Monster Hunter Delusion【更新停止】 作:ヤトラ
そしたら遅くなっちゃった上に荒削りでした(汗)
9/15:誤字修正
11/14:後書きにて挿絵追加
11/20:誤字修正
今、バルバレギルドに緊急事態が発生している―――4つの地域で未知のモンスターが出没したという情報が入ったからだ。
未知のモンスターが各地で猛威を振っていると解っただけでも非常事態なのに、それが四箇所同時発生しているというのだからたまらない。
近日だけでも4種類もの新モンスターの存在を確認できたというのにこの追い込みよう。まるで仕込まれているかのようだ。
とはいえ、新種のモンスター……それもG級の可能性があると知ればギルドナイトを派遣せざるを得ない。
ギルドナイトも連日連夜の調査で響いているだろうが、ここで躊躇してしまって被害が拡大してからでは遅いのだ。
バルバレギルドは、『番いの蛇事件』以来から行方が解らなくなった1名を除くギルドナイト全員を出動させ、調査及び撃退を依頼する。
特に被害が大きいとされている天空山、『鉈蛇竜』が未だ潜んでいる可能性がある為に警戒区域と化している原生林へは細心の注意を払うべく、熟練者を呼び出す。
残る二箇所は砂漠と地底洞窟だが、地底洞窟は地形が把握されている為に3名を出すのだとか。
そしてギルドナイトが旅立った日の夜―――死亡していたと思われていたアークザットがボロボロの姿で帰還した。
―――「古龍種の影有り」と報告して。
―――
天空山に赴くギルドナイトは、太刀使いのポートロード・ランスのダイダロ・片手剣使いのキキ・ヘヴィボウガン使いのファナ。
ポートロードとダイダロの熟練者二名を連れたこのメンバーが赴く理由は、現在の天空山の惨状にあった。
4人のギルドナイトが駆けつけた頃には、天空山は大きく変わっていた。
報告にあったモンスターによるものなのか、大きく陥没した地面が各所にあったからだ。
炎や雷などによる焦げ痕は無く、まるでラージャンが豪腕によって地面を叩きつけたかのような跡。
シナト村の大僧正によると目撃したモンスターは細身であったというが、細身のモンスターがこんなことをするだろうか?
陥没跡を見つめながら考え込むギルドナイト達だが、狼の遠吠えのような叫びを聞いて我に返る。
エリア6は天空山の中でも一段と雷雲渦巻き雷鳴が響く場所。しかしこの遠吠えは明らかにここから聞こえてくるが……周囲を見渡しても影ですらない。
違う―――上にいる!
1人が見上げた先には、まるで重力を無視するかのように崖にしがみ付くモンスターの姿があり、こちらを睨みつけていた。
岩場に溶け込むような灰色の体、小さな耳、縦に平べったい尾、鋭角で細いシルエットを持つ牙竜種……大僧正の言っていた通りの姿だ。
その牙竜種は高い所から再び咆哮を轟かせ、密集していたからか、四肢に力を込めギルドナイト達の下へ跳び降りる。
咄嗟にギルドナイト達は散り散りに跳んだことで直撃こそ回避できたものの、牙竜種は空中でくるりと回転し、その勢いを持って前脚を振り落とす。
するとどうだ、細身だったにも関わらず、野太く鋭い爪が食い込んだ地面が陥没し、周囲の地面が隆起したではないか。
もう少し距離が短かったら、今頃は隆起した岩に体をぶつけていた頃だろう。四方で武器を身構えるギルドナイト達に戦慄が走る。
地面に食い込んだ前脚を引っこ抜き、再び咆哮。ジンオウガのような獣じみた声だがディアブロス並の音量を持つ為、4人は必死で耳を塞ぐ。
耳を塞ぐ中、キキは目敏く牙竜種の様子を見る。赤いオーラのようなものが灰色の全身に溢れ出ていたからだ。
何かあると睨んだキキは咆哮の余韻が止むと同時にギルドナイト全員に伝わるようなサインを送る―――「急いで離れて」と。
その挙動ゆえに狙いを定められたのか、牙竜種は正面を向き、僅かな距離だというのに其の場で跳躍。
その跳躍と同時に右へ跳ぶ中、牙竜種はクルリと回転しながら前脚を振り下ろし、地面に叩きつける。
―ドゴォンっ!
軽く跳躍しただけで先ほどのような衝撃が地面に襲い掛かり、再び地面が隆起し大振動を起こす。
跳んで正解だったが、獣竜種は間髪いれずに脚を引っこ抜き、構える。あの構えは―――ジンオウガの物と酷似していた。
跳んだ勢いを活かしそのまま前転。着地地点に牙竜種の前脚がめり込む。ハンター達の間で「ダイナミックお手」と呼ばれるものだ。
流石に連続で、というわけには行かず地面から脚を抜くのに時間がかかり、その間にヘヴィボウガンの弾丸が襲い掛かる。どうやら防御面は高くないようだ。
しかし剣士は違う。圧倒的なパワーにより繰り出される振動は近づけば隙を生じてしまい、比較的隙の少ない牙竜種に狙われかねないからだ。
キキもそれを理解したらしく、深く追求せず、攻撃が止めば即座に走って距離を取る。
―掛かって来い、ハンターども。
そう言っているかのように灰色の牙竜種――
―――
―地底洞窟のエリア8。
「どわっはぁぁぁぁ!?」
大剣を背負ったままクイードは横へ身を乗り出し、残る2名も各々の武器をしまって緊急回避を繰り出す。
直後、彼らが避けた事で壁に黄色い巨体が激突するが、身を捻ることで壁に吸い込まれるようにして潜っていく。
大きな穴を残して壁の奥へ消えたとはいえ、3人のギルドナイト達は警戒を怠らない。
何故なら、それは逃走ではなく、先ほどの
「あ、あの距離をひとっとびって、どんな脚してんのよアイツ!?」
とはいえ、先ほど信じられない光景を目の当たりにしたナフィックは荒々しく言う。冷静な彼女がここまで憤慨するのも珍しい。
だが無理も無いだろう。あのブラキディオスですら跳び越せないような距離を、先のモンスターは難なく飛び越えて壁に激突したのだから。
それを可能としたのは、先のモンスターの種にも関連していると思われる。
「来るよ!」
狩猟笛使いのエレイゼが叫ぶ。
地面が揺れ、ボコリと隆起する。揺れで一瞬動きが制限されるものの、解かれたと同時に各自前転して回避。
地面から這い出てきた巨大な鏃のような物が貫通し、やがて全身を引っ張り出す。
黄色い鱗で覆われた巨体。大きくて長い脚。毒液で紫色に染まった鏃のように鋭い先端。
一見すると氷を纏った時のザボアザギルにも似ているが、毒の煙が微量に漏れている、背中に生えた二対のイボが禍々しさを醸し出している。
G級にして新種と考えられる両生種は地面に四肢を落ち着かせた後、高らかに咆哮する。
ディアブロスのように鋭い大音量を前に、若きギルドナイト3名は耳を塞ぐしかなかった。
―――
―原生林のエリア10、すなわちアイルーの巣。
―キチキチ、キチキチ
「ダメだ!追ってきている!」
それまでは己の心音以外は吐息ですら聞こえない程に静かにしていたが、その音が聞こえた途端に1人の若きギルドナイトが声を荒げる。
腕の中でアイルー達を抑えていた3人のハンターは信じたくなかった音、そして見張り役を買ってくれた若者の言葉を聞いて力を抜き、アイルー達を手放した。
「くそ、アイルーの巣なら安全だと思ったのに!」
表面が軽く溶けている防具を纏ったギルドナイトが苛立ちをぶつけるように地面へ拳を叩きつける。
EXアーティアと呼ばれる、現在では最高クラスのはずの防具。それが酸によって溶けられ、篭手で包まれていた手が露出されていた。
―キチキチ、キチキチ
「す、すぐそこまで来ている!どうするんだ!?」
解毒したとはいえ猛毒の残滓に呻いていたギルドナイトの男が、近づいてくる音を耳にして慌て出す。
そんな彼の横では、つい先ほど麻痺が解かれたことで身を乗り出した女性のギルドナイトの姿が。
「逃げ道が無い以上は戦うしかないでしょ!?」
女性は身丈よりも大きなハンマーを担ぎ、脂汗の滲んだ額を拭ってからヘルムを被りなおす。その表情に冷静さは無く、焦りが浮かんでいた。
―ギチギチ、ギチギチ
近づいてくる音。女性のヤケクソのような宣言。これを前にして、3名のギルドナイトは黙って頷いた。
アイルー達は雰囲気に当てられ、安全でないと悟ったのか地中へと逃げ出す。彼らにとってはいい迷惑かもしれない。
そして狭くて通れないはずの穴を潜って、そのモンスターは姿を現した。
6本の重厚な脚。縦に広い胴体とそれに繋がった、触覚を生やす小さな頭。蟹に似た、しかし凶悪な形状を持つ鋏。
そして目を引くのが本体よりも長い尻尾。そこから伸びる丸っこい先端からは、ギルドナイト達を様々な症状で苦しめた毒が滲み出ている。
決して小さくないといえる身体をしておきながら、平たい形状を活かして入り込んできた蜘蛛のような大型モンスター。
こんな狭い場所でこのモンスターと遭遇したギルドナイトは武器を構えるも、表情には怯えが映っていた。
―――
―砂漠。
「ひ、引き寄せられる……っ!」
「手をのばして!さぁ!」
「早く粘菌を取るんだ!」
「出来れば苦労はしねぇ!とにかく何かにしがみ付け!」
4人のギルドナイトは灼熱の日差しの下、必死に岩や木にしがみ付いていた。
原因は防具にこびり付いている粘液だろう。砂に混じった砂鉄が吸い寄せられ、そして体―正確には粘菌がついた防具―が意図せず引っ張られていく。
砂に脚をめり込ませ引き寄せる力を抑えるも動けずに居る青年に腕を伸ばし、腕にしがみ付いた彼を持ち前の腕力で引き寄せ、同じ岩にしがみ付かせた。
彼女は無事にしがみついた青年を見てホッとしてから、これらの原因である、広い砂地の中央を陣取っているモンスターを睨みつける。
見た目や性質は砕竜ブラキディオスに酷似しているものの、そのモンスターは全くの別種に進化したのだと、長時間に渡って戦ったことでわかった。
ハンマーのように変形した頭部と腕部をこちらに向け、砂という砂から砂鉄と鉱石を、そして自分達に纏わりつく粘菌を引き寄せている。
「しかしなんてこった、これじゃまるで……!」
―旧大陸に姿を現すという極龍のようではないか。
そう言おうとしたギルドナイトだが、体に纏わりついていた引力が消えたことで、再び目の前に視線を向ける。
そこには砂鉄を固めたことで倍以上に大きくなった、ハンマーそのものとなった腕部を振り回す獣竜種の姿があった。
―――
雷鳴轟き、いつしか嵐が舞い込んだのか、天空山に激しい暴風と雷雨が襲い掛かる。
しかし、それでもギルドナイト達とエアトアルベの戦いは続いている。形勢は―――エアトアルベが優勢。
怪力の実を食して得たパワー、牙竜種特有の機動性、そしてパワーを活かした壁張りからの突進……ヒットアンドアウェイにパワーが加わることで強敵となる。
強敵であるという事もさながら、未知のG級、それも新種となっては冷静にかつ確実に戦うことになり、タフで冷静なギルドナイト達も手を拱いていた。
しかしギルドナイトによって着実に追い詰められている事も事実で、エアトアルベも徐々に息切れやスタミナ切れ、そして怪力の実による効果は消えつつある。
それを危惧したか、このまま仕留めてやろう、と意気込み四肢に力を込め―――停止する。
ゴウゴウと吹き荒れる風故に聞こえづらかったが、ギルドナイト達の耳にある音が聞こえてくる。
それは走っている音だ。雨脚に混ざって四足のモンスターが地面を蹴り、大地を駆ける音。
その音が近づくに連れて、エアトアルベは急に慌て出し、周囲を見渡し出した。何かに怯えているようだが、彼より強い強者が出ると解ったギルドナイトも当りを見渡す。
それは、風に乗って地を走るクシャルダオラ―――らしきモンスターだった。
鋼鉄の鱗ではなくリオレウスのようにザラザラした灰色の甲殻を身に纏い、翼があるのに地を蹴って走っている。
その古龍種は真っ先にエアトアルベに突っ込んだ。距離があったと思ったが、なんというスピードか。
跳躍して逃げようにも一気に首元を噛み付かれ、それどころか噛みついたまま巨体を引きずり走るという暴挙に出た。
あまりの事態に硬直したギルドナイト達を余所に、古龍種はエアトアルベを銜えたまま走り、崖へと飛ぶ。
大きな翼を広げ滑空するように飛び、そのままエアトアルベを離して落とす。翼を持たない牙竜種は呆気なく崖の底へと落ちていく―――もしかしたら崖にしがみ付いて助かるかもしれないが。
そのままUターンし、古龍種は地面に着地。雄雄しく翼を広げ、ゆっくりとした足取りでハンター達を見据える。
ギルドナイト達は先の戦いに加えこの嵐に晒されてさらに疲労しているのだ。足の速さもあって、もしかしたら逃げることですら難しいかもしれない。
しかし風を纏いて走る龍は、そんな事知ったことではない、と言っているかのように咆哮を轟かせる。
未知のG級の頂点―――Gの古龍種はギルドナイトの想像を上回る力を秘めているのだから。
―完―
ギルドナイトが弱いんやない!G級の新種が予想外に強かったからや!
未知のモンスターに挑むことは多くの失敗や犠牲が付き物だと私は思います(言い訳っぽくて残念)
そんなこんなで、モンハンデルシオンGはこれにて終了。贔屓が多いようですがお許しください。
楽しんでもらえたでしょうか?当選された方でなくても楽しめるよう、色々と描写を工夫してみましたが。
次も投稿してみたい!次こそは主役に!と願う方が多ければまた挑むかもしれません。
それまでは10月に発売予定の新作「モンスターハンター4G」を楽しみにしておきましょう(笑)
さぁ皆様、Gの世界はすぐそこです!楽しみに待っていましょう!
ではでは。
激震竜アイコン(作者描写)
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