第4話っと
ようやくアニメに追い付いたので、女魔術師の方に戻ります
間も無く第5話放送ですけど
一射にてゴブリン二匹を射抜き、即座に続く二射目で狼を射殺す絶技。
「充分に熟達した技術は、魔法と見分けがつかないものよ」
「わしの前で言うかね、ソレを……」
平坦な胸を張り得意気に語る妖精弓手に、魔法を扱う術師である鉱人道士が顔をしかめる。
「魔術も技術も使いよう、といったところだろう」
それに対し、笑い混じりに言う、魔法の様に湾刀を振るい、呪文も操る侍圃人。
「一……二……」
そして、それらを他所に、ゴブリンの腹を裂き始めるゴブリンスレイヤー。
恒例の、臭い消しだ。
「慣れますよ」
ひきつった顔の妖精弓手。
諦めの境地に至っている女神官。
侍圃人にとって、そんな場所は五年前に通過した場所だった。
「どうしても嫌なら、匂い袋でも用意すると良い」
次からは、という無慈悲な通告に、妖精弓手が泣き出しそうなくらい表情を歪めた。
この場に彼女の味方は、居なかった。
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カン、カン、と剣の切っ先で床や壁を叩き罠を確かめるゴブリンスレイヤーを先頭に、一党が遺跡を進む。
「拙僧が思うに、これは神殿だろうか」
「この辺りは、神代の頃に戦争があったそうですから」
壁画に描かれた、過ぎ去りし遥かな時代を思う蜥蜴僧侶と女神官。
「うぇぇ……気持ち悪いよぉ……」
それどころではない妖精弓手。
「あ、洗えば落ちますから。……少しは」
「湯に漬けて踏めば、多少はマシになるはず」
「……今度試してみます」
「うぅ……奇跡で何とかなんない……?」
「すみません……《
臭い消しでゴブリンの血を被った女性陣による、洗い物談義。
凄惨な見た目と深刻な声音に、鉱人道士もからかうことを躊躇う有り様。
慣れてしまった女神官や、一人だけ匂い袋を使うのも、と付き合っている侍圃人といえど、好き好んで血塗れになっている訳ではない。
清潔に過ごせるのなら、それに越したことはない。
「戻ったら覚えておきなさいよ……!」
「覚えておこう」
ようやく意識を切り替え、
本当に、言葉通り「覚えておく」だけだろうな、と、女神官と侍圃人は顔を見合わせ、小さく笑った。
「待って」
しばらく進むと、隊列を止め妖精弓手が床に這いつくばる。
「鳴子か」
「多分。真新しいから気付いたけど……」
そう言って妖精弓手は、僅かに浮き上がった床を示す。
侍圃人が、違和感に編み笠の下で眉をひそめる。
「妙だな」
同時にゴブリンスレイヤーも呟く。
「どうしました?」
「トーテムが見当たらん」
そして考え込むゴブリンスレイヤー。
侍圃人と女神官はともかく、トーテムを知らない他の仲間には、意図が通じない。
「つまり、えっと、ゴブリンシャーマンがいない、って事です」
「知識層無しに、『真新しい』仕掛けを作る知恵は、ゴブリンには無い」
慌てて通訳を行う女神官と、補足する侍圃人。
彼女達の説明で、一党は『ゴブリン共を指揮する者が居る』ことを理解した。
正直に潜るには厄介な、
結局、行き着く答えは
話し合いつつ、一党は鉱人道士が読み取った床の減り具合から、T字路の右側、
ゴブリンスレイヤーの、手遅れになる、という言葉と、徐々に強くなる臭気から、女神官は薄々、侍圃人ははっきりと、何を見ることになるのか予感しながら。
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「……して……」
ゴブリン共の汚物溜めに、彼女はいた。
「……ころして……」
薄汚れた金髪。やせ衰えた、腱を断たれた四肢。
ズタズタに痛め付けられた右半身。
「……ころしてよ……」
同じ
「わかっている」
そして「彼」は、剣を握り無造作な足取りで歩み寄った。
侍圃人も、愛刀の柄に手を添え、瞬時に斬られるよう構える。
一匹ならば「彼」に任せる。
二匹目が居たら斬る。
「ころして……! こいつを……!」
飛び出してきたゴブリンが頭を叩き割られたのを見届け、四方八方上下、汚物の影まで意識を巡らせてから、侍圃人は構えを解いた。
囚われていた
依頼は、ゴブリン退治だ。
まだ三匹しか殺しておらず、巣の規模も上位種も不明では、偵察の役にすら立てていない。
過去にゴブリン退治を、やったことがあるにせよ、駆け出しの頃に二、三回こなしただけで、ゴブリンに捕らえられた者がどうなるか、今回初めて目の当たりにした妖精弓手が泣き崩れようと、その事実は変わらない。
ゴブリンは、殺さなくてはならない。
「呪文は幾つ残っている?」
「私はまだ使っていないから、残り四回」
回廊手前での小休止中、「彼」が確認する。
侍圃人に続いて、《
改めて、術師に恵まれた一党だ。
普通なら、王都の銀等級でも、魔術師と神官が一人ずつ。
侍や聖騎士のような兼業を含めても、合わせて三人居れば多い方だが、この一党は、六人中四人が
前衛が薄く、「彼」も生粋の戦士とはとても呼べないものの、連携が取れれば、ある程度の大物が相手でも対処できるだろう。
「やれる者でやれる事をやるだけだ」
とは言え、その連携のためにも、「彼」の言葉足らずを改善するか、全員が意図を図れるようになる必要があるのだが。
疲れた様子を見せた妖精弓手に対する、もう少しどうにかならないのかと思わないでも無い……むしろ切に思う「彼」の言い様に、侍圃人は溜め息を吐く。
幸い、鉱人道士が宥めに回ってくれたので、通訳に行かなくても良さそうだ。
百と七つは伊達では無い。
……二千は、まあ、変化の無い森での生活は精神年齢を若く保つのだろう、きっと。
鉱人道士の《
見事な術だ。
侍圃人も《
更に、女神官の《
こうなってしまえば、最早ゴブリン共に、奇襲に対処する
一匹ずつ、
こういう時、切れ味の落ちない大脇差は都合が良い。
そんなことを考えながら、侍圃人は、淡々と最小限の動きで、ゴブリンの喉を裂いて回った。
淡々と。作業的に。機械的に。
ゴブリン共を皆殺しにして、一党が更に奥へと進もうとした、その時。
沈黙の中で、大気が震える衝撃が轟く。
暗闇から姿を現した、青黒い巨体。
巨大な戦鎚は、強固な盾を持つ騎士を、その盾ごと肉塊と化す。
数多の術を修めた魔術師を、それを超える術にて焼き殺す。
傷を負わせても、次の日には全くの無傷で迎え撃つ。
銀等級の冒険者にとっても、恐ろしい難敵。
「なんだ。ゴブリンではないのか」
それを前にして、「彼」は変わらず、「彼」だった。
くくっ、と思わず、侍圃人が喉を鳴らし笑う。
侮られたと見たオーガが、憤怒のままに叩き付けた戦鎚が、白亜の石床を砕く。
呪文と共に、巨大な《
突き破られかけた《聖壁》に、更に祈りを重ねた、耐えうる限度を上回る
崩れ落ちた女神官を支える「彼」を横目に、侍圃人はオーガの側面へと駆けた。
先程の《火球》は、間違いなく致命。
その前の戦鎚も、直撃すれば即死。
驚異は変わることなく、目の前にある。
だというのに、どうにも、込み上げる笑いが抑えられない。
戦闘の高揚感ではない。
ただ、こんな時だろうと「彼」は変わらないことが、堪らなく、嬉しい。
まったくもって、度し難い。
妖精弓手の矢、鉱人道士の《
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ゴブリンスレイヤーと侍圃人の刃は、確かにオーガの脚を捉えた。
しかし、たとえ足の腱であっても、オーガの皮膚は岩のように硬い。
ゴブリンスレイヤーの一撃は容易く弾かれーー……。
「ぐ、おぉ……!」
侍圃人の一撃は、オーガの腱を半ばまで
オーガに、有効打を与えてしまった。
右目を射抜いた妖精弓手の矢と合わせて、二つ目の深手。
「きさっまぁぁぁっっ!!!!」
オーガを激昂させるのに、それは十二分に過ぎた。
一撃後、素早く退いた侍圃人は、既に戦鎚の射程外。
故にオーガは、掬い上げるように、自身の足元を打った。
「かっ、は……!」
それはさながら、横殴りの石の豪雨。
腕力による面制圧。
稼ぎの大半を注ぎ込んだ、魔術の込められた防具により、見た目よりも防御力があるとはいえ、小柄な侍圃人の身体を、無数の礫が襲う。
それを、ゴブリンスレイヤーは見た。
編み笠と面頬が弾き飛ばされた。
額が裂け、血が吹き出した。
その顔が
出会った頃から、
ほとんど変わらない、
思い出の中にあるままの、
姉さんに良く似た顔が、
赤い血に、染まる。
「殺す」
無意識に呟き、雑嚢から
ゴブリンスレイヤーの異様な、これまで見た中でも異質な雰囲気に、一党は皆、何かをする気だと直感した。
妖精弓手が、まさしく矢継ぎ早に射かける。
鉱人道士が、《石弾》を乱れ打つ。
蜥蜴僧侶が、自身は距離を取り、竜牙兵を突撃させる。
そして侍圃人は、右手で刃を握ったまま編み笠を拾い上げ被り直し、左手で印を組む。
「《
同じ呪文を、重ねて二つ。
「《
過剰な魔力を込めた炎の矢が、咄嗟に身を捩ったオーガの肩を穿つ。
「貴様……! 貴様ぁっ!!」
その言葉を最期に、オーガを激流が飲み込んだ。
深海で押し潰された水の精は、突然の解放に喜び躍り狂い、頑強なオーガの肉体を引き千切る。
ゴブリンスレイヤーの記憶に名を刻むことすらなく、単に強力な個であっただけの魔物は、死んだ。
最初のボス戦(原作ボス最強クラス)にかこつけて、ゴブスレさんのトラウマをゴリゴリしていくスタイル(悪鬼
そして、お気付きでしょうか
ゴブスレさん、無傷です
もうすぐ始まる五話次第で、原作改変が必須ですねどないしょ