俺の第2の人生は戦車道と言う競技のある世界でした 作:ふみみん
最近は少し働きながらちゃんとした就職活動をしているので、
ほんと亀のような更新速度になってます。
すみませんです。
というか、気付いたらお気に入り1000件越えてた……。
ウッソやろ……。
たくさんの方に見てもらえててうれしいです。
文才の無い私ですががんばっていこうと思います。
戦車道の試合前、集合場所で私達大洗戦車道チームは相手チームを待っていた。
「西住殿、荒谷殿からその後連絡は……?」
「……来てない」
朝、1通のメールが着てから音沙汰がない。
[試合の時間に間に合わないけど、試合は一番近いところで見てる]
会長が守矢君に仕事を任せたと言う話があるけど
一体なんの仕事を任されたんだろう……。
一番近いところ……?
会場で初めて戦車道を見る人向けに解説でもするのかな?
「守矢君が来ても来なくても今日は絶対に勝たないとダメなんだよ!」
「落ち着いてください、沙織さん」
「……うるさいぞ、沙織」
沙織さんが声を荒げる。
理由は明白。
この試合に負けてしまった場合、納涼祭であんこう踊りを披露しなくてはならないのだ。
最初に聞かされたときは何がすごいのか、
どうしてみんなここまで絶望的な表情をするのかわからなかったが、
家に帰って動画を検索して理解した。
これはやばいやつだと。
体のラインがもろに出るスーツを着て、
胸振り腰振るあの踊りはやっちゃ駄目なやつだと頭が即座に理解した。
「西住、聖グロリアーナ女学院が来たぞ」
「わかりました」
各車の隊長が戦車の前に整列する。
遠目に見えるのはイギリス戦車。
マチルダとチャーチル。
ぴたっと列を成して止まる姿は流石強豪校。
「本日は急な申し出にも関わらず受けてくれたこと感謝する」
「構いませんわ。……しかし個性的な戦車ですわね」
私達の戦車を見て素直な感想を言ってくる。
……しかし、笑うようなことはなく引き締まっていた。
明らかに格下の学校がこんな戦車に乗っているとわかれば少しは油断してくれると思うんだけど……。
「姿と実力が比例しないと言うのは過去に嫌と言うほど思い知らされていますの。
全力でお相手させていただきますわ」
そう笑う姿は少しかっこよく見えた。
試合開始の合図と同時に全車両が前進する。
「まずは私達Aチームが偵察に向かいます。
100メートルほど進んだところで他の方達は待機しておいてください」
試合前の挨拶を見る限り油断も慢心もない。
こちらの出来ることを全てやり遂げなければ勝機すら見出せない。
「西住ちゃーん、作戦名とかないの?」
さ、作戦名?あんまりそんなこと気にしたことなかったな……。
「えっと……こそこそ作戦です。こそこそ隠れて相手の出方を見て、
こそこそ隠れながら攻撃を仕掛けたいと思います!」
真正面からの攻撃では練度・車両性能で劣る私達は間違いなく殲滅される。
……これが、輝さんや守矢君ならひっくり返すんだろうけど。
私達にはそんなことは出来ないから出来ることで最大限の結果を得なきゃ。
試合開始の合図はなったがこちらは動かない。
みんなで紅茶を飲んでいた。
今は向こうが色々と作戦のために動いてるだろうからな。
後追いで動き出すこちらはリラックスしている。
「荒谷様、お口に合うかどうかはわかりませんがスコーンです」
「ん……うめぇなこれ」
オレンジペコから差し出されたスコーンはとても美味だった。
後で作り方を教えてもらおう。
「良かったです」
はにかむオレンジペコが可愛い。
しばらくはそのままお茶を楽しんでいたがダージリンが戦車内に戻ってきた。
「さて、そろそろ動き出しましょうか……全車両、前進」
隊列を組み前進する聖グロリアーナ。
今から戦闘が始まると思うと気持ちが昂る。
しかし心は熱く、頭はクリアに。
一度目を閉じ、ゆっくりと瞼を開け、確かめるようにレバーを握る。
「いつも座ってる人間と違うが宜しく頼むぞ、チャーチル」
今、お前に生命を吹き込んでやる。
偵察に来た私達Aチームは相手戦車を先に発見することが出来た。
これで相手のほうに先に見つかったら目も当てられない状況になったと思う。
「マチルダⅡ4両、チャーチル1両前進中」
「流石、きれいな隊列を組んでますね」
秋山さんが少し興奮気味だ。
「あれだけ速度をあわせて隊列を乱さないなんてすごいよ」
「こちらの徹甲弾だと正面装甲は抜けませんね……」
「そこは戦術と腕かな?」
「はい!」
……戦闘中にこんな和やかな会話をしたのは初めてだ。
黒森峰の頃はもっとあっさりとしていた。
必要最小限を伝達するためだけのものだったんだけど……。
今はそんなこと考えてる場合じゃないか。
秋山さんと戦車に戻り他の車両に待機地点に向かうよう指示を出す。
出し終わると相手をこちらに誘導するための砲撃を準備する。
「敵、前方よりこちらに接近!砲撃準備!」
「装填完了!」
「えっと……チャーチルの幅は……」
「3.25メートルだよ」
「4シュトリヒだから……距離は810メートル」
「撃て!」
放たれた砲弾はチャーチルに当たらなかったは至近弾となった。
誘引の役割は十二分に果たしたと思う。
「すみません、外しました……」
「大丈夫、目的は撃破じゃないから」
「冷泉さん、そのままキルゾーンまで敵をひきつけつつ移動します」
「ん……」
冷泉さんが車体を回し移動しようとした。
その時、私に説明の出来ない悪寒が走った。
これ以上前進したら不味い、そう感じた。
「冷泉さん!!!止まって!!!」
停車とほぼ同時に目の前を砲弾が通過していった。
止まっていなければ履帯や足回りを破壊され行動不能になっていたであろう一撃。
どうやら隊長車のチャーチルから放たれたようだ。
「ふぅ……冷泉さん、できるだけジグザグに走行して被弾を避けてください」
「了解」
さすが聖グロリアーナ、気を引き締めなおさないと……。
少しでも気を抜いたら……持って行かれる……。
「あれを躱すかよ……」
俺は思わず呟いてしまった。
「守矢さん、あれは外したんですか?」
ダージリンがこちらに問いかける。
「いや、
ここしかないタイミングで止まりやがった」
こちらがあちらの行動を読んだ上でさらにその上を行かれた。
「この距離をあの早さと精度で撃つ守矢様もすごいですが、
これを躱す大洗の隊長車も相当なレベルですね……」
おそらくみほ本人はわかっていないはずだ。
ただ、嫌な予感がしてその予感に従い止ったといったところか。
直感ってやつだろう。
この手の才を持つ隊長は多くない。
俺が知る中では千代さんの娘の愛里寿ちゃんくらいだ。
「……面白くなってきな」
この感覚は久しぶりだ。
是が非でも勝ちたいという気にさせられる。
「これは……全国大会のために情報収集をしっかりしておかないといけませんね」
リアルタイムでどんどん情報を更新していくアッサム。
「手強い相手になりそうですね……」
オレンジペコも気を引き締める。
「ですが、私たちのやることは変わりませんわ。
全車両、前方のⅣ号に攻撃開始」
各車両がⅣ号を追い立てるように砲撃を開始する。
「速度を上げて、追うわよ」
更に行軍速度を上げⅣ号を追う。
「俺も仕事を始めようか。ペコ、頼むぞ」
「かしこまりました」
「守矢さん、Ⅳ号を撃破しないようにだけしてください。
あの方たちにはパーティ会場へ案内してもらわないといけませんので」
「了解、履帯に当てて行動の阻害をするようなことも避けておく」
「結構、では守矢さん。砲撃を開始してください」
「あいよ」
俺もⅣ号に砲撃を浴びせる。
「たった数日であれだけの走行ができるとは、やっぱ冷泉はすげぇな……だが」
俺の放った砲撃は
撃破に至らない金属と金属のこすれる音だけがするようなもの。
「それくらいの機動なら何の障害にもならんよ」
数秒後、同じくⅣ号を掠めるように砲弾を放つ。
それを
スコープ越しに、みほが戦車内に引っ込んだのを確認する。
武部が何か言ってたみたいだ。たぶん危ないからとかそんな感じだろうな。
黒森峰じゃそんなこと言われるはずも無かっただろうしちょっと面食らったんじゃないか?
とは言え、みほを戦車にこもらせるのは狙い通りだ。
身を乗り出されている時よりは格段に状況確認がしづらくなったはずだ。
引っ込んだ後も継続して砲撃を続ける。
淡々と、同じタイミングで。
さて、これに気づいたとき向こうの車内はどうなるかねぇ……。
気づくとしたらみほと冷泉か。
秋山は戦車にこそ詳しいがこういった心理戦はわからんだろうし、
武部も五十鈴も一杯一杯だろうからな。
手一杯の状況から他人から教えて気付かされるのは自分で気付くのとは訳が違う。
それも生殺与奪を自由に握られたまま。
まだ戦車に乗り始めたばかりの人間が多いんだ。
パニックにならなければ御の字だぞ、みほ。
ちゃんと俺達を死地へと案内してなきゃ困るからな。
頑張ってくれよ?
「みほ!何かあってからじゃ遅いんだからね!」
いつものようにキューポラから身を乗り出して様子を見ていると、
沙織さんからものすごく怒られた。
滅多に当たるようなものじゃないからと言ってはみたが有無を言わさない感じだった。
確かに相手のチャーチルがこの車両に砲弾を掠めてはいんだけど。
……けど、少し嬉しかった。
心配してくれる友達がいる。
試合中に感じるようなことじゃないんだろうけどそう思った。
「しかし、冷泉殿の操縦もすごいですね。
これだけの砲撃を浴びてるのに直撃はなし。
数発掠めてるだけですよ」
カァン!と砲弾の掠める音が響く。
先ほどから何発かこの車両に当たっている。
これだけなら、冷泉さんの操縦のセンスがいいというだけの話なんだけど……。
なぜか違和感がある。
気付かないといけないのに気付くのはまずい、そんな違和感。
カァン!と音がしまたしても砲弾が当たる。
まさか……いや、そんなはずは……。
「……冷泉さん、もっと車体を振ってよけてみてもらえませんか?」
「わかった……無駄だとは思うがやってみよう」
……冷泉さんも何かに気付いてる?
車両がさらに暴れる。
杞憂であってほしい。
この予感は当たらないでほしい、そう願った。
カァン!
だが無情にも砲弾の当たる音はした。
「これだけ車体を振り回してるのに直撃は出来ずとも当ててくるとは、
向こうの砲手もすごい腕をしてますね」
違う。
「私たちは生かされてる……」
「西住殿……ど、どういう意味ですか?」
「そのままの意味だよ、相手はわざと直撃を外した上で、
私たちを追いかけてきてる……」
「み、みほさんの考えすぎなんじゃ……」
「……後2秒くらいしたらはっきりわかるよ」
そう言ってきっちり2秒後。
カァン!と言う音が車内に響いた。
「そ、そんなことが可能なんですか!?
これだけ車両を振っておいて確実にクリーンヒットさせないなんてこと!」
私が知る限り2人だけ。
守矢君のお母さんの照さんと守矢君だ。
だが、照さんはここにいないし守矢君も試合には出られない。
じゃあ、一体誰が……。
いや、この状況で考えても仕方が無い。
現にすぐ後ろにいるのだから存在するのだろう。
……この時の私は考えが至らなかったのだ。
これが
非公式な試合で双方の同意があれば男子も戦車に乗れること。
社会人のチームの練習試合では守矢君もメンバーだったこと。
守矢君は一番近くで見てると言っていたことを。
「み、みほさん……どうしましょう……」
「レベルが違いすぎるよぉ!」
車内が軽くパニックになる。
……言わずに胸のうちにだけ秘めておけばよかったと後悔する。
「おそらく私たちが囮だと言うことも、
キルゾーンへ誘導していることもわかってる」
「かと言って、私達だけでは……」
どう足掻いても勝てるわけが無い。
そして私たちが落とされればこちらの勝機は無くなる。
「……作戦はそのまま続行、予定通り合流地点へ向かいます」
「大丈夫なんでしょうか……」
「秋山さん、ここで戦ってもやられるだけだよ。
なら、少しでも勝てるように頑張ろう。
元々、相手がこういう戦略で来るってのを
想定した上で行動してくるとは思ってたし」
「……みほさんって意外と大胆なんですね」
「最初から諦めたくないだけ……かな?」
何もせずに流されて負けるのだけは嫌だ。
「冷泉さん、引き続き回避行動をとりつつポイントへ移動してください」
「……ん」
だったら私は私のできることをやるだけだ。
「Aチーム、敵を引き付けつつ後3分でそちらに到着します」
無線でほかのチームに状況を報告する。
これでポイントにいるみんなが攻撃の準備をしてくれる。
カァン!とまたしても砲弾の当たる音。
格下相手にここまで徹底して攻撃してくるなんて……。
だけど、まだ負けたわけじゃない。
「後600メートルで敵車両射程内です!」
まだ諦めるわけにはいかない!
「ダージリン、例のポイントに到着するぞ」
Ⅳ号を追いかけていき、キルゾーンと想定している場所に近づいていく。
みほはちゃんと車内を落ち着けさせることができたみたいだな。
ちょっと前ならあわあわしてただろうが成長したものだ。
「おいおい、味方撃ってんじゃねぇか……」
Ⅳ号が開けた場所に出た瞬間、砲撃に曝されていた。
誰かテンパったか?
それに続いてこちらの車両もポイントに出る。
敵からの砲撃があるが散発的だし余り恐怖感と言うものはなかった。
……ここら辺は実践の経験の差が如実に出てるな。
両サイドから挟み込むようにじりじりと追い詰めていく。
「砲撃開始」
ダージリンの命令で一斉に砲撃が開始される。
「まぁ、こうなるわな……」
向こうの砲撃がさらに雑になる。
囲まれて狙われている状況だから焦りが生じてるんだろう。
どこにどう撃ってどう逃げ道を作るか考えれればいいんだけどな。
「さってと、なら俺も1台減らしときますかね」
狙うのはこの場から脱出を図ろうとしている車両。
逃がして市街地に入られると探すのも面倒だ。
「だからすまないが落ちてもらうぞ、1年生」
照準をここから1番遠いM3リーに合わせる。
あちらは逃げようと後退しているが、こっちは停止しての射撃だ。
「さすがに、これだったら外さんぜ?」
トリガーを引き放たれた砲弾はⅣ号と三突の間を抜け、
吸い込まれるようにM3リーに着弾、白旗を揚げさせる結果となった。
「お見事です、守矢様」
「これくらいならアッサムも楽にこなせるだろ」
「いえ、確実に決められるとは私には言えませんので」
自信持っていいと思うけどな。
「お、あいつらこっから移動する気だな?」
履帯の外れた38(t)を除くⅣ号、八九式、三突が移動を開始する。
移動される前に落としたいが……。
スコープ越しに見えるのは味方の戦車。
1台が少し前に出すぎて射線と被っていた。
これじゃさすがに撃てない……か。
てことは少なくとも3台は健在のまま市街地戦か……。
「まずいかもな……」
「どういたしました?」
オレンジペコが不思議そうな顔をする。
「たぶん向こうは大洗の市街地へ逃げ込むつもりだろう。
と言うことは、あいつらの庭にわざわざ入っていかなにゃならん」
この手のゲリラ戦は聖グロのような王道を行く連中より、
個性の強い大洗のような連中のほうが得てして強い。
発想がより柔軟だからな。
それに、ここは大洗のホーム。
何が起こるかわからない。
「思ってる以上に苦戦するかも知れんぜ……これは」
さぁ、どうでてくる?
もうちょっと……次でやっとたぶん聖グロ戦が終わる……。