Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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 この話を作ったのは、MH4情報をまだ詳しく知らなかった頃です。そしてMH4に登場した「地底洞窟」・・・セ、セーフ!(汗)
 この時は自分の妄想をぶつけるということで、自分が想像した種族なども書いていました。いやぁ、あの頃はやんちゃしました(苦笑)
 来週にはピクシブで応募して執筆した、読者様のモンハン妄想を載せたエキストラを投稿する予定です。
 楽しんでもらえれば幸いです。


Extra2:「地下世界」

 近年になって世界中の学者達の注目が、とある島に留まっていた。

 オニムシャザザミが住処とし牛耳っていた楽園の島、【楽土】である。

 

 豊かな自然と、オニムシャザザミが独占していたが故の穏やかな生態系を持つ小さな孤島。

 その島には太古より、一匹の絶対強者のみが島の恵みを牛耳るという伝統が続いていた。

 オニムシャザザミが背負っている頭蓋骨……太古の頃の覇竜がその始まりではないかと考えられている。

 現時点ではオニムシャザザミに打ち勝った、二名のハンターが島の所有権を握っている。

 

 そんな楽土は、豊富な恵みだけでなく、考古学的遺産や新発見も数多く発見されている。

 まるで海竜種に守られているかのように海に眠っている海底都市がその内の一つなのだが……。

 ここ最近とある物が発見され、人類はまだ見ぬ世界の断片を見ることとなった―――謎の鉱物が発見されたのである。

 

 それは竜頭の上顎のようにも巨大な鋏のようにも見える、非常に大きくて硬質な黒い鉱石。

 その硬度や形状は、風化や流水といった自然の力では再現不可能とされており、多くの謎を呼んでいる。

 ある学者は見た通り竜の甲殻や蟹の鋏だと説き、ある学者は古代技術によって造られた物ではないかと説いた。

 だが、前者は硬すぎるし重いから生物には無理だと告げ、後者は何に使うんだと反論した。

 

 

 しかし、人々は大事な所を見落としている。元々楽土の地上は狭く、オニムシャザザミ専用のフィールドと小さな山、それを囲むようにして森が並ぶだけ。

 草食種や小型の肉食種が生息しているとはいえ、何故大型のモンスターがさほど存在していないのか。

 

 強者一匹が地上を独占していたという太古からの歴史の裏にある事実―――地上の支配者を恐れたモンスター達は、楽土の地下深くにまで逃げ出し、適応したのである。

 それこそが、地上という浅い世界で生きてきた者には想定もつかない、【楽土】のもう一つの世界。

 

 

 それが【地下世界】である。

 

 

 地下世界とは、元々は地中掘削能力に特化した巨大モンスターが掘って出来た穴だとされている。

 そのモンスターは大昔に滅んでしまったが、そこは新たなフィールドとして地下に存在するようになった。

 

 モンスターが掘ったとは思えない程に広いが、トンネルらしくうねりと高低差が若干生じている。

 太陽の届かない地下ではあるが、光蟲やヒカリダケ、それらによって光るライトクリスタルが密かに照らす。

 徐々に下へと向かっていく洞窟の先にあるのは、薄い岩盤から漏れた海水によって出来た地底湖。

 その水面下には不気味に光る魚影が幾つか映っているが……これはまた後ほどに紹介することになるだろう。

 

 この地下世界の生態系は、地上から切り離されたことで、独特の進化を遂げたモンスターが多数存在している。

 今回は、知られざる地底のモンスター達の一部をご紹介するとしよう。

 

 

 

 今、洞窟の至る箇所に生えている苔を齧っているモンスターが居た。

 そのモンスターの体は、奇妙なことに鱗も殻も無ければ、皮膚ですらない。

 ギギネブラやフルフルも硬い殻を持たないが、ブヨブヨとした柔らかな皮ぐらいはある。

 

 だが、このモンスターには体を守る物がこれっぽっちもない。

 白くて柔らかな、しかし蛍光物質によって薄っすらと紫色に輝いている不気味な生物。

 

 

 地上では滅多に見られないであろうモンスター……【軟体種(なんたいしゅ)】である。

 

 

 ここまでくれば解かると思うが、そのモンスターは巨大なナメクジのようなモンスターである。

 大きさはブルファンゴほどで、ぬるぬるとした粘液を引きずって壁や地面を渡り歩き、苔を食らっている。

 特徴的なのは、体の大きさに釣り合わない小さな角。とてもではないが攻撃や防御に使えない程に小さい。

 このモンスターの名は『ムール』。またの名を『巻角軟(カンカクナン)』。元は海に生息する貝の仲間で、角のような物は、かつて巻貝だった頃の名残だ。

 貝である故、柔らかな体はとても美味しいとされている。しかも毒性も無い。

 そんなモンスターは、地上で言う所のアプトノスポジション。よって彼も、彼らを食物とするモンスターに襲われる定めを背負っていた。

 

 

 

 今、ムールの後方の壁から何かが突き出てきた。柔らかな岩盤はたちどころに崩れていき、そこから一匹のモンスターが這い出てくる。

 

 もし明るみの下で姿を現したのなら、その姿はアオアシラに近い物を感じるだろう。

 確かにこのモンスターもアオアシラやウルクススと同じ牙獣種にあたるが、やはり生態系故の違いがはっきりとあった。

 太い腕の先には大きく太い爪が生えており、背にはハリネズミのように鋭い棘がびっしりと並んでいた。

 

 モグラとクマを合体したようなこのモンスターの名は『穴倉獣(アナグラジュウ)モゲラドス』。

 洞窟や地面の下を主な縄張りとした、地中を掘って暮らす能力に特化したモンスターである。

 

 スンスンと特徴的な鼻を嗅ぎ分ければ、すぐそこで逃げようとしているムールの存在を確認した。

 ムールは逃げようとするものの、見た目通りノロノロと地面をゆっくりと這うしかなかった。

 襲い掛かるモゲラドスの爪がムールの体に食い込み、ガッチリと掴んでから白い肉に齧り付く。

 すると、ムールの肉に食いついたモゲラドスの口周りが発光し、独特的な臭いが鼻に襲い掛かってきた。

 臭いが気になるものの、モゲラドスは食事を止めない。どうやらかなり腹ペコだったようだ。

 

 しかし、ただ食われるだけのムールではない。モゲラドスが食し、口周りに己の体液である発光液がついたことが反撃の合図だ。

 何せその体液は、モゲラドスにある目印を与える為のものなのだから。

 

 

 

 天井でキィキィという鳴き声が聞こえてくる。モゲラドスが食事に夢中なのをいい事に、それらは天井から飛び降りてくる。

 

 無数の白い鳥のような、シャギィほどの大きさを持つモンスター。

 白い鳥と聞くと平和のイメージを受けるだろうが、この鳥はそのイメージとは程遠い外見をしている。

 細かい鱗が並ぶ蛇のような皮、鋭い鉤爪が生えた蝙蝠のような皮膜の翼、大きな尾羽には翼爪と同じ爪がズラリと並んでいる。

 そんな鋭い印象を持つ小型モンスターが、十数匹の群を率いてモゲラドスの頭上を飛び回っている。

 

 このモンスターの名は『キュライア』。別名は『暗竜(アンリュウ)』。ランポスやジャギィといった、群を成して生活する鳥竜種の仲間だ。

 

 そんなキュライアがこぞってモゲラドスに襲い掛かるのは、ムールの体液が付着しているからだ。

 キュライアは超音波で暗い空間を探知して地下に適応しているが、嗅覚も鋭い。キュライア達はムールの体液を目印にして、より正確にモンスターを補足することができる。

 だからこそキュライア達は、主食である血を舐め取るべく、集団でモゲラドスの体に傷をつけに襲い掛かる。

 

 ちなみに半分ほど喰われてしまったムールだが、平然とこの場を逃げ出していた。

 軟体種は高い再生能力を持っている為、殻に守られた臓器と頭部さえあれば、一週間もしない内に全身を再生できる。

 高い再生能力と、脊髄動物には無い独特な生態こそが、軟体種の一番の特徴なのだ。

 

 

 もちろん、軟体種の力はそれだけに留まらない。

 

 

―コツコツ、コツコツ

 

 

 何か硬いものを叩くような小さい音がする。

 

 

―コツコツ、コツコツ

 

 

 その音は、着実にモゲラドスの元へと近づいてくる。

 音に敏感なはずのモゲラドスだが、キュライアの相手に夢中な為、まったく気づいていない

 しかもムールの体液は臭みが強く、モゲラドスの優れた嗅覚を鈍らせているのだ。

 

 しかしモゲラドスよりも感度の高い聴覚を持つキュライア達はそれに気付き、天井へと逃げる。

 モゲラドスが首を傾げて逃げたキュライア達を見送るが、既に遅かった。

 

 

 ここで唐突だが、冒頭にあった謎の鉱物について話そう。

 人々はあれを竜の上あごだの甲殻種の鋏だと騒いでいるが……実はどれも外れなのだ。

 火打ち石のような成分が含まれたあの物質は、ある生物が生み出した「殻」に過ぎない。

 

 その殻の持ち主こそが……モゲラドスの背後に存在している大型の軟体種である。

 かの潜口竜ハプルポッカの口並の大きさを持つ、黒くて大きな口のような殻。

 コツコツと地面や壁を叩くことで地形や障害物を理解する、センサーのように進化した棘。

 そしてムールと同じ白く柔らかな体。殻と棘が目立つがこれらは背中で、頭部は反対側にあるのが特徴。

 

 今、竜頭殻が開き、モゲラドスの頭上にヌルヌルしたものを吐き出す。

 モゲラドスがそれに気づいて振り向こうとするが、そのヌルヌスした液によって足を滑らせ転倒してしまった。

 その隙にムールが逃げ出し、火打石の塊のような殻が大きく口を開き……。

 

 

―ガキン、ボウッ!!

 

 

 勢いよく閉じたと同時に発火。

 

 さきほど吐かれた、引火性が非常に強い体液を伝ってモゲラドスと自身を高熱の炎に包み込む。

 モゲラドスは苦しみもがくが、耐熱性の高い肉質を持つこのモンスターは炎を纏っても平然としている。

 逃げ出そうとするモゲラドスを前に、ゆっくりと持ち上げていた殻を振り落とす。

 重く硬い一撃は、高熱を帯びて苦しんでいたモゲラドスにトドメを刺す形となって絶命。

 

 炎を纏う軟体種……『炎殻軟(エンカクナン)ボルヌゥ』。

 ボルヌゥはその身を炎に包んだまま、ゆっくりと焼けた肉を消化しつつ、それを食すのだった。

 

 

 

 未だ誰もその生態を確かめたことが無い地下の世界……そこには、地上に暮らす人間が予想もできない、未知なるモンスター達が潜んでいるのである。

 

 

 

―ゴオオオオォォォォォォォ!!!!

 

 

 

 例えば……そう、ボルヌゥも逃げ出す程の、洞窟全てを揺るがす大咆哮を放つモンスターとか。

 

 

 

―完―




 軟体種
 自ら骨を除して柔らかさによる防衛や遁走に特化したモンスター。
 肉質が極端に柔らかい上に足がとても遅いが、異常なタフネスと再生能力を誇る。
 地上では殆ど姿を見せず、独特的な生態系を築く為とても珍しいとされている。

 巻角軟ムール(ムール貝から)
 楽土の地下世界に生息している軟体種。モチーフはカタツムリ。
 元々は貝の仲間で、海水の地底湖から這い出て進化したものと考えられている。
 唯一の武器は尖った貝だが、真価はどんな狭い隙間にでも潜り込んで逃げる術。

 炎殻軟ボルヌウ(擬音のボウボウヌルヌルから)
 楽土の地下世界に生息している大型の軟体種。モチーフはカタツムリ。
 竜頭のような巨大殻とセンサー代わりの棘が目立つが、実は全て背に当たる部分である。
 柔らかな体からは常に油が流れており、爪を鳴らすことで発火、火炎攻撃を繰り出す。

 穴倉獣モゲラドス(モグラっぽい名前にしてみた)
 楽土の地下世界に生息している大型の牙獣種。モチーフはハリモグラ。
 アオアシラに近い骨格を持ち、全身を針のような棘で覆われ、鋭い爪が生えている。
 地中を掘って生活している為に聴覚と嗅覚が発達しており、急な音や刺激臭に弱い。

 暗竜キュライア(ドラ「キュラ」とヴァンパ「イア」の組合せ)
 楽土の地下世界に生息している、群を成す鳥竜種。モチーフはオウム+コウモリ。
 ランポスと同じく群れる習性があるが、彼らは血液を主な食料としている。
 超音波で獲物を探し出す能力を持ち、大型のリーダー格は脳を揺らし気絶させる怪音波を発する。

 大声の主は内緒です(コラ)

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