サムライ・レーアの懐郷   作:ダラ毛虫

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アニメのみ勢に向けた重戦士一党紹介

重戦士:「辺境最高」の一党を率いる頭目。2話で「俺達と関わることもない」って言ってた大剣使い。
女騎士:2話で「あれが私達と同じ銀等級とはな」って言ってた人。ブランニュー・デイ2巻早よう。
半森人の軽戦士:3話で「あれは上のエルフ」って言ってた、アニメ化で黒髪になった男。
少女巫女師:3話で「確かに、耳が長いですね、他のエルフよりも」って言ってたレーアのドルイド。
少年斥候:4話現在、多分アニメ未登場。重戦士と女騎士を「兄ちゃん」「姉ちゃん」と呼ぶ。




サムライ・レーアの遭遇

 ゴブリンスレイヤーと侍圃人。

 

 この二人の銀等級冒険者と、女神官が行動を共にし始めて、一ヶ月。

 

 それだけ経てば、分かってくることもある。

 

 

 まず、ゴブリンスレイヤーは、本当にゴブリン退治ばかりを、手段を選ばず行っているということ。

 それも、まともに休みもせずに、毎日のように。日に複数のこともしばしば。

 

 初めは侍圃人により半ば強制的に同行させられていた女神官だが、彼女の性格上、こんな破滅に向かって全力疾走している男を、放っておけるはずがなかった。

 結果、体力がもつ限り、自発的にゴブリンスレイヤーのゴブリン退治に同行している。段々と、臭い消しにも慣れてきてしまった。

 

 

 そして、もう一人。侍圃人について。

 

 圃人(レーア)の女性で、十年冒険者をしている、銀等級の古強者(ベテラン)

 湾刀の術理を修めた戦士であり、魔術を日に四回も使える呪文遣い(スペルスリンガー)でもある。

 呪文の種類は専門の術師よりは少ないらしいし、腕力も体力も無いから、剣は精々、銅か紅玉等級くらい、と言っていたが。

 白磁等級の女神官にすれば、いずれにせよ、遥かな高みには違いない。

 

 ゴブリンスレイヤーの前では顔を隠し、口調が堅くなる。おそらく、わざと話し方を変えている。理由は分からない。

 

 愛用の武器は、元冒険者の父から譲られたという小振りな湾刀。正確に刃筋を立てれば刃こぼれせず血脂もつかない魔法がかけられている、とのこと。

 もしゴブリンに奪われても、乱暴に扱ってすぐに折ってしまうだろう、と笑っていた。

 

 毎回同行している訳ではないが、他にやりたい仕事がなければ、ゴブリン退治を選んでいる。

 

 

 

 初めての冒険で知り合い、それ以来ほぼ一緒に行動している、二人の冒険者。

 彼と彼女について、女神官は、多くのことを知った。

 

 

 

 だけど、知らないことは、いくつもある。

 

 

 

 二人は互いを理解している。信頼している。何も言わずに連携ができるくらいに。

 なら、どうして、彼らの会話は、あんなに固く、冷たく、重く軋んでいるのだろう。

 初めて二人が会話しているのを見た時から変わらず、向き合う度に、音のない悲鳴が聞こえる気がする。

 

 

 泣き叫ぶような。

 

 嘆願のような。

 

 許しを請うような。

 

 

 

 彼らの声にならない悲鳴が、女神官の心を締め付ける。

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

「戻っていたなら一言あってもいいだろう!?」

「分かったから。悪かったわよ。落ち着いて」

 

 牛飼娘が、ギルドの扉を潜った瞬間に聞こえた声の方を見ると、そこにいたのは、女騎士に詰め寄られる、もう一人の幼馴染み。

 四年前に旅立ち、一月前に帰ってきたと「彼」から聞いた、侍圃人だ。

 

 視線に気付いたのか、牛飼娘に顔をーー編み笠で隠れているけれどーー向けた侍圃人は、一瞬ぴくりと肩を揺らし、小さく片手を振る。

 

「聞いているのか!? 大体お前は! 何も言わずに突然いなくなって!」

「あの時は、貴女達の一党が不在だったのだから仕方ないでしょう?

 それに、伝言は頼んだはずーー……」

「あいつがまともに伝えると思うか!? 「旅に出た」としか言わなかったぞ!」

 

 

「言われてるよ?」

「そうか」

 隣に立つ、当の「あいつ」は素知らぬふり、ではなく、「伝えたはずだが」と考え込んでいる様子。

 …………まあ、他の人が見ても、そうは思えないだろうけど。

 

 

 そんなことを考えている間に、女騎士の声が次第に小さくなっていく。

 侍圃人の両肩を掴んだ手はそのまま、俯き、ぶるぶると震え始めた。

 

「本当にな~、お前はな~、いつもいつもな~、何度も一緒に冒険した仲じゃないか~」

「ねえ、頭目さん。おたくの騎士さん、朝から酔っているわよ」

「俺に振るな! あと、そいつは素面だ!」

「なんでゴブリンスレイヤーにこだわるんだお前~、うちの一党に入れよ~」

 押し退けられながらも、尚しがみつこうとする女騎士。

 女性同士とは言え、迫られているのが外見は幼い少女の圃人。色々と不味い。

 

 ついでに、明らかに傍迷惑なのだが、冒険者歴四年以上の古参(ベテラン)は懐かしそうに眺めるばかり。

 それを見て、他の面々も「いつものことなのか」と放置していた。

 

「貴方の相棒でしょう。絡まれて困っているのだけど」

「だから俺に振るなっての! ……ついでに、臨時じゃなく正式に入る気はないか?」

「無いわよ」

「冷たいこと言うなよ~」

「いい加減にしなさい聖騎士志望!」

 

 ようやく女騎士の魔の手から物理的に脱出した侍圃人。

 

「前衛としても術師としても一流の銀等級なんざ、是非とも欲しい人材なんだがな……。

 なあ、お前ら?」

 

 だがそれは、次の相手に移っただけだった。

 

「同感です。お二人もそう思いますよね?」

「姉ちゃんの相手してくれるだけで助かるよな!」

「そ、そのぅ……確かに、入ってくれると嬉しいですけど……無理強いは……」

 

 ぞろぞろと集まる重戦士の一党、半森人(ハーフエルフ)の軽戦士に、少年斥候、そして少女巫女師(ドルイド)

 

「剣も術も、我らが頭目や未来の聖騎士様よりも、ずっと丁寧に教えてくれるかもしれませんね?」

「本当か!?」

「是非とも仲間に……! い、いえ……! そんな誘惑になんて……!」

「ほら、うちのガキ共もこう言ってるしよ?」

「子供を出しにするのは卑怯でしょう!?」

 

 ある意味、侍圃人にとっては女騎士以上に厄介な相手。

 得てしてお人好しは、女子供と老人、同族に、特に弱い。

 女子供で同族(レーア)の少女巫女師ならば、効果は言うまでもない。

 

「な~か~ま~に~な~れ~」

「水でも飲んでいなさい酔っ払い!」

「…………お前、本当に素面なんだよな?

 鉱人(ドワーフ)じゃあるまいし、仕事前に酒飲んでないよな?」

 

 再び絡みつく女騎士から逃げようとする侍圃人を、重戦士一党が取り囲む。

 

 がやがやと、わいわいと、賑やかに騒がしく。

 

 

 

 

 変わらないなぁ、と、不器用な彼と世話焼きでやはり不器用な彼女、幼馴染み二人の様子に、牛飼娘はくすくす笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の自室。牛飼娘は一糸纏わぬ豊満な裸身を、濡らした布で拭いながら、朝のことを思い返す。

 

 

 

 

 

 

「そんな……! 見捨てるんですか!?」

「助けたいのなら好きにしろ」

 先にゴブリン退治を受けた冒険者三人を、助けに行くべきと主張する女神官。

 放っておけば大規模な巣になる可能性が高い依頼を優先する彼。

 

 彼が意見を変えることはないだろう。

 だからそれは、結局は女神官が折れて、彼についていくだけで終わる話だった。

 

「私が行く」

 

 その場にもう一人、ゴブリン退治のような人気がない依頼を受ける、銀等級冒険者が居なければ。

 

「……それと、この盗賊団退治の依頼も」

「ええっと。遠回りになりますが、よろしいですか?」

「帰り道に街道まで出れば、丁度良いはず」

 

 編み笠越しに受付嬢を見上げ、彼と女神官が口を挟む間もなく手続きを進める侍圃人。

 

「問題は?」

「ない」

「……いいえ。ありがとうございます!」

 

 頷き合う彼と彼女、そして、勢い良く頭を下げる女神官。

 今度こそ、話は終わり。

 

 既に準備も終えている三人は、ギルドを出て、そのまま各々の仕事に向かう。

 

「俺は行くぞ」

「え……あ、うん」

 その直前に、彼は牛飼娘の前で立ち止まった。

 

「気を付けて帰れ」

 ぶっきらぼうに言って、去っていく彼。

 同様に立ち止まって、会釈していく女神官。

 

 

「……久し振り」

「うん……久しぶり」

 

 彼女もまた、立ち止まる。

 

 

 向かい合う二人。

 牛飼娘を見上げる侍圃人と、編み笠の向こうの侍圃人の表情を思う牛飼娘。

 

 

「……『落ち着いた』ら、いつか、ゆっくり話しましょう」

 

「……うん。気をつけてね。待ってるから」

 

 

 こくりと頷き、川を流れる木の葉のように、するりと立ち去る小さな影。

 

 

 

 幼馴染みがどんな表情をしていたか、牛飼娘には、分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 その日、彼は帰って来なかった。

 

 次の日も、その次の日も。

 

 

 彼女も、まだ帰っていないのだろうか。

 

 

 

 彼も彼女も、戦っているのだろうか。

 

 

 

 

 牛飼娘は、ただ彼の帰りを待つ。

 

 彼が帰って、彼女の話をしてくれるのを。

 

 いつか、彼女がここにやって来る日を。

 

 

 牛飼娘は、待っている。

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 ゴブリン退治の方は、駆け出し三人で特に問題は無かった。

 戦士が数ヵ所棍棒で殴打され、仲間に肩を借りていたが、大きな怪我は無し。

 もしも毒を受けていれば、そのまま崩れて、押し潰されていたかもしれないが、幸いそうはならなかった。

 

 最後のゴブリンを、神官の少女が殴り倒したのを確めーー服装は神官だった。武闘家ではなくーー侍圃人は、音も無く洞窟を出ていく。

 

 

 必死に戦い抜いた少年少女に水を差すこともあるまい。

 出番が無かったのなら、舞台に上がる意味も無い。

 

 

 将来有望な子達が経験を積み、女神官も助けられなかったと悔やむ必要が無い。

 

 ならば、これで良し。

 

 

 

 後は、侍圃人自身の仕事、街道に陣取った盗賊団、二十人余りの退治だ。

 

 

 正面から戦えば、当然、同じ数のゴブリンよりも手強い相手。

 だが、盗賊団を相手に正々堂々も何も無い。

 

 物陰に潜み、後をつけて、(ねぐら)を特定。

 夜明け前に物見矢倉の二人を《眠雲(スリープ)》で黙らせ、出入口の見張り二人は無音で首をはねる。

 忍び込み、熟睡中の頭目を永眠させ、残りも順に終らせる。

 物見の二人も忘れずに。矢倉を登るのは面倒なので、下から燃やそう。

 術師は火打ち石要らずなのが楽で良い。

 

 

 どちらかと言うと、仕事自体より、大量の盗品を持ち帰る方が難題かも知れない。

 貴重品だけは持って行き、残りの回収はギルドに頼もうか……食糧や武器をゴブリンに拾われないと良いのだが。

 

 

 

 そんなことを思いつつ、ついと彼方の山を見遣れば、微かに染まる赤い空と、局所的な雨雲。

 

 どうやら、「彼」の方も、予定通りに事は済んだらしい。

 

 

 

 編み笠の下、侍圃人は僅かに笑み、こきりと首を鳴らして、帰路についた。

 

 




問題:ゴブスレさんが侍圃人の刀を欲しいと言える可能性
ヒント:幼馴染みの父の遺品



幼馴染み三人
・ゴブスレさん
・牛飼娘
・侍圃人

三者三様お互いの感情がもつれてほつれてこじれまくりです
三角形の修羅場はないからご安心! 中に誰もにはなりませんよ!



え? 女騎士さんが酷い? 元々あんなんじゃなかったですっけ?(すっとぼけ

なお、槍使い兄貴が勧誘するパターンも考えたのですが、絵面が事案すぎたのでやめました←慈悲




以下、割りとどうでも良い裏話


前回の初期プロットは、ギルドで侍圃人とゴブスレさんが合流して出撃(女神官以外全滅)だったんですが、受付嬢さんの勧め通り「ベテランを待った」場合、新人一党は生き残れるのか、と脳内シミュレータが起動した結果、ああなりました

感想としては、ホブまでなら行ける気がします
剣士君が死にかけたけど


でも暗い大部屋の奥から狙い撃ちしてくるシャーマン+取り巻きは、鋼鉄等級以下だと無傷クリアは厳しいと思うよGM

開幕《力矢》or《眠雲》→前衛行動不能→取り巻きによりゴブゴブ、で詰むよGM
もしくは《火矢》か《雷矢》の直撃で毎ターン誰かが死亡

イヤーワンゴブスレさんですら、明るい場所+遮蔽物+一対一に持ち込んでどうにかしたのに……漫画だとホブ復活したけど


やっぱり、「どうにかホブを倒してゴブスレさんと合流」が生存ルートか……
そもそも道具と情報と仲間(特に斥候)集めろって話ですが(マジレス



広間の入口手前から《聖光》で目潰し&光源確保して《火矢》で即殺? RTAガチ勢かな?
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