Monster Hunter Delusion【更新停止】 作:ヤトラ
今回のテーマは「最小サイズを維持したディアブロス」です。
さっそく「インハーメルン2」で頂いたアイディアを採用いたしました。
設定ではモノブロスとありましたが都合によりディアブロスということにさせて頂きました(汗)
それと今回から活動報告で掲載したハンターが出てくる予定です。
1/25:一部文章変更
生きることは戦いだというが、自然界はまさにその通りだ。
縄張り争いや生存競争、恋の争いなど、何事にも争い事は付き物。植物からモンスターまで、様々な争いを繰り広げている。
そんなモンスター達にとって一番の戦いは何かといえば……食うことである。
生物が持つ三大欲求の1つである食欲を満たす為、草食だろうと肉食だろうと争う事がある。
草木が少なければ草食動物同士の縄張り争いが起こるし、弱者を喰らおうとして2匹の強者が争う事もある。
そう、例え縄張り争いと生存競争に勝てたとしても、食が得られなければ意味が無い。
沢山食べなければ大きくならない。縄張り争いより餌の競争に負けないことが重要だったりする。
とはいえ生きていれば儲けものと言う様に、生き延びてさえいればどうにかなることもある。
今回はその事例をお伝えしてみよう。
―――
旧砂漠でディアブロスの繁殖期を迎えた。
どこからやってきたか解らないが大量のディアブロスが旧砂漠に詰め込まれ、各所で恋のバトルを繰り広げているという。
このままでは人々が行き交えない所か、生態系のバランスが大きく崩れてしまう可能性もある。何事も偏ってはいけないのだ。
おこがましいかもしれないが、自然の調律を保つべく、ギルドはディアブロスの連続狩猟をいくつも発注する事を決意。
恐らく亜種を始め下位からG級と様々なディアブロスが混ざりこんでいると予想される為、様々なハンターに呼びかけるのだ。
そんなディアブロス連続狩猟のクエストを受けようと、2人のハンターが受付に行くのだが……。
「このクエストを受注したい」
「か、かひこまりました」
恐らく成り立てであろう若い受付嬢が怯える余り噛んでしまったが、2人は気にする事なく受注の判を押された依頼書を受け取る。
ガチャガチャとスキュラXシリーズとグラビドXシリーズを纏った体を歩かせ、一言二言交わしてから目的地へと向かう。
1人は、色黒にスキンヘッドのボディービルダーのような大男。
1人は、厳つい強面の男。相方より低いとはいえ背丈は高い方だ。
そんな2人がヘルムを被らずギルドを歩けば人々の不安と怯えを買い、様々な噂が勝手に広まっていく。
ヤの付く自営業だとか密猟ハンターじゃないかとかギルドナイトより怖いとか散々な事を言われるが、2人は諦めていた。
「俺達って損しているよな」
「理解者がいるだけありがたいと思えよ」
スキンヘッドのブローブが溜息混じりに吐いた言葉に、強面のガルドが同情して言う。
ブローブもガルドも、強面ではあるが気は優しい、顔で損をしているハンターなのだ。
彼らを理解してくれる知人がいるとはいえ、初見の人は大抵が悪者だ怖い人だと見た目で判断するが。
周囲の視線に慣れてしまった2人は気にする事なく、ディアブロスが募っているであろう旧砂漠へと向かうのだった。
―――
夜の旧砂漠。昼間は灼熱地獄と化していたが、夜は凍土のような寒冷地帯へと変貌する。
この日は風が止んでいるからか、月明かりの神秘さと無風故の静寂が合わさり、見慣れた景色が幻想的な印象を与える。
ディアブロスが各地をうろついているからかは解らないが、いつもはギャアギャアと騒がしい鳥竜種も獣人種も見当たらない。
その静寂を打ち消すのが―――何かと何かがぶつかり合うような轟音だ。
恐らくは各エリアのディアブロスが縄張り争いを繰り広げているのだろう。
時間差があるとはいえ耳を澄ませば右からも左からも、ドーン、ドーンと微かに聞こえてくる。
角をぶつけ合って争うというディアブロスの習性から成る解りやすい証拠だ。間違いなく4匹以上はいるだろう。
「待たせたな。準備完了だ」
ガシャン、と念入りに整備したガンランスを背に持ったガルドがブローブに声をかける。
「別に急かす必要はないんだぞ?」
ブローブはガルドがガンランスのチェックに余念がないことを理解している為、念のために確認する。
気配りの利くブローブに親指でサムズアップし、お互いに頷いた後にヘルムを被って出発する。
砂丘が広がるエリア1へ踏み出し―――ターゲットはすぐに発見された。
「小さいな」
「小せぇな」
同時に2人は思わず声に出した。それだけ驚愕の光景が広がっていたからだ。
物陰に隠れて見る先には2匹のディアブロスが縄張り争いを繰り広げていた。
しかし2匹の大きさが一目で解るほどに違っていた。何せ片方が大きすぎるのだから。
―いや違う。片方のディアブロスが小さすぎるのだ。
角竜ディアブロス。厳しい環境を生き抜いたその巨体は砂地を疾走し、あらゆる障害物を突進で粉砕する。
飛竜種とはいえ草食……それもサボテンという希少な植物を食べているとは思えぬ程の巨体を持ち、時にはリオレウスを優に超える事もある。
だがそのディアブロスの大きさは、相対するディアブロスの二分の一ほどだった。
傍から見れば親子が喧嘩しているようにしか見えないが、ハンターとしての知識が両者とも成熟した個体だと知らしめる。
恐らくは生き永らえこそしたものの、食糧が不足して成長する為の栄養が足りずに大きさを維持してしまったのだろう、
体の大きさはモンスターにとって最大の武器だと理解しているブローブとガルドは小さい方が負けると思っていたが……結果は違っていた。
大きなディアブロスが小さなディアブロスの突進を角で受け止めた直後、大きなディアブロスの角が圧し折れたではないか。
ディアブロスの縄張り争いで角を圧し折られた場合、問答無用で負けとなる。小さい方の威嚇を前に、大きい方は背を向けて立ち去っていく。
「マジかよ……」
「あんな小さい癖に」
日頃から「怖い顔している癖に」と言われている自分達を棚に上げ、小さなディアブロスの勝利に驚くブローブとガルド。
そのディアブロスは2人の存在に気付いたらしく、敵の居場所を確認しようと歩き出した。見つかるのも時間の問題だろう。
「音爆弾と罠は俺に任せろ。ガルドは気にせずガンランスで攻めてくれ」
「おう」
素早く納刀と抜刀が出来る太刀を持つブローブが補佐に周り、ガルドがガンランスの砲撃とガードで攻める。
相手は最小クラスとはいえ、倍も大きなディアブロスを返り討ちにした猛者だ。それに別の角竜が乱入する可能性も考慮しなければならない。
こちらを見つけたディアブロスが放つ咆哮を手と盾でしっかりガードし、2人の狩猟は始まった。
―――
食糧不足は自然の摂理では良くあることだ。特定の生物が繁殖すれば餌が不足し、飢餓で死ぬ事は道理だろう。
成長するには食べなければならない。だが時には少ないエネルギーを維持する為、大きくなる為のエネルギーを割く事もある。
エネルギーを節約するのも生物が持つ知恵であり、モンスターに最大サイズと最小サイズがある理由にもなる。
では小さいからといって弱くなるかといえば……否だ。
最大サイズの下位モンスターが最小サイズのG級モンスターに勝てはずがなく。
体も体重も桁違いなドボルベルグが自分よりも小さく軽いジンオウガに負けることだってある。
決定するのは見た目だけではなく、中身も大事だ。ティガレックスが力で制覇するように。ジンオウガが動きで制覇するように。
この小さなディアブロス―別名『最小の角竜』―もまた、小ささを活かした戦いを見出す。
2人は小さな角竜の動きに翻弄され続けていた。
「せい、やぁ!」
ガルドが突進し、その勢いに乗じてガンランスの切っ先を突き上げるも、走って避けられる。
「ぬん!」
避けた先で待ち構えていたブローブが素早く太刀を突くも、ピョンと軽く跳んで避け、そのまま走っていく。
そのまま角竜はUターンし、再び2人に向け突進。通常種とは比べ物にならない速度だった。
「ぬお……っ!」
盾だけで角を防げるほどに小さな一撃だが、そのパワーは今で受け止めた角竜らと変わりない。
グラビドXシリーズが持つガードに関連したスキルのおかげで吹っ飛びこそしないものの、砂に線を引くように押し出されてしまった。
「おおぉぉぉ!」
ガルドを突き飛ばして生じた隙を逃さずブローブが太刀を振り下ろすが、運悪く背甲に遮られて弾かれてしまう。
それを逃すまいと角竜はグルリと身を回転して尾を振り回し、ブローブを横から吹き飛ばす。
動きも早ければ小回りも良い。リーチは下がっているものの、パワーと防御力は通常種と変らず。
こんな体でも幾多の縄張り争いに勝利してきたらしい熟練された動きは、G級ハンター2人の度肝を抜いた。
小さな体を活かしつつ、ディアブロスの名に恥じぬパワーと突進力を持つ。小さな角竜は小さいなりの戦いを編み出したのだ。
数多のモンスターを狩猟してきた2人だが、この意外なまでの速度についていけず戸惑っていた。
普通のディアブロスとの戦闘経験が邪魔をしているのだろう。普段なら避ける防ぐなりできた攻撃も、この最小の角竜の速度が狂わせる。
もちろん潜行直後の音爆弾には弱いし、罠は普通に利く。とはいえアイテムは有限なのに対し、ディアブロスのスタミナは未だ尽きない。
確かに攻撃は通っている。このまま続ければ討伐はできるだろう……しかし。
「無理に攻める必要は無い!モドリ玉で退くぞ!」
「解った!」
ディアブロスが潜り出した直後を見計らってブローブが告げる。
ガンランスをしまったガルドはそれに合わせてブローブに駆け寄り、緑の煙が二人を包み込む。
2人の目的は連続狩猟……繁殖したディアブロスを2匹以上狩ることにある。
今後を考えれば小さなディアブロスという意外な難敵を相手にして体力とアイテムを消費するわけにはいかない。
割に合わない狩猟をせず、引き際を見極める。気配りが上手なブローブの判断力は流石と言えよう。
この後の2人は、出来る限り小さな角竜を避け、自分らが経験してきた通常のディアブロスと亜種を計3匹狩猟。
目的の討伐数を超えた2人は身の安全を考え、妙に遭遇する最小の角竜から逃げるように旧砂漠を脱出するのだった。
旧砂漠に出没するという最小の角竜―――その小さな体に騙されて吹っ飛ばされたハンターが後を絶たないという。
―完―
最小の角竜
複数の角竜が生息したことで餌が不足し、成熟個体でありながら最小サイズを維持した角竜。
縄張り争いに勝ち抜いてきたからか、小柄でありながら通常種以上の防御力とスピードを誇る。
本日のハンターさん(投稿感謝!)
ブローブさん(男・28歳・スキュラXシリーズの太刀使い)
ガルドさん(男・33歳・グラビドXシリーズのガンランス使い)
皆!見た目だけで判断しちゃダメだぞ!後、連続投稿はやめよう!(ぇ)
もう少し戦闘描写が増えるよう、コツコツ頑張りたいです……いつも言ってるじゃないか?御尤もです(汗)
ではでは。