Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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今回は活動報告に記載していた蛇竜種を採用させてもらいました。
特出している点は「水分補給を独自の方法で行う蛇竜種」です。
幾つか作者独自の設定や攻撃手段もあります。ご了承ください。


part35:「蛇竜種の章:棘蛇竜」

依頼名:水を枯らす蛇

 

 近日、旧砂漠の水辺の水位が減っているという報告を受けている。

 本格的な調査に向かったんだが、トゲだらけの蛇竜種に襲われて断念したんだ。

 原因はあの新種の蛇竜種かもしれない。ハンター殿に調査及び討伐をお願いしたい。

 

以来主:龍歴院の調査員

 

 

 

―――

 

 旧砂漠に足を運んだ龍歴院の男性ハンターから言えば、枯渇の原因は新種のモンスターだと解った。

 何せハンターの目の前で、トゲまみれの巨大な蛇が湖に突っ込んだ途端、湖の嵩が見て解る程に減り始めたのだから。

 

 幸いにもコチラの存在には気づいていないようなので、龍歴院ハンターは石柱に身を潜める。

 いくらG級とはいえガレオスX装備に片手剣のサージュソード9、そして調査対象は竜歴院ですら記録にない未知のモンスターだ。警戒することに越したことはない。

 ハンターは慎重に物陰から蛇竜種の様子を伺い、その巨大な姿や僅かな生態を少しでも観察せんと目を光らせる。

 

 この蛇竜種は依頼書にも書いていたように、その長く大きな身体の背には大小様々な棘が生えている。蛇竜種らしくウネリのある動きだが、棘は動きを阻害しないようある程度の折り畳みや角度の調整が可能のようだ。

 顔つきは同じ蛇竜種で言えば、ガララ・アジャラよりガブラスに似通っている。頭頂部には後ろに向けて伸びる大きく太い棘があり、あのモンスターの象徴のように聳え立っている。

 全身の色は水を染みこませている故か黒ずんでいるが、どうやら元は地面に溶け込むような砂色となっているらしい。

 

 しかし口から直接水を飲み込んでいるわけでもなく体を湖に浸しているだけだというのに、少しずつだが湖の嵩が減っていく。

 じっくりと観察したところ、どうやらこの蛇竜種―仮に『棘蛇竜(キョクジャリュウ)』と呼ぼう―は身体から直接水を吸っているように見えた。

 背面が棘まみれでよく解らなかったが、棘と棘との隙間には細かい管のように割れ目があり、そこから水を吸っては蓄えているようだ。

 しかしまあ吸う吸う。表面だけでなく中身に蓄えているのだろうか?と思うほど水を吸う。いつしか湖の嵩は半分程にまで減っていた。

 

 ようやく満足したのか、棘蛇竜は湖から砂地へと上がっていく。表面にもかなりの水分量を蓄えているのか、這いずった痕は水で濡れて黒ずんでいた。

 石柱に近づいてきたので棘蛇竜に見つからない位置に隠れようとしたのだが、思っていたより這うスピードが速いのか、それとも蛇特有の感知能力があるのか、棘蛇竜はハンターの存在に気づきつつあるようだ。

 しきりに石柱を見ては陰に誰かいるのかと覗きこむ棘蛇竜に対し、それから逃れようと更に死角へと隠れるハンター。そうしてグルリと蛇竜種特有の長大な体が石柱を取り囲む。

 

 囲まれていることに今更気づいたハンターは急遽助走をかけて飛び上がろうとし、棘蛇竜は異物の存在にやっと気づいて咆哮を上げる。

 そのまま囲っていた石柱に巻き付こうとするが、ハンターは何とかジャンプして脱出、石柱は棘蛇竜の棘に抱かれて粉砕されていった。痛そうである。

 

 ハンターは距離を取ってからサージュソードを構え、棘蛇竜は改めて敵を眼前に捕らえ、先ほどよりも大音量の咆哮を轟かせる。

 

 とはいえ、ハンターが取るべき行動は観察と回避が主体だ。討伐を依頼されているとはいえ、まずは動きを見極める事が肝心だと彼は考えているからだ。

 片手剣を選んだのも、他の武器と違って咄嗟にアイテムを使用しやすいからだ。盾を常に前方に構え、鎌首を擡げる棘蛇竜の動きに備える。

 棘蛇竜は頭を右から左へ振り回すと、弾丸のように水飛沫が広範囲に散り、不運にもハンターの顔面に直撃!吹っ飛ぶことなかったものの顔面を打ち付ける衝撃と水気は相当なものだった。

 

 頭を振って気を取り戻すも、水は装備の内側に沁み込んでいく。それが重みと不快を招いていつも以上に体力を消費するからだ。

 スタミナ温存を考え無闇やたらと走らず、ぶんぶんと振っている房状に棘が纏まっている尾を避ける。大雑把な動きなので避けやすかった。

 しかし棘蛇竜の動作一つ一つに水しぶきが入り混じっている。あれだけ大量の水分が表面に付着していれば当然だろう。

 その他にも、ガララ・アジャラのように長い身体で体当たりを仕掛けたり、トゲを畳んで地中を潜り奇襲を仕掛けるなど、ガララ・アジャラに近い動作を棘蛇竜は行ってくる。

 いずれも体を揺するか振るう度に水飛沫が発生するが、トゲが飛び交うことはない。あれはあくまでも防御の為に生やしているのだろうか?

 トゲが邪魔ったらしいが、適度に反撃を伺い土色の甲殻に斬りかかる。重い手応えだが片手剣でも斬撃は有効のようだ。

 

 やがて棘蛇竜に変化が生じ、土色の甲殻から水蒸気が溢れ出てきた。かなりお怒りのようで、先程の咆哮よりも甲高い音が周囲に響き渡る。

 咄嗟に耳を塞いだからよかったものの、棘蛇竜の身体から溢れ出る水蒸気は範囲と密度を増していき、砂漠地帯でありながら深い霧に包まれた。

 棘蛇竜の影は見えているが次の行動が解りづらい。影を視界に捉えつつ盾を向けていると、すぐ横を太い水柱が通り過ぎる。

 当たり所が悪ければ致命傷を負った可能性に驚愕しつつ、視界に移る影から距離を取る。どうやら棘蛇竜はガノトトスのような水ブレスを吐く事ができるようだ。

 

 棘蛇竜の鳴き声や地を這う音、地中潜行などで邪魔しているが、棘蛇竜から発する音からして怒り状態になると常に水蒸気を起こすらしい。

 霧に紛れて様々な攻撃を行ってくるが、流石に乾燥地帯とだけあって、すぐに水蒸気の霧が晴れていき棘蛇竜の全貌が明らかになる。

 すると土色から砂地に溶け込むような砂色となっていた。表面の水分が乾いて本来の甲殻の色に戻った様子。

 しかも棘蛇竜が息切れしている。水蒸気が発生してから止まるまで随分と時間があったが、水分量が減って疲れてきているのだろうか。

 

 好機と捕らえたハンターは接近して片手剣を的確に打ち付ける。棘蛇竜はトゲを逆立ててはいるものの動きは緩慢で避ける気配もない。

 人の腕ほどもある棘を避け、後ろ足付近の甲殻に打ち付けた片手剣から伝わるのは、斬撃の手応え―――ではなく衝撃。

 カラッカラに乾燥した砂色の甲殻は先ほどよりも硬度が増している。先程は水分が含まれてふやけていたのだろうか?

 

 やがて棘蛇竜は地中潜行を開始。奇襲攻撃に備えて装備をしまうハンターだが、地響きは全くの別方向へと向かっている。エリア移動のようだ。

 先程見た棘蛇竜の特性を考えれば、ハンターの居ない別の水辺で水分を補給する算段だろうか。怒りや疲れに任せず安全に確保する警戒性もある様子。

 そうしてハンターは、地響きのする方向へと走り出す―――行き先の候補は二カ所。そう探す手間はかからないだろう。

 

 

 

 かくして龍歴院のハンターは、無事に龍歴院に帰還し、新種の蛇竜種「棘蛇竜」の生態と枯渇の正体を伝える事となる。名は「ガイグイズ」に決定した。

 棘蛇竜は逃してしまったが、新たなモンスターの情報を収集し、手傷を負わせられただけでも大成功と言える。

 しかし水辺が枯渇している以上、砂漠の環境破壊にもなりかねない。龍歴院は新たにハンターの強力を仰ぐのだった。

 

 

 

―完―




このガイグイズは、実際する爬虫類「モロクトカゲ」をモチーフにしているそうです。蛇なのにトカゲ(笑)

●新種紹介
棘蛇竜ガイグイズ
砂漠地域に生息する新種の蛇竜種。無数の鋭い棘が生えた土色の甲殻で覆われている。昆虫食。
甲殻には細い溝が張り巡らされており、そこから水分を効率よく吸収、生命維持や攻撃に転じる。
長大な体とトゲを武器に戦う他、興奮すると水蒸気が発生して霧を起こし、水ビームを吐く。

○本日の防具と素材一覧

●グイズシリーズのスキル一覧
・貯水(水属性やられを受けている間、攻撃と防御が大幅にアップする)
・弱点特効
・心配性

●素材一覧
・棘蛇竜の重棘
 棘蛇竜の中でも特に大きくて重いトゲ。鋭さより硬さを重視しているらしい。
・棘蛇竜の重殻
 棘蛇竜の甲殻。網目のように細かい線があり、そこから水を吸う。

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