ガーリー・エアフォース Electronic wing 作:ECMO
今回は割と長いです。
Forced restart signal .
system check .
……status red .
critical damage .
need immediate action .
EA-18G-ANM Preparation for reboot .
ready to reboot .
reboot .
「ッハぁ!いっぁぁぁ」
強い衝撃と共に意識が無理矢理引き戻される。撃たれた左肩が痛い。呼吸が浅い。
[黒ちゃん、落ち着いて下さい。ゆっくり、深呼吸を。痛覚にカウンターパルスをぶつけて痛みを消します。]
言われた通り、指示通りにする
[早く戻って来て下さい、止血してここから離脱します。]
視界に捉えたライノのドーターは鮮やかなサファイアブルーに輝き、APUを働かせ始めたところだ。
「いや…まだする事がある。」
撃たれた左肩を押さえて立ち上がりドーターへ向かって歩き出す。血が止まらない。足取りがフラつく。今にも倒れそうだ。
ぼやけた視界を頼りに目的地までたどり着いた。目の前にそびえるのはサファイアブルーに輝きこちらを見つめるF/A-18E-ANM。
肩を押さえていた右手を離して機首に触れる。サファイアブルーの外装が手に付いていた鮮血の緋色に汚れる。せっかくの綺麗な色が勿体ないな。
少し上を見上げると装甲キャノピーのカメラが、何しに来たのさとでも言いたげにこちらを見ていた。
F/A-18E-ANMがエンジンを始動開始。私もさっさとやる事をやってしまおう。
「…ダイレクトリンク」
青の外装にガンメタルグレーが僅かに割り込み少しだけ広がる。
本来ならダイレクトリンクはNFIという専用設備を使用して行う事だ。NFIを介さないリンクなんて正直に言えば使い物にならない。ノイズが大量に混じるしやり取りできる情報量は少ない。簡単な操作をするだけでNFIを使用する時に比べ数十倍の演算処理が必要になり、さらにノイズの打ち消しの為の演算も行わなければならない。
そもそもNFI無しでライノにリンクして介入出来たのは同じF/A-18シリーズだからだろう。
ドーターは1機種に対して1機しか生まれない。そのルールに従うと私はかなりグレーな存在だ。意外に思う奴もいるかもしれないがF/A-18EとEA-18Gの物理的な違いは、それほど多くないのだ。
私の存在は半分がF/A-18シリーズのアニマであり半分は電子戦機という概念のアニマで構成されていると言えるだろう。
電子戦機という概念、曖昧なアイデンティティによって私はここに存在する。もう半分は?F/A-18シリーズのアニマとしての私は?F/A-18のアニマは私のドーター化より先に存在していた。ライノ。彼女こそF/A-18のアニマだ。
ライノと私はF/A-18のアニマとしてどう違う?曖昧なアイデンティティではなく、確定しているアイデンティティであるF/A-18のアニマとして私とライノはどのくらい違う存在だ?
答えは、大して違わない。僅かな差異しかない。
ライノは私と同じとは言えないかもしれない。しかし私はライノと同じだと言える。
私はライノだと言える。
だからこそ今こうしてライノのドーターにダイレクトリンクで接続出来ている。
ライノがリンクから私を弾き出そうとしているが少しの間は持ちそうだ。ライノはNFI有り、私は無し。数十倍の演算が必要になるハンデだが元々の演算能力の差が大きい。ライノが悪い訳ではないアニマに使用されたコアの能力の差だ。演算処理能力は私が圧倒的に勝っている。
いくつかのコントロールを奪ったところでリンクから弾き出された。
手がピリピリと痺れる。やる事はやった。早く自分のドーターに戻ろう。肩を押さえて歩き出す。少し寒くなってきた。時間をかけすぎた。
ドーターに辿り着きタラップに足を懸け登ると機体が勝手に移動し始めた。白色が制御しているのだろう。アニマのダイレクトリンクを行わずにCCSターミナルによる擬似リンクによってドーターを騙して動かしている。これは機体の機能の殆どが機能しない。タキシングが精一杯の筈だ。何とかコクピットに乗り込む。
[ライノに優しくて自分が撃たれたら意味ないですよ。黒ちゃん。厳しいのは口調だけですね]
「そういうお前こそ優しいのは口調だけだな。白色、躊躇わず撃っただろ。…ぅうッ!」
座席に座り、痛みに耐えて使い物にならない左腕を右手で持ち上げNFIに乗せて緊急時用のベルトで手首を固定する。
[はい撃ちました。私なら。会話の途中でも関係無くライノが敵だと確定した時点で確実に射殺します。好きな子だとか関係ありません。]
「ダイレクトリンク。だろうな、私はお前のそうやって感情を無視するところが嫌いだ白色。」
サバイバルキットから止血剤の袋を取り出す。
[はい知ってますよ。私も黒ちゃんの感情で動くところが嫌いですから。]
「良いな、両想いって奴だ。素敵じゃないか…あぐ…ふん!」
止血剤の袋を右手と口を使って破る。
[黒ちゃん痛いですよ。カウンターでどうにかなるレベルじゃありません。先に動作をプログラムで決めておきます。]
「……分かっている」
弾丸を受けた肩を見る。今まで意識して見なかったのだから、そのまま見なければ良かった。グロテスクなのは嫌いだ。
覚悟を決めて袋の中の顆粒状の止血剤を一気に被せるように放りかけ
「ッ!!ああぁ!ああぅあ!!いあぁぁ!ハッぁぁ!!!」
痛い!イタイ熱い!いたい痛い!耐えられない痛い。何も考えることが出来ないただただ痛い。
身体が勝手に動き大柄な絆創膏の様な物を取り出しシートを剥がして貼り付ける。
「イぁああ!アっ!あぁぁ!ア……」
あまりの痛みに暴れそうになるが動作プログラムに従う身体は動かない。そして唐突に私は意識失った。
[意識喪失!?リンクが保てません。マズイですね。出来る限りカウンターパルスで痛覚をやわらげて…よし、シフト]
「ッイ!イヤぁぁっ!イタイッ!!イダイィ!」
[シフトしたのか!?白色無理するな!すぐに私が!このっ!痛覚遮断プログラムを構成してアニマのソースコードに割り込む!少しだけ耐えてくれ!]
「あぁ!いあい!いあいぃぃ!………ハァハァハァ」
[おい!大丈夫か!白色!]
「だいひょうぶ…や、らいれふ…んっ」
激痛の余韻に耐えながら溢れ出した涙と垂れた唾液を拭います。
止血作業をしている間に機体は滑走路に辿り着いていました。ライノも誘導路をこちらに向かってきています。
早く離陸しましょう。滑走開始、離陸。
《待ってよー。こっちはシステムチェックで大変なんだからさー。さっきあたしのリンクに介入してやった事は機関砲のロックだけ?これであたしの優位性を消したつもりなのー?》
ライノからの無線です。何が大変ですか、こっちは貴女の45口径のせいで死にそうなんです。
[その通りだ!機関砲さえ封じてしまえば貴様が勝てる要素など有りはしない!]
黒ちゃんがスピーカーを使ってライノに応えます。
《へー目視距離であたしに勝てるんだ。すごい思い上がりだねー無理だと思うけどなーグロウラーにはさー》
[私とやる気か?いいだろう、私はグロウラーより強いぞ?]
「そーんな事言って負けるんですよね〜黒ちゃん戦闘機動制御よわよわですから。」
でもまぁ今前席のアニマの身体に入ってるのは私なので黒ちゃんは戦闘機動制御はやらないんですけどね。
[うるさいぞ!白色!]
《それこそさーその翼に抱えてるECMポッド捨てたらー?目視距離戦闘じゃただの重りでしょ》
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sideライノ
「それこそさーその翼に抱えてるECMポッド捨てたらー?目視距離戦闘じゃただの重りでしょ」
特に意図があるわけじゃない。ただ単に思った事を口にする。
《何が悲しくて自分の勝っている要素を捨てるんだ。そんな事するわけがないだろう、馬鹿にしているのか?貴様》
グロウラーの抱えるAN/ALQ-99電子妨害ポッドがジャミングを開始して、あたしのレーダーは使い物にならなくなった。でもレーダーが使えなくても目で見える距離にいる時点でほとんど意味ないと思うんだけどなー。
「んー、グロウラーの事を思って言ったんだけどなー。姉の言うことは素直に聞くべきだと思わない?」
《ならそっちこそ妹のお願いを聞いてくださいよ》
「それは出来ないかなー、さっきも言ったけどまた縛られるのは嫌だしねー。ほらほらグロウラー早く逃げなきゃ追いついちゃうよー?」
《追いつくも何も最初から射程内じゃないですか》
「いやまあ、そうなんだけどさー。グロウラー、今からでも戻らない?2人で一緒に暮らそうよー、戦ってもグロウラーに勝ち目無いんだからさー」
《その気は無いと言っている。理解する気が無いのか貴様》
「んー残念。まあ仕方ないかな断ったグロウラーが悪いんだよー」
目視距離だからレーダー誘導の中射程ミサイルを使う必要もない。短射程ミサイルのAIM-9Xの赤外線シーカーが前方を飛ぶグロウラーを捉える。赤外線誘導のミサイルはレーダージャミングなんて関係ないからね。ロックオン。発射。
ロケットモーターが燃焼して翼端発射レールから飛び出していったAIM-9Xは僅かな蛇行軌道を描きながら加速してグロウラーに向かって行く。
グロウラーは出し惜しみする事なく多量のフレアを撒きながら旋回。随分と鈍い旋回だね、あれじゃ一般機と大差無いよ。さっきあたしが撃ったせいかな?
AIM-9Xはフレアによって目標を見失い外れた。
「動きが鈍いけど大丈夫ー?」
《誰のせいだと思ってるんですか、責任取って下さいよ》
「わお、その言葉なんだかエッチだね」
《脳味噌溶けてるんじゃないかこの変態め》
「ほらほらー次行くよー。回避回避ー」
AIM-9Xを発射。グロウラーはまたフレアを放出したけど、少し撒かれただけで終わった。さっき大量に撒いたせいでフレアの弾切れかな?
AIM-9Xの赤外線シーカーは赤外線画像誘導でIRCCM(赤外線欺瞞対抗)能力が高く多少のフレアでは回避出来ない。さっきのグロウラーみたいに大量にフレアを撒いてシーカーが赤外線画像を捉えられないように機体の赤外線放射を覆い隠さなきゃいけない。
グロウラーは急旋回して回避軌道をとった。AIM-9Xはグロウラーに接近して行き、着弾前に爆発した。近接信管の動作距離よりもずっと遠くで。
何をしたのかと思えばグロウラーの機体からワイヤーが伸びて何かの残骸を吊るしている。それを切り離したと思ったらまた機体から同じものが出て来てワイヤーで引っ張られている。曳航式デコイだ。レーダー誘導の対空兵装から機体を守る為の囮をミサイルと機体の間に割り込ませて盾にしたらしい。
「曳航式デコイをミサイルにぶつけたの?凄いねグロウラー」
3発目のAIM-9Xを発射するも又も曳航式デコイを盾にされて攻撃に失敗。
4発目、あたしの持っている赤外線誘導のミサイルはこれが最後だ。そしてF/A-18シリーズの標準装備での曳航式デコイの携行数は3機だから最後のミサイルも最後のデコイで防がれる。
グロウラーにレーダー誘導ミサイルが当たる訳も無いし、むしろこっちに帰ってくる可能性まである分撃たない方がマシ。機関砲はロックされてる。
なるほど、こうなるとグロウラーが機関砲をロックした理由も分かる。どうしようかなー、まぁここはまだ願えばどうにでもなる場所だし5本目のミサイルでも使えば良いかなー。と思っていた時、4発目のAIM-9Xがグロウラーに突き刺さった。
「え?当たったの?」
機体にワイヤーで曳航されるデコイをミサイルにぶつける無茶な行動は呆気なく失敗したのだ。デコイの横を通過したミサイルはグロウラーの熱源に向かい接近して、測遠装置を起動、熱電池が動作して信管作動。9.4kgの炸薬が爆発して至近距離から多量の金属片を浴びせた。
グロウラーは炎上して機体をバラバラにしながら墜ちていく。そして航空燃料に引火して爆発。膨大な量の燃料を燃やしての大爆発。あたしの機体まで大きく揺らされる。
「こんなに簡単に…」
グロウラーをこんなに簡単に撃墜出来るとは思っていなかった。自分の妹はもっと手強いと思っていた。あたしがグロウラーを撃ったせいかもしれない。全く影響が無いということは無いだろう。
最後くらいは対等な条件で戦った方が良かったかもしれない。……対等な条件?何かが引っかかる。
あたしとグロウラーで対等じゃないもの…電子装備?機関砲の有無?いや、機関砲はロックされてたから無いも同じ事かな……何か引っかかる、同じだった?空港で見たグロウラーのドーターは少し違和感があった。何がおかしかったかな、形が大きく変わってるなんて事は無かった。なら兵装?いつもと同じAIM-9XとAIM-120Cだった。左右の主翼と胴体下に抱えたECMポッドも…これだ!主翼にはいつも通りAN/ALQ-99電子妨害ポッドを抱えてたけど、胴体下は違った。
胴体下に装備していたのは、あれはGAU-22/Aイコライザー機関砲、F-35B/C用のガンポッドだった。
おかしい、あたしはグロウラーに無くてあたしにあるものである機関砲をロックしたのは、一方的なあたしのアドバンテージを消す為だと思ったし、グロウラーもそう言った。でもグロウラーも機関砲を持って来ている。一方的なアドバンテージでは無い。
おかしい事はまだあるジャミングだ。レーダーが未だに使い物にならない。AN/ALQ-99電子妨害ポッドは先端のプロペラを回して発電し動作するから機体からの電力供給を必要としない。だから撃墜直後も少しの間ジャミングが続くのはおかしくない。でも撃墜してある程度時間が経った今でもジャミングが続いている。
気になる事はもう一つある。撃墜したグロウラーの爆発だ。大爆発と言えるほど派手に爆発した。グロウラーの残存燃料だけであれほどの爆発になるだろうか?まるで燃料を満載した給油機を墜としたみたいだった。給油機?そう給油機、この空に居た。グロウラーが連れて来た機体。燃料タンク4本と給油装備を抱えた機体だ。もちろんドーターじゃない通常機、撃墜したグロウラーの回避運動が鈍かったのにも繋がる。
見た目は完全にグロウラーに見えたけど撃墜したのは給油機だったのかもしれない。
「ねえ、グロウラー。聞こえる?」
《自分で撃墜した相手に話しかけるなんて変わった事しますね、ライノ》
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sideグロウラー
「自分で撃墜した相手に話しかけるなんて変わった事しますね、ライノ」
《やっぱりさっきのはグロウラーじゃなかったんだ。グロウラーに見えたけどどうやったの?」
「厚木基地でグリペン達と顔合わせした時に慧君がファントムの話の時に言ってた事ですよ。データリンクを利用したクラック。一発勝負でも意外と使えるものですね。」
《データリンクは繋がってない筈だけど?》
「そっちではそう表示されてるでしょうね。でも実際は私がデータリンクモジュールの操作権を奪ってこちらでコントロールしてますし。」
《さっきシステムチェックした時は引っかからなかったけど?》
「そのシステムチェックに使う自己診断装置も私のコントロール下にありますからそうなりますね。」
《あたしは最初からグロウラーの手の上で踊ってたわけだ。グロウラー、今どこにいるの?どうして撃たないのさー。簡単に撃墜出来るでしょ?》
「ここで撃墜したらライノの射殺を避けて撃たれた私が撃たれ損じゃないですか」
《まだグロウラーはあたしを連れて帰ろうとしてるの?いい加減諦めてよー》
ライノはそう言って進路を変更して降下して行きました。
「行け!」
スロットルを開いて降下、追従します。
ライノは翼を振った後、機体を反転させて急降下、都合よくあった巨大な峡谷に飛び込んで行く。
[白色、深追いするな]
「あれは、誘ってるんです!」
アフターバーナーを使用して追撃。
雲を抜け峡谷に飛び込みます。装甲キャノピーを雨粒が叩いてい視界が悪くなります。
迫り来る岩壁、峡谷は航空機が飛ぶには狭すぎます。高速で流れていく岩に翼を擦れば一瞬で木っ端微塵です。
対地接近警報が鳴り響きます。
ライノが通り過ぎた所を直後に私が通ります。
この狭い空間でアフターバーナーを使用して超音速飛行。正気の沙汰ではありません。しかし減速する事は出来ません。減速すれば自分の発生させた衝撃波が岩壁に当たって発生した反射波によって機体を砕かれてしまいます。死なないために死ぬリスクを負ってでも超音速飛行を維持しなけばなりません。
カーブした峡谷を進むと曲がった先に石柱が待ち構えていました!
突然現れた石柱をバンクしてギリギリ回避。
戦闘機の飛ぶ環境じゃありません。
ライノからの不明な電波を受信しました。
[ECMか?いや、インタラプトこっちのシステムを探ってるぞ]
「デコイOS起動、サブストラクチャー展開してください」
[了解、ライノとのコンタクト、アンダーデコイにシフト]
《グロウラーこんなところまで付いて来て、どれだけあたしを連れ戻したいのさー》
「必ず連れ帰ります」
《その結果あたしが不幸になっても?嫌な思いをしても?それでも連れ戻すの?》
「それは……」
《あたしはさーグロウラーみたいに自由じゃなかったからねーあれはダメこれもダメ禁止事項だらけ。親しみやすいキャラクターだって、そういう風ににしか振る舞わせてもらえなかっただけだし》
「そうですね、知っていました。私は、我々はそれを…知っていました。そして我々にはそれからライノを解放する事も出来ました。」
《…へー、知ってたんだ。知ってて助けることもできたのに、助けてくれなかったんだ。》
「そうです。我々は貴女を助けませんでした。理由は一つ貴女の意思が分からなかったことです。」
《言い訳だね。あたしの意思ってそんなに大切?大切なら今こそあたしの意思を尊重してほしいなー》
「もし我々がライノを縛っているものを取り除いた時、ライノがそれを望んでいなかったら。ウィリアム・シャンケル達、人間にその事を報告したら。アニマを安全に運用する為の安全装置を外した危険な存在としてCCSやAFMの電子知性と私は解体されるでしょう。そしてアニマである私が危険な行動をとった事でライノを縛る安全装置はより厳重な物になります。」
《つまり、我が身可愛さであたしを助けてくれなかったわけだねー》
「ええ、そうです。我々はこのザイとの生存競争に負けるわけにはいきません。人間風情の相手をして戦争が継続できなくなる事を避けなければいけない」
《ふーん》
「ライノ!私達アニマは人間を模して作られています。」
《そうだね。で、それがどうしたのさ?》
「意思疎通を言語音声に頼っています!」
《だからそれが何なのさ》
「言わなきゃ伝わらない事もあります!言ってくれなきゃ分からない事もあります!」
《………》
「助けて欲しいなら、そう言ってください!」
《……》
「ライノ!!」
《何で…どうしてそこまで、あたしを連れ帰りたいの?あたしはグロウラーを撃ったよ。完全に敵じゃん、どうしてそこまで…》
「私が!私がライノを好きだからです!」
《そんな理由で…》
「何とでも言ってください!私はライノが好きです!だから必ず連れ帰ります!」
《グロウラー…でも、あたしはグロウラーを撃っちゃったよ……殺そうとした…それでも?》
「それでもです!」
《あんなことしたのに?…助けてくれるの?》
「はい!助けます!救ってみせます!ライノが望むならば!さぁ!言ってください!」
《……………じゃあさ…助けてよ…。》
「ライノの望み聞き届けました。ええ、良いですよ。助けてあげます。私が!我々が貴女の事を救い出してみせます!ライノ、帰りますよ。機体制御をこっちに。」
ライノはこちらにコントロールを譲渡してきました。帰りましょう。我々の戦争を続けるために。ライノの望みを叶えるために。
突然コクピットに警報が鳴り響きました。
[6o'clock!高速熱源!恐ろしく速い!ミサイル!]
峡谷の中を異常な速度で接近してくるミサイルはこの低空でマッハ5.0の高速を発揮して距離を詰めてきます。
ライノをこちらに回収されたザイの悪あがきですか、手に入らないなら殺してしまえと。
ここは峡谷の中、左右に回避は不可能。上昇すれば障害物が無くなり更に加速したミサイルに食いつかれる。
遥か後方にミサイルが見えた。普通なら目視出来ない遠距離でそれが認識出来たのは断熱圧縮によって先端が赤熱し輝いているおかげです。
この距離も数秒で着弾するでしょう。マッハ5と言えばAIM-54フェニックスミサイルが有名ですが、あれは空気の薄い高高度を飛翔する速度なので全く違うものですね。
現実逃避もほどほどに。ECMは展開中レーダー誘導ではありませんね。先端が赤熱している時点で赤外線誘導でもありません。
妨害手段、無し。
[後ろ!来る!」
ダイレクトコントロールでAIM-120を全弾発射。各3発前方の左右の岩壁に撃ち込みます。着弾直後にライノが通過、岩壁が崩れ落ちてきました。落下してくる岩をかいくぐり何とか私も通過しました。
直後にミサイルが崩れ落ちた岩壁に着弾。巨大な爆発が発生して後方から私達を照らします。
ふぅ、何とかなりました。
安心するのもつかの間。
[第2波接近!またミサイルだ、2発!速い、回避!]
AIM-120は残弾無し、AIM-9では岩壁を崩す威力は無い。さっきと同じ方法は取れません。
AIM-9Xダイレクトコントロール。発射。2発のサイドワインダーはアニマコントロールにより急激なターンをして後方へ飛んでいきます。
ミサイル同士の相対速度はマッハ7程度。当てられるポイントは一箇所。失敗すれば、死ぬ。
着弾、今。片方のミサイルは見事命中した。しかしもう片方はその余波を受けて高速ミサイルとすれ違う。
[接触まで後2秒]
警報が鳴り響くコクピットは随分と時間の流れがゆっくりに感じる。
諦める事はしない。
必要な演算を行う。敵の弾道予測、自機の起動演算。
私もドーターですからね、たまには高機動戦闘をした方がいいかもしれません。
高速演算終了。行動開始。
右エンジンアフターバーナーを維持、左エンジン失火。
左ラダーいっぱい。
ストレーキ上にあるエアブレーキを左のみ展開。
僅かに左バンクしてストレーキに風を受ける。
機体が左向きのフラットスピンに入る。進行方向から90度程度回ったあたりで機関砲をスピンアップ。右エンジンアイドル。
機体はそのままスピンを続け進行方向からから180度機首を反対に向けた。
機体の重心を中心にして機体を180度回したのだ。進行方向に機尾を向けて、エンジンパワーをアイドルへ。EA-18G-ANMは亜音速でバックする格好になりミサイルと相対しました。
RDY GUN。高速射撃管制システム作動。自動発砲。1秒程度の射撃で膨大な数の砲弾がミサイルを迎え撃ちました。
高速ミサイルは着弾前に爆発しました。しかし着弾の0.4秒前、ミサイルと私の間に大した距離は残っていません。
視界が閃光に埋まり、私は意識を手放しました。
やっぱり悲鳴とか苦しむ描写は難しかったよ。
前回からの新キャラ?の白と黒は、ライノの生存ルートと死亡ルートでグロウラーの性格が全く違うものになったから、別キャラとして分けちゃえって作られたキャラです。
空港でライノと会話したのが白の方だったらライノ射殺ルートで空港から離脱後に雪風のグレイシルフ戦を元ネタにしたグレイホーネット戦になってました。
ご意見、感想等、お待ちしております。
次回は挿絵入るかも。グロウラーちゃんの中破絵の予定。色付きだったら良いなぁ。