Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

22 / 63
思い出してそのまま投稿してみました。
今回のテーマは「イャンクックの誕生から巣立ちまでの記録」です。
とある冒険家がイャンクックの巣を見つけ、観察するというものです。
モチロン全て作者の妄想ですが、楽しんでいただければ幸いです。


Extra4:「イャンクック成長記録」

序章:「我輩について」

 

我輩は探検家である。名は秘密だ。その方がカッコいいと信じて。

 

我輩はモンスターの探求者でもある。モンスターの生態を観察し、記すのが我輩の趣味だ。

そしてこの観察日記を誰かに見てもらい、知って欲しいのである。

モンスターが如何にして生き、育ち、どのような力を持ってこの自然界に住まうのかを。

 

今回もまた、我輩の努力と忍耐の結晶を披露しようと思う。

読者の皆様よ、モンスターの生態と我輩の勇姿を、じっくりと読んでくれたまえ。

 

 

――――

 

 

第一章:「発見!怪鳥の巣!」

 

 我輩は密林にいる。理由は秘密だ。決して厳選キノコを探しに行って迷った訳はない。

 我輩はエリア8……天井に穴が空いた薄暗い洞窟にて、ある物を発見した。

 なんと、イャンクックの卵が乗っかった巣を発見したのである!長く探検家をしている我輩でも、これは奇跡的な発見をしたと思ったのである。

 まぁ、今はモンスターの繁殖期だからこそ、こうして見つかったのであろうが。

 

 以前イャンガルルガの巣を目撃したことがあるが、イャンクックは卵を6個ほど産むらしい。

 イャンガルルガの場合は3つであった。最も、一匹一匹が生まれてから既に好戦的かつ割と強いで問題なかろう。

 ちなみに我輩、子供のイャンガルルガに追いかけられたことがあったが……幼少だが人間でも厳しいだろう。

 

 まぁ、それは置いておくとしよう。

 ハンターならご存知の方も多いだろうが、イャンクックは大変臆病な鳥竜種で有名。

 その警戒心は中々に優れており、滅多に巣を作らず、作ったとしても見つけづらい場所に巣があるという。

 人間の目ではまず巣は見つけられないというが……これは非常に幸運であるな!さすが我輩!

 

 天井の穴からイャンクックの姿が見えたので、我輩は骨の山に埋もれて隠れるとする。

 フフフ……我輩の隠蔽術は、臆病で警戒心の強いイャンクックの目も誤魔化せるほどに完璧なのだ!

 

 そして親を待っていたかのように卵にヒビが入り、一斉に生まれたではないか。

 いやぁ~、あの時の雛達は可愛らしかったぞ。そんな光景を独占できた我輩はいつだって幸せ者よ。ワッハッハ。

 

 さて、せっかくの発見だ。我輩はいつものように、このイャンクックの雛達の成長を見守るとしよう。

 

 

――――

 

 

第二章:「雛の初日」

 

 生まれたての雛は体が弱く、よちよちと歩こうとして自分から転ぶほどに危なっかしい。

 そんな雛を巣の外に出さないよう、親のイャンクックが嘴で行く先を遮り、巣に押し返す。それを六匹もやらなければいけないのだから、親は大変であるなぁ。

 

 すると今度は空から別のイャンクックが飛来してきた。大きさからして雄だと思われる。

 雄は着地すると大きな嘴を開き、中にある磨り潰した餌を雛に与える。雛の餌は磨り潰して与えるのだな。

 そして今度は雌が飛び立ち、空へと昇って行った。どうやら交代制らしい。

 

 ここで我輩は、餌を与えるイャンクックの嘴から何かが落ちるのを見た。それは千切れた火炎草であった。

 これを見て我輩は、仮説とはいえ、あることを理解したのだ。

 イャンクックは餌であるミミズに火炎草を加え、それを磨り潰して混ぜた物を雛に与える。

 幼少の頃からそうして火炎草を与えることで火炎液が蓄積され、炎を吐けるようになるわけであるな。

 なるほど、こうして火炎草の味も覚えさせれば、大人になった頃に火炎草を蓄える習性を見につけるわけか。中々に賢い。

 

 イャンガルルガも同じ方法で生まれたての雛に餌をやっていたし、この説は強いであるな。

 そういえばイャンガルルガの餌には火炎草とニトロダケを加えておったな。確かあれらは……なるほど、あんなブレスを吐けるのは爆薬が入っているからであるか。

 鳥竜種とは実に賢い生き物よ……さて、我輩もこっそり抜け出してから昼食にしよう。

 

 

――――

 

 

第三章:「雛の成長」

 

 つい先ほど、我輩はピンチを迎えた。

 いや、親が襲い掛かってきたとか、雛を狙うランポスの群れに襲われたというわけではない。

 大きくなって歩けるようになったイャンクックの雛達に囲まれ突かれまくったのだ。

 

 初日から随分と立ったが、子供とはいえ、今の雛はランポス並の大きさになった。

 それに加えて嘴も立派で、軽く突かれるだけでも殴られたような痛みが生ずるのだ……。

 モンスターに限らず、生物の幼少期ほど手加減を知らぬ者は無いと、我輩は常々思う。

 

 だが、可愛い物を許すのが我輩だ!

 このやんちゃっぷりと、適度な大きさがたまらなく可愛いのだ。クック先生愛好家が見たら涎モノ間違いなし。

 モンスターの幼少期を幾度と無く拝んだ我輩ならではの特権という奴だ。羨ましかろう。

 

 さて、そんな雛達を振り切り、帰ってきた親を前にして身を隠す。親は雛が成長するにつれて、餌を上げた後で遊ぶことが多くなる。

 追いかけっこや親対子の喧嘩ごっこをすることで、足腰や嘴を鍛えるようであるな。

 

 また好奇心も旺盛になり、小さな羽虫を追いかけたり、骨の山を漁るなどして遊ぶ。

 この時はなるべく親が居てやり、危険なものと大丈夫なものを区別させてやるのだ。

 雛がランポスに近づけばそれを阻んで守ったり、毒キノコを食べようとした雛を止めるなど、中々に面倒見が良い。

 

 イャンガルルガの場合は……なんというか、喧嘩ばかりなのである。

 わざと親がランポスを誘導させてそれを子と戦わせ、戦闘意欲を高めるようなのだ。

 しかも親が直々に喧嘩をすれば子は必ず眼を狙うし……恐ろしいものである。

 それでいて一応手加減をしたり、戦い方を直に教えるなど、ただ狂暴なだけではないことを物語っていた。

 

 同じ鳥竜種、それもイャンの名を冠する者同士とはいえ、随分と違うものだと感じさせる。

 

 

――――

 

 

第四章:「雛の食事」

 

 ここで我輩が見て来て興味が沸いたのは、親クックの餌の与え方である。

 生き物にとって食事は大切である。そこでクック達は、餌の与え方にある工夫を施しているのだ。

 雛のときは、ミミズを細かく磨り潰し、そこに火炎草も混ぜて食べる。そして大きくなるとミミズをそのまま与え、火炎草を与えればそのまま食べるようになる。

 

 ここからが食事の与え方に面白みがある。どう面白いのかといえば、大きくなるにつれて餌が変わり、意図が違ってくるのだ。

 まずはその顎で掘った土。土といっても中にミミズが入っているのだがな、雛達はその土の中からミミズを取り出す為に懸命に顎で掘るのである。

 こうすることで土を顎で掘ってミミズを見つけ出す訓練をするのだ。中々に大変そうだ。

 

 次に生きた光蟲。これは飛んでいた物を嘴に閉じ込めたようであるな。

 これを雛の前でばら撒くことで、それを捕まえて食べる為に雛が走り回るのだ。足腰を鍛える訓練に繋がり、また飛ぶ虫を捕らえる練習にもなる。

 さすがはイャンクック先生。無駄の無い教え方であるな。先生の二つ名は伊達や酔狂ではない……なんか違うような気がするが、まぁ良いとしよう。

 

 イャンガルルガも同じようなものなのだが……餌がカンタロスと厳しいのだ。

 カンタロスといえば飛んで跳ねて突き刺してくる甲虫種。雛の相手にはキツいはずだが……。

 しかし実戦もかねているので、雛は全力で戦って食に有り付くのだ。逞しいものである。

 

 ちなみに我輩は食えないぞ?だからクックもガルルガも雛のうちから我輩を喰らおうとするでない。

 あ、いや、大きくなっても喰わないで欲しいんだけどね……。

 

 

――――

 

 

第五章:「雛と逃走」

 

 恐らく今回の観察記録の中で最も危険な日だっただろう。

 何せ空の王者ことリオレオスが巣に襲ってきたのだから。しかも気が立っていたし。

 我輩は隠れていたので何とか難を逃れたが、イャンクックとその雛達が目をつけられてしまった。

 眼前には威嚇するリオレウス、背後には巣と雛達……絶体絶命のピンチである。

 

 それでもイャンクックは逃げるのだ。雛達を連れて。

 連れて行く際、なんと嘴に雛をギュウギュウに詰め込むという荒業を披露したのだ。

 大きな嘴がこんな所でも役に立つとは。おかげでリオレウスから逃げ出すことに成功した。

 

 ちなみに我輩、この時はひたすら骨の山の下で息を潜めていたのである。

 この時は凄く怖かったぞ……我輩の真上でイライラしているリオレウスがおったのだから。

 我輩の隠蔽術が無ければ即刻お食事にされるところであったわ……けどやっぱりチョー怖かった!こんな我輩を褒め称えてもいいのだぞ?あて先はいつもの通りにな。

 

 リオレオスが去っていった後、イャンクック達が帰ってきた。さてさて、あの火竜が現れた以上、どうすることやら……。

 

 イャンガルルガの場合だったら、問答無用で攻撃し、逆に追い返す。恐るべし黒狼鳥。

 この時の雛達は親と火竜の戦いをガン見して学んでおったぞ……やっぱり逞しい奴らであったな。

 

 

――――

 

 

第六章:「雛の巣立ち」

 

 さて、リオレウスが現れ、日々怯える生活を送ることになってしまったイャンクック達。

 しかし雛達も、親よりも一回り小さい程度に成長し、外を元気よく走れるようになった。

 

 そして……頃合だったらしく、今日で巣立ちの時を迎えたのだ。

 

 晴れ渡る青空の下、イャンクックとその雛達が歩いている。

 我輩は草むらに変装していて後をつけている。慎重に慎重を重ねたので無問題だ。

 

 まずは親が空を飛ぶ。この時、雛達はまだ飛べず、親を見送る形となる。

 しかし親は空の上から雛達を呼びかけ、飛ぶよう促している。雛達は戸惑っているが……。

 

 この時、我輩の第六感が囁いたのである。危機が迫っていると。我輩は咄嗟に地面に潜り、潜った直後に地面が揺れたのであった。

 揺れが収まった後、何事かと地面から顔を出せば……あのリオレウスが走っていたのである。

 雛達を狙って走るリオレウスに対し、雛達は散り散りになって逃げ惑っていた。

 空を見上げればイャンクックが心配そうに空を周回しているが、やはりリオレウスに立ち向かう勇気は無い様子。

 

 すると、走っている内に理解したのか、次々と雛達が空へ飛んでいったではないか!

 流石に強敵が追いかけてきたりしたら、必死になって飛んで逃げたくもなるだろうな。

 リオレウスも後を追うが、散開して逃げた連中を追いかけるのは面倒だったらしく、諦めて降下。

 

 こうして雛達は、親の後を追わず、各々の行きたい所へと飛んでいった。

 その姿を見上げていた我輩は、どことなく寂しさを覚えたのだった……元気でな、未来の怪鳥達よ。

 この後、我輩は苛立っていたリオレウスの矛先を向けられてしまい、逃げる羽目に。

 くそう、なにも我輩に八つ当たりすることないではないか!おかげで我輩の自慢の毛が焦げしまったわ!

 

 

――――

 

 

最終章:「怪鳥観察記を振り返って」

 

 偶然にもイャンクックの巣を見つけ、雛達の成長を見守った我輩。

 よちよちと歩く姿やはしゃぐ姿など可愛らしい所を多々目撃できて、我輩感激である。

 

 しかしそれだけではない。賢き鳥竜種の知恵をまた一つ見つけることができた。

 弱肉強食の世の中において、鳥竜種は下位に留まっている。飛竜種や牙獣種に比べると弱いからだ。

 だが、イャンガルルガもそうであったが、生き残る為の工夫を幼少の頃から授ける知恵が、彼らにはある。

 

 全てに言えることだと思うが、親にとって子とは可愛いいもの。逞しく育って欲しいと願うのは当然だろう。イャンクックの子育てはそんな愛情と願いで満ち溢れていた。

 それもただ優しくするだけではなく、幼少の頃からしっかりと育てる……母性を感じたのである。

 ちなみに、我輩は絶賛お嫁さん募集中なのである。まずは文通から初めてもよいのだぞ?

 

 さてさて、今回も我輩は良いものを拝めることができた。

 我輩的「ためになったモンスター成長期ベスト3」に入ること必須である。

 もし次もモンスターの巣を見つけたら、よほどの危険が無い限りは観察したいと思う。

 まぁ、我輩に掛かればどんな危険な状況下に置かれても観察できる自信はあるがな!

 

 では諸君、また会おう!

 

 

 

―怪鳥成長記・完―

 

 

 

・著者及び翻訳:アルハス=ヴィレンツ

・原作:ムツゴロー

 

 

――――

 

 

オマケ「我輩の真実」

 

「……とまぁ、こんな所である」

 

「ほぉほぉ、今回も実に興味深い話ですのぉ」

 

 いやはや、ムツゴロー殿の観察記録は、我々研究者によって興味深いモノばかりですじゃ。

 言語を翻訳するのが大変とはいえ、我々にとっては大変貴重な文献となる上、暇つぶしにもなる。流石じゃな。

 

「ではムツゴロー殿、今回も書籍化してもよろしいでしょうか?」

 

「うむ。よろしく頼むのである、アルハス殿」

 

 むしろ当然、と言わんばかりに胸を張るムツゴロー殿。

 さすがは現役の探検家。自信に満ち溢れていますなぁ。年寄りから見れば羨ましい限り。

 

 こうしてムツゴロー殿が観察記を記した後、それを我々学者や小説家が本として発行する。

 最初は学者向けの図鑑に記そうと思ったのですが、ムツゴロー殿がそうして欲しいと頼んできた。

 以来、小説家の手助けもあって売れ行きは上々。特にハンターに大人気ですじゃ。

 こうして「ムツゴローの観察記」は、世界中の人々に愛されるシリーズとなったのです。

 ちなみに売上の半分はワシら研究班に、半分はムツゴロー殿と仲間のアイルー達となっています。

 

「それでは我輩、これにて失礼するのである」

 

「なんと、もう行かれるのですか?少しぐらいゆっくりされては?」

 

「我輩は探検家である。ゆっくりするのも良いが、我輩は探検の方が良いのである」

 

「……そうですか。では、またいずれ」

 

「うむ。お主もお元気でな、アルハス殿」

 

 そういって大きなリュックサックを背負い、ワシに一礼してから去っていくムツゴロー殿。

 本当に探検がお好きなのですのぉ。今回も、ワシらに沢山のお土産を持ってきてくれましたし。

 

 それにしても……やはり種族を明かした方が良いと伝えておくべきかの?

 いくら格好付けの為とはいえ、ファンの大半がお主を人だと見ているようなのですよ?

 それでも変えないあたり、大層な頑固もんじゃの。お嫁さんが欲しい癖に。

 

 

 

 

 まったく、本当に変わったアイルーですのぉ。

 

 

 

 

―完―




人間だと思った?残念アイルーだよ!

wikiを参考にしてると思った?残念ほとんどが作者の妄想だよ!

後悔していないと思った?残念後悔と不安と恐怖でビクビクだよ!

長ったらしい後書きはやめようと思って勢いで書いたらこれだよ!すみませんでしたー!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。