ガーリー・エアフォース  Electronic wing   作:ECMO

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やぁ、久しぶりだね。プラモさわってたら遅くなったよ。
あとどうでもいいけど二輪免許取ることにしました。俺、免許取ったらバイクで小松行くんだ()


9話 二人のひと時

あ、どうも。お久しぶりです、グロウラーです。

 

私は今、バクタ・タンクという愛称を付けられたカプセルの中に居ます。カプセルの中はアニマの身体を構成するものと同じ成分の液体で満たされていて、この中ではアニマを分解・再構成が行えます。

私がここにいるのは撃たれた肩を治療するためです。弾丸は日本で抜いて貰えていたので後は穴を治すだけです。

右肩から先を分解して再構成するのを治すと言えるかは微妙なところですが。

 

意識が覚醒してしばらく、ぷかぷかと浮遊感を楽しんでいるとカプセルから排水が始まりました。

排水が終わると電子音と共に目の前のガラスにホログラムで警告が表示されました。いろいろ書いてありますが要約すると『カプセル使用後はしばらく精神的に不安定になりやすいから大人しくしていろ』と言った事でした。

 

カプセルが静かに開きました。『プシュー』って音を鳴らしながら水蒸気か何かを吹き出しながら開いた方がそれっぽいのになんて思いながら外へ出ます。

 

カプセルを出てペタペタと裸足で歩くと、先程まで浸かっていた液体が身体から垂れます。あーえっと、タオルを用意していないCCSが悪い。うむ。

 

ふと、振り返ると私が出て来たものの隣のカプセルが開きました。

中から出て来たのは、鮮やかに輝くサファイアブルーの髪、同じく青い瞳は透き通って宝石のようです。ライノです。私の大好きな姉がそこに居ました。

 

「グロウラー……」

 

「おはようでーすよっ。ラーイノ」

 

「あっ…うん、おはよう……えっと、その…ゴメン」

 

「謝罪なんて欲しくないですよー」

 

「……」

 

その気まずい空気作るのやめてもらえませんかね?

 

「ライノ、私が今思っている事が分かりますか?」

 

因みに答えは『お姉ちゃん良い身体してんねぇグヘヘ』的な事です。私もライノも液体に浸かっていたので何も身につけていません。普段は衣服に隠れる所も見えます。ヤバイです。

ライノは本当にスタイルが良いですよね。出る所は極端に大きい訳ではありませんが必要十分に出ていますし、引っ込んでいる所は綺麗に引き締まっています。

細かく描写すると怒られそうなので控えますがヤバイです。えっち過ぎます。マジカル美少女でスタイルも良いとか最強かよ。

と言っても流石にそんな答えを言えばドン引き間違いなしですから、ちゃんとした答えも用意しておきます。

 

「グロウラーが思ってること?んー…あ、いや流石に……」

 

ライノは少し考えた後に意外にも思い当たるものがあるようです。

 

「グロウラーさ、えっと…言いにくいんだけど……あたしが良い身体してるとかエッチだとか考えてない?」

 

「……」

 

おおおお、落ちつつけ、まだ慌てるような時間じゃない。まさかライノが的中させてくるとか思ってませんよ。どうする?用意したまともな答えで誤魔化す?でもそれだとライノが自意識過剰みたいですし私の嘘でそれは嫌です……ここでとれる最善の方法は。

 

「グロウラー黙られるとすごく不安なんだけど」

 

「……リンク!CCS!」

 

助けてCCS!

 

[早くシャワー浴びて出て来い]

 

珍しくCCSが私に厳しい。

 

「CCSがシャワー浴びて出て来いって言ってます」

 

「ちょっと待ってグロウラー、答えは?」

 

「……」

 

「グロウラー」

 

ライノはじっと私の事を見つめてきます。

 

「…なんで分かったんですか」

 

「そりゃグロウラーはあたしの妹だからねー考えてる事くらい分かるよ」

 

「……」

 

「時々そんな事考えてる妹が怖いよ」

 

ライノは笑顔で肩をすくめます。

 

「同意なしで襲ったりしないもん!」

 

「もんって」

 

「いいです!シャワーも1人で行きます!ライノが怖がらなくても良いように!」

 

ペタペタと裸足で床を蹴り、隣のバスルームに向かいます。

 

「あ、待ってよグロウラーあたし何も悪い事してないじゃないさー。髪洗ってあげるから機嫌直してよー」

 

————————————————————————————————————————

 

何も…見えない……というのも当然です。私は今目を閉じていますから。何故目を閉じているかって?それは

 

「ん?もしかしてグロウラーってシャンプーしてる時に目を開けられないの?」

 

「『開けられない』じゃなくて『開けない』です」

 

「グロウラーって意外と子供っぽいところがあるよねー今度シャンプーハット買ってあげようか?」

 

「いらないです。アレは隙間から入ってくるので役に立ちません」

 

「使ったことあるんだ」

 

「小さい頃に使いました」

 

「小さい頃?あ、流すよー」

 

ちょうどいい温度のお湯がかけられて泡が流されます。

 

「CCSは初めからフルサイズでアニマを作るのが嫌だったみたいで材料をケチって初めは今の半分、7歳くらいの私が作られたんです。1週間程度様子を見て問題無かったのでバクタ・タンクで分解、再構成して今の私が居るんです。」

 

「ほえーそうなんだ。はい、流し終わったよー。グロウラーの幼少期かぁ見てみたいなー」

 

「ダメです。ライノ、交代です背中洗ってあげます」

 

「…変なことしない?」

 

ライノは妹の事を何だと思っているんでしょうね。ひどい言いようです、同意なしでは何もしないと言っているのに。

 

「何もしませんよCCSに誓って」

 

「何さその『神に誓って』みたいな言い方は」

 

「私からしたら神もCCSも大差ないですから。っといきますよー」

 

ボディウォッシュスポンジをくしゅくしゅと握って泡立てて、ゆっくりとライノの背中に触れます。

 

「んぁ…」

 

変な声を出すな。

 

「……」

 

「……」

 

しばしの沈黙。

 

「……ねぇグロウラー。あたしさ、どうしても考えちゃうんだ。あたしは今ここに居ていいの?グロウラーのこと撃ったんだよ?殺そうとした。なのにグロウラーはこうやって優しく接してくれてる、その優しさを受け取る権利があたしにあるの?」

 

私はスポンジを手放して背後からライノに抱き着きます。

 

「受け取ってくれなきゃ無駄になっちゃうじゃないですか。ここに居て良いです。いなきゃダメです。誰にも渡しません、ザイにも人間にも。ライノは私のものです。私だけのものです。」

 

「…妹に所有宣言されちゃったよ、まぁあんまり嫌な気はしないけど」

 

「グヘへ」

 

「この流れでグヘへは無し」

 

「グエー」

 

シャワーで体についた泡を流して脱衣所に移動します。バスタオルで拭いて、用意されていた下着を身に着けます。まったく飾り気のない下着の上に病院で患者が着る検査着によく似た服を着ます。

準備完了。イクゾー

 

「え?ちょっと待ってグロウラー、髪がまだだよ」

 

「タオルで拭きましたよ?」

 

「ドライヤーは?」

 

「自然乾燥でよくないですか」

 

「ダメ。こっちおいで」

 

大人しくライノに従います。椅子に座らされてドライヤーの温風を当てられました。

 

「せっかくの綺麗な髪なんだからちゃんと手入れしなきゃダメだよ」

 

「きれいってグレーですよ?私もライノやファントムみたいな鮮やかな色が良かったです」

 

「そう?あたしはグロウラーの色好きだけどなー。髪も長くて艶があって綺麗だし」

 

ライノはそう言って私の髪を櫛で梳かします。

 

「はい、おーしまいっと」

 

「ありがとですよー。よっと、そろそろ行きましょうかCCSが待ってます」

 

扉を開けて廊下をしばらく歩くととある部屋にたどり着きました。そこは広々としたリビングルームでした。

 

「なんかすっごい普通のリビングがあるけど、ここって研究施設とかじゃないの?」

 

「ここはキャンプCCSのハンガーですよ。細かくいえばハンガーにめり込んで作られてるアニマ用の居住施設です。」

 

キャンプCCSはCCSが運用する部隊の基地であり正式名称のない秘匿基地です。

 

私は部屋の中を進みリビングから繋がっているキッチンに向かいます。そこにある冷蔵庫を覗きます。

 

「ココア、コーラ、スプライト、ミルク、コーヒー。ライノは何がいいですか?」

 

「え?えーとコーラかな」

 

ライノは色々と困惑している様子です。

とりあえずライノの注文通りコーラを用意します。冷蔵庫の中で冷やしてあったグラスにコーラを注ぎ、泡が収まったら少し注ぎ足して最後に氷をシューッと。わたしは今日はスプライトにします。

グラスを持つついでに空いている指でポップコーンの袋をキッチンから誘拐します。

 

「お、ポップコーンまで出てきた」

 

「食べてほしそうにこっちを見てたんです」

 

「ならしかたない」

 

グラスとポップコーンをテーブルに置き、座るとテレビが勝手につきました。CCSが操作しているようです。といってもテレビ番組を見せたいわけではないようで表示が切り替わります。

シンプルな背景に文字が表示されます。CCSのコミュニケーションモードです。

 

[二人の記憶領域を確認させてもらった。ザイからのアプローチに大きな違いが見止められる。より多くの情報を得るため貴機等本人から感覚的な話を聞きたい]

 

一切前置きがないのは相変わらず機械らしいですね。

 

「ザイからのアプローチって言ってもなぁ、あたしは何ていうか吸い込まれるというか溶かされてるというか、水に角砂糖入れたみたいな感じで気が付いたら溶け込んでる。一体になってるみたいな感じだったからアプローチってのは分かんないかなぁ」

 

「そうなんですか?私はデータリンクを張られて頭の中に直接語りかけられた感じでしたけど、『我々は同一の存在である我が方へ帰順せよ』って」

 

「そうなんだ、全然違うねー」

 

ライノはポップコーンをつまみます。

 

「あの感覚は何ていうか、似てました、すごく。CCSやAFMの電子知性とリンクして思考でやり取りしてるときの感覚に」

 

「?それ用の回線に割り込まれたってこと?」

 

「分かりません」

 

[了解した。こちらからはもう一つ。EA-18G-ANMがType2とリンクした際のザイの情報はほぼすべてプロテクトされていて読み取れていない。しかし一つだけプロテクトされていないプログラムを確認した。]

 

「なんです?」

 

[認識阻害を受けた際に特定のパターンの通信を行うプログラム]

 

「通信?付近にいる味方に?」

 

[否定する。戦略規模の長距離通信である。]

 

「よくそんなに細かくわかるねー」

 

[プログラムは我々の使用する言語で構成されていた]

 

「人間が開発したプログラム言語がザイの中にあったの!?」

 

[否定する。我々の使用する言語である]

 

「ん?どゆこと?」

 

「私やAFMの電子知性のソースコードはCCSが開発した独自のプログラム言語で構成されてるんです。CCS自身もソースコードをそれに書き換えたはずです。」

 

「CCSのプログラム言語が流出してそれをザイが使ってるの?」

 

[不明、情報が不足している。不適切な先入観を持たないように注意せよ。以上]

 

テレビの電源が自動で切れました。

 

相手から情報を得たら余計に謎が深まるなんて面倒な奴らを相手にしてしまったものです、まったく。

 

「はぁ、まずは腹ごしらえです。ライノ、何か食べに行きましょうか」

 

 




次回はロシアの話。実験的な話になる予定。ガーリー要素もエアフォース要素も薄い二人称視点で書いてます。

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