この氷原に死すとも   作:玫瑰月季

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何時から一週間に一話と錯覚していた?
というのは冗談で元々この話と二つで一つという形で書いていましたが、あまりにも人物間の移動が激しくどっちが話しているのか分からなくなってしまったのでいっその事二つに分けてしまえということで分けたものです。

また、感想を下さった皆さまありがとうございます。
頂いた感想の中に斬魄刀はガチャ方式なのかとのご質問がありましたのでお応えさせていただきます。

私の中で斬魄刀(浅打)というものはあくまで出力装置と考えています。
原作で日番谷冬獅郎は浅打を持っていないにも関わらず己が内に氷輪丸を見出しています。さらには同じ氷輪丸を持つ草冠宗次郎の存在まで…。
斬魄刀は己の魂を写し取ったもの…であるならば斬魄刀の能力とされているあれらは全て持ち主の魂自体が持つ固有の能力ではないかと考えました。ただしその能力を振るうには出力装置が必要。
魂を図案とインク、浅打を白紙がセットされたプリンターとして見ると、浅打というプリンターを通すことでそれぞれの斬魄刀が印刷されるという感じでしょうか。この時、印刷される絵(形や能力)は皆バラバラです。ですがどのような模様が描かれようとも同じ紙(斬魄刀)であることは変わりません。

なので真名呼和尚は前もって名前を用意しておいているのではないでしょうか。出力された絵(形や能力)によって氷の龍ならば氷輪丸。猿の体に蛇の尻尾なら蛇尾丸…といった風に。
原作で真名呼和尚は全ての斬魄刀の真の名を知っているとは言っても能力を知っているとは言っていなかった筈(ちょっと記憶に自身がありませんが)。彼はあくまで出力される絵の名前を付けているだけでその絵の持つ価値(能力)は分かっていないのでは?という考えですね。(真名呼和尚に対して大変失礼)勿論それぞれの系統の最高品につける名前は用意しているでしょうから〇〇系最強の斬魄刀とかはわかると思いますが…。

だからこそ日番谷冬獅郎と草冠宗次郎の二名が同じ氷輪丸を持つに至った。二人の魂はどちらも氷を扱う能力を持っており、能力が形取った姿は同じく氷の龍。
浅打という出力機を通して印刷されたのも勿論、同じ氷を扱う氷の龍であった為に同じ氷輪丸という名前を与えられた。しかし能力や形が一緒でも塗られた色は別物だったため日番谷の氷輪丸は水色の氷の龍で草冠の氷輪丸は紫色の氷の龍。

自分自身の魂が持つ能力であるならば氷を纏っても凍傷にはならないし、太陽に匹敵する程の高熱を纏っても焼け死ぬことはない…という考えです。
自分の胃酸で胃を溶かしている方がいますか?勿論病気でもストレスでもなくです。いないですよね…?胃に穴が開くときは総じて何らかの要因によって胃酸が過剰分泌したとき、要するにキャパオーバーした時です。

長い上に大変分かりづらいとは思いますが私の語彙力ではこれが限界です。ご容赦下さい。



3.雷霆は誓う

その日、通常通りの業務を終わらせ少しばかり早いティータイムの準備を行おうとしていた私は突如現れた巨大な霊圧を感じとった。

 

「この方向は…真央霊術院の方か…?」

 

だが知らぬ霊圧だ。隊長格と行かないまでも確実に副隊長クラスはある。

 

「伝令。ご報告致します」

 

訝しむ私の元に隠密機動第五分隊・裏廷隊(おんみつきどうだいごぶんたい・りていたい)が現れた。

彼らは隊士間での情報伝達を行う部隊。その彼らが動く程の事が起こったという事か。

はたして上がってきたのは耳を疑う報告だった。

なんと本日真央霊術院に入学したばかりの貴族でもない少年が斬魄刀を解放したというのだ。

それだけでも驚くべきことでありながら、さらに驚く報告が上がってきた。なんと件の少年が解放したのは氷雪系最強の斬魄刀『氷輪丸』というではないか。

私はすぐさま元柳斎殿へと報告を上げ事実確認をしてくる旨を伝える。

するとどうだろう、元柳斎殿は自身も真央霊術院へと向かうという。驚きはしたものの今は時間が惜しい。元柳斎殿と私はすぐさま件の少年のいる真央霊術院へと向かった。

 

 

 

 

「お、お待ちしておりました。ま、まさかお二人がお見えになられるとは…。こ、こんなことは初めてでして、どうしたものかと…」

 

そう言って出迎えた彼は真央霊術院の学長である。

前代未聞の出来事にどうやらどうしていいかわからないようで、言葉の節々から混乱が感じ取れる。この様子を見る限りではどうやら報告は正しいようだ。もっとも…演習場の()()を見た時点である程度の確信は持っていたのだが。

 

「件の彼は何方に?」

 

私がそう問いかけると学長は焦ったように

 

「こ、こちらです」

 

連れてこられたのは教員室の隣の部屋。つまりは学長室である。

 

「失礼する」

 

そう一声かけて扉を開ける。もちろん警戒は怠らない。何が起こっても対処できるよう気を張り詰める。そうして開けた扉の向こうにいたのは銀髪の少年だった。少年がゆっくりと目を開ける。

 

「あんた達は?」

 

開いた瞳は翡翠色。第一印象は氷。すべてを凍てつかせ氷つかせる冷気の如く研ぎ澄まされた雰囲気を持つ少年。それが私、雀部 長次郎 忠息(ささきべ ちょうじろう ただおき)の少年を見た感想だった。

 

「これ!口を慎まんか!」

 

学長がそう注意するが少年の雰囲気は変わらない。

ならばと学長が口を開くより先に此方から口を開く。

 

「私は護廷十三隊一番隊副隊長 雀部 長次郎 忠息(ささきべ ちょうじろう ただおき)と申す者だ。そしてこちらは護廷十三隊一番隊総隊長 山本 元柳斎 重國( やまもと げんりゅうさい しげくに)殿だ。少年、君の名を聞きたい」

 

そう問いかけると少年は少し目を見開き驚いたかと思うと、あいつらの言う最高以上が来ちまったなと独り言ちる。あいつらとは一体誰の事だ…?

 

「日番谷冬獅郎だ。西流魂街(るこんがい)一地区『潤林安(じゅんりんあん)』出身」

 

決して礼儀正しいとは言えないがその瞳は最近の死神には見ることが出来なくなった確固たる揺るがぬ"覚悟"が浮かんでいた。この年でこれほどの覚悟を持つにはいったいどれほどの事を経験すればいいのか私には想像もつかない。

 

「おぬしが氷輪丸を解放した童に相違ないか」

 

元柳斎殿がそう問いかける。しかしこの少年、元柳斎殿を前にしても全く動じることがない。学生であれば大小の差はあれど緊張してもいいものだが…。

 

「ああ。俺が氷輪丸の担い手だ」

 

そう元柳斎殿の目を真っ直ぐと見返しながら言ってのけた。

しかもこの少年。どこか元柳斎殿に対して挑発的というか…敵意とは違うがこれは…対抗意識か?

 

「うむ。ならばこの儂におぬしの力を見せてみよ。演習場はまだ使えるな?」

 

元柳斎殿が演習場の使用が可能かを問うている。

やはり元柳斎殿もこの少年の覚悟を確かめるおつもりなのか…。

 

「は、はい。…いえ!お待ちください!演習場は彼の作り出した氷の残骸がまだ…」

 

やはり()()は彼によって作り出されたものであったか。

 

「構わぬ。氷なぞ儂の前ではすぐ溶け落ちる」

 

まさか元柳斎殿自ら相手をなさるおつもりか!?

それは私の役目だ。元柳斎殿のお手を煩わせる訳にはいかぬ。

あの日からこの覚悟は変わらず。私が望むのはただ元柳斎殿の右腕であり続ける事!

 

「元柳斎殿。ここは私にお任せを。この雀部 長次郎 忠息が必ずやこの少年の力を引き出してみせましょう」

 

この少年とは個人的にも手合わせ願いたい。その揺るがぬ覚悟の程、見せてもらおう。

 

「良いぜ。ただしお互いに斬魄刀を使用した実戦形式で…だ。」

 

しかし件の少年は私の予想を上回る発言をしてきた。実戦形式だと…?学生の身で、それも今日入学したばかりの学生が…?木刀による模擬戦を提示しようとするが少年の目をみて諦める。この目は言っても聞かんな…。仕方ない…少年、少し身の程を知ると言い。

 

 

こうして、入学初日の生徒と護廷十三隊の副隊長との模擬戦という前代未聞の出来事は幕を上げたのだ。この時の私は知る由もなかった…この少年との出会いが私という死神が更なる力を得るための分岐点だったということに…。

 

 

 

 

 

そうして移動してきたのは氷の残骸が鎮座する演習場。そこに被害が出ないように元柳斎殿自ら演習場に結界を張る。片手間にこれほどの結界を…やはり元柳斎殿こそ私が生涯仕えるべきお方だと再認識する。

 

「両者共に全力を尽くせ。よいな」

 

元柳斎殿がそう言いこちらに目配せをしてくる。

殺さぬギリギリまで彼を追い詰め実力を把握するのが今回、私に与えられた任務といえよう。

少年は目を閉じ集中しているようだ。

 

「では…はじめ!」

 

元柳斎殿のその言葉と共に目を開けた少年は驚くべきことに()()()使()()()()私の懐に入り込んできた。少年の振るう刃が下から切り上がってくる。

 

「ッ!」

 

少し反応が遅れたがこちらも斬魄刀を使い弾く、刃と刃がぶつかった時の甲高い音が鳴る。

まさか既に瞬歩をものにしているとは…

 

「縛道の六十一 『六杖光牢(りくじょうこうろう)』」

 

!?ばかな…!?入学したばかりの学生が六十番台の鬼道を詠唱破棄だと!?

そこで動揺を表に出したのがいけなかった。目の前の少年はその隙を決して逃さない。

 

霜天(そうてん)()せ…『氷輪丸(ひょうりんまる)』!!」

 

これは…!?くっ間に合うか!?

 

 

―――演習場に巨大な氷の花が咲いた。

 

 

「まずは非礼を詫びよう少年。いや…日番谷冬獅郎殿」

 

今の私の姿は半身が彼の斬魄刀によって氷漬けにされた状態だ。咄嗟に瞬歩を使ったものの完全には避けられずこの有様だ…。

 

「私は貴殿を心のどこかで侮っていた。たかが学生。なにができると…だが、その結果がこの姿だ。この…今の姿は私への戒めだろう。貴殿の力を見誤った私への罰だ」

 

何が身の程を知ると言い…だ。身の程を知るべきは己自身ではないかッ!

この無様な姿、甘んじて受けよう…だが、この雀部 長次郎 忠息もう一切の油断はせぬ。この目の前の少年…否、日番谷殿相手に刀剣開放なしで挑むなど愚か者の極なれば!

 

「故にここからは油断はなしだ。私もお見せしよう…我が斬魄刀の真なる姿を!」

 

私は霊圧を上げていく。

 

穿(うが)て『厳霊丸(ごんりょうまる)』!!」

 

私の手にはレイピア状に変化した斬魄刀が握られている。これが私の斬魄刀『厳霊丸』。

 

「ゆくぞ!日番谷殿!」

 

私は瞬歩を使用して日番谷殿に迫る。だが、彼の目は私の動きが見えている。ならばと私は手にした厳霊丸を振るう。厳霊丸から電撃が走るが…ほう、やはり避けるか。だが日番谷殿が避けることなど織り込み済み。既に私は日番谷殿の後ろにいる。さあ!どう切り抜ける日番谷殿!

 

「我が厳霊丸の一撃を避けるとは見事。しかし甘い!この距離ならば避けることはできまい!」

 

しかし私の予想に反して日番谷殿に厳霊丸による斬撃は命中する。いや、これは!?

目の前の日番谷殿の全身に()()()()()()()()。これは氷を使った分身か!ならば日番谷殿は…上か!

 

「『斬氷人形(ざんひょうにんぎょう)』」

 

氷輪丸を構える日番谷殿を目にした私は足を動かそうとして動かせぬ事に気付く。足が凍り付いていた。最初からこれを狙っていたのか!

 

「『氷輪丸』!!」

 

そして…触れたもの全てを凍らせる水と氷の竜がその顎を開き私を食らう。

全てが氷に閉ざされた世界で私は自身の敗北を悟った。私は負けたのだ…。いや、本当にそうか…?私は負けたのか?答えは否!断じて否!私はまだ負けていない。そう()()()

私は自身の霊圧が上がっていくのを感じる。久しく感じていなかった強者との闘争。力が漲る。

 

「勝ったか…?」

 

私の耳に日番谷殿のそのような言葉が聞こえた。私は己自身に雷を落とす。まずは私を凍らせる氷ごと破壊する。日番谷殿…勝ったかだと…?否ッ…!

 

「まだだッ!!」

 

私は紫電を纏いそう叫ぶ。紫電を纏うなど今までの私ならば出来なかった。感謝するぞ日番谷殿。私は更なる高みに上ることが出来た。だがまだだ。まだ私は限界を超えてなどいない!故に

 

()らせ『厳霊丸(ごんりょうまる)』!」

 

更なる雷を我が身に迸らせ厳霊丸を振るう。

 

「縛道の八十一 『断空(だんくう)』!!」

 

その半ば叫びに近い詠唱と共に私と日番谷殿の間に透明な壁が出来上がり、電撃を防ぐ。八十番台の鬼道すら詠唱破棄できるとは恐れ入る。だが、

 

「まだだッ!!我が『厳霊丸』の雷はこんなものではないッ!!」

 

私の叫びに呼応するかのように『断空』に亀裂が走る。

 

「『綾陣氷壁(りょうじんひょうへき)』!!」

 

だが日番谷殿も流石というべきか、破られると見るやすぐさま自身の斬魄刀『氷輪丸』にて氷の壁を作り出す。その考えは正しく、我が紫電は『断空』を砕き『綾陣氷壁』に直撃した。この局面で使うだけはあり、凄まじい強度だ。だが、()()()()()()()

 

「甘い!我が雷をその程度で防げると思うな!!」

 

今のままでは破れぬというならばさらに雷の量を増やせばいいだけのことだ!!

 

「嘘だろ!?ぐっ!」

 

日番谷殿は咄嗟に瞬歩を使用し回避するが、反応が遅れた事で紫電が左腕を掠める。日番谷殿はすぐさま自身の左腕を確認するがあの様子では痺れて使い物になるまい。

 

「掠っただけでこれかよ!」

 

思わずといった風に悪態を吐く日番谷殿。しかしもう左手は使えない。しかも長引けは長引く程、日番谷殿が不利になるのは目に見えている。もっとも、それは私も同じだ…。既に体中が悲鳴を上げている。両者共にこれ以上長引くのは得策ではない。で、あるならば

 

「俺の全力をこの一撃に込めるだけだッ!いくぞ雀部副隊長!!」

 

俺は逃げない。言外にそう言う日番谷殿に対しての私の答えなど既に決まっている。

 

「良かろう!受けて立つ!全身全霊を賭して挑んでくるがいいッ!!」

 

その答えを聞いた日番谷殿は右手に持つ氷輪丸に全霊力を注ぎ込み始める。

 

「まだだ!まだ足りない。もっと!もっとだ!!」

 

霊圧がどんどん上昇していく日番谷殿。それだけではない。彼はこの天の全てを支配下に置いた。それが意味することはこれ以上、我が紫電による自己強化は使えないということ。だがそれでいい。もうすでにあれを使うことは出来ぬ状態だ。今の私にできることは己の霊力全てを紫電に変換すること!雷を落とすだけが強化ではない!私は目の前にいる日番谷殿を見る。その瞳に一点の曇りもなくあるのはただ私を倒すという気概のみ。ならば互いに言葉は不要。この一撃をもって決着を付ける!!

 

「穿てッ!」

 

「霜天に坐せッ!」

 

奇しくも互いの口から漏れ出るは互いの半身たる斬魄刀の解号。決して負けない。勝つのは私だ。そんな想いを刃に乗せて叫ぶ。

 

「『厳霊丸』!!」

 

「『氷輪丸』!!」

 

轟く雷霆は全てを穿たんとばかりに迸り、氷の竜は全てを凍てつかせんとその顎を開く。

両者がぶつかり合い、その力の奔流に耐え切れず結界は砕け散り、粉塵を巻き起こす。

粉塵が晴れてくるとそこには満身創痍の二人の姿。互いに斬魄刀の解放は解かれており、斬魄刀を地面に突き刺し杖代わりとすることでやっと立っている状況。故にこの戦いは

 

「それまで!この勝負、両者引き分けとする!」

 

引き分けとなる。元柳斎殿による号令によって緊張が解けたのか座り込む日番谷殿。だが私は決して座ることはない。これは意地だ。そして私は日番谷殿に近づいてく。

 

「素晴らしい戦いでした。日番谷殿」

 

この言葉を伝えるために。本当に感謝しかない。目の前の少年との闘いにより私は新たな力を手にすることが出来た。

 

「そっちも…な。やっぱり副隊長は強いな…」

 

そしてそれはどうやら目の前の少年も同じらしい。少しでも日番谷殿の力に成れたのならば私としても本望だ。だが、

 

「謙遜する必要はありませんぞ日番谷殿。貴殿の実力、既に学生の領域にはありませぬ」

 

そう、それは謙遜が過ぎるというものだ。傲りが過ぎれば油断となるが謙遜が過ぎてもまた同じく正しく己の力を振るうことは出来ない。

 

「然り。主の実力は既に学生の領域にあらず。席官と相違ない実力じゃろうて」

 

どうやら元柳斎殿も同じ考えのようだ。しかし日番谷殿の顔色は優れない。彼は今の実力に満足していないのだろう。だがすぐに身につくものでないことは理解している…だからこそもどかしい…と、そんなところだろうか。

 

「けど足りないんだ。俺はもっと強くなりたい。総隊長…あんたを超えるぐらいに。」

 

ふむ。やはり日番谷殿は力を欲しているようだ。まるでかつての私を見ているかのようだ。元柳斎殿に挑み続けていたあの頃の私を…。

 

「俺の目標は()()()()()()を超える死神になることだ。絶対にあんた達を超える死神になってやる」

 

なん…だと…?今二人と、そう日番谷殿は言ったのか…?私を超えるべき存在として認めたというのか?貴殿を下に見て油断した挙句、無様な姿を晒したこの私を…。

 

「ふん。小童が吠えおるわ。精々励むことじゃ、儂は逃げも隠れもせん」

 

固まっていた私をよそに元柳斎殿が答える。元柳斎殿は日番谷殿に期待している…それは間違いない。だからこそ挑発じみた答えを返したのだろう。

 

「ハッ、上等だ。首を洗って待っていやがれ―――」

 

限界が来ていたのだろう。最後にそう言うと日番谷殿は意識を失った。

 

「長次郎。随分と手酷くやられたようじゃの」

 

元柳斎殿…私は貴殿の信頼を裏切ってしまった。…あのような無様な姿を晒した。

 

「はい。無様な姿を見せてしまい申し訳ございませぬ元柳斎殿。全ては私めの不徳が故」

 

だというのになぜか私の心は晴れやかなのだ…。日番谷殿のような将来有望な死神の相手を出来た。そして新たな力を手に入れたからだろうか…?

 

「この小童は必ず歴史に名を残すような死神になるじゃろう。儂もお主もうかうかしておられんのう…」

 

元柳斎殿もどこか嬉しそうに日番谷殿を見つめてそう仰る。

 

「長次郎よ。次はこのような無様な姿は晒さぬな?」

 

!?元柳斎殿…!この私めに挽回の機会を下さるというのですか…!

 

「はっ!必ずやこの雀部 長次郎 忠息、元柳斎殿の右腕に相応しい男になってみせましょうぞ!」

 

その為にも今は手にしたこの新たな力を使いこなさねば!

 

「うむ。努々その在り方を損なうでないぞ…。時に長次郎、この小童の処遇をどうするべきじゃと考える…儂は飛び級させ最上級生とするべきじゃと思うが…どうじゃ?」

 

そう話しながら元柳斎殿は演習場の中心部、私と日番谷殿の最後の攻撃がぶつかり合った場所に目を向ける。そう、最後の攻撃のぶつかり合いの時に私達は見たのだ…私の()()()()()()()()()()を…。雷すら凍り付かせるなど聞いたこともない…氷雪系最強の名は伊達ではないという事か。

 

「私めも同じ考えです。"斬""拳""走""鬼"のうち少なくとも"拳"以外の三つはかなりの練度であることは確認できましたがその他にも学ぶべきことはありますからな…」

 

その後、我らの戦いを見て腰を抜かした学長を引っ張り起こして彼の今後の処遇を伝え、私達は統学院…いや、今は真央霊術院だったか…を後にした。

 

 

 

 

 

あれから数日が経った。

日番谷殿は無事六年生へと飛び級を果たし、どの分野でも優秀な結果を叩き出しているそうだ。今や彼は多くの隊長格からどうやって自分の隊へと引き入れるかを考えられるほどの存在となっている。一方、私と言えば午後のティータイムの他に追加した日課をこなしているところだ。

 

「はぁああああああああ!!!」

 

己の中の霊圧を解放していく。解放された霊圧は次第に紫電へと変化し、数舜としないうちにこの身に紫電が迸る。日番谷殿との闘いの最中目覚めたこの力を効率よく使用する術を見つける事を目標として毎日この瀞霊廷(せいれいてい)から離れた荒地で修業をしている。

全ては日番谷殿の超えるべき壁であるがために…そして元柳斎殿の右腕として恥じぬ実力を手にするために。

 

―――私は今日も紫電を走らせるのだ。

 

 

 

 

 




私は雀部副隊長の事は好きでも嫌いでもありません。
ですがその忠義を貫く姿勢は男としてとてもかっこいいと思います。

自分にそのように思わせる相手と出会えるというのは凄まじい幸運なのではないでしょうか。
皆さんは雀部副隊長ようにそう思わせてくれる方に出会えましたか…?
私は悲しいことに出会えていません。
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