『誰か一人でも最善を目指さなければ、こんな結末にはならなかっただろう』
この文から最初に連想した『結末』が、ハッピーエンドかバッドエンドかその他かにより、あなたの嗜好が診断されます(嘘
書いた奴のせいでバッドエンドとしか読めない?
はははなにをおっしゃいますことやら、はいそれでは前回より更に短いですが3話Bパート入りまーす(早口
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姉さんが姉さんでなくなってから、一日が過ぎた。
「……分かっちゃぁいたが、間に合わなかったか」
ゴブリンに荒らされた村を、影から影へ滑るように走るのは、四年前、娘と共に村へ越してきた
右手には、冒険者の頃から愛用していた大脇差ではなく、数打ちの鉄剣。
負傷したらしい左腕は、きつく縛られて、袖から覗く指先が紫色に染まっている。
「まあ、たとえ間に合っていたにせよ、ゴブリン相手に、毒矢を食らい、道具を奪われ……俺も鈍ったもんだなぁ……」
放っておけば、左腕は壊死するだろう。
しかし、その前に、腕を縛り塞き止めた毒が少しずつ身体に蝕み、彼は死ぬ。
そのくらい、圃人も分かっている。
「だがまだ、剣も呪文もある」
死ぬ前にできることが、まだあると、分かっている。
娘がなついていた、とある姉弟の家の傍を通り過ぎる際、視線と気配を察知し、圃人は足を止める。
ゴブリンのものとは違う、人間の気配を、壁の向こうから感じ取った。
ーー生きていてくれたーー
圃人には、助けることはできない。
残された力も時間も、まるで足りない。
それでも、死に絶えた村に、まだ命が残っている。
安物の鉄剣を、強く握り締める。
「もうしばらく辛抱してな。少しは数を減らしておくからよ」
壁の隙間から様子を伺う少年へ視線を投げ、にっ、と笑って、圃人は立ち去った。
さあ、サイコロ勝負だ、ゴブリン共。
どんな出目だろうと自分は死ぬが、勝てばその分だけ、少年の生きる目が増えるだろう。
少年が生き延びるために、どれほどの運が必要かは、それこそ神のみぞ知る、だが、その一端くらいは担って見せよう。
それから二日が過ぎ、床下から這い出て、動き出した少年は、斬り裂かれ、焼け焦げた無数のゴブリンの死体と、村の入口に吊るされた、死後も執拗に痛め付けられた圃人の骸を見た。
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一党が街を出発して三日目の夜。
僅かな時間とは言え、共に過ごし、寝食を共にし多少は気心が知れた六人は、冒険者になった理由について語り合う。
沼地の獣の肉に舌鼓を打つ
森に飽きて飛び出してきたという
「あなたはどうなの?」
妖精弓手が、
「……面白い話でもないけれど」
女神官からスープを受け取りながら、圃人は答える。
「始めは、身寄りも伝手も無い、武器と剣術と魔術は有る圃人が生きる手段として、都合が良かったから」
でも、と言葉を続け、侍圃人は火にかけていた
「この国の東西南北と王都を巡ったのは、思ったよりも楽しかったかも知れない」
蓋を開けると、炊きたての米の香りが広がり、一党、特に妖精弓手と鉱人道士が興味深そうに覗き込む。
「おお! 旨そうな匂いじゃのう!」
「見たことない食べ物ね……何なのそれ?」
「東の国の穀物。行ったことは無いけれど、この湾刀が作られた国らしい。
…………父の好物だった」
艶々と輝く白米を、炊飯ついでに煮沸した布で手早く握る侍圃人。
「良ければ、食べる?」
「いただくわ!」
「おう!」
「では拙僧も」
「いただきます」
「ああ」
握り飯、沼地の獣の肉、乾燥豆のスープ、森人の保存食、鉱人の火の酒、そしてチーズ。
雑多で賑やかな食事と共に、夜が更けていく。
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ゴブリンは、何処から来るのか。
地の底の王国。
誰かが失敗すると一匹湧いてくる。
緑の月から来た。
言い伝えは、様々だ。
何が真実かは分からない。
どれかかもしれないし、複数かもしれないし、どれでも無いのかもしれない。
酒が回り眠って、女神官に毛布をかけられる「彼」を眺めつつ、侍圃人は考える。
どの理由であろうと、たとえ、どんな理由があろうと、「彼」はゴブリンを殺し続ける。
果てが無くとも、焼け石に水をかけるだけの行為だとしても、傷付き、疲れ、壊れかけながら。
いつまでも、いつまででも、「彼」は続けるだろう。
それを見るのが辛かった。
自分の顔を見る度に、姉を思い出させてしまうのが辛かった。
何も出来ない、余計に心を傷付けるだけの存在でしかない自分が、辛かった。
だから、耐えられなくなった。
耐えられなくて、旅に出ると言って、逃げ出した。
これ以上は、自分も「彼」も壊れてしまうから、と、納得したふりをして。
五年経っても、変わらず続けている「彼」を見るのが辛い。
顔を隠し、口調を変えなければならないのが辛い。
なのに、既に死んでいるかもしれない、と覚悟したつもりで帰還して、生きていると分かって、また一緒に居られるのが、嬉しい。
当たり前のように呼吸を合わせて連携できるのが、嬉しい。
変わらず信頼してくれるのが、嬉しい。
旅先で「小鬼殺し」が
迷った時には、「彼」ならどうするか、考えた。
新しい知識を得れば、「彼」ならどう活用するか、考えた。
度し難い。
本当に自分は、度し難い。
何処まで惰弱か、と、侍圃人は、自嘲を浮かべ緑の月を見上げる。
帰る場所には成れない。
背中を押す者には成れない。
手を取り引っ張り上げる者には成れない。
痛みを共有する者にも成れない。
自分が「彼」に与えるのは、傷口を広げられる苦痛ばかりだ。
それでも共に在りたい等、本当に、思うことすらも、度し難い。
侍圃人父娘の笑い方が良く似ている、とかだと、ゴブスレさんのトラウマ倍率ドンだな
なんて考えながら冒頭書きました、私です(挨拶
四方世界に米があるかは分かりませんが、刀があるならきっとある! と信じます
【侍圃人のざっくり経歴(暫定版)】
十四年前:父に連れられ、ゴブスレさんの故郷に定住。
近所のゴブスレさん六才と牛飼娘四才に姉貴風を吹かせまくる、只人換算九才の合法ロリ。
十年前:父と街に出かけている間に村が壊滅し、救助に向かった父も死亡。
未成年だったが、圃人は年齢が分かりにくいことを利用し冒険者登録。
白磁等級。
《力矢》が一回使える前衛かつ、圃人なので斥候の真似事もできる便利屋として、パーティーを転々。
毎日が仕事のその日暮らしを理由に、牛飼娘とは会わないまま。
五年前:鋼鉄等級。魔術は二回。
ゴブスレさんイヤーワンと再会。
以後、編み笠を常に被るようになる。
東国風の面頬も購入。
話し方も変えた。
この時期、重戦士一党や槍使いコンビと知り合った。
牛飼娘と会ったが、ヘタレて話を途中で切り上げ逃走。
四年前:青玉等級。魔術三回。
色々と限界が来たため、どこか別の場所へ旅立つ。
現在:銀等級。魔術四回。
北、東、南、中央を一年ずつ巡り、西の辺境に帰還。
本編開始。
……そうか……これはゴブスレさんだけでなく、ヘタレて逃げ続けてきた侍圃人が幼馴染みに向き合う物語でもあったのだなぁ(今更感