一週間に何話も投稿できる作者さんたち本当に凄いと思う今日この頃…。
頂いた感想の中に氷雪系最強だと知られているのかという質問がありましたのでお応えさせて頂きます。
ぶっちゃけて言うなら筆者の中では嘗て氷輪丸を使っていた死神が居たのでは?と考えています。山爺が死神歴最長ですが彼、二千年以上死神してるんですよね…。総隊長歴は千年とか…。それだけの歴史があれば前任者が居てもおかしくはないと思いますし、前任者が居たのなら中央四十六室が『氷輪丸』が二本あるのを認めず日番谷と草冠を殺し合わせたのもわかりませんか…?〇〇系最強が二振りあるのを認めない…これが『鬼灯丸』とかだったら別に何とも言わなかったと思うんですよね…。
それから「斬魄刀の名前と能力が伝わってるなら、原作で愛染の鏡花水月の術中にまんまとはまってるのが馬鹿にしか見えない。」というのはそれ、原作の護廷十三隊の隊長格全員にブーメランですよね。
あれは単純に藍染が一枚も二枚も上手だっただけの話ですし、二千年以上死神してる山爺や古参の死神と言われる京楽や浮竹すら、まんまと鏡花水月の術中に嵌っているのに、たかだか五十余年あまりしか生きてない日番谷を馬鹿にしか見えないというのはおかしいのでは…?
さらに言うなら日番谷は原作当時、本当の卍解を使いこなせていない状況です…どんなに強い能力を持っていようとも使いこなせなければ唯の宝の持ち腐れ。そんな相手、藍染が警戒する必要ありませんよね。
と、いう訳で、頑張る日番谷冬獅郎に生暖かい応援をお願い致します。
真央霊術院を卒業して早くも三年が経った。今では俺も護廷十三隊の死神だ。
どの隊に配属されたかというと…古参の隊長でもある
必ず変えてみせる…そんな事を考えながら俺に急ぎの書類を押し付けた相手の所へ向かっていると
「あら、冬獅郎君。あなたもあの人の所へ行く途中?」
そう親しげに俺に話しかけてきたこの人こそ、その悲劇の登場人物であり、悲劇の始まり。
「
彼女の名は
「もう、冬獅郎君。夫と紛らわしいだろうから都でいいって言ってるのに」
そう言いながら困ったように笑う。この人の事は、正直に言うと…ちょっと…いや、かなり苦手だ…。なんと言うのだろう…母親?という人物がいればこんな感じなのだろうかと思わせる。そのこちらを安心させるような優し気な声と全てを包み込むような微笑みを向けられるとなんというか…そう、凄くむずがゆくなるのだ。しかもそれが嫌じゃないと感じているから尚のこと、対処に困る…。
「いや、そんな事したら海燕にしばかれるんで」
あの愛妻家の前で俺が名前呼びなどしてみろ、絶対煩くなる。
「あら、あの人のことは名前で呼んでいるのに私はダメなの…?」
俺だって最初から上官の名前を呼び捨てになんかしてない。
「紛らわしいっって事なら解決してますんで…」
「本当にダメ…?」
「……」
「そっか…ごめんなさいね無理言ってしまって…」
そう言いながらどこか落ち込んだ気配を漂わせる志波三席…。俺は何も間違ってはいない筈だ。間違っていない筈…なのに…くそ。
「…早く行きましょう…
「!ええ!行きましょう。ふふっ」
名前で呼んだ途端にさっきまでの落ち込みが嘘のように嬉しそうに微笑む都さん。あぁ…やっぱり、この人は苦手だ…。
「あなた?いる?」
「おう、都か?入っていいぞ」
そう言って開けた先に居たのは気さくに笑う一人の男。
「お!冬獅郎も一緒だったのか!よく来たな!」
「ええ、来る途中で一緒になってここまでお話ししながら来たのよ。ね?冬獅郎君」
「まぁ…そうですね。というか海燕、あんたが急ぎの書類だって言ってたから急いで持って来たんだろうが」
「そういやそうだったな!わるいわるい」
そう言って特に悪びれることなく笑っているこのなんとも締まらない男こそが、十三番隊副隊長の座に就く
「おまえなぁ…まぁ、いいけどよ」
「ふふ。あなた、冬獅郎君を困らせちゃだめですよ」
「都…いや、うん…冬獅郎!すまんかった!」
この男はいつもこんな調子だが、どこか憎めないのだ。まるで陽だまりにいるかのような安心感を相手に与える男だ。だが、それはそれとして…本当に…
「都さんに弱すぎだろ…」
妻に優しく嗜められた途端に謝るって…これが尻に敷かれるって事なのか…?いや、こいつのはただ単に海燕の奴が都さんにベタ惚れなだけか?ん?これが尻に敷かれるって事か?とどんどん思考が変な方に行っていたために俺は気付くのが遅れた。
「ん?
"都さん"と海燕の前で呼んでしまった事に!油断していた…!これは面倒なパターンだ…。
「冬獅郎、お前やっと都のこと名前で呼ぶようになったのか!やったな都!」
「ふふっ。ええ…やっと冬獅郎君が名前で呼んでくれるようになったの。」
「冬獅郎は意外と強情だからなぁー。っておい冬獅郎、顔真っ赤だぞ?」
「あら、ほんとう。真っ赤ねぇ」
この…!人が黙って聞いていれば…!
「冬獅郎は照屋さんだなぁ!」
「やかましい!!」
少し騒がしくも笑顔がある日常。こんな当たり前の日常こそ掛け替えのない大切なものなんだろう。だから…必ずあんた達二人は守り抜く。
それから更に数年が経過し、業務にも手慣れて来た。さらに、第七席になってからは毎日の修行の他にもう一つ日課が増えた。丁度今その増えた日課をこなしているところだ。
「『
その言葉と共に俺の足元に描かれた円が輝きだし、円が描かれた場所をそこに立つ
「甘ぇ…」
だが俺は腕の一振りで氷を砕く。それにより天まで届くかという程に聳え立つ氷柱は崩れ去る。それを見て相手は目を見開き驚愕を示すが、すぐさま思考を切り替えたようで次の行動に移る。刀で地面を四ヶ所突き、そのまま右半身を後ろに引いて刀の切っ先をこちらに向ける。
「『
まるで雪崩のような強大な凍気がこちらを目掛けて放出される。海燕の奴、教える自信がないとか言っていた割にはちゃんとした技になってるじゃねぇか。
「…『
もっとも、やられてやるつもりは毛頭ないがな。嘗て破られた技を使い攻撃を防ぐ。さて、そろそろ此方も攻撃に転じるとしよう。
「縛道の六十一 『
「しまった!?」
相手の慌てる声が聞こえてくるが無視して瞬歩で移動する。後は首元に刃を添えれば…。
「ま、参りました…」
とまぁ、こうなる。
「勝負ありだな。つか冬獅郎!もっと手加減してやれよ!朽木はまだこの技取得してから時間たってねぇんだぞ」
「そ、そんな海燕殿。日番谷七席にそんな恐れ多い…」
「あん?おい朽木。な・ん・で!七席の冬獅郎に対しては恐れ多いとか言うくせに俺に対しては一切そういうのがないんだ!」
そんなの決まってるだろ…?
「そりゃ海燕だからな」
「んだと冬獅郎!言わせておけば!」
「事実だろ」
「こんの!七席になってから更に生意気になったんじゃねぇか!?」
「落ち着いてください海燕殿!それに日番谷七席もそれ以上、火に油を注がないで下さい!」
この俺と海燕の間に挟まれてわたわたしているのは
「…はぁ、まぁいい。ところで冬獅郎。綾陣氷壁だったか…?また強度上がったんじゃねぇか?」
「ああ、あれだけ
「ぼっこぼこにされてたもんなぁーオメー」
「ぐっ…」
長次郎さんとの模擬戦は既に数回しており、その中で彼の呼び方も変わった。しかし、今のところ俺の二勝三敗一引き分けで負け越している状況だ。なにせあの紫電を纏った高速移動に更に磨きをかけたようで、あり得ない機動を駆使して此方の避けづらいタイミングを作り出し、こちら目掛けて紫電を
あの長次郎さんとの模擬戦で見せた雷の凍結は目撃者が総隊長と長次郎さんの二人だけ、学長は途中から地面に蹲って頭覆い隠しながら死にたくない死にたくないとぶつぶつ独り言を言っていたから見ている余裕はなかっただろうしな…本当、なんであのおっさん学長なんてやってんだ…?
…まぁそれはさておき、藍染はずっと前から今の今まで準備を整えてきた。そしてそれはアイツがその本性を明らかにするまでこれからも変わることはないだろう…。だからこそ此方も手札を増やさなければいけない。アイツの野望を打ち砕き、雛森を守り抜く為にも…。
「ふふっ。三人して楽しそうね」
この声は…
「都さん…」
「志波三席!ご、ご苦労様です!」
「よっ!都。今から任務か?」
任務?それにこのタイミング…もしかしてアイツが現れたのか…?
「ええ、西
そう言う都さんの後ろには十三番隊の隊士達がこちらを見て驚いているようだった。なぜ驚いている?
「ちなみに都、何時から見てた?」
「ルキアちゃんがあなたとの修行で得た技を使った所から…かしら」
朽木が技を使った所から…ってそれは
「最初からじゃねぇか…」
海燕がこちらの気持ちを代弁する。
「それにしても、ルキアちゃんも凄いけど冬獅郎君も凄いのね。まさか氷漬けにされたのに素手で粉砕して出てくるなんて思わなかったわ」
あぁ、なるほど。だから隊士達が驚いてたのか…。しかし、今はどうでもいいことだ。今重要なのは森にでた虚…ほぼ間違いなくアイツだろう。
「い、いえ私など日番谷七席に比べればまだまだ修行中の身で…」
相変わらず、わたわたしている朽木は放っておく。
「都さん。その調査、俺も同行して構いませんか?」
「え?」
「冬獅郎…?」
志波夫妻が不思議そうな顔をしている。…それはそうだろう。今までこんな事を言い出したことがない俺が突然こんな事を言い出したのだ…不思議に思っても可笑しくない。けれどこれだけは譲れない。悲劇は起こさせない。この人達は十三番隊に必要なんだ…絶対に。
「心配しなくても大丈夫よ冬獅郎君。目撃情報から見ても、討伐対象の虚は一体だけ。これだけの人数でも十分すぎるくらいだわ」
「そうだぞ冬獅郎。どうしたんだ?お前らしくもない」
そりゃそうなるだろう。この時、森にいるのは普通の虚だと思われていた。それなのに席官が二人も行くのはハッキリ言って過剰ともいえる。けど、いるのは普通の虚なんかじゃなく、
「嫌な…予感がするんだ。だから…お願いだ。俺も同行させてくれ。」
だから頭を下げる。こんな頭を下げる事なんか苦でもない。この人達を失う事に比べたら…いや、比べる事なんかできない程に俺もこの人達のことを大切に思っているんだ。
「冬獅郎君…」
「冬獅郎…はぁ、しょうがねぇ。都、こいつも連れていけ。コイツの勘は馬鹿に出来ねぇ。もしものことがあるかもしれねぇし用心に越したことはないだろう」
「わかったわ、あなた。冬獅郎君、頭を上げて。一緒に行きましょう」
「海燕、都さん…ありがとう…」
「ったく!ガラでもねぇことするなよな。驚いたろうが。いいか、誰一人として欠けることなく無事に帰ってこい。これは副隊長命令だ」
海燕…ああ、必ず変えてみせる。
「「「了解!」」」
「よし!行ってこい!」
その海燕の言葉と共に俺達は出発した。
「それにしても…冬獅郎君がこんなにも私たちのこと心配してくれるなんて思わなかったから、ちょっと驚いちゃったわ」
虚の出没した場所へ向けての移動中、都さんが俺に話しかけてくる。
「俺だって心配ぐらい…」
「でも冬獅郎君、あの人とは楽しくお話するのに私とはそんなにしてくれないじゃない?私てっきり…」
これは…苦手意識持ってる事がバレてたのか…?
「あの人のことが大好きだから妻の私に嫉妬してるのかと思ってたの」
はぁ!?
「なんでそうなるんだ!?」
なんで俺が
「騙したな…」
「ふふっ、ごめんなさいね。いつもあの人とばかり楽しそうにお話しているから、ちょっと意地悪してみたくなっちゃったの」
そう言って楽しそうに笑う都さん。
「勘弁してくれ…」
俺達とのやり取りを聞いていた他の隊士達の間にも笑いが起きる。これが都さんの狙いだろう。さっきまで俺の発言をみんな信じてくれたのか、緊張した面持ちだった。信じてくれるのはありがたいことだが、無駄に緊張しすぎるのもよくない。だからこそ都さんはこんなことをしたのだろう。…俺をだしに使うのは勘弁して欲しいところだが、元はと言えば俺のせいなのでここは大人しくする。
「ねぇ、冬獅郎君。もしあなたの勘が当たっていて相手がやっかいな能力を持った虚だった場合、どう対処するべきかしら?」
どうやら此方が本題の様だ。
「一つ試してみたい事があるんだ」
これだけの人数が居ればできる筈だ…。
「試してみたい事ね…教えてくれる?」
「それは―――」
「確かにそれなら…けど冬獅郎君が危なくないかしら」
「いえ、危ないのは都さんもですから。この場合は俺と都さん両者共にある程度の危険はある。けど、それは今更だ。俺たちは護廷十三隊の死神で、危険だからと尻込みしていられる立場じゃない」
「もう、頑固なところはあの人にそっくりね…。けどいいわ、その作戦で行きましょう。但し、無理は絶対にしないこと!あの人の命令を忘れちゃだめよ?」
「ああ、必ず誰一人欠けることなく帰る。…絶対に」
「お前が噂の虚か…?」
そう俺が問いかけるのは目の前にいる虚。本体部分は緑色で六つの足がある。いや、足というよりも手が六つ付いているといった方がしっくりくるか。そして背中の赤い触腕、仮面は目元がオレンジ色に縁どられている。間違いない…コイツが悲劇の元凶、メタスタシアだ。
「ひひっ、ひっ!なんじゃあ…小僧。儂に喰われにきおったのか?」
「いや…お前を倒しに来たんだよ」
「ひひっ、ひっひひひひひひ!笑わせるな小僧。お前のような小僧一人で何ができる。大人しく儂に喰われるがいい!」
「誰が一人だと言った…?」
「見え透いたハッタリとは芸のない小僧よ…さっさと喰ろうてくれるわ!!」
見え透いたハッタリ、ね…。数多の死神を喰ってきたからこその自尊心なのかもしれないが、実力に見合わない自尊心ほど無駄なものはないぜ…メタスタシア。
「縛道の七十五『
その声と共にメタスタシアの上に五つの五角柱が現れメタスタシアの動きを封じる。
「今よ!」
そして先ほどの声の主、都さんの号令で周りに控えていた隊士達が次なる縛道を唱える。
「「「「縛道の四『
唱えられた鬼道はさらにメタスタシアを四方向から縛る。本来の這縄の使い方とは違い、今回は隊士達が這縄を握っている。
「ぐっ!おのれ、死神風情が!この程度の拘束すぐにでも解いてくれる!!」
「次よ!」
だが、まだ終わっていない。都さんの号令によりさらに四人の隊士が縛道を唱える。
「「「「縛道の六十三『
「ぐぅう!!貴様らぁああああ!!」
太い鎖が蛇のように巻きつき奴の体の自由をさらに奪う。此方も勿論、隊士達が鎖条鎖縛を握っている。詠唱破棄で六十番台を使えるのは流石、優秀な隊士が多い十三番隊と言うべきか…だがこれで準備は整った。
「皆、一斉に!」
「「「「「「「「破道の十一『
「がぁああああああああああ!!!!」
それぞれが握る縛道に沿って、電撃が伝っていきメタスタシアに辿り着く。一つならばたいしたことのない十番台の破道だが、八つ同時にくらえばたまったものではないだろう…あとは最後の一撃を準備するだけだ。
「「
都さんと同時に詠唱を始める。コイツを消し去る一撃を放つ為に!
「「
構える右手に霊圧を集中していく…集まった霊圧は雷を放ち解放されるのを今か今かと待ちわびているかのように輝きを増していく。終わりだ悲劇の元凶!
「「破道の六十三『
「ひいぃいいいいいいいいい!!!」
巨大な雷を帯びた光の奔流がメタスタシアを飲み込み消し去っていく…。雷吼炮によって巻き起こされた煙が晴れた先には何も残っていなかった。勝った…俺は悲劇を変えることが出来たんだ。
"!?冬獅郎君後ろだ!!"
そんな焦った夢月の声で急いで振り返る。そこに居たのは凄まじい速度で移動してくるもう一体の虚…何故!?メタスタシアは今倒したはずだ!
「ちっ!破道の六十さっ!?」
「かぁッ!!!」
此方の詠唱よりも先に奴が口から
「その体貰うぞ死神ィイイイイ!!」
その声と共に奴の背中に生えている触腕が弾けこちらに向かってくる…狙っているのは…都さんか!!させねぇ…!!それだけは絶対にさせないッ!!
「くそっ!!」
間に合え!間に合え!!間に合えッ!!!
「都さん!!」
「え?きゃっ!」
俺は都さんを体当たりで射線上から逃がす。それが意味することは…
「ひひっ!馬鹿な小僧よ!その体貰い受けるぞ!」
「がぁあああああ!!!」
俺がコイツに寄生されるという事だ…俺が最後に見たのは此方を見て呆然とする都さんや隊士達の顔。
「だい…じょう…ぶ…だ…から…」
その一言を最後に俺の意識は闇へと落ちていった。
そこには沈鬱な面持ちをした十三番隊の面々が揃っていた。全員の視線の先にはベッドの上で眠りにつく一人の少年の姿…。
「私が…あの時、動いていればっ!冬獅郎君は…私のっせいで…」
「都、そう自分を追い詰めるじゃない。冬獅郎はそんなこと望んじゃいない」
自分があの時動いてさえいればと己を責める志波都とそんな妻の姿を案じ声を掛ける夫、副隊長でもある志波海燕。
「卯ノ花隊長…日番谷の状態はどうなんだ…?」
そんな二人を横目に緊張した面持ちの十三番隊隊長 浮竹十四郎が四番隊隊長
「体の表面上には異常が見られませんでした。外傷もなく、肉体的には健康そのものと言っていいでしょう」
「な、ならば何故日番谷七席は目を覚まさないのですか!」
その答えに半ば叫ぶように質問したのは朽木ルキア。最近では日番谷冬獅郎と共に氷雪系の斬魄刀繋がりで修業をしている。彼女も最初の内は日番谷の事を真央霊術院での一件もあり、恐れていた。だが係わっていく内に彼はぶっきらぼうではあるが相手の事を大切にしている人物であるということが分かり、最近では自分から質問するなど打ち解けてきていたのだ…。それなのに…自分が手も足も出なかった彼がこのように眠り続けるなど理解できなかった。
「先程も申し上げた通り、肉体は健康そのものです。ならば問題があるのは…」
「魂魄の方…という事だネ」
「涅!?なぜお前が此処に?」
現れたのは十二番隊隊長及び技術開発局局長を務める
「何、面白そうな研究対象が運び込まれたと聞いたものでネ。こうしてわざわざ足を運んだというわけだヨ」
「テメー!!冬獅郎の事をなんだと思ってやがる!」
研究対象…その言葉に我慢できず、海燕が掴みかからんばかりの勢いで詰め寄ろうとする。
「涅…今、日番谷を実験対象と言ったか…?」
しかしすぐさま自分よりも確かな怒りを宿した声により静止させられた。普段温厚な浮竹十四郎の瞳が怒りを湛え涅を真っ直ぐ射貫く。自分の部下を、それも仲間を守った日番谷を研究対象と言わせることなど、何よりも"誇り"を大切にする彼には許せるはずもなかった。
「お二人ともここは病室であることをお忘れなく。騒ぎ立てるようでしたらご退室願います」
「すまない…卯ノ花隊長」
だが忘れてはいけない。ここには
「ほう、可笑しな事を言うネ。それではまるで彼をまだここに置いておくと言っているように聞こえるヨ」
涅マユリである。彼は言外にこう言っているのだ。助ける術を持たぬならば自分によこせ…と。だが彼女が患者を渡せと言われて黙っている訳はなく
「そう言っているのです涅隊長。彼は患者であり、貴方の研究対象ではありません」
「それこそ可笑しな話だヨ。君に救う術がない以上、私の所で救う術を探すべきではないのかネ?」
言外に言っても引かぬというならばと彼は口に出す。もっともな事を言っているように聞こえるが彼が必ず救うとは限らないのだ。自分の探求心を満たすことを第一と考える彼が日番谷冬獅郎を救う可能性は低い。それが分かっているからこそ彼女は引くことをしない。このままでは話は平行線だと思われていたが、それを打ち破る存在が現れる。
「何事じゃ」
「「「総隊長(殿)!」」」
「元柳斎先生!」
護廷十三隊一番隊隊長にして総隊長…
「隊長格が揃いも揃って睨み合いなど只事ではあるまい」
「それは…」
「私は彼を救う術がないようならば、彼の身柄を此方に渡せと言っていただけだヨ。総隊長殿」
涅が口を開く。彼にとっては事実を言っているだけなのだから臆する必要はなく、寧ろ自分の所に研究対象が来る可能性が高いとさえ踏んでいた。その話を聞いた総隊長は視線だけで卯ノ花へ説明を求める。
「現在の彼…日番谷七席は虚と魂魄が融合している…いえ、正確には融合しようとしている状態だと思われます」
「完全に融合した時、彼奴は虚となる…という訳か」
「はい。ですがまだ彼の深層までは到達していないようです。おそらく彼が虚に抵抗しているのでしょう…今の段階ではまだ虚に乗っ取られるとは断言できません」
彼女は総隊長へと説明する。彼が虚と戦っているという事、そしてまだ希望が潰えた訳ではないことを…。
「まってくれ卯ノ花隊長!冬獅郎が助かる可能性はあるんだな!?」
その話を聞いて黙っていられなかったのか海燕が割り込む。弟のように思っていた少年が頑張っていると聞いて黙っていられるはずも無かった。
「虚に乗っ取られてからでは遅いのではないのかネ?それに何より…君たちは彼の姿をした虚を躊躇わず斬ることが出来るのかネ?」
だが、涅のその一言で海燕は俯く。胸中は自分に斬れるのか…?弟のように思ってきた冬獅郎を…妻の都を守ってこうなった彼を…自分は…そんな事が渦巻いている。そしてそれは妻の都やルキアも同様であった…。
「斬るさ。もし日番谷が虚に負け、体を乗っ取られた時は…俺がこの手で日番谷を斬る」
その言葉に俯いていた顔を上げる十三番隊の面々。見上げた先には力強く覚悟を決めた瞳をする
「だが俺は…日番谷なら必ず打ち勝つと信じている。」
「殊勝な事だネ。だが現実は君達が思う程甘くは無いヨ」
「そこまでじゃ、決定を下す。今より日番谷冬獅郎を結界で覆い二十四時間の監視を付ける。これが虚となり次第、討滅せよ。この決定は覆らぬ、涅よ自分の隊舎へ戻るがよいじゃろう」
「元柳斎先生!」
「ふん、精々その選択を後悔しないことだネ…」
そう言い涅は不機嫌そうに出ていく。
「浮竹…先の言葉、決して違えるでないぞ」
そしてまた総隊長もその言葉を最後に四番隊隊舎を後にする。だが何故か副隊長の雀部は出ていこうとせず、日番谷の顔を見ているではないか。そして十三番隊の面々を見据えると
「元柳斎殿は日番谷殿を信じておられるのです。己に対して必ず超えると豪語してみせた彼の覚悟と…そして強さを…」
その言葉にその場に集まっていた面々は驚きを隠せない。まさか総隊長相手に超えると豪語していようとは思わなかったのだ。
「そして彼は…日番谷殿は、自身を信じる者の事を決して裏切りませぬ。故に貴方がたが日番谷殿を信じ続ける限り、彼は決して虚などに負けることはないでしょう」
そう言って雀部副隊長も四番隊隊舎を後にする。彼が良く日番谷と模擬戦をしている事は護廷十三隊では周知の事実だ。最近ではあの戦闘専門部隊の異名を持つ十一番隊、その隊長である
「まさか…元柳斎先生を超えると豪語していたとはな…日番谷らしいというか…なんというか…」
どこか呆れたように浮竹が言うと
「ふふっ。冬獅郎君ならいつか本当に超えてしまうかも知れませんよ?」
少し元気が出たのか志波都がそう言い返す。
「で、ですが本当に日番谷殿は大丈夫なのでしょうか…私には日番谷殿を斬るなど…」
だが、朽木ルキアは違うようで不安そうに呟く。自分では日番谷を斬れないと。
「そんな事にはならねぇよ。絶対にな」
妙に自信に溢れた力強い発言をしたのは志波海燕。これには朽木ルキア以外の二人も驚く。
「なぜそう言い切ることが出来るのですか海燕殿」
どこからその自信は来るのかと、不安に駆られる少女は問いかける。問われた男はというといつも通り二カッと笑って
「そりゃオメーさっき雀部副隊長も言ってたろうが、
「ですが海燕殿、もしもということも…」
それでも少女は問う。不安は未だ拭えず…自身と親しい相手が死ぬ…それももしかしたら自分の手で斬らねばならなくなるかもしれない。それが彼女を不安にさせる。だから男はそれを見て言うのだ。とっておきの言葉を
「なぁ、朽木。冬獅郎を信じろ。コイツの強さは毎日ボコボコにされてるお前が一番よくわかってんだろ?それにな…他の隊の連中は兎も角、俺達は信じる事をやめちゃダメなんだ」
「それは…なぜですか…?」
他の隊は兎も角、自分たちは信じることをやめてはいけない?
「なぜってオメーそんなの決まってんだろ。俺たちは十三番隊、掲げる隊花は
そこまで言われれば分かる。そうだ自分は何を弱気になっていた…自分は十三番隊の死神だ。ならば海燕殿の言うとおり信じる事をやめてはいけない。何故ならば私達十三番隊の隊花の意味は…
「『希望だ』」
未来に望みをかけることに他ならないのだから。
「なんや彼、けったいな事になってんのとちゃいます?」
そんな京言葉で話す死神の男に言葉を返すは眼鏡を掛けた優男風の死神。
「ああ、まさか彼に取りつくとはね…」
「メタスタシア…でしたっけ?あの子の名前」
「正確に言うならばメタスタシアとテンタクルスだ。彼に寄生したのはテンタクルスの方だね…彼らは元々一つの虚だったが私が実験で二つに分け、それぞれ別の改造を施した虚だ」
話の内容は死神である自分達があの虚を作り出した張本人であるという信じられないもの。
「別の改造…?」
「ああ、メタスタシアもテンタクルスも元は寄生型に分類される一人の虚だった。だが寄生型にしては寄生する能力が弱くてね…だから僕は彼を二つに分け別々の改造を施すことにしたんだ。メタスタシアは傷口からの浸食による寄生…そして融合、テンタクルスは傷口を介さずとも寄生し、融合できるようにね」
「それ、メタスタシアの方いらんのとちゃいます?劣化品に聞こえんですけど」
京言葉で話す死神が疑問を呈する。その疑問を聞いた優男に見える死神はどこかつまらなさそうに答える。
「一概にそうとも言えないんだ。メタスタシアは傷口から浸食する形でしか寄生も融合もできないが、その分、相手の体の支配権を奪うのは早い。一方、テンタクルスはどこからでも浸食し寄生、融合できるがその分、相手の支配権を奪うまで時間が掛かり、抵抗次第では逆に討伐される可能性がある」
「…それ、失敗作ちゃいます?」
「ああ、失敗作だよ。もともと
「けど斬られるんとちゃいます?今あそこは二十四時間監視中やったはず…」
「そうだね。もしテンタクルスが乗っ取る事に成功してもまず間違いなく斬られるだろう。だが、斬られたら肉体ごと
「こら彼が可哀そうになるなぁ…」
優男に見える死神は天に浮かぶ月を見上げる…。
「そう言えば…彼もこうしてよく月を見上げていたね…」
二人の死神はその言葉を最後に廊下から姿を消し、後には静寂だけが残っていた…。
筆者は海燕殿大好きです。捩花も最高。水天逆巻けとかかっこよすぎる。
でも一番好きなキャラは藍染だったり…。
悪役に惹かれる傾向がある筆者に藍染のように目的を持って突き進むキャラはドンピシャでした…。あと、名言多すぎるよ…。
今回の虚、メタスタシアは原作に出てきた通りです。テンタクルスはアニメ版のメタスタシアの名前です。何故かアニメクレジットはテンタクルス表記でしたが後のアーロニーロの台詞ではメタスタシアになってました。解せぬ。
あと、各話の番号表記を廃止しました。
獅子~で始まる題名が冬獅郎メイン。他で始まるのはそれぞれのキャラクターを連想する単語~で書いていこうと思います。