文量二倍だったとはいえ誤字多過ぎ……。
多分今回もいっぱいあると思うんでお願いします。
(っ'-')╮ =͟͟͞͞〇ブォン
博物館事件の後、私は少し遠回りしてジムへ向かっていた。
理由は二つ。
一つはロケット団の動向を知ること、もう一つは警察の様子を窺うためだ。
前者は聞き込みですぐにわかった。
東の方へ逃げて行ったということなので、おそらくお月見山かハナダシティに逃げたんだろう。
いずれ私も向かう方面なのでこれは後回しでいい。
問題は、警察の私に対する警戒がどれほどかということだ。
近くの短パン小僧を呼び寄せて、警察署から指名手配犯の写真をカメラに収めてくるように頼む。
千円をチラつかせるだけで子供はコレを快諾してくれた。
モンスターボール五個分だからね、そりゃあ喜ぶよ。
幸い博物館での事件のために、警察署内はごたついている。
短パン小僧が多少怪しいことをしたところで気にかける余裕なんてないだろう。
実際その読みは当たり、何事もなかったように戻ってきた。
指名手配リストを携えて。
「ありがとねっ」
「またなんかあったら任せてくれよな!」
大きく手を振る少年に、私も軽く振り返す。
さて、中身を確認しますか。
一番いいのはこの中にないパターンだね。
ロケット団のせいでカントーの治安は割と悪い。
私の名前がないという可能性も無きにしも非ず。
そんなことなかったわ。
(マサラタウンのメアリー十四歳。国際警察数名に対し過剰な攻撃をしそのまま逃走。強力なポケモンを携えている……ねぇ)
どこにも嘘は書かれていない。
書かれていないが、あくまで私を悪と言い張るか。
(……覚悟していた、ことだろう?)
カメラを握る力が強くなる。
こうなることも考慮したうえで、スーちゃんを助けることを選んだんだ。
ならば受け入れろ。
その先は、まっすぐな道が続くだけだ。
「スーちゃんについての情報は、一切出てないのね」
これならば最悪スーちゃんを繰り出すことになっても問題なさそうだ。
*
「しまった! 一万光年は時間じゃない、距離だ!」
(なんだこのボーイスカウト。頭おかしいんじゃないか?)
ジム内に配置されたトレーナーを下し、冷視する。
私は今、ニビジムに来ていた。
お目当てはタケシとの戦闘……もといジムバッジだ。
ジム内に配置されたトレーナーということもあり実力に期待したが、どうにも弱っちい。
というか、トレーナーがこいつ一人って。
このジム経営ヤバいのか?
ニビの住民は損得勘定を即刻覚えるべきだと思う。
「待っていたよ、トキワのメア」
「それはどうも、ニビジムリーダータケシ」
フィールドに立つ。
向こう側にはタケシが居て、天井に吊るされた照明に照らされていた。
「レギュレーションを決めようか、手持ちは何匹だい?」
「二匹」
一応、公式に採用されるレギュレーションには『六三五零フラット』というものがある。
『六』匹を事前に申請し、一分半の見せ合いののち『三』匹を選出。
レベル五十以上のポケモンは『五十に引き下げられる』、そんなルール。
しかし私の手持ちは二匹なので、そのルールでは戦えない。
加えて言えばルクシオのレベルも足りていない。
「そうか、なら見せ合い無しの二匹選出。二十レベルフラットでどうだ?」
「オーケー、それでいいわ」
ボールに手を掛ける。
カチャリという音が、一際大きく聞こえる。
世界が引き延ばされる。
ああ、この感覚だ。
「行くぞ! ゴローニャ!」
「お願い! コニー!」
二人が繰り出したのは同じタイミングだった。
ゴローニャと聞いて、思わず口角が上がりそうになる。
もちろん、戦闘において表情なんていう情報アドバンテージを与えるわけにはいかない。
実際には能面のようなポーカーフェイスが貼り付いているだけだ。
コニーがスパークを地面に放ち、反作用を推進力に変えて突進する。
空中で半回転し、アイアンテールを決めた。
ゴローニャに鋼タイプの技は効果抜群。
これは大きいはず。
そんな私をあざ笑うように。
ゴローニャは不敵に笑った。
「コニー! 引いて!」
「ゴローニャ!」
ゴローニャが地面を揺らす。
それを空中でスパークを放つことで回避させる。
いわば多段ジャンプだ。
「ほう、スパークをそのように使うのか。面白いな」
「あんたのゴローニャ、なんかおかしくない?」
タケシはルクシオが地面技を避けたことに感心し、私はゴローニャが普通ではないことに気付く。
具体的に言えば、頭部から大きな角が生えていた。
「これはアローラゴローニャと言ってな。遠い地方、アローラに生息するゴローニャだ」
「へぇ……?」
そんなものがあるのか。
どうやら見た目だけじゃなく、性能にも違いがありそうだ。
ポケモン図鑑に載ってるかなー。
でもバトル中に意識を他に割くのはもったいないしな。
「コニー」
私はルクシオに呼び掛ける。
ルクシオは先ほどと同じように突進するが、そこから先は違う。
これは作戦変更の合図だ。
ゴローニャの近くまで潜り込むと、毒毒を放った。
「ゴローニャ!」
それを咎めるように、ゴローニャのパンチが炸裂する。
ルクシオが吹き飛ばされるが、見落としてはいけない重要なことがあった。
(あのパンチ、帯電している)
なるほどね。見えてきた。
鋼タイプの技を受け、ケロッとしていること。
帯電したパンチ。
(アローラゴローニャのタイプは岩電気ってところかな?)
育つ地方が変わるだけでタイプまで変わるのか。
面白いな。
ゴローニャに吹き飛ばされたコニーが空を蹴り、私のもとまで帰ってくる。
毒毒は上手いこと決まったということか。
ナイスだ。
「コニー、眠る」
「む、ゴローニャ!」
眠るでルクシオの体力を回復する。
これを好機と見たか、タケシがゴローニャに地震を打たせる。
「コニー」
ただそれだけの指示。
眠って体力を回復したはずのコニーはまた空を蹴り、ゴローニャに向かって行った。
「ゴローニャ! スイッチ!」
ゴローニャは地震を途中で切り上げ、岩石封じにシフトした。
勢いよく飛び込んだルクシオは避けることもかなわず、もろに食らった。
岩に足を取られ、動きを封じられる。
「コニー!」
「遅い!」
ルクシオをボールに戻そうとするが、それよりも早くゴローニャの技が決まった。
くっ、一歩届かなかったか。
「ごめんね、コニー。ゆっくり休んで」
コニーをボールに戻す。
先発勝負はタケシの勝利。
やるじゃん。
「驚いた。今のはカゴの実か」
「流石ですね」
ルクシオが眠った後に、すぐ行動できたのには仕掛けがある。
ルクシオの持ち物はカゴの実。
眠り状態に陥ったときに回復する効果がある木の実だ。
わざと隙を作り攻撃を誘導。
その隙にカウンターを決めるつもりだったが、流石はジムリーダーか。
そう簡単にはいかなかった。
「ふふっ」
ああ、愉しいな。
ポケモンバトルは、私に生を与えてくれる。
この瞬間だけが、私の心を突き動かす。
「行くよ、スーちゃん」
小さくボールに語り掛け、繰り出した。
「ギシャァァアァ」
「む、見たことがないポケモンだ。ゴローニャ、一度引くんだ」
タケシはゴローニャをボールに戻し、次のポケモンを繰り出した。
現れたポケモンは、岩蛇。
「頼んだぞ! イワークッ!」
イワーク? 攻撃力がポッポ並みだと言われるあの?
何を考えているんだ?
なんでハガネールにしないんだ?
(あっ、そっか。岩タイプのリーダーだから進化できないのか)
イワークは岩地面タイプだが、ハガネールは鋼地面タイプ。
故にイワークを使わざるを得なかったと。
悲しいやつだな。
(さて、スーちゃん。準備はオッケー?)
そうスーちゃんにアイコンタクトを送る。
スーちゃんは少しだけ頷く。
それは悪だくみを積み終えたという知らせだった。
やっちゃえ。
「ギシャァァアァ」
スーちゃんの龍の波動がイワークを襲う。
特攻が倍に跳ね上がった龍の波動だ。
イワークごとき、軽く吹き飛ばす。
フィールドを土ぼこりが覆う。
そんな煙を、タケシの声が切り裂いた。
「岩石封じ!」
イワークがいた方向から、岩石が飛んでくる。
それは的確にスーちゃんを襲った。
別に、あのタイミングでゴローニャに入れ替えたというわけではない。
単純に、イワークがミリ耐えしただけだ。
何故耐えられたか、その答えは特性にある。
「イワークの特性は頑丈、体力が満タンであればどんな技でも一度だけ堪えることができる」
タケシがそう自慢げに語る。
だからさ。
私はこう答えたんだ。
「知っているわ」
もう、油断も慢心も隙も見せない。
続く第二波で、着実に削り取る。
「参ったな。君の知識量は底知らずか」
「さてね、まだ深くなることだけは確かよ」
少なくとも、この戦いが終わったらアローラという地方の生態系について調べなければいけない。
まだまだ知るべきことはいっぱいだ。
「だが、それなら知っているだろう。岩石封じの効果を」
「受けた相手は、素早さが一段階遅くなる」
他にも岩雪崩やストーンエッジなど、威力が高い岩技は色々あるのに採用される理由。
それはこの追加効果にあった。
龍の舞や蝶の舞のような素早さのあがる技の起点にならない他、後続の中速アタッカーを相手より早く動かすことができるなど、様々な利用方法が考えられる。
スピードが下がったスーちゃんならば、ゴローニャの方が速い。
そう考えているのだろう。
「さあ! これで終わりだ、行け! ゴローニャ!」
ゴローニャと、アーゴヨンが向かい合う。
「スーちゃん! 目覚めるパワー」
「ゴローニャ! 地震!」
素早さが下がったアーゴヨンと、下がっていないゴローニャ。
先に動いた方が勝ち。
そんな勝負で。
勝利を確信した私は、漸く顔に笑みを浮かべた。
「ゴローニャ!?」
倒れ伏したのは、ゴローニャだった。
*
「驚いた。いったいどういう仕組みなんだ?」
「それはですね……」
対戦後の感想戦というのは、意外と為になる。
もちろん、トキワの森にいた虫取り少年のような奴としても意味がない。
自分が負けた試合、負け筋があった試合に、どうすればよかったか見つめなおす、いい機会だからだ。
「スーちゃんの特性が理由ですね」
「特性?」
スーちゃんの特性を覚えているだろうか。
私がサカキに図鑑を貰ってすぐ、少しだけ触れたのだが。
「ビーストブースト。相手を倒したときに、一番高いステータスのランクが上昇する特性です」
「そんなものがあるのか!」
つまり、一度ゴローニャによって下げられた素早さは、特性ビーストブーストによって引き上げられプラスマイナスゼロ。
素の素早さ対決ならばスーちゃんはそうそう後れを取らない。
知識量の差ですよ、これが。
「いや、勉強になったよ。グレーバッジだ、受け取ってくれ」
「ん、サンキュー」
タケシに、鈍色に輝くバッジを貰う。
八角形の、岩を模したバッジだ。
「それと、これも」
「……これは?」
もう一つ受け取ったのは、ディスクのようなもの。
ナンバリングは三十九になっている。
もしかしてタケシは歌手なのか? 歌ってみたなのか?
「技マシン三十九、岩石封じだ。今回はいいようにやられてしまったが、上手く使いこなせれば試合を有利に運べるんだ」
「へー、これが技マシンなんだ」
話には聞いていた。
一瞬でポケモンに技を教えられるディスクがあると。
一体どういう仕組みなんだか。
科学の力ってすげー。
「さて、君に聞きたいことがある」
「あーはいはい。いいけどさ、先に確認しておくよ? 盗聴器とかはしかけられてないよね?」
「ああ、その辺は抜かりない」
「聞き耳立ててるやつもいない?」
大丈夫だと、タケシは言った。
それから、博物館での発言の真意を聞きたいと。
「どうして君がロケット団のことを深く知っている。君は一体何者だ」
「……ふふっ」
私はわらった。
特に意味はない。
私にとっては、だけどね。
タケシにとっては薄気味悪く映っているだろう。
そういう空気を作れれば、あとはどうでもいい。
「私はトキワシティからやってきましたが、ジムバッジはゼロでした。どうしてトキワシティのジムに挑まなかったでしょう?」
「……まさか、嘘だろう?」
「さて、私も確信があるわけじゃないんですよ。ただ、忠告です」
トキワのジムリーダーサカキには気を付けてください。
「それでは、対戦ありがとうございました」
私は、ニビジムを後にした。
*
(上手く運べた)
私の最終目的の一つに、ロケット団を潰すというものがある。
だがしかし、サカキほどの実力者を倒せるだけの人材は、カントーにはそうそういない。
そうなればサカキは好き放題やる。
それは面白くない。
(ま、せいぜいサカキの動きを制限してよ)
サカキと言えど、同じジムリーダーから怪しまれているとなれば大きなことはできない筈だ。
いくらあいつでも、カントーのリーダー七人を相手にして無事で済むはずがない。
リスクを嫌うあいつの事だ。
きっと目立った行動はできない。
(いやー、いいことした後は気持ちいいな)
どうやら私はまた一つ、カントーの平和に貢献してしまったようだ。
私の善行がオーバーフローしてしまわないか怖いね。
そんなことを考えていると、あとからタケシが付いてきた。
「おーい、メア! 待ってくれ!」
「どったの?」
タケシは息を切らしながら走ってきた。
よく見ると、カバンのようなものを抱えている。
私の前にそのかばんを丁寧に置くと、中身を取り出した。
「……これは?」
カバンから現れたのは、大きな卵だった。
ダチョウの卵くらい大きい。
「実はな、俺はジムリーダーであると同時にポケモンブリーダーも目指しているんだ」
「目指す? ブリーダーって目指すものだっけ?」
私は疑問に思ったことを素直に聞いた。
ブリーダーやらトレーナーはその人が勝手に名乗るだけではないのかと。
タケシは、俺はまだまだ未熟だからと言った。
それならこの世のトレーナーのほとんどがただの人になり下がるぞ。
全人類ニート化計画でも立ててるのか?
「そんな折、この卵を受け取ったんだ。一説によると、ポケモンの卵なんじゃないかと言われている」
「ポケモンの、タマゴ?」
ポケモンは長らく、その生殖方法が判明していなかった。
気づけば次世代が生まれている。
そんなことから、自然がポップしているという説まで浮上してくるほどだ。
それに対して、ポケモンの卵とな?
「ああ、その真実を知るつもりだったが、先ほどのお礼だ。受け取ってほしい」
「いいの?」
そんな貴重なものを、私なんかに預けてしまっていいのか。
そんな思いで、私は問い掛けた。
「ああ、君はポケモンの事をよく知っている。君なら安心して任せられる」
「……ありがと」
タケシから卵を受け取る。
卵が、小さく動いた気がした。
「さて、メア。君はこの後もジムバッジを集めるのかい?」
「そのつもりよ」
集めきり、本物のコニーの蘇生を試みる。
その為だけに、私はバッジ巡りを行う。
「それなら次はハナダシティに向かうんだろ? そういうことならジムリーダーのカスミにその卵の事を見せてみるといいかもしれない」
「? どうして?」
「卵の模様、水玉模様になっているだろ? もしかすると、水タイプのポケモンかもしれない」
「ふーん、ハナダのリーダーは水使いなんだ」
いいことを聞いた。
「メア、君はもっとジムリーダーについて調べてから挑んだ方がいいぞ」
切り札とか、得意な技とか。
そういう情報を事前に仕入れているかどうかで、対策をしているかどうかで。
敗因は取り除くことができる。
そうタケシが力説する。
「そんなことをしたら、つまらないでしょう?」
私の答えは、そんなものだった。
ガッチガチにメタを張って勝っても、意味がない。
ギリギリの試合を、全力で楽しむ。
だからこそいいんじゃないか。
分かってないなあ。
「じゃ、またねタケシ。色々ありがとう」
「あ、ああ。またいつかな」
「うん! またねー!」
スーちゃんとコニーを回復させに、一度センターに戻った。
次はハナダシティ、水タイプのジムリーダーだ。
本当は全話含めて四話になってた。
タケシごときに四話も使ってらんないよ。