Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

57 / 63
なんとか年末までに投稿できました!今回でデルシオン最後です。皆さんお待たせしました。

ネズミやGの何が怖いかって、増えて群れる事ですね。
そしてどこからともなく現れ狭い所へ隠れていく恐怖(ガクブル)


Extra8-4「孤島」

 ベルナ村の龍歴院は、モガ村の報告もあって、近日になって起こった孤島の異変を察知した。

 なんでも孤島の至る箇所に、ブナハブラともオルトロスとも違う、謎の甲虫種が大量発生しているのだという。

 その数は少なくても数十匹、多い所では百を優に越える数の甲虫種が犇き合っているというのだから恐ろしい。

 

 さらにはモガ村の村長ですら一度でしか見た事がないという、ギルドでは未発見の飛竜種まで発見されている。

 大量発生に便乗したのであろうその飛竜種は甲虫種を餌にしているが、その捕食が追いつかない程に甲虫種は増え続けている。

 

 未発見の飛竜種の生態調査と甲虫種大量発生の阻止を目的としたクエストを龍歴院が発注。

 持てる限りの知識と書物によって僅かながらに確認した「大甲虫(ダイコウチュウ)」なる存在が気になるが……置いておくとしよう。

 たかが甲虫種と侮り数で負けないよう、上位以上のハンター4人で構成するよう言いつけたのだが……。

 

 

 

―――

 

 孤島の夜。普段は大概のモンスターが寝静まっている時間なのだが、ここ最近はそうではない。

 孤島中に響き渡るのは、キィキィという奇怪な音。それらが全て一種類のモンスターが発生しているものだ。

 

 そのモンスターこそ、大量発生と同時に姿を見せた新種の甲虫種―「黒虫(コクチュウ)」アントスである。

 

 その姿は言ってしまえばオルタロスより大きな蟻そのもので、黒い甲殻に大きく発達した顎が特徴的だ。

 アントスはオルタロスに漏れず複数の固体で行動する甲虫種で、しかし肉類を得る為に他のモンスターを襲う事もある。

 

―そして獲物は草食種に限らず、時には襲い掛かってきたハンターですら相手にする。

 

 依頼の1つである謎の甲虫種を数多く討伐する為、リノプロスに群がるアントスに戦いを挑んだ4人のハンター。

 しかしながら彼らは問題があった―――彼らは「自分こそが世界の中心」と考えている転生者であった。

 たかが虫程度と安易に考え、それよりも自分以外の邪魔者が鬱陶しいからと喧嘩してばかり。

 

 そんなチームワークのチの字も思い浮かばない彼らにとって、アントスの大群は予想以上に苦戦を強いられた。

 何せオルトロスとは比較的にすらならない、それこそ島中に犇く程の数を引き連れているのだ。

 重い武器を延々と振り回す怪力と莫大なスタミナがあろうとも、全てを凪払う暴風の魔法を唱えようとも、永遠に撃てるボウガンがあろうとも。

 次から次へと沸いてくる大量の甲虫達は、上下左右あらゆる所からハンターに襲い掛かってくる。

 

 ほんの僅かな隙と隙間に噛み付き、そこから生じた隙で別方向から噛み付き、さらに別の死角から……。

 全員が共通して強靭な肉体を得ていても、発達した顎に噛まれれば痛みを生じ、それが連鎖していき……。

 

 気付けばあっと言う間に体中をアントスの顎で噛まれ、身動きですら取れなくなっていた。

 武器を振るいたくても腕にしがみ付いた十数匹のアントスの重さに耐え切れず、吹き飛ばしたくても己にしがみ付くアントス達には当らない。

 

 ゲーム知識として考えている転生者ならこうは浮かんだかもしれない……「こいつらを産む女王を探し出せ」と。

 しかし、彼らを転生させた者が植えた潜在思考「弱者殲滅」がそれを許さず、群がるアントス達に苛立ちを覚え不毛な戦いを挑むことになった。

 彼らが油断さえ……いや「ゲーム知識」さえなければ、悪夢のような大増殖を繰り返し進撃する大群に恐れ、計画的になっていただろう。

 

 

 

 画して、転生者ハンター達は巨大な黒い群れに呑まれていく―――己の転生を呪いながら。

 

 

 

―――

 

 そんなハンター達とは違い、たった1匹でありながらアントス達の大群を前に生き延びているモンスターが居た。

 依頼書にもあった「新種の飛竜種の調査」に記されたモンスター……モガ村の村長が一度だけ見たという飛竜種である。

 

 その飛竜種は、所謂レウス骨格と呼ばれるオーソドックスな飛竜種としての姿を保っている。

 月光を反射する白い甲殻で身を包み、リオレウスやライゼクスと比べて長い首を持つ。

 特徴的なのは頭頂部に生えた白い角。光を蓄積する材質で出来ているのか、月明かりに負けないほどの光を放っていた。

 

 大きな翼を畳み、長い首を天に向けて伸ばす姿はまるで灯台―――故に二つ名は「灯竜(トウリュウ)」。名はクラソラス。

 

 クラソラスは孤島周辺を越えて海を渡ろうとしていたのだが偶然にもアントス達の大量発生を嗅ぎ付けたらしく、渡海の休憩も兼ねて餌を漁っていたのだ。

 夜行性である彼は夜に姿を現し、その独特的な生態によって甲虫種などを餌にしている。その様子を見てみよう。

 

 クラソラスは高い知能を持ち、餌としている甲虫種を侮ることは無い。

 アントス達の群れ具合を空から観察し、最も数が少ない群れに近づく為に静かに着地する。

 そしてクラソラスは発光性の頭角の光を強めて獲物を待つ。この時は翼を畳み、まるで灯台のように佇む。

 

 アントス達は光そのものだけでなく、光によって照らされたキノコを見つけることで自然とそちらへと足を運ぶ。

 餌や照らされた場所ばかり見てクラソラスそのものに注目することは少なく、アントス達は捕食者が居ると知らずに近づいていく。

 

 さぁさっそくキノコを頂戴しよう……とした直後、強烈な閃光がアントス達を包み込む。

 

 角の発光を強めたことで発生した閃光はアントス達を混乱させ、その隙に素早く首を動かして捕食。

 フルフルのようにとは行かないが、次々と混乱しているアントス達を喰らっていく。

 己に近づいたアントス達は瞬く間にクラソラスの胃の中に納まっていき、クラソラスは満足そうにゲップを1つ。

 

 他のエリアにいるであろうアントス達に気付かれない内に退散すべくクラソラスは後ろ脚に力を込め……地面が陥没。

 どうやらアントス達の巣穴の真上だったらしく、クラソラスはガラガラと崩れていく足場ごと飲み込まれていった。

 

 

 

―そして誰もいなくなった。

 

 

 

―――

 

 クラソラスが落ちた先は、運悪く巣の最深部へと続く巣穴だった。

 かなり深くまで撃墜したクラソラスは大怪我を負ってしまった。命が続くかですら怪しい程に。

 地上の光が届かないほどに深く暗いこの場所で、クラソラスはせめて周囲を見ようと角の光を頼る。

 

 

 彼の周囲には、地を敷くようにして蠢くアントスの大群。

 

 

 

 そして彼の眼前には崩竜に匹敵しかねない巨体を持つ――――超巨大な甲虫種の姿が。

 

 

 

―――

 

 結果的に、孤島の甲虫大量発生による被害は食い止められた。

 新たに派遣された別のハンター達によって甲虫種を毒攻撃や毒煙玉で確実に仕留め、徐々に数を減らしたのだ。

 もう1つの目的であった新種の飛竜種の発見は出来なかったが、飛竜種は行動範囲が広いので仕方ないだろう。

 

 ここで1つ妙なことがある―――あれだけ増殖していたアントス達の減りが早かったのだ。

 

 一時は島中を敷き詰めたように増えていたアントスが、毒属性持ちの武器を持っていたとはいえ、たった4人のハンターで減らせたのだ。

 先日派遣され死亡が確認したハンター達は、アントスの増殖元を絶ったのだろうか?という説があるが……謎のままである。

 

 

 他にも、アントス大量発生の前にはモガ村に響く程の大地震が起こり、討伐前にも一度同じ現象が起こっていたという。

 龍歴院では、記録に僅かに残された「大甲虫」が地中深くで移動しているのではないかと言われているが……全ては謎に終わる。

 

 

 

―そしてそれに合わせ、超常現象を引き起こす謎のハンターがパッタリと減ったという。

 

 

 

―完―

 




●簡易的紹介

名称:クラソラス
別名:灯竜
種族:飛竜種
レウス系統の骨格と光を蓄積し発光する頭角を持つ、首が長くて白い飛竜種。
夜行性で、昼間は太陽光が当る高台などで眠り、夜は発光した角に集まる甲虫種を発達した顎で食べる。
普段は大人しく、運が良ければ角の光を利用する様々なモンスター集まる幻想的な光景を見る事もできる。

名前:アントス
別名:黒甲虫
種族:甲虫種
近年になって大量発生した甲虫種。見た目は顎が発達した、オルタロスより大きめの蟻。
雑食性でキノコから腐肉と何でも食べるが、時には数十匹の群れで大きなモンスターを狩る事もある。
地底に巣穴を作り徐々に大きくしていく習性があり、その最深部には彼らの女王いるのではいかと学者が力説している。

名前:ラグアラントス
別名:大甲虫
種族:甲虫種
黒甲虫アントスの女王。甲虫種でありながら、かの崩竜に匹敵するのではないと思えるほどの巨躯を持つ。
長大な足を持って俊敏に動き、壁や天井を上るだけでなく弱点である腹と頭を遠ざけている。
最深部に居座り1日に何百といったアントスの卵を産む。実は大昔に一度発見されたのだが今では廃れている。

クラソラスは習性が面白かったです!光を利用した大人しい習性ってのが、弱者にも優しめのモンスターで魅力的で。
アントスとラグアラントスは前回のバルネイド同様、オーソドックスな昆虫系モンスターとしてビビっときました。

これでデルシオン「弱肉強食」は終了。
次回からは別の変異種やモンスター異種対決を書いていきたいですね。
またリクエスト募集などしてみますが、ひとまずは募集は控えてもらいます。

ではでは!来年もモンスターハンターを楽しみましょう!よろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。