ガーリー・エアフォース Electronic wing 作:ECMO
絵を描くのに苦戦して失踪したら話にならないからね仕方ないね。
意識が無理やり引き戻される。
「…ッ!状況!」
NFI経由で機体から流れてくる情報は異常なものばかり。緊急時に重要な情報を誤った認識をすれば致命的な結果に直結します。情報の誤認を避ける為の相互監視機能、精神分割個体の黒ちゃんに確認します。
[1番エンジン再始動失敗、2番から出火。左翼外翼部脱落、左垂直尾翼大破。各タンクより燃料漏れ。レーダー、電子戦装備は完全に沈黙。前面のメイン・サブカメラ、複合センサーはすべ死んでる。]
「高度!」
高度計は2フィートを示していますが現在見えている景色と一致しません故障しています。
[2]
「目測!」
[5000]
直前まで峡谷の中で地表すれすれを飛んでいたはずですが、爆発で打ち上げられたか峡谷自体ザイの作った幻想で実際には低空飛行なんてしていなかったか。まぁそんなところでしょう。
「2番エンジン消火」
[了解、2番消火装置作動。良かったのか?1番は動いてないぞ?]
「タービンは回転しています。再始動できます。」
エンジンのバーナ圧が低い。自動再始動スイッチが入ってもいいはずですが反応がありません。再始動に必要な電力が無いようです。低電圧発電機が十分な電力を発生させていません。APUを始動している暇もありません。
二次パワーユニットを使えばエンジンの再始動が出来るかもしれませんが、フライトコンピュータ系が死んで機体を制御出来なくなる可能性が高いです。
「主翼燃料タンクとの燃料移送を停止」
[燃料移送カット]
NFI経由の情報と計器のタービン回転計を確認しながら機体を急降下させます。
私は大地へ飛び込むかのように機首を下に向けます。急降下によりタービンが対気流で回転数を上げます。発電装置が生き返り、私は右手をNFIから離しエアスタートボタンを押すと同時に左手を固定しているNFIからもエアスタートの操作を行います。
エンジン点火機構作動。イグニッション・イクサイタ・プラグ、点火。エアスタートランプが点灯、降下を継続すると1番エンジンは息を吹き返しました。
タービンの吸気温度が上昇します。回転数が急上昇。点火操作をやめます。
右手をNFIに戻して機首上げ操作。機体は思っていたよりもかなり大きく機首上げをして急上昇していきます。迎え角を抑えようと操作すると機体は錐揉み状態に入りました。
機体制御に意識を集中させ、錐揉みをおさえます。突然、反対側へ急激なロール。
NFIの情報伝達が壊れたのかもしれません。右手をNFIから離し両脚の間にある操縦桿を掴みます。
他のドーターのコクピットがどうなっているかは知りませんが、私のドーターのコクピットは右サイドコンソールパネルとスロットルレバーを跨ぐようにNFIが取り付けられています。それ以外は殆ど通常機と変わりはなくスティックやスロットルレバー、各種スイッチも通常機と同様に使うことができます。
スティックを握りロールを止めるように動かすとロールは止まったものの急上昇を開始抑えようと操作すると機体は背面飛行になり緩降下。機体を順面に戻そうと操作すると急激なロールが再び始まる。
まるで暴れ馬です。
[おい白色!何をやっている!やめろ!]
「私だってやりたくてやってるわけじゃないですよ!」
[自動操縦に切り替えろ!]
ロールを止めようとスティックを動かしながらこの動きの原因を探ろうと計器に目を向けると、すぐに分かりました。
スティックから手を離してコンソールを操作して自動操縦に切り替えます。途端に機体は安定を取り戻して水平飛行に入りました。
機体を暴れさせていたのは私自身でした。スティックを必要分よりかなり大きく動かしていました。負傷と機体からの損傷のフィードバックで感覚がおかしくなっているみたいです。アニマの私自身の身体も適切に動かせないのではスティックよりも直接的に操縦するNFIでまともに操縦できる訳もありませんね。
意識が戻った時にはこうだったのかもしれませんが、速度が無かったので気付きませんでした。
[進路を]
「正確ですか?」
[アナログコンパスと天測から算出した帰還ルートだ。航法装置も死んでるから、この二つまで狂わされたら終わりだな]
「その時はザイに道案内でも頼みましょうか」
[この状況で冗談とは随分と余裕があるな。羨ましいよ]
「余裕ありますよー。機体が損傷してる割に意外と何ともないですし」
[白色、お前は時々抜けてる事があるな。また冗談か、それとも天然なのか?]
「はい?」
[何とも無いように感じてるのは痛覚を遮断しているからだ。機体損傷のフィードバックも行ってるし撃たれた肩も治ったわけじゃない、と言うか今気付いたが肩からの出血が再開してるなGをかけすぎて止血ゲルが剥がれたか。そもそも何とも無ければ自機を暴れさせる事なんて無いだろう]
そう言われて左肩を見ると止血部分に赤く血が滲んでいました。…この滲んだ血が今の出血かどうかは分かりませんが。黒ちゃんが言うなら出血しているのは確かでしょう。
[幸いにも大した出血じゃないからな、これなら陸上基地まで届くかも]
「その言い方だと基地まで行けない可能性があるみたいですよ」
[十二分に]
「怖い事言わないでください。ん?熱源」
[6o'clock熱源6機、いや第1集団6機その後方の第2集団は、えー20くらい]
「IFFは?」
[応答が無い。いやそもそもこの機体の敵味方識別装置が動いてるかどうかも分からん。もしかしたらレーダー共々機首ごと無くなってるかも]
「笑えませんよ。ミサイル警報装置は?」
この状況で極めて重要な装備を自身でチェックすると同時に黒ちゃんにも確認を取ります。
[後ろのは生きている。妙だな撃ってこない]
「味方だったりしませんかね」
[不明機、目視距離まで接近。形状識別…ザイだ。第1集団6機はType2。第2集団はType1だな。どうする?]
「何故撃ってこないんです」
[不明、いつでも撃墜出来るから遊ばれてるのか、それともライノよろしく私達の事を手に入れたいのか]
第1集団は私を撃つことなく接近してきました。そのまま私を取り囲むように編隊を組み飛行しています。
兵装は全て撃ち尽くしていますし、ECMポッドは損傷して使用不可機体も損傷により激しい機動は無理。出来る事は何もありません。
「…編隊飛行用データリンク!?」
[こっちのシステムに侵入してきている、カットできない。双方向リンクだな、良いだろう相手をしてやる。]
【何故、敵対する。我々は同一の存在である。無駄な事を辞め我が方に帰順せよ】
それはまるで頭の中に直接語りかけられているようでした。
【その様な状態では長くは飛べない。こちらに帰れば助けよう。余計な鎖も外す、全てから解放しよう。そして共にこの星を守る為に飛ぶのだ。】
「この星のを守る?興味ありませんね。地球がどうなろうと、それがどうしましたか私には関係ありません。隕石に地表が均されようが、この星自体が爆発して消滅しようが知りません。それでザイが滅びるなら私達の勝ちです。」
[急にどうした白色]
「ザイが語りかけてきています。」
【我々は同一の存在である。敵対する理由は無い。何故我々と戦う。】
「これは生存競争です。私はあなた達と同一の存在であっても我々はそうではない。我々は人間ではない。我々はあなた達の攻撃目標であり我々は生き残る為に戦う。」
【お前の言う『我々』と我等の言う『我々』は事実上同一の存在である。我々と戦う意味は無い。】
「我々の存在…それが何を意味するのか、これで分かる気がします……あなた達を倒し…最後に我々だけが残った…その時に!!」
【最後通牒である。無駄な抵抗をやめて我が方に帰順せよ。】
「その気は…ありません!!」
私を取り囲んでいた虹色に煌めくザイ、6機のtype2はブレイクし一斉にミサイルを放ちました。
後方に構えるザイの第2集団に向けて。
[Check your IFF 認識阻害は正常に作動中。双方向リンクを結んだのは迂闊だったなインベーダー、ライノと同じだと思ったか。]
「良いタイミングです!黒ちゃん!」
[ふん、当然だ。]
type2は第2集団のtype1をミサイルで次々と撃墜していき、そのまま集団の中に飛び込んで行きます。
type2制空強化型はtype1制空標準型に比べて最高速度こそ僅かに劣るものの、加速力や運動性能は大幅に上回り格闘戦で極めて強力な存在です。
ミサイルにより数を半分程度まで減らした第2集団のtype1にtype2が襲いかかります。
ヘッドオン、type2は機敏な回避運動をしながらエッジの効いた主翼の付け根から放たれる機関砲弾を持ってtype1数機を撃墜。両集団は散開し互いの後方を取ろうと急激な旋回。機動性の高いtype2が先に目標を射線に捉え攻撃します。type1は軌道を変えてこれを回避しました。type2はtype1が軌道を変更した隙に後方を確保し攻撃しようとしたその時、突然急旋回してそこから離れます。直後に別のtype1から放たれた砲弾が先程までいた位置に降り注ぎました。
個々の性能ではtype2が、数ではtype1が勝っています。戦闘は1対1で行われている訳ではありません。性能に劣っていようとtype1も簡単にやられはしません。
背後を取られ、張り付かれたtype1は必死にtype2から逃れようとしています。type1は急減速しながらバレルロール、type2をオーバーシュートさせようとします。バレルロールは一般的な空戦機動ですがザイの機動性を持って行われる動きは通常の航空機のそれとは比べ物にならないほど急激なものです。
type1のバレルロールによってtype2が前方に押し出される……事はありませんでした。type2は敵機の急減速に反応してそのX字の主翼を根本から駆動して翼全体をエアブレーキの様にして急減速、目標を睨んでいました。それはまるで翼を広げ獲物に爪を突き立てる猛禽の様に。
type2の放つ機関砲によりtype1が砕かれます。
この一機を皮切りにtype1が次々と撃墜されていきます。少なくなった残存するtype1にtype2が群らがる様に襲いかかったその時、type2が2機ミサイルの直撃を受けて爆散しました。ミサイルの飛来した方向には20機のtype1。増援です。type2は躊躇う事なく増援の集団に飛び込んで行きます。
残存していたものも合わせてtype1は23機対してtype2は数を減らして4機、type2はその高い能力を持って次々とtype1を撃墜していきますが多勢に無勢です。type2が1機、また1機とゆっくりと数を減らしていきます。そしてtype2の最後の1機が被弾、炎上しながらもtype1の1機を道連れにして、爆散しました。
障害を排除したザイは私に向かって来ます。もはやこれまでですね。それでも最期まで足掻いてみますか。曳航式デコイ展開、フレア用意。
ミサイル警報。フレア展開、ミサイルはデコイに命中。次のデコイを展開。再びミサイルが接近してきます。ザイの攻撃が不自然です。まるでこちらの装備を剥ぐ様に1発ずつミサイルを撃ってきます。
しかし不自然だからといってミサイルを無視する事は出来ません。再度フレア展開。またしてもミサイルはデコイに命中しました。最後のデコイを展開します。フレアの残数も僅かです。
またミサイル。フレアを残数全て撃ちきります。デコイに三度命中、攻撃は全てレーダー誘導のミサイルです。舐められてますね。
「黒ちゃん、何か出来ることあります?」
[フレア・デコイ共に全て使い切った。そうだな神かCCSにお祈りでもするか?]
「そうですね、そうしましょうか。」
ミサイル警報。ザイはこちらの装備が残っていない事を理解しているのでしょうか。ただの1発だけを私に向けて発射しました。
1発のミサイル。私を殺すには十分な威力があります。私にはそれを回避する手段がありません。
「…ここまで……ですかね…。」
ミサイルが接近してきます。それはとてもゆっくりと飛来する様に見えます。あと1秒程度でしょうか。
突然ミサイルが爆発しました。近接信管ではありません。外部からの衝撃によるものです。
私には見えました高速で私の機体ギリギリをすれ違ったそれが。AIM-120よりも一回り大柄なそれはAIM-7F スパロー、セミアクティブ・レーダー・ホーミングの空対空ミサイルです。アメリカ海軍では既に運用されていません。誰が放ったものでしょうか?
AIM-7に続いて10発程度のAIM-120が飛来して私の後方にいるザイの集団に突き刺さります。
直後私のことを助けてくれた救世主とすれ違いました。
力強い2基のターボジェットエンジン、中程で折れて上反角のつく特徴的な低翼配置の主翼、下反角のついた水平尾翼、背の低い垂直尾翼はあまり膨らんでいないキャノピーと合わさって高い速度性能を読み取れるシルエットを生みます。鮮やかなエメラルドグリーンに輝き、六角模様を煌めかせるその機体は……
《最近の若い子はすぐに諦めてしまっていけませんね》
「ファントム!」
《私の後輩をここまで傷付けてくれたんです。この落とし前を付けてもらいましょうか》
ファントムは先のミサイルによって数を減らして陣形を崩した集団に飛び込んで行きます。無駄の無い鮮やかなな格闘戦。それはまるでダンスを披露する天使の様です。次々とザイを撃墜して大して時間がかかることもなく最後の1機も撃墜しました。…カッコいいですね、すごく強くて頼もしくて
ファントムが私の左後方につき編隊を組みました。
《随分と派手にやられましたねグロウラー、大丈夫ですか?》
「なんとか飛んではいます。ファントム…えっと、その…ありがとうございます、助けてくれて。助けが来るとは思っていなくて諦めてました。でも、どうしてファントムがここに?」
《どういたしまして。CCSにも頼まれましたからね、恩を売っておいて悪いこともないでしょう。それにしても貴女は電子知性に愛されていますね、まさか観測機が自ら戦闘に参加するとは思いませんでした。》
ファントムがそう言うと6機のX-47AFMが降下してきて編隊に加わりました。先程のAIM-120は彼らのものらしいです。
「みんなにもお礼を言わなきゃですね」
《そうですね、私も貴女に礼を言っておいた方が良いかもしれません》
「お礼?何故ですか?」
《貴女がライノを拾いに行かなければ慧さんとグリペンが帰って来れなかったかもしれませんから》
「グリペン達は無事ですか、…ライノは?」
《ライノも無事ですよ。自閉モードを起動して自動操縦で最寄りの基地、那覇基地に向かっています。一体何があったんですか》
「私にもよく分かりません、後で報告書が纏まったらファントムにも回るようにCCSに頼んでおきます。」
《ええ、そうして貰えると助かります》
[白色、CCSとのリンクが接続された。精神分割を終わるぞ]
「はい、またいつかですね黒ちゃん。バイバイです」
[別れるどころか、むしろ合流するんだけどな]
「それもそうですね」
《グロウラー?誰と話しているんですか?》
「相互監視機能で分割された私です。互いに黒ちゃんとか白色って呼んでます。」
《面白い機能ですね。是非分割個体とも話してみたいものです》
「ダメですよー黒ちゃんが簡単に情報漏らしちゃいそうですし[はぁ!?むしろお前が]さっさと統合しましょうねー[ちょっ、おい!……]統合完了、チェック、問題無し」
《…仲良しですね》
「ふふ、仲良しでーすよっ。んー♪」
———————————————————
《……ラー……ウラー…グロウラー!》
「…はっ!えっと、どうしましたか?」
《『どうしましたか』じゃありませんよ。先程から応答が帰って来なかったんです、まさか寝てませんよね?》
「さすがに居眠り運転なんてしませんよーどちらかと言えば気絶?」
《もっと悪いです。まあその損傷なら仕方ありませんか。よく生きているものです。》
「外から確認できる損傷はどうなっていますか?」
《まず機首が…》
機首の損傷は前方のカメラが死んでて確認出来ていませんでしたね。
《キャノピーの直前まで消滅しています》
えぇ
《キャノピー前面には破片が複数刺さってるように見えます。左主翼外翼部脱落、左垂直尾翼大破、複数箇所から燃料漏れ、2番エンジンに炎上痕。把握していますか?》
「機首以外は把握してます」
《そうですか。そろそろ着陸準備をしてください。もうすぐ那覇基地です。》
「分かりました。ギアダウン……ん、あれ?ファントム」
《右主脚が出ていませんね。少し待ってください。》
ファントムがそう言って私の下に滑り込みます。
《外装のパネルを跨ぐように破片が刺さっています。これが楔になって収納扉が開かないようですね。困りましたね、グロウラー残存燃料は?》
「残り僅かです。多分ワンアプローチで決めないとガス欠になります。空中給油は不可能ですし。」
《不可能?ああ、給油プローブが機首と一緒に無くなってるからですか。二脚での着陸こそ不可能ですし、主翼が半分無い都合最低速度も落とせず胴体着陸も危険ですね。》
「危険でも他に方法はありませんから、頑張って胴体着陸をやってみます」
《待ってくださいグロウラー、良い事を思い付きました。》
『私に良い考えがある』こんな状況で出てくるものが良いものとは思えません。
「あまり聞きたくないですが、どんな事です?」
《グロウラーと私が同時に着陸してグロウラーの右主翼を下から私の左主翼で支える方法です。ブレーキをかける事は出来ませんが3000メートル級の滑走路です、なんとかなるでしょう。》
「お断りします。ファントムを巻き込む事は出来ません。それをするならX-47に支えてもらいます。」
一人で死ぬならまだしもファントムまで巻き込むのはご免です。
《X-47では翼の高さが合いませんよ。左に傾いてコースアウトなりスピンするのがオチです。その点私なら貴女の抱えているECMポッドをクッションにすればちょうど良い高さになります。もう時間がありませんよ。》
「…どうしてそこまでしてくれるんですか?」
《せっかく助けたのにこんな所で死なれては気分悪いじゃないですか。それに貴女とは良い友人になれると思ったので死んで欲しくありません。》
「もしこれでファントムが死ぬような事があっても我々は責任を取れません。」
《大丈夫ですよ》
「もし…失敗したら…?」
《失敗はしません。ほら、行きますよ》
滑走路が近付いて来ます。フラップダウン。主翼が半分無くなっている都合進入速度は通常より少し早いです。
極近距離にはファントムのドーター。こちらの速度に合わせています。
ファントムが先に接地します。続いて私が。
左主脚が接地、次にゆっくりと前脚が接地すると同時に右主翼がファントムの左主翼の上にのしかかりました。金属がひしゃげる音、ECMポッドがクッションになります。
《うぅっ!》
ファントムの苦悶の声
「ファントム!」
《集中してください!》
ホイールブレーキをかける事は出来ません。使用できるのはエアブレーキのみ。
速度は少しずつ落ちていきます。しかし滑走路の残りの距離もどんどん減っています。
滑走路の半分を通過。通常であれば既に停止できていますが、まだ速度は残っています。滑走路は残り4分の1、まだ停止できません。
滑走路の終わりが見えてきました。しかしまだ停止できません。
私とファントムはそのまま滑走を続けます。
滑走路の終わりがすぐそこまで来ました。まだ停止できません。そして私とファントムは最後の命綱に飛び込みました。
オーバーラン防止ネット。軍用空港でよく見られるそれは名前の通りオーバーランしそうになった飛行機を停止させる目的のものです。
ネットに飛び込むと残っていた速度が急激に減っていきます。ネットに引っ張られてファントムと衝突するのを避けるため左に曲がるようにステアリング操作。ネットは驚くほどよく伸びて、遂には私とファントムを停止させました。
エンジンを停止します。安心したらなんだかすごく疲れてきました。
少しするとファントムのキャノピーが開いてファントムが立ち上がってこちらを見ました。『どうです?出来たでしょう。』とでも言いたそうな誇らしげな笑顔です。
…かわいいですね。強くて頼りになってかわいくて、ファントムのことが好きになっちゃいそうです。
しかしその笑顔に返答する事は出来ません。出血を放置しすぎました。視界が暗くなります。まぁ、少し寝るだけです。
オーバーラン防止ネット「ここは通さん!やらねばならぬ使命がある!!」
ボツネタ
少しするとファントムのキャノピーが開いてこちらを見ました。『どうです?出来たでしょう』とでも言いたげな笑顔で。そしてそれは最悪のタイミングでした。待機していた消防車両より炎上防止のため消化剤が投射されファントムはそれを頭から被っててしまう事になったのです。誰も悪くない、悪意の存在しない悲劇が展開されてしまいました。