Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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今回のテーマは「ペット扱いの白いガブラス」です。プーギーというよりホルク的な扱いかな?
ちなみに今回の話はペット扱いとは程遠いですが。
それと、今回のテーマはにじファン時代のリクエストです。にじファン世代のは次回で打ち止めにしなるかと。


part19:「白翼蛇の生態」

 ガブラスと呼ばれるモンスターがいる。

 飛竜種の仲間と考えられていたが、後にバルバレギルドが発見し新たな種族名となった「蛇竜種」に分類された小型モンスターだ。

 彼らは蛇のような身体に大きな翼を持ち、高い環境適応力と独特的なコミュニケーションを持って各地で群れを展開している。

 

 彼らは狡猾な知能も併せ持っており、大型モンスターの食べ残しである死肉や腐肉を狙うこともある。

 故に強大なモンスターの動向を観察し、その行き先にガブラスの群れが集結する習性があるのだ。

 現に記録では古龍種が襲来する前触れとして無数のガブラスの群れが目撃されており、この事から「災厄の使者」とも呼ばれることとなった。

 

 

 そんなガブラスを古くから飼い馴らしている民族がいるという。

 これは、その民族がどのようなものなのかを調べる為に旅立たった、ある研究者の手記である。

 

 

―――

 

 

●月×日・晴れ

 

 私はこの日、ある民族を訪れる為に寒冷地帯に赴くことになった。

 草原が広がっているが地平線には白銀の山々が見えており、顔に当たる風がとても冷たい。

 日差しは眩しいぐらいなのだが、やはり北風が厳しく、マフモフ装備でなければ凍死しそうだ。

 

 私がこの地域の付近にある村の人と一緒に赴くようになったのは、ある民族に会う為だ。

 私は近年になって確認された「蛇竜種」に関する研究をしており、主にガブラスを対象にしている。

 そんなガブラスを飼い馴らす民族が居ると友人のハンターから聞き入れ、是非とも見てみたいと思い、調査隊を組んで図書館を出た。

 

 そして伝手があるという村を訪れ、その民族を捜しているのだが……本当にこんな広大な草原に住んでいるのだろうか?

 聞けば遊牧民族で、狩りと移動を繰り返しながら生活していると聞いたが……む?

 

 ふと地面を見ると一瞬だけ影が通ったのを見たので、上を見上げてみる。

 そこには太陽の光に照らされた影が幾つも飛んでおり、ゆっくりと翼を広げて空を駆けている。

 

 その影の正体は……白いガブラスだった。

 

 白いガブラスの群れを走って追えば、その先にはガウシカに乗った人が数組あった。

 口元に添えられた笛らしき物でシャーシャーという音を鳴らし、白いガブラス達を誘導している。

 ガブラス達を持っていた止まり木らしき棒に留まらせた後、私達に近づいてきた。ここからは遠いはずだが、良い視力を持っている様子。

 

 彼らがガブラスを飼い馴らしている民族なのだろう。村から聞いた「白地に翼蛇竜の模様が描かれた民族衣装」を羽織っていた。

 凍て付く風が吹く草原に適応したのか、白い息を吐く彼らの衣装は暖かさそうで、身体の作りは女ですら丈夫そうだ。

 ガタイの良い彼らだが、遠くから来た我々が珍しいのか、直に打ち解け歓迎の言葉を頂いた。ありがたい。

 

 しかし恥ずかしい事に腹の音とクシャミを同時に放ってしまい、私は寒空の下で赤くなった。

 それでも村人は笑うことなく、歓迎するといって村へと案内してもらった。優しい人達だなぁと感慨深く思う。

 

 その日の夜、寒さを吹き飛ばす程の暖かなガウシカ肉の鍋と強い火酒を頂き、全身がポカポカになった。

 宴会の流れになったからか仲間も直に酔っ払ってしまったので、白いガブラスの調査は明日にするとしよう。

 

 

―――

 

 

△月□日・晴れ

 

 テントの入り口から漏れる光と風が私達を目覚めさせ、朝を告げる。

 昨夜は結構な量の酒を飲んだはずだが、多少の頭痛程度で済んでいる。私だけでなく、他の隊員もそうだった。

 朝早くから織物を縫う世話係から聞いた話では、寒い夜が酒で火照った身体を覚まし適温を保つことで安眠できるのだとか。

 流石は長きに渡り寒い地域に暮らしてきただけのことはある。

 

 さて、今日からは白いガブラスの生態と、彼らと共に暮らす民族について記していくとしよう。

 私は最初「飼い馴らす」と書いてあったのだが、観察の許可を頂く際、彼らの長はそれを訂正して欲しいと頼まれた。

 彼らにとって白いガブラス―ここからは普通にガブラスと呼ぼう―は長年を共にしてきた【仲間】なのだという。

 先ほどガブラスを入念に世話していた子供達といい、よほどガブラスに思いいれがあるようだ。

何はともあれ、まずは彼らとガブラスの成り立ちについて記そう。この話だけで朝から昼まで時間を潰してしまった。

 

 彼らの祖先は、かつて古龍種の襲撃を受け、故郷であった山を追い出された。

 本来なら自然の猛威そのものである古龍種を前にすれば滅びる可能性が高いが、彼らは生き延びることが出来た。

 その理由はガブラスにある。ガブラスは古来より災厄を告げる存在として恐れられているが、事前に災いを伝えてくれると考えることもできる。

 祖先はガブラスの特性を生かし、様々な事を調べることができた。

 群れがやってきた方角は古龍種襲来の方角を教え、群れの規模は地域に与える被害の規模を現す。

 半信半疑とはいえ、命あってこそ。全ての村人は予想される災害から逃れるべく、村から旅立った。

 そしてこの選択に間違いは無かった。驚異的な嵐が村を含めた山々を襲い、遠い彼方から見ても解るほどの被害が生じたのだ。

 

 そして逃げ出した村人の下に、数匹のガブラスが訪れていた。

 どうやらあの災害から逃れ、旅の途中で亡くなったアプトノスの子供の死骸の匂いを辿ってやって来たのだろう。

 この時、村長は提案した。彼らのおかげで我々は助かったのだ、我らは彼らと共に暮らせるのではないか?と。

 

 こうして村は新たな道……ガブラスを猟犬のように飼い馴らす遊牧民族の道を歩んだのだという。

 時には雪が降るこの寒冷地帯をガウシカに乗りながら移動を繰り返す内に、黒かったガブラスが白く染まったのだとか。

 そこで彼らは白くなったガブラス達を「白翼蛇(はくよくじゃ)」と名づけ、今もなおその血筋を絶やさずにいる。

 

 さて、彼らと白翼蛇の成り立ちは記した。次は狩りについて記そう。

 昼食を食べた後、私達は彼らの狩りを見る為にご一緒させてもらうことになった。

 ガウシカに乗った狩人達、そして狩人達の笛の音に従って飛び交うガブラス。これらが6組となって狩りを行う。

 

 彼らの主な獲物は、草原に生息するアプトノス。その中でも群から一番離れているアプトノスだけを狙うらしい。

 まずはなるべく大きな音を立てぬようガウシカに乗った狩人達が動き、三組が三角形を描くように群を囲む。

 残る三組は群から一番離れているアプトノスを狙いつつ、6匹のガブラス達を遠くの空へ置いておく。

 ちなみに我々は狩りの邪魔にならぬよう、さらに遠い所から観察している。ここからなら望遠鏡も要らないだろう。

 

 まずは三組が走りだし、ガブラスのような音が鳴る笛でアプトノス達を脅し、群をパニックにさせる。

 一方、群から一番離れていたアプトノスは別の三組に取り囲まれ、群から引き離すようにして走らせる。

 

 この時、群を追い回す三組が笛を鳴らしたことでガブラス達が誘導され、狩人達の下へと飛来する。

 飛来する際、大勢の群が逃げる様子と一匹だけ別方向へ行くアプトノスを見極め、ガブラス達は一匹だけの方へと向かっていく。

 そしてガブラス達は三組のガウシカ乗りと動きを合わせ、四方八方から毒液をお見舞いする。

 こうして執拗に追いかけ続けるだけでなく、ガウシカ乗りが前へ出ることでアプトノスを反転させ、集落の方へと走らせることも。

 

 やがてアプトノスはガブラスの毒と長距離の疾走により弱まり、地に伏せる。これにて狩りは終了だそうだ。

 この大きさならガブラス6匹が喰らいついても、集落の人々全員に配ることもできるだろう。

 ちなみにアプトノスの血肉に染み込んだ毒はどうするのかというと、毒抜きする技術があるので問題ないのだとか。

 

 こうして我々は、集落の人々と共に夕飯に与り、アプトノス肉の煮込み料理をありたがく頂くのだった。

 ガブラス達の世話は子供達が担当しており、夕食前に餌をやり終えているから大丈夫だとか。

 今宵も身体を温めるべく、暖かな料理と強い火酒を頂く。これが大変美味しく、フォークと酒が進むのだ。

 はぁ、明日もまた二日酔いに悩まされるのだろうか……止めないけど。

 

 

―――

 

 

◎月■日・曇り

 

 今日は大変だった。二日酔いを治して帰宅しようとした夕方頃になってリオレイアに襲われたのだ。

 それでも集落から見ればたまにあることなので、緊急事態とはいえ対応が手馴れている。

 子供達と老人は軽い素材で出来ているテントをたたみ、力のある女は赤子や動けない老人を抱えて避難し、男達は重いものをガウシカに積む。

 そして集落全員の狩人とガウシカ、そしてガブラス達がリオレイアを引きつけ、嫌がらせをするのだ。

 この嫌がらせというのがミソで、付かず離れずの距離を保ちつつ笛とガブラスの喉から放つ不快音でリオレイアを苦しめる。

 リオレイアが攻撃しようものなら離れ、散開し、それでもシューシューという不快音がリオレイアの鼓膜を刺激する。

 こうすることで集落と私達からリオレイアを遠ざけ、嫌がらせを続けることで追い払うのだ。

 

 やがてリオレイアは集落から遠ざかっていき、安全が確認される。

 そうすると人々は再びテントを建て直し、何事もなかったかのように集落が再建される。

 ガブラスを連れて狩人達が戻り、無事でよかったと互いに喜び合い、夕食の支度をする。逞しいものだと私は思った。

 

 本当は彼らと白翼蛇の暮しをもっと見ていたいのだが、彼らは四日毎にテントを畳み、草原を掛けるのだという。

 つまり明日になると民族の大移動が始まるのだ。私がついていくわけにもいかないので、さっさと自分の居場所に帰る事に。

 

 翌朝、人々から暖かく見送られ、我ら調査隊は帰還する。

 ガブラスの亡骸で作ったという、彼らが愛飲する強い火酒を土産にして。

 結局、白いガブラスについては通常種よりも賢く、人に慣れているということでしか解らなかった。

 なので、またの機会があれば、彼らの暮らしを再び見守りつつ、白いガブラスの生態について記そうと思う。

 

 

 

 モンスターは人間と敵対するだけではない。上手くすれば共存だってできる。

 それはアプトノスを原初に、様々な形で目撃することになるだろう。

 

 

 

 ……あれ?蛇竜種と関係ないことを書いているような?

 

 

 

―完―




ハーメルンのリクエスト消化はもう少し先になります。申し訳ありません。

ところで、モンスターハンターの醍醐味は大自然の弱肉強食ですが、人間が混ざってもいいかなとも思ってます。
……モンスターハンターデルシオンに踏み台転生者要素を入れようか悩んでたり(コラ)すみません無視しちゃってください。

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