Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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今回のオリジナルモンスターは、作者が選んだにしては珍しいタイプです。
ですが確実にいえます。このモンスターはある意味大型モンスターよりも厄介な奴です。

そんなモンスターハンターデルシオン4G第2弾。(虫嫌い以外は)お楽しみあれ。

9/13:勝手ながら文章を元に作者が描いたアイコンを挿絵に追加しました。


Extra7-3:「吸血虫の生態」(※挿絵あり)

 近日、見た事のないモンスターが遺跡平原にて大量に出没している。甲虫種と思われるが数が多過ぎるため、ギルドナイトに討伐を依頼。

 

 先日になって原生林にて未知のモンスター「グローディウス」を発見したばかりだというのに新たなモンスターが出てくるとは……バルバレギルドも大変である。

 とはいえ油断は出来ない。目撃情報によると小型の甲虫種との事だが、新種のモンスターが大量に出たとなれば一般のハンターには負担となりかねない。

 未知のモンスターの調査も兼ねている為、さっそくギルドナイトを派遣するよう決定するバルバレギルドであった。

 

 

 

―――

 

 遺跡平原にて謎の甲虫種モンスターが大量発生している。直ちに調査せよ。

 そう命じられたのが、片手剣使いのキキ、ヘヴィボウガン使いのファナ、太刀使いのポードロード、狩猟笛使いのエレイゼの四名だ。

 彼らは今、目の前の光景を目の当たりにして息を呑む。G級のリオレウスと対峙したときとは違った緊迫感を感じているからだ。

 

 そのモンスターは、甲虫種ランゴスタに酷似している。違いはストロー状の口があることか。

 ランゴスタよりも小柄なそのモンスターは小回りが利いており、ブナハブラのように緩急をつけて飛び回っている。

 このモンスターの見た目を一言で言えば「巨大な蚊のようなモンスター」に尽きる。

 

 吸血虫(キュウケツチュウ)カブラキートと呼ばれるようになるこのモンスターが、1エリアだけで数十匹も漂っていたのだ。

 

 大小様々な吸血虫が羽音を出しながら縦横無尽に飛び交う姿を目の当たりにすれば、歴戦を貫いてきたギルドナイトと言え一種の恐怖を感じてしまう。

 特に若い女性であるファナは実力こそあれど経験が浅い為、このような空飛ぶ甲虫種が大量にいる場面を目の当たりにして脂汗を書いているほどだ。

 

 しかもこの吸血虫、厄介な所がある。

 

「こいつらを野放しにしたら生態系が滅びかねん」

 

 長い髭を生やした老人ポードロードが緊張感を走らせつつ呟き、それに同調したファナを除く2人が同意するかのように頷く。

 このカブラキート、ランゴスタやブハナブラ以上の脅威があった。それは吸血虫の2つ名を得るが故の特徴にある。

 

 恐らくはカブラキート達に吸血されたであろう、干乾びた死体がそこらじゅうに転がっているからだ。

 あの大柄なアプトノスですら干物となって息絶え、ケルビに至っては骨と皮しか残っていないように見える。

 さらにはその死骸を目当てにやって来たであろうジャギィの死体までもが転がっており、無事なのは腐食した死体を貪るクンチュウとアルセルタスぐらいだ。

 硬い甲殻で身を守られた甲虫種は餌食にならないようだが、それ以外は問答無用で吸い取る性質を持つ様子。

 

 もしこの甲虫種が大繁殖しているとなれば、弱い獲物から片っ端に血を吸い、食物連鎖のバランスが崩れかねない。

 さらに人が大勢住まう集落や町に流れ込んでしまったら阿鼻叫喚の地獄絵図になりかけない。積極的に血を吸う習性がここまで厄介になるとは。

 

 そんな風に警戒していると、カブラキート達は既にギルドナイト4名を取り囲み、隙有らば飛び掛かろうと言わんばかりに狙いを定め出した。

 包囲されたとはいえ、相手は甲虫種。甲虫種嫌いなファナを除けば冷静に構えを取って戦闘準備に入る。

 リーダー格であろうポードロードがハンドサインで三人に指示を送り、特にファナに至っては「しっかりせんか」と激励を送り意識を取り戻させる。

 甲虫嫌いなファナだが、嫌いだからこそ甲虫種への対処は徹底したものだ。必ずや活躍してくれることだろう。

 

 

―さぁ、カブラキート退治だ!

 

 

 

―――

 

 カブラキート自体はランゴスタやブナハブラ同様に脆く、数匹程度では問題は無い。

 しかし厄介なのは吸血行為と、ギィギのように血液から毒液を分泌して吐き出すこと、何よりも数だ。

 ブナハブラも時には大発生することはあるが、このカブラキートはそれを上回るだけの繁殖性を有しているらしい。

 

 滑り出し自体は順調。エリア各地を漂うカブラキートの数を減らさんと移動しつつ駆逐を再開するギルドナイト達。

 そうやって討伐を繰り返す内に、分析や観察を得意とする片手剣使いの青年キキは徐々にカブラキートの特徴を見抜いていった。

 

 戦闘中に何人か吸血され、道中で他の生物に吸血されていくが、一匹程度なら大した量でないことが解った。

 どうやら吸血量は獲物の大きさによって変るらしく、摂取量の比率は変らない。ケルビだろうがアプトノスだろうが、1匹なら多少で済む。……干乾びたのは相手が大量発生したからだろうが。

 安心したものの、カブラキートは摂取した血液によって身体の作りが若干変化し、動きに差異があるようだ。

 人が吸えば生命力が足され、ケチャワチャの死体から吸えば攻撃力が足されと、吸血した対象によって能力が変動するらしい。

 微量ならば脆いものの、多種多様かつ大量に血液を摂取したカブラキートは異常なほどに大きくなり、下手をすると人間よりも大きい飛行虫という驚愕な姿に変貌するのだから怖い。

 

 だがそんな相手も、キキが片手剣で切り裂いて終わる。

 少々能力が変動した程度の甲虫種など、ギルドナイトの敵ではなかったからだ。

 まぁ血液を摂取されたり毒液を食らったりとこちら側の体力もスタミナも削られたので、割とギリギリな戦いでもあったが。

 

 大量発生したカブラキートの危険性。

 

 今回の狩猟で学んだ事を、ギルドナイトはバルバレギルドに報告するのだった。

 

 

 

 

 

 だが、彼らは知らない。

 

 カブラキートの群れは倒せても、カブラキートの爆発的な繁殖力により発した卵は隠されていたことに。

 

 

 

―完―




作者の描いた「吸血虫」はいかがだったでしょうか?
詳しいデータは活動報告「モンスターハンターデルシオン4G」をご覧ください。

吸血虫アイコン(作者描写)

【挿絵表示】

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