匂いが……」

匂い?

「花の香りに混じってほんのりと鉄と油の匂いが……」

「匂いでわかるんですか!?」

これには秋山もびっくり。

「華道やってるのそんなに敏感になるの!?」

武部も驚いてるな。

「私だけかもしれませんけど~……」

「いやいや、案外人の能力ってのはバカに出来ないからな。

手がかりがない以上五十鈴を信じてみてもいいんじゃないか?」

 

「では、パンツァー・フォー!」

 

五十鈴の進む方向を指差す秋山。

 

「パンツのアホ!?」

 

何言ってんだこいつ……。

 

「パンツァーフォー……戦車前進って意味なの」

「まぁ、普通は聞かねぇ言葉だな。

っと、五十鈴見失っちまうぞ」

 

匂いを辿るように進む五十鈴。

 

 

 

「……お?」

 

しばらく歩くと遠くに黒い影が見えた。

 

 

「やった!あった!」

「すげぇな、五十鈴」

 

そこには投棄された戦車があった。

 

「38(t)……」

「なんかさっきのよりちっちゃい……、

ビスだらけでぽつぽつしてるし」

 

 

 

 

 

「38(t)と言えば、ロンメル将軍の第7装甲師団でも主力を勤め、

初期のドイツ電撃戦を支えた、重要な戦車なんです」

 

秋山の説明が止まらない。

好きなんだなろうなぁ、戦車。

 

「はっ!」

我に帰る秋山。

「今イキイキしてたよ……」

「す、すみません……」

しょんぼりして謝る秋山。

 

 

「いや、謝る必要はねぇんじゃないか?

好きなことに熱中できるってのは良い事なんだから。

したくてもできない人もいるだろうしな」

 

俺とかな。

 

「守矢君……」

みほは何となく察したようだ。

 

「それに、一瞬でそれだけの情報を出せるんだから、

他にもいろいろなこと知ってるんだろ?」

「えっと……皆さんが思ってるほどじゃないかもしれませんが……」

「俺やみほはこの車両の名前を知ってはいるが、

そこまで細部まで知ってる訳じゃない。せいぜい武装くらいだ。

五十鈴や武部に関しては初心者らしく名前すら知らないんだぞ?」

 

情報ってのは宝だ。

パッと見ただけでそれだけ引き出せるってことは、

相手にとっては脅威になりえるんだ。

 

「その知識は絶対に今後の役に立つはずだ」

「そ、そうでしょうか……」

「とりあえず桃ちゃんに発見の報告だけしとくかね」

 

 

俺は桃ちゃんの携帯にコールする。

 

「見つかったか?」

「校舎裏の山林に1台見つけたぞ」

「運搬は自動車部に依頼する、引き続き捜索を続行せよ」

「あいよ」

 

通話を終え電話をしまう。

 

 

「こいつは自動車部が回収してくれるってよ、他の探しに行くぞ」

「え~、まだ探すの~?」

「沙織さん、頑張りましょう」

「とりあえず、一回校舎の方に戻ろっか」

 

武部、五十鈴、みほが来た道を戻っていく。

 

 

「あ、あの!」

「どうした?なんか見っけたか?」

秋山が不意に声をかけてきた。

「先ほどはありがとうございます」

「なに、本当のことだからな」

「それと、少し聞きたいことが……」

「ん?何だ?」

 

()()()()殿()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……乗らない、とは?」

さっきの言葉もあるし多分……。

 

 

 

「小学生ながら社会人チームの砲撃手を務めその撃破率はトップクラス!

中学生に上がってからは戦車道のある学校を渡り歩いてその力を見せつけ、

いろんな強豪校からスカウトがあったとか!」

 

 

多分じゃねぇ!これ詳しく知ってるやつだわ!

 

 

 

「人違いじゃねぇか?」

「いえ!一度、荒谷殿の試合を拝見したことがありますので!」

「え、見たことあるの?俺の出た試合……」

「はい!」

 

ひ、非公式だからそんなに観客とかいないはずなんだけど……。

それに戦車道が好きだからっておいそれと見れるようなものじゃ……。

 

「私の母親が荒谷殿のお母様と知り合いでして、

その伝手で一度拝見したことがあります!」

 

マジかぁ……世間は狭いな……。

 

「一発も外さない砲撃には感動しました!」

目がキラキラしている。

「よ、良かったのなら幸いだよ」

「それで、是非もう一度……今度は間近でそれを拝見したかったのですが……」

「どうだろうな……公式の場では絶対に乗れないしな……。

俺が戦車に乗るのを良く思わない人がいるのも事実だからさ」

「荒谷殿は戦車に乗るのは……嫌ですか?」

「いや……今でも戦車に乗りたい気持ちはあるよ」

 

あんなに楽しいことを俺は知らないからな。

 

「そうだな……角谷の姐さんにでも頼んでみるか」

 

姐さんは俺が戦車に乗ってたってことは知らないようだけど。

あの人だから嫌な顔はせんだろ。

……代わりになんか要求されそうだが。

 

 

 

「それなら秋山にはその時の装填手にでもなってもらおうか」

「いいんですか!?」

そこまでテンション上がることかね?

「その為には、今出来ることをやっていかないとな。

ほら、探しにいくぞ。みほ達に置いてかれる」

「了解であります!」

 

 

うむ、良い返事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、1日捜索し発見したのは車庫にあったIV号中戦車D型と、

俺らが見つけた38(t)軽戦車の他に、

バレー部?が崖の洞窟内で見つけた八九式中戦車甲型を、

歴女達が池での底でⅢ号突撃砲F型を、

そして1年生がウサギ小屋で放置されたM3中戦車リーを見つけていた。

 

その日は時間も遅くなり自動車部の回収もあったので解散となり、

翌日、戦車倉庫前に車両の洗車のため再度集合した。

なお、搭乗する戦車に関しては、38(t)を生徒会の3人が、

Ⅳ号戦車はみほ達のチームが、それ以外は見つけた車両に搭乗することとなった。

 

「うわっ!ベタベタする!」

「これはやりがいがありそうですね」

 

まあ、放置されてた車両だしな……。

 

「これじゃあ中も……」

とんとんと戦車を上っていく。

「おぉ、流石~」

「武部もこんくらいならすぐに出来るようになるさ」

俺も同じく戦車を上っていく。

 

「どうだ……って聞く必要もねぇなこりゃ……」

車両の中はひどい臭いと状態だった。

「うぅ……車内の水抜きをして……錆取りをしないと……」

「塗装のし直しとグリスアップも追加だな」

他の車両の確認しては見たがどれもこれもひどい状態であった。

「こりゃ、今日一日使わなきゃ無理だな」

早速洗車に取り掛かろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、ここで重大な事実に気づく。

「なぁ、姐さん。俺も一緒に洗車に参加していいんだろうか?」

「ん~?どったの?」

「いや、小山の姐さんみたいならいいんだけどさ」

「なにー?小山の水着に欲情でもしちゃった?」

「えぇ!?荒谷君!ダメだよ!」

「一概に違うとも言えないのが男の悲しいところではあるが、

重要なのはそこじゃないんだよなぁ……」

「じゃあ、どういうこと?」

「洗車ってことは水を使うだろ?」

「使うねー」

「見る限り、みんな体操服だろ?」

「まぁ、汚れてもいいからねぇ」

「……濡れたら透けねぇか?」

 

絶対透ける。

 

 

 

正直眼福だと思う自分もいるが、その後を考えると

これは事前に通告しておくべきだと俺は思う。

ただでさえ、女生徒ばかりなのに、そんなことがあってみろ。

話しかけづらいどころか総スカンだぞ。

 

「あー、じゃあ荒谷ちゃんは車両内の掃除だけやってねー」

「了解した」

「後、戦車の外に出る時は必ず声をかけることー」

「わかった」

 

 

 

その日の授業時間のほとんどは戦車の中の清掃だけ。

暑い上に大変だったが何とか全車両終わらせることが出来た。

その後、秋山の提案にせんしゃ倶楽部に寄る事となった。

 

「こんな店あるんだー」

「この学校にはなかったから触れることは少ないだろうけど、

戦車道にも結構ファンがいるからな」

「私もその一人です!」

 

 

 

お店の中には、書籍や戦車の模型。

パンツァージャケットのレプリカなども売っていた。

 

「お、これうちの母さんの着てた奴じゃん。まだ実家にあるぞ」

ジャケットのコーナーの1着を手に取った。

「これ数年前の日本代表のジャケットだよね?」

同じく店内を見ていたみほが声をかけてくる。

「あぁ、結局1度たりとも着なかったみたいだけどな」

車長じゃないから大丈夫でしょ!とか言ってたな。

「そう言えば、黒森峰の中等部に来たときも違ったよね?」

一応、教官をする人たちには連盟からジャケットが配られていたようだ。

まぁ、受け取った日に押入れに投げ込んでいたのだが。

「私が着るジャケットはこれだけって言ってるからな」

「何のジャケットなのかな?守矢君知ってる?」

「さぁ?昔から持ってたから学生の時のとかじゃねぇか?」

俺も詳しくは知らないが、これを着ると負けられんという気持ちになる。

と、本人は語っていた。

 

 

 

「次は、戦車道の話題です。高校生大会で昨年MVPに選ばれて、

国際強化選手となった、西住まほ選手にインタビューに行っております」

 

店内に設置されたテレビから聞き覚えのある名前が聞こえた。

 

 

「あ、お姉ちゃんだ」

 

夕方の生放送番組での1コーナーの生インタビューに、

まほが出演しているようだった。

 

 

「へぇ~、これがみほのお姉ちゃんなんだ」

「みほさんと似ているような、似ていないような……」

「そっくりだぜ?特にここぞという時以外でのぽんこつっぷりは」

「も、守矢君!?」

「い、意外です……何でもできる人だと思っていました……」

 

まぁ、そう見えても仕方ないな。

そういう風にわざと見せてるのもあるし。

 

 

「戦車道の勝利の秘訣は?」

「諦めない事、そして……どんな状況でも逃げださないことですね」

 

 

おぉ、かっこいい事いってんなぁ!

 

 

「かっこいいなぁ……お姉ちゃん」

 

 

まぁ、こういうのはまほが向いてるからな。

プロフェッショナルって感じだからな。

 

 

「あー、西住選手は女子・男子問わず人気のある選手ですが、

好みの男性のタイプはどんな人でしょう?」

 

 

スタジオの出演者がちょっと下世話な話題を振る。

視聴率のためとはいえ、まほがちょっと可哀想だな。

プライベートすぎて答えづらいだろ、この質問は。

 

 

「戦車道において同じチームであれば、絶対に勝たせてくれる男性ですね」

 

 

あっさり言う辺り流石まほだとは思う。

 

 

「勝たせてくれるとは、健康管理やコンディションの調整など

日々のサポートの出来る方ということですか?」

「いえ、言葉通りの意味です」

 

 

……ん?

 

 

「となると、戦車乗りですか?」

「そうなりますね」

 

あ、あれ?

 

 

「男性で戦車に乗っていて西住選手にそのような言葉を

かけてもらえる男性なんているのでしょうか?」

 

 

 

「一人。たった一人だけ」

 

 

みほからの視線が痛い。

なんだ、俺はまほが言うような有能な人間じゃないからワンチャン……。

 

 

 

「またまた、冗談もお上手ですねぇ」

「ご想像にお任せします」

「では、現場からは以上ですー」

 

 

番組は次のコーナーへと変わった。

 

 

 

「……お姉ちゃん」

何というか、すごい表情だ。

 

「みほのお姉さん全国放送ですごいことしてない!?

あぁ~、あんなことの言える女になりたい!」

……やめたほうがいいと思うんだがなぁ。

「しかし、男性で戦車道がそこまで上手な方はいるのでしょうか……」

「ど、どうだろうな、全国探せばいるんじゃないか?」

「(キラキラキラ……)」

「秋山はこれに関して何も言わないで置くわけにはいかないか?

口を噤む訳にはいかないか?」

 

 

 

ポコン!

 

「……メール?」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

差出人:まほ

 

 

 

件名 :インタビュー見たか?

 

 

 

私が、そう思ってるのはお前だけだぞ 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

はぁ……まだ言うか……。

俺よりいい奴なんてそれこそいっぱいいるってのに……。

溜息が出る。

 

 

場の空気がほんのり重たくなる。

主に俺が重くしているのだが。

 

 

 

 

「あ、そうだ!」

 

 

武部がそんな状況を見て助け舟を出す。

 

「これからみほの家に遊びに行ってもいい?」

「私もお邪魔したいです」

「うん!」

「あの……私もお邪魔していいでしょうか……」

「もちろん!」

「そうだ、ついでに晩御飯作って一緒に食べようよ!」

「いいですね~」

「楽しそうです!」

 

ちょっと前の空気が嘘のように明るくなった。

 

 

 

 

(助かった、すまんな武部)

(いい女はこういうときに出来る女だからね!)

 

 

アイコンタクトで武部と会話する。

が、これがなきゃいい女なんだろうけどなぁ……。

 

 

 

「んじゃ、俺は帰るわ」

「あら、守矢さんはいらっしゃらないのですか?」

「いや、みほん家だろ?」

さすがに厳しいって……。

「えー!守矢君もみほの家行こうよ!」

「いや、男が女の子の部屋に行くのはなぁ……」

「守矢君なら別に大丈夫だけど」

いや、少しは拒否の姿勢を見せようや……。

「久しぶりに守矢君のご飯が食べたいんだけどな?」

 

む!?

 

「守矢君、ご飯作れんの!?」

「バカにするなよ武部、こちとら小さい頃から家の食卓を守ってるんだぞ」

「西住殿、荒谷殿の料理の腕前ってどうなんですか?」

「少なくとも、私よりは全然上かな……悔しいけど」

「守矢さんのご飯食べてみたいです」

「そこまで言うんだったらしゃーねーなー!」

ほんと、しょうがねーなー!

 

 

「露骨にテンションが上がったよ……」

「守矢君、こういうこと大好きだから……」

「守矢殿も、会ってみると思った人と違うんですね……」

「楽しみです~」

 

「みほ、冷蔵庫のストックを早く教えるんだ。

足りない材料は買いに行くぞ!」

 

 

自分で作って食べるのもいいんだが、

やっぱり誰かに食べてもらって感想は欲しいからな。

 

 

 

 

だからしょうがないよな!

 




ボクは白飯と白飯の進む何かがあればそれでいいです。

みほの出身地が熊本なので熊本県に縁のある人のネタをぶち込んでおります。

わかりやすいと思うけどネ!

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