Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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 確か今回からにじファンにはなかった変異種編になるはずです。pixivで先に公開していましたが(苦笑)
 今回のテーマは「火山に適応したボルボロス」です。本編で登場したボルボロスだったりします。



part9:「灼岩竜の生態」

 かつてユクモの砂原地帯には、こんなモンスターが居た。

 

 そのモンスター……土砂竜ボルボロスは、ある程度の平穏な暮らしを送っていた。自身よりも強いモンスターが居たとしても、己の縄張りを守り抜いて生きてきた。

 しかもその中で一番強いモンスターはアラムシャザザミなので、特に痛い目には合っていない。

 むしろ頭突きの練習相手になれたので、己を磨くことができた。(鎧蟹としては迷惑だったが)

 しかし幸せは長くは続かず、不運にも新たな脅威が襲ってきたのだ。

 

 後に「ユクモの魔王」と呼ばれるようになる暴君……ディアブロスである。

 

 彼とアラムシャザザミの喧騒に巻き込まれるのは、いつだってボルボロスだった。

 中でも特に多いのは、アラムシャザザミに負けたディアブロスからの八つ当たり。

 いつだってディアブロスの理不尽な怒りを受けてきた彼は、いつもボロボロだった。

 おかげでタフにはなったし、食性の違い故に問題はないものの、虐げられていることには違いなかった。

 

 

―もう、こんな所出ていってやる!

 

 

 そしてこの逃亡劇である。実際にディアブロスにまた八つ当たりされていたし。

 ボルボロスは走った。自分の亜種がいるという、己の進化の可能性がある凍土へ向けて。

 

 そして、凍土からも逃げ出した。

 理由は簡単。食物連鎖の頂点、暴食の悪魔イビルジョーが居座っていたからだ。ディアブロス以上に恐ろしいモンスターがいると解かった以上、逃げ出すのは当然。

 その後も各地を転々と回ることになった。

 渓流ではドボルベルグに襲われ、水没林ではナルガクルガに襲われ、孤島ではリオ夫婦に襲われた。

 ここまでくると、もう不運と災難の星に生まれてきたような気までしてくる。ディアブロスに鍛えられたおかげで生き延びられたのは、幸運なのか不運なのか……。

 

 最終的に、彼は火山に住み込むことになった。

 砂原よりも厳しい環境でありながら、彼にはここにしか居場所が無かったのである。なぜなら、今の火山は他の地域に比べ、それほどの強者がいなかったからだ。

 

 野生の世界では競争というものがある。

 互いの縄張りや生存権を賭けて争うことが多々あり、その中で両者が息絶えることもあるのだ。

 だが今は、ウラガンキンも、アグナコトルも、リオレウスもいない。いるのはラングロトラとドスフロギィぐらい。なんとかなる相手ばかりだ。

 

 ここまで来てやっと巡ってきた幸運。是非とも物にしたい。

 いつ強敵が来るか解からないという恐怖心もあってか、彼は急激な勢いで適応していった。

 

 

 

―そして彼は、変異種の道を切り開いたのである。

 

 

 

 今、あるモンスターが巨大な岩を粉砕して突き進んでいた。

 その巨岩は巣だったらしく、崩れた岩場からは甲虫オルトロスがぞろぞろと這い出てきた。

 それを狙っていたかのように姿を現したのは、先ほどオルトロスの巣を破壊した者だった。

 

―赤黒い甲殻を纏った土砂竜……ボルボロスの変異種であった。

 

 当然のことだが、ただのボルボロスではない。

 全身が赤くなっているだけでなく、体に纏っている物にも特徴じみたものがあった。

 体に、冷えて固まったものではなく、ドロドロに溶けている溶岩を纏っているのだ。

 

 原種は強い日差しと乾燥を防ぐ為に泥を、亜種は防御力を上げる為に雪を纏う習性がある。

 その習性を捨てることなく、かつ外敵から身を守るために編み出したものだ。

 特殊な分泌液で溶岩の粘度を保つことで、常温でも粘り気のある液状を保ち、体に纏わせている。

 

 この溶岩で鉱石や紅蓮岩をくっつけておけば、防御を上げるだけでなく、体を揺らせば投石という武器にもなる。

 それだけではなく、恐ろしいことに火薬岩ですら纏わせることがあり、これをばら撒いて周囲を爆発させるという荒業も持つ。

 しかもこの液状の溶岩がボルボロスから離れ、体に浴びれば急激に冷やされ固まってしまう。

 それは泥まみれや雪まみれよりも効果が高く、一度固まると中々取れないという利点もある。

 

 そして動けなくなったモンスターに向けて、火山の鉱石で固めた頭殻を向けて突進を繰り出す。

 鉱石が多く含まれている岩石を粉砕するほどの脚力と硬度を得たボルボロスの一撃は絶大だ。

 

 パワーや防御力でこそウラガンキンに負ける。

 しかし、ボルボロス変異種の脚力と鉱石を纏った重量を合わせれば、ウラガンキンにすら打ち勝つことができる。

 ボルボロス変異種の突進はまさに砲丸だ。勢いよく飛んできた鉄の塊を前にして、吹き飛ばない物は無い。

 なによりも彼は、あのディアブロスの虐待を受けたことにより、身体的にも精神的にも強くなった。

 時には用心深く、時には大胆に。諦めの悪さは異常で、どんな時も諦めないガッツがある。

 

 その実力はハンターにだって引けを取らない。

 ユクモ中のハンターが恐れる「ユクモの魔王」の猛攻を凌いだ実力と体力は伊達ではなかった。

 鉱石を纏った重量級の体が、まるで砲弾のように勢いよく迫ってくる姿を見れば、その迫力がわかる。

 その上、冷えて固まった溶岩によって身動きが取れなくなったとしたら……その恐怖と迫力は二割増しになるだろう。

 

 

 砂原で不運の連続だった彼がここまで成長したのは、一種の偶然かもしれない。

 しかし、彼は幸運なモンスターには違い無い。おかげで突然変異を向かえ、火山の生態系の中でもトップに君臨する程の力を得たのだ。

 

 

 彼の新たな二つ名は――『灼岩竜(しゃくがんりゅう)

 溶岩と紅蓮岩を纏って突撃するその姿は、「灼熱の砲弾」の通称に相応しい。

 今日も彼は、自慢のタフさを持って突進を繰り出す!

 

 

 

 

 

 だがしかし―――後に『砕竜』なる凶悪な獣竜種が現れ、彼を脅かすようになるのだった。

 やはりというか、彼は不運の塊のようなモンスターだったに違い無い……。

 

 

 

―完―

 




 モンスターも生きている以上、不運とか幸運とかあるに違いありません。きっと(笑)

 ○本日の防具と素材一覧

 ●ボロスYシリーズのスキル一覧 (剣士)
 ・破壊王
 ・ランナー
 ・なまくら

 ●ボロスYシリーズのスキル一覧 (ガンナー)
 ・破壊王
 ・ランナー
 ・装填速度-2
 
 ●主に剥ぎ取れる素材
 ・灼岩竜の頭殻
  灼岩竜の頭部の殻。細かい鉱石が混ざり合ったものが重なって出来ている。
 ・溶解粘液
  灼岩竜から抽出される酸性の液体。これによって温度に関係なく溶岩を解かす。 

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