俺の第2の人生は戦車道と言う競技のある世界でした   作:ふみみん

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いつもながら初投稿です。


29・お茶会です!

私はトラックで運ばれていく戦車を眺めていた。

 

 

負けた。

 

 

今ある手段を総動員してなおその上を行かれた。

戦車を側面に回りこませて砲撃する作戦は上手くいったと思う。

現状あれ以上の動きは難しい。

 

途中で止まってしまったのも、

ずれた照準の修正に時間がかかるのも仕方がない。

これ以上のパフォーマンスを出すのは無理だ。

 

相手はそれを全て読みきった上で、技量の違いを見せた。

私が砲撃の合図を出す瞬間にすでに相手はトリガーを引いていた。

 

砲弾はギリギリ放たれたが、

もしかすると砲撃することなく撃破されてしまったかもしれない。

 

 

あんな真似できる高校生は一人しか思い浮かばない。

けど、試合に出るわけないし……。

 

 

 

 

 

「あなたが隊長さんですわね?」

 

そう思い悩んでいると聖グロの隊長さんが話しかけてきた。

 

「あ、はい」

「あなた、お名前は?」

「えっと……西住みほです」

 

名乗るべきかどうか一瞬思い悩んだ。

名乗ればどうしても西住流がついてきてしまう。

でも、私は私の戦車道をすると決めたんだ。

名前に負けてなんかいられない。

 

 

「もしかして西住流の?ずいぶんとまほさんとは違うのね」

 

そう微笑む隊長さん。

 

「私はダージリン、それに後ろに控えているのが

アッサムとオレンジペコですわ」

 

呼ばれた二人がこちらにお辞儀をする。

……すごく優雅だ。

 

「前半は思い描いたとおりだったのですが、

市街地での戦闘では手痛くやられましたわ」

「いえ、山岳地帯で終わってもおかしくなかったですよ。

特に隊長車の砲撃は恐ろしかったです」

「そうですわね……味方ながら淡々と当てていく様は、

恐ろしく見えましたわ」

「黒森峰にも……いや、あんな選手どの高校にもいないですよ」

「……?おかしな事いいますのね」

「その砲手さんは次の全国大会にも出場するんですよね?」

「出場できないことは……あぁ、そういうことですか」

なぜか納得するダージリンさん。

「生徒会長さんも人が悪いわね、何も教えてないなんて」

「えっと……それはどういう……」

「すぐわかりますわ、もうすぐここに来ますので

「ここに来る?」

 

 

 

 

「おー、今日はよく頑張ったと思うぜ。

ま、俺には届かなかったけどな」

 

 

 

そこに現れたのは試合に出ているはずのない守矢君だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「も、守矢君!?」

「あらあら、何で守矢さんが?」

「つまりそういうことだろう」

「あぁ……荒谷殿ならなんか納得できますねぇ……」

 

驚いている二人となんとなく理解した二人。

 

 

「今日のチャーチルの砲手は守矢君だったの?」

「いやぁ、久々の試合はやっぱいいな!

特に最後の展開は俺好みだ」

「な、なんで聖グロの砲手をやってるの?」

「それは私が説明いたします」

 

その問いにダージリンが横から口を挟む。

 

「前々から守矢さんが大洗学園での学生生活を送っていることは掴んでいました。

そこにそちらからの戦車道での練習試合の申し込みがありましたの」

 

「俺、行ってる学校については

ほとんど誰にも話してないんだけどなぁ……」

 

「学校については守矢さんのお母様が教えてくれましたわ」

「よぉし、今度会った時ティーガー風パスタお見舞いしてやる」

 

俺の個人情報ガバガバじゃねぇか。

せめて俺に一言聞いてから話せよ!

 

「その際の試合を受ける条件として、

荒谷さんを短期の転校で1日貸していただけるようお願いしましたの」

「なんでまた守矢君を……」

武部の疑問ももっともだな。

「対戦相手として戦ったのならわかるでしょう?

この方がどれだけの技量を持っているか」

「それを間近で見る為に守矢君を砲手にしたんですか?」

間近で見て何かを得られる場合もあるからな。

 

「まったく参考にはなりませんでしたけど」

アッサムが肩をすくめる。

それはしょうがない部分もある。

「基礎を延々と反復した結果だからな。

何も特殊なことしてるわけじゃないから

参考になるようなことはないさ」

 

実際そうだからな。

俺の場合それに加えられてるものが英霊のスキル。

だがこれは普通の人間にはどうしようもない。

 

 

「うちの母さんだって何も特別な事はしてないぞ。

『地味な練習こそ正念場で活きる』って、

今も停止射撃と行進間射撃の練習は欠かしてないぞ」

 

本当にすごいのは母さんだろう。

特別なものは何もないのに自らの能力と努力で砲手としての頂点にいる。

母さん相手だと未だに勝ち越すことが出来ない。

 

壁は高いなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく取り留めない会話をしていたが、

みほ達は角谷の姐さんに呼ばれて行ってしまった。

姐さんたちと一緒に行く前になにやら話していたようだったが、

顔色がとてつもなく悪かった。

どうしたのかと聞いたが答えてくれなかったし、

何かするのであれば手伝おうかと言えば、

 

「絶対にこないで!」

 

と、角谷の姐さんを除く他全員から言われた。

 

なんかちょっと寂しいぞ。

 

 

「本当は皆さんをお茶会にご招待しようと思っていましたが……」

「あぁ……町の方には何故か行っちゃいけないらしいから、

そちらに参加させてもらえると助かるんだが……」

 

お祭りの会場にいけないなら何もしようがないし……。

 

「えぇ、歓迎いたしますわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば少し気になってることがあるんだ」

聖グロの紅茶の園で紅茶とお菓子を堪能していたんだが、

ふと気付いたことがあった。

「守矢様の好みではありませんでしたか?」

アッサムが心配そうに尋ねてくる。

お菓子を作ったであろうオレンジペコも不安そうな顔をした。

「アッサムの入れたお茶もオレンジペコのお菓子も美味しいぞ」

 

ほっとする二人。

 

「でしたら何を気になされてるの?」

優雅にお茶を口にしながらダージリンが尋ねてきた。

 

……まぁ、別になんてことないことなんだが。

 

 

「何でダージリンって試合以外じゃ『荒谷さん』なんだ?」

 

 

ピタッと手の止まるダージリン。

 

 

「いや、試合中はずっと『守矢さん』だったからな。

なんでだろうなー、ってな」

 

本当に何てことない単純な興味だ。

 

「そういえば、ダージリンは守矢様を名前でお呼びしてませんね」

「別に理由があるわけではありませんわ」

 

 

 

「嫌いなやつならともかく、別に名前で呼んでもらっても構わんがな。

みほ達だって名前で呼んでるしな」

 

「詳しく聞かせて貰ってもいいかしら?」

 

キリッとこちらを見てくるダージリン。

いや、意味がわからんぞ。

 

「詳しくもって言われてもなぁ……さっき会ったチームの

背の一番低いのとくせっ毛の子以外は俺のこと名前で呼んでるぞ」

「他にはいらっしゃるのかしら?」

 

「そんなの聞いてどうすんだよ……」

「他にはいらっしゃるのかしら?」

 

怖ぇよ。

 

「まほは呼び捨て、ちびっ子隊長(カチューシャ)は謎の愛称。

そうだ、千代美さんも俺のことは呼び捨てだな」

 

「これからは守矢さんと呼ぶことにしますわ」

 

「お、おう……別にかまわねぇよ?」

 

くすくすと笑うアッサム。

あれか?まさか普段は恥ずかしかったとかそんなんか?

 

 

まっさかなぁ……。

 

 

 

 

 

そう思案してると、ドタドタと足音が聞こえてきた。

 

「この感じ……!」

 

椅子から立ち上がりすごい勢いで開きそうな扉を見る。

 

「あーらーやーさーまー!」

 

やはり扉はとんでもない勢いで開かれた。

現れたのはピンクの髪にお嬢様らしくない行動をするお嬢様。

皆様ご存知ローズヒップ。

 

「とぉー!」

 

そのまま一直線に俺にダイブしてくる。

そいつをキャッチし高々と抱え上げる。

絵面的には子供を高い高いしてる大人だ。

 

「どうだローズヒップ、ちゃんと勝ったぞ!」

「高いですわ!すっげぇですわ!」

 

キャッキャとはしゃぐローズヒップ。

本当お嬢様らしくねぇなぁ。

俺もテンションが上がってしまって、ローズヒップを上に放り投げる。

「飛んでますわ!私飛んでますわ!」

結構高く放ったが喜んでるようで何よりだ。

 

 

 

 

 

「今日の試合本当にすごかったですの!

テンション上がってしまってダッシュできましたの!」

そのまましばらくローズヒップで遊んでいたが、

話が進んでないことに気付いて降ろしてやる。

 

「そうかそうか、テンション上がったんなら仕方ないな!」

ぐしぐしと頭を撫でてやる。

「廊下を走るなとあれほど言っているのに……」

「淑女の欠片もありませんわね……」

「あはは……」

これにはアッサム・ダージリンも苦い顔。

オレンジペコは苦笑い。

 

 

「私にも戦い方を教えてほしいですわ!」

「教えてやってもいいんだがなぁ……どう思うダージリン?」

「まともに作戦を遂行できるようになってはじめて考える、くらいですわね」

 

辛辣だなぁ。

 

「なんだ、ローズヒップってそこまで荒くれてんの?」

「クルセイダー隊の隊長を任せられるくらいには優秀ですわ。

1にスピード2にスピードのような考えに対しては言いたいことはありますけど」

「ダージリン様に褒められましたわ!」

褒めてない褒めてない。

「で、ローズヒップは俺に何のようだ?」

俺への用事は別のことじゃないか?

 

「これですの!」

ポケットからスマホを取り出す。

 

「写真を撮ってほしいですの!」

お、そういえば試合前に約束してたな。

「構わんぞ、どんな風に撮るんだ?」

 

「こういうこともあろうかとこんなものを用意いたしましたわ!」

 

テッテレー、と言う効果音が鳴りそうな感じで

一本の棒を取り出す。

 

「自撮り棒と言う物らしいですわ!

これがあれば誰かのお手を煩わせることもなく

写真を撮れるのですわ!」

 

うん、予想以上に普通でありふれたものだったな。

 

「で、どんな感じで撮るんだ?」

普通に撮ればいいのかね?

 

「お嬢様っぽく撮ってほしいですわ!」

 

 

……は?

 

 

「いや、ざっくりしすぎじゃねぇか?」

「私も聖グロリアーナの一人として、

淑女らしい写真を撮りたいのですわ!」

 

なるほど……全然わからん!

 

「何だよ淑女らしい写真って……」

「ダージリン様やアッサム様はこんな写真をお撮りになってるのですわ」

 

そう見せてくるスマホには紅茶を飲むダージリンとアッサムに、

微笑みつつ給仕するオレンジペコ。

 

「絵になってんなぁ」

確かに淑女と言うか……。

物語の貴族のお嬢様とか、お姫様のオフショットみたいな。

 

「こんな!写真が!私も!撮りたいのですわ!」

 

気合の入れ方が写真の人物とは真逆だなぁローズヒップ。

お前の場合トレジャーハンターとかアクティブさ全開な方面だもんなぁ。

 

「というか、それなら俺は必要ないんじゃないか?」

「お話にはお姫様と騎士が登場するのが当たり前でしてよ?」

これまたすげぇピンポイントな当たり前だなぁ……。

それに淑女からいつの間にかお姫様に変わってるし。

まぁ、特に考えてるわけじゃないんだろうけど。

 

ローズヒップだし。

 

 

「お姫様なぁ……」

 

ふーむ……あ、一つだけ思い浮かんだぞ。

 

「それっぽく撮れればいいんだよな?」

「ですの!」

「よっしゃ、じゃあこっちこい」

「はいですわ!」

 

とてとて近寄ってくるローズヒップ。

 

「俺が君を抱えたら首に手を回して落ちないようにしてくれ」

「了解いたしましたわ」

「では失礼」

 

ローズヒップを抱えて首に腕を回してもらう。

片方の腕は背中から回し、逆の腕は膝裏へ回ししっかりと固定する。

 

「よいっしょっと……」

 

バランスを取りながら自撮り棒を伸ばすローズヒップ。

 

「撮りますわよー!」

 

笑顔でシャッターを切るローズヒップ。

 

 

うん、あれだ。

これはお姫様抱っこと言うやつだ。

 

 

「素晴らしい写真ですわ!」

ローズヒップが腕から飛び降りこちらに撮った写真を見せてくる。

 

「お、いい顔してんじゃねぇか」

はじけるような笑顔で写るローズヒップ。

いい写真になってよかったな。

 

「ありがとうございますですわ!」

来たときのようにダッシュで立ち去っていった。

 

「さて、約束も終わったし俺もそろそろ……」

帰ろうか、と言おうとしたところで鋭い視線が突き刺さった。

 

「……なんだよダージリンその目は」

ダージリンがジトーっと音の聞こえてきそうな

視線をこちらに向けていた。

 

「いえ、いたくローズヒップがお気に入りのようで」

「そうだなぁ、聖グロには珍しい子だからなぁ」

 

 

「……ローズヒップばかりずるいですわ」

 

 

「なんか言ったか?」

「いえ、何も?」

「ふーん……」

 

……いや、聞こえてたんだけどな。

何が不満なんだか。

あれか、ローズヒップだけ写真撮ってずるいってか。

 

子供じゃないんだからさぁ……。

 

「はぁ……ダージリン、カメラ起動して俺に寄こせ」

「な、何をする気かしら?」

 

そういいながらも即カメラを起動するダージリン。

 

 

「いや、カメラ起動したんだから写真撮るだけだが」

「そ、そう。そうよね。それしかないわよね」

何で動揺すんだよ。

 

「ほれ、こっちこい」

遠慮がちに近寄ってくるダージリン。

「えっと……これくらいでいいかしら?」

「離れすぎだ、それじゃ写らねぇだろ」

 

ダージリンに体を近づける。

 

「そ、それだと近すぎますわ!」

 

えぇい!まどろっこしい!

 

「じゃあ撮るぞ……はい、チー……ズ!」

 

ズ、の言葉と同時に肩に腕を回して抱き寄せて、

なおかつ顔を近づける。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

だがもう遅い。

無常にも切られるシャッター。

 

「どれどれ……まぁ、思い出としてはいいんじゃないか?」

 

そこに写っていたのは満面の笑みの俺と

顔を真っ赤にしながら驚いた顔でこちらを見るダージリンだった。

 

「女性の扱い方を勉強してはどうですか!?」

顔を真っ赤にしてプリプリと怒るダージリン。

 

 

それを見て笑いをこらえるアッサムとぽかーんとするオレンジペコ。

 

「おっと、これ以上怒られる前に退散するとしますかね」

 

 

 

写真はちゃんと撮ったのに文句を言われるのは遺憾ではあるがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「守矢様」

クラブハウスを出て、聖グロ学園艦から船梯子で

港に降りようとしたとき背後から声をかけられた。

この呼び方と声で簡単にわかるな。

「どうした?アッサム」

「不機嫌のようでご機嫌なダージリンに代わってこれをお渡しに」

そう言ってバスケットを一つ手渡される。

「なんだそのよくわからん状態は」

中身は……まぁ、なんとなく察しはつく。

「そちらは隊長さんへの贈り物ですわ」

「了解、ちゃんと渡しておく」

「それと……これはご存知かもしれませんが……」

 

そして俺はアッサムから予想外の話を聞かされたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽も落ち学園艦に戻るとみほ達Aチームと生徒会の面々が集まっていた。

 

 

「お、集まってるな」

「守矢君、遅かったね」

「出港ギリギリですまんな、クラブハウスのお茶会に誘われてな」

 

アッサムから聞いた件を確認したかったが……ここじゃ不味いな。

今度、姐さんに時間作ってもらうか。

 

「そうだ、みほに渡すもんがある」

俺はダージリンからの贈り物をみほに手渡す。

「聖グロの隊長からだ」

「ダージリンさんから?」

みほがバスケットを開けると、予想通り紅茶が入っていた。

「すごいです!聖グロリアーナは好敵手と認めないと紅茶を送らないとか!」

「そうなんだぁ」

戦車道に縁のなかった武部が知らないのも無理はないが、

この手の情報に詳しい秋山は知ってたか。

 

「公式戦では勝たないとね」

「はい!次は勝ちたいです!」

「公式戦って?」

「戦車道の大会でしょうか?」

あぁ、武部と五十鈴はそっからなのか。

 

 

 

 

「戦車道全国高校生大会です!」

 

 

 




一歩一歩、着実に歩みを進めていくとしよう……。


歩く速度はとてつもなく遅いですけどネ!
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