きっと彼にとっては、取るに足らない言葉だったのだろう、自分自身を奮い立たせる言葉だったのかもしれない。
けれど、それでも。
――――救われたものが此処に居るんだ、と。
いつもとは様子の違う
・・・もう
「アァ・・・?ハッ!誰かと思ったら根暗のクソモブ錬金野郎——没個性じゃねーか!何してんだ・・・?テメェ!!」
「何してる、は此方の台詞なんだがなぁ?爆豪?俺には個性を使った虐めの現場にしか見えないんだが?」
「・・・ッチ!テメェには関係ねぇだろうが!俺は其処のクズに身の程ってもんを教えてやろうとしただけなんだからよォ!」
「ふーん、身の程、ねぇ?」
「!!・・・何スカしてんだ!テメェもぶっ殺すぞ!いい加減に、しやがれェ!!」
「「うわっ!?」
足元のガム化した地面から逃れる為かそのまま地面を爆破させ強引に脱出をしたが、巻き添えになった二人はさらに体にガムがかぶせられて悲鳴をあげた・・・気絶してないか?あれ?
そして粘着化した地面を警戒してか公園のベンチに着地した後、ムカッ腹が収まらねぇとばかりに指を指して爆豪は怒声をあげた。
「テメェの方が先に個性を使ったんだからよぉォ?俺が個性を使っても構わねぇよなあァ?一発は一発だもんなぁ?」
「・・・解除」(一発は一発、ガキか・・・って、中学一年かそういや)
「「う、ううん・・・」」
今までガム化していた地面を解除すると砂がふわりと舞い上げて視界を一瞬遮らせる。
そしてその隙に手元にスタンドで引き寄せておいた一本の枝を袖に隠す。
「オイオイ、今更遅いぜ?個性を解いてよォ!?許してくださいとでも言う気かぁ?没個性が!!なめてんじゃネェ!!!」
そういうや否や、爆破させた掌を此方へむけながら向かってくる爆豪・・・だが、もう終わってる。
「・・・わ!あ、危ない!!」
「ッチ!!」
「来るんじゃねぇ・・・そのままそこにいろ、緑谷。其処は、射程距離外だからよ」
「え?」
「ちょいとばかし、能力を盛大に使ったからよぉ・・・俺は地面をガムにしようとはしたが!地面は砂のまま、ガムの性質だけに変化させた・・・。
だが!モノの性質も、見かけも!別に変える事が出来るんだよなぁ!!」
触れていないと発動は出来ないが・・・俺のスタンドで触れる事で発動できる。
ついさっき、ここに来る前に俺はスタンドで公園の折れた枝に触れておいた。
そして、それをロープに変化させ、性質をガムにして拘束の為に動かす様にスタンドで持ちあたかも俺が触っている様にコントロールすれば!!
「ッガァ!?」
「なっ・・・え、木の枝が!ロープみたいに変化したと思ったら、かっちゃんに巻き付いて・・・!で、でもあれじゃまたすぐ爆破されて・・・?」
「・・・!—————!!」
「ほう・・・流石に察しがいいな、爆豪、そうだ、そのロープは周りの木や遊具、発火物へと繋げておいた。お前が爆破した瞬間、周りに着火し、大騒ぎになるだろうな。」
実際はべったりと体に張り付いた枝はロープの形をしていながらも性質はガムそのものなので実際に発火する事は勿論ない。
だが俺の能力の限界を知らず何にでも変化させる事が出来ると思っているアイツは能力で変化させるタイムラグすらも考慮には入れれないだろう。
もしくは本当に着火するかもしれないと思っているのかも知れないがどちらにせよ発火して騒ぎになるかもと思った時点で詰みだ。
その結果爆豪はハッタリによって拘束された。
「・・・う、上手い・・・なんていうか、考えが独特で・・・読めないトリッキーな動き・・・!す、凄いよ!条城君!!すっごくカッコイイや!!」
「う・・・や、やめろ・・・!その眼は!!」
個性を持ってない時の緑谷の筈なのに、こんなに屈託ない眼と顔で人を褒められるのか・・・!これまでがこれまでずっといじけてただけに凄くこそばゆいぜ・・・!
「凄いよ!無個性の僕なんかよりもずっと!没個性じゃないよ!すっごい個性だ!ね、ねぇ!どこまで出来るの?さっき射程距離って言ってたよね!範囲があるの?水とかも変えられるの?あ、でもこういう個性って何かしらのデメリットがあったりするよね・・・あ、そうだ!どのくらいの時間変えていられるの?複数?それから変えられるモノってどんなものでも変えられるの?それから・・・・・・・・・」
「ま、待て待て、一遍に喋り過ぎだ!」
み、緑谷のヒーローオタクは知ってたけれど、個性についてもコイツ相当詳しく聞きたがり・・・!こ、これは確かに熱狂的と言える・・・!
「あ、そ、そう、だね・・・ごめん・・・」
「急にシュンとするな!ああくっそ!ヒーローになるんだろお前!もっと胸張ってくれ!」
「・・・え?」
「!—————!!———————!!!」
「おー、すまんな爆豪怒鳴るなって、ちょっと俺も緑谷に用が出来てさ、少し話がしたかったんでよ。ま、終わったら解くからさちょっと待っててくれよ」
「・・・え、ええ?(かっちゃんすっごく切れてる・・・)」
「・・・緑谷?」
「・・・あぅ、ご、ごめん、条城君。それで用って・・・?」
「おう、緑谷。もしかしたら無理かもしれないし、希望を持たせるだけになる残酷な行為になるかもしれないが・・・」
「無個性の『個性』って奴を・・・欲しくないか?」
「む、無個性の、個性?」
「そうだ・・・ッ!?」
BAGOOOOON!!と爆発音が響いて砂埃で言葉が途切れる。
「爆風!アイツ、地面を!!」
拘束されていない地面近くで爆発を起こし爆風で拘束を引きちぎり、離脱した。足の付近にも拘束はしてあった筈なのだが捕えやすいように性質をガムにしていたのが悪かったのだろう、無理矢理足への拘束を外したんだろう、その分腕などについてしまった分も爆発で無くなったという訳か。
「ゲほ、ゴッホ!ぅ、一体何が・・・」
「下がってろ!・・・ちったぁ頭冷やしやがれ・・・!!」
「クソ没個性とカス無個性がピーピー逆らいやがって・・・そンなにぶっ殺されてぇかアア!!」
体中から立ち昇る小規模な爆発が、明確に怒りを表している事が分かる。
ブチ切れたクソガキと、いじけてたクソガキのぶつかり合いと言えるだろうソレは。
BAGOOOON!!!!!
「ヴィランだ!」
「ヴィランが出た!!」
「誰か助けてくれぇ!!!」
――悪党の出現により遮られた。
(一瞬、ホンの一瞬だけここでの騒ぎが通報されたのかと思ってしまった・・・)
ヴィランがでたという声に加えて爆発音がした為、瞬間的に反射的と言える速度で爆豪に振り向く。
「お・・・!俺の訳がねぇだろうが!!」
「ま・・・だよなぁ・・・」
急速に萎んでいく戦意に場の緊張感。
爆発という自分の個性と同じ結果を起こす恐らくは爆弾か何かを使ったヴィランの起こした騒ぎに何か感じ入るものがあるのかしきりに爆発の騒ぎがあった方角を気にする爆豪。
「野次馬しに行くのか?」
「ケッ!クソ野郎が!ンなこたぁする訳ねぇだろうが!ヒーローになんだぞ俺様はぁ!!」
「人虐める様な奴がか?きっとお前に出来る事なんざ何一つないね」
「っ・・・!あぁ・・・!!テメェ・・・」
そこでふと気づく、こういう時ならばおどおどとしながらも間に入るであろう
爆豪も何か思ったのかキョロキョロとして周りを見ている。
「「・・・?」」
「「・・・ッ!?」」
ひょっとしてだがいや・・・そうだよな・・・主人公なら・・・真っ先に・・・!
事件現場に駆け付けるもんだよなぁ・・・!ヒーロー!!
「「
二人同時に思い至り叫んで駆け出す。
—―真っ先に駆け付けたこの場の誰よりも在り方がヒーローである男を追って。
葉隠ちゃんかわいいやったー