Monster Hunter Delusion【更新停止】 作:ヤトラ
2014/11/20:後書きの誤字修正
―とある寒い地方の村にて。
「おばあちゃん、今夜もお話聞かせてー」
「てー」
やれやれ、困った孫達だねぇ。もう遅いし、今夜は特に冷えるというのに……。
5歳の姉と4歳の弟がベットの上でばたつく中、この老婆のお話が聞きたいとダダを捏ねておる。
ワタシとしちゃ嬉しい事だが、今夜は特に冷えるから……あでで、冷えた腰が痛む……。歳は取りたくないねぇ。ハンターは引退するし、息子夫婦にハンターの仕事を押し付けちゃったし。
出張で居ない息子夫婦の為にも、ワタシがしっかりと孫の世話をしてあげないとね。
「はいはい。そんなにワタシのお話が聞きたいのかい?」
「うん!うち、ハンターだった頃のおばあちゃんの話大好きやー」
「やー」
まったく、すっかり嫁さんの口調が移ってしまったねぇ……できればお淑やかな女の子に育って欲しいが、元気でないよりはマシかね。
さて、暖炉の火をくべて……っと。何を話すとするかな……。
「そうさねぇ……じゃあ、新大陸に伝わる守り神の話でも」
「それ聞いたでー?今じゃ島の鬼になったダイミョウザザミの話やろ?」
「やろー?」
「おやま、そうだったかの?では海を泳いだ島の話でも」
「それも聞いたー。泳ぐ島は、実はジエン・モーランの変異種やったんやろ?」
「やろー?」
「あれまぁ……そうさねぇ……仕方ない。とっておきのお話をしてやろうかの」
「とっておき?」
「ワタシとおじいさんが今まで一度しか会うことができなかった、幻の古龍のお話だよ」
「こりゅー!」
「ほんまに古龍が好きなんやなぁ」
「大好きー!」
「ほっほっほ。残念じゃが、これから話す古龍は小さいんじゃよ」
「けど聞かせてー」
「はいはい。そうさなぁ、あれは、ワタシとおじいさんが、お前たちのお父ちゃんとお母ちゃんぐらいに若かった頃……」
さてさて、今日はいつまで起きていられるかのぉ?
―
当時G級ハンターだったワタシらは、火山に近くある小さな村に立ち寄った。
そこの村には随分とお世話になったことがあってね。村の皆とは交流を深めていたのさ。
しかし、そこの火山でキリンらしき影を見たって、古龍観測隊から通達があったらしいんだよ。
お前さんらも知っておるだろうが、幻獣キリンは神出鬼没な古龍種さ。雪山で見かけることが多いんだけど、奴らは火山にも出てきた記録があったからねぇ。
村長さんからのお願いもあって、ワタシらはすぐにクエストを受けて、村へ駆けつけたよ。
けどね、その日は小さな地震が多かったし、火山が活性化していて、とても危険だったんだよ。
街一つ滅ぼすという古龍種が近づいていることもあって、村人達は不安でいっぱいだった。
村長さんを始めとした村人達はワタシらの為に残るといったけど、ワタシらは皆に逃げるように言った。
古龍種を倒せても噴火したんじゃ、村はお終いだ。だから危なくない内に逃げておくれ……とね。
ワタシらの説得もあって村人は……ん?ああ、大丈夫じゃよ。最後には皆助かるからの。
その後、キリンの姿を見たという火山へと向かったんじゃが……様子が変じゃった。モンスターが一匹も居なかったんじゃ。
この間まで沢山いたはずのイーオスどころか、虫一匹ですら見つかることはなかった。
ワタシは噴火を恐れて避難した、おじいさんは古龍が居るからだと意見が分かれたんじゃが……今でも原因は解ってはおらん。
そしてワタシらは、ついにキリンを見つけたんじゃ。
ワタシらが知るキリンは、雷を纏った白い姿なんじゃが……そのキリンだけは違っていた。
炎の鬣をなびかせ、紅蓮に染まった身体が飛び交う姿は、まるで炎の化身のようじゃった。
炎龍と呼ばれる古龍種も見たことがあるが、あんな猛々しくも美しいモンスターは初めて見たよ。
ワタシらは今もその赤いキリンを「
赤幻獣の姿を見たのは高い岩場の上じゃった。赤幻獣はまるでワタシらを観察しているように見えたよ。
そして赤幻獣が後ろ足で立って咆哮をあげた途端、地面が揺れ、火山が噴火したんじゃ。
ワタシらは火山の噴火を見て驚いた。まさかあの噴火は赤幻獣がやったのではないかとね。
しかし赤幻獣が降り立ったことで、ワタシらは動いた。せめて赤幻獣を追い払う為にね。
同じキリンの姿をしているとはいえ、赤幻獣は別格じゃった。動きそのものはキリンと似ておるが、戦い方がまるで比べ物にならなかったんじゃ。
知っておるかもしれんが、キリンは雷を纏い、雷を落として戦う古龍種じゃ。じゃが赤幻獣は違う。炎龍と同じく龍炎を纏い、炎と大地を操って戦っておったんじゃ。
赤幻獣がステップを踏めば地面からマグマが噴出し、咆哮をあげれば火山弾が雨のように降ってくる。
それだけではない。まるで私たちを狙っているかのように巨大な火山岩が落ちてきたり、地割れが起きたり……。
まるで怒れる火山そのものを相手にしているような、とても強い古龍種じゃったよ。
ワタシらはなんとか追い詰めることに成功したが……結局、あやつを討伐することには至らなかった。
火山が本格的に噴火したからじゃよ。さすがに危険と思ったワタシらは、赤幻獣に背を向けて逃げたんじゃ。
あの時の、立ち止まったキリンのまっすぐな眼を、今でも覚えておる。
―まるで、火の神様に見送られたような感覚もね……。
―
「それで、村はどうなったんや?」
「火山は噴火したが、溶岩も火山石も村には届かなかったから無事じゃったよ。赤幻獣も居なくなったしね」
「よかったー」
「じゃ、せきげんじゅーはどうなったの?」
「ワタシらはギルドに報告したんだけど、既に居なくなったこともあって、そんなのいないのではと疑われてしまってねぇ……」
「それって酷いやんか!おばあちゃんは嘘ついてへんもん!」
「心配してくれてありがとうな。けど大丈夫。実はいくつか赤いキリンの姿を目撃しておってな?ギルドもとうとう赤幻獣の存在を認めてくれたんじゃよ」
「じゃあ、おばあちゃんが会ったっていうキリンは、もう討伐されちゃったの?」
「いんや、また討伐されたという話は聞いておらんし、あちこちで赤幻獣の姿を見たという人がいるそうじゃよ。それにね、赤幻獣が現れるのは、決まって火山の噴火が近づく頃なんじゃ。じゃからギルドはあやつを『災厄を呼ぶ者』、人々は『災厄を告げる者』と呼んでおる」
「……もしかして、おじいちゃんがハンターを続けているのって……」
「ほっほっほ、そのまさかじゃよ。……さぁさぁ、もう遅いから寝なさい」
「はーい」
お姉ちゃんもぐっすり眠っているようじゃし、お前さんも早く寝なさいね。
それにしても本当に弟は古龍のお話が好きなんじゃなぁ……いつかはハンターになって、自分の目で見るのかねぇ。
さてさて、ワタシもそろそろ寝るとしますか。
―今頃おじいさんは、あやつに会っているのかねぇ?
―
長かったのぉ……よもや旧火山の奥地に姿を隠しておったとは。
歳はとりたくないわい……相方のばあさんは引退してもうたし、暁丸・極は重いし……。
じゃが、そんな事はどうでもええ。古龍観測隊の言っていることに間違いはなかったわ。
目の前におる、この赤いキリンの姿をもう一度確かめる。
ふふふ……あの頃にと変わらぬ眼光じゃな……それに、あの時ワシがつけた傷もそのまま残っておる。
確信した。この紅きキリンは、ワシが長年探してきたキリンの変異種じゃ。
「ようやっと会えたの、赤幻獣……」
ワシは太刀―黒刀【終ノ型】を抜刀し、構える。
赤幻獣はワシを覚えておるのか、ただ息を荒げて立ち止まり続けておる。
「いや……ギルドでは『
原種も「幻獣」や「雷獣」と呼ばれておったが、こいつにまで別名が増えるとはのぉ。
まぁ、ワシからすればどっちでもええ。ようやっと出会えたんじゃ……心行くまで、戦うとしようではないか……のぉ?赤幻獣よ。
「決着をつけようぞ。赤き幻よ」
―赤幻獣が吼える。
―溶岩が噴水のように湧き出ていくつもの柱を作る。
―高熱のガスが渦巻き、竜巻のように溢れ出てくる。
―いざ、参らん。
―この老人ハンターと赤幻獣の決着がどうなったかは、彼らのみぞ知る。
―完―
モンハン4情報で、キリン亜種の存在を知りました・・・セ、セーフ、かな?(汗)
古龍って浪漫がありますよね。自然災害そのもののような圧倒的な力が素晴らしい。
ですが逆に、自然の災害を予知したり利用したりするような事もできるかなぁと考えたのがこのキリン変異種です。
伝説ではキリンが火山を操っている、地学的には噴火の現象として有り得るので偶然だ、とか意見が分かれているという設定です。
雪男はいるかいないか、みたいな次元です。古龍とはいえモンスターが自然を操ってたまるか、と。さぁ、皆さんはどっちを信じます?
では、次はお馴染みの防具シリーズと素材の紹介です。かなり運がよくなります。FはファイアのF!火属性値が凄く高い武器になります。
●キリンFシリーズのスキル一覧(共通)
・女神の祝福(レア度6以上のアイテムを発見する確率が上がる)
・神の気まぐれ
・精霊の加護
・不運
●主に剝ぎ取れる素材一覧
・赤幻獣のたてがみ
発火性の高い物質で出来ている鬣。1年中燃やしても燃え尽きず、轟々と燃え続けたという。
・赤幻獣の一角
紅蓮石よりも高い温度を保っている赤幻獣の角。硬度も高く、武器の素材として使うのがほとんど。
女神の祝福は私のオリジナルスキルです。レアアイテムが発見しやすくなります。
お守りだろうが太古の塊だろうがザクザク出ること間違いなし。私も欲しい(滅)
ただし、キリン変異種の出現率そのものが超レアなのでご注意を(爆滅)