私の新しい仕事はハンターです   作:abc2148

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日間で上位に入っているのを見た時は驚きました。


騒動終結

「これはまた、トンデモナイものを持ってきやがったなカムイ」

 

ヨタロウにジャギィ達が残したアオアシラの骨と皮を渡せばなんとも言えない顔でカムイを見た。毛皮はしなやかで分厚く、甲殻は丈夫で厚い、これらは下手な刃物では全く通じないと感じられる程のものだ。爪や牙に至っては下手な刃物よりも優れた切れ味と丈夫さを持っているだろう。当然村の中しか知らないヨタロウにはそれらを兼ね備えたモンスターの事はよく分からない。知っているのはジャギィ位だ。アオアシラに関してはカムイから教えられるまで知らず、いきなりそのモンスターの骨と皮を渡されればこうなっても仕方がないだろう。

 

「ホントに命懸けでしたよ、もう二度としたくありません」

 

「だろうな。けどコイツの用途は決まっているのか?」

 

見れば骨と皮は血で汚れてはいるがモノ自体の品質は良いほうだ。おまけに巨体であるため利用できる部分は多い、既にヨタロウの頭の中では他の仕事仲間と共にアオアシラの素材を生かしてどういったものを作るか頭の中で考えを巡らせている。だが前回の弓の時の様に先走ることはせずカムイの要望を聞いてから取り掛かるつもりだ。

 

「いいえ、今のところはないので自由に使ってください」

 

だがそんな自制心もカムイの言った言葉で吹き飛んだ。

 

「……いいのか?本当にいいのか?後で文句を言っても知らないからな!」

 

しつこい位に確認するヨタロウ。勿論アオアシラの素材を好きに出来るのは願ったり叶ったりだ。だがモンスターの素材を調達出来るのはカムイしかいないのだ。ここで関係が抉れる様な事は避けたかった。

 

「いいですよ。それにいきなりアオアシラの素材を渡して防具なり武器なり作れと言われても困るでしょう。まだ誰も扱ったことのない素材です。いっそのこと練習として使いつぶして下さい。次にアオアシラを狩れた時にお願いします」

 

勿論カムイにも考えがあっての事だ。そもそもいきなり未知の素材を渡して武器や防具を作れというのは無理であるとカムイは考えている。完成できたとしても性能は未知数であり、信用できるかさえ分からない。ならばアオアシラの素材の特性を知るために練習として使いつぶしてもらうほうがいい。武器や防具は次回に持ち越す事にする。これがカムイの下した判断だ。

 

「そうか……分かった!存分に使いつぶさせてもらう。だが使えそうなものが出来たら渡す、それでいいか?」

 

「それでお願いします」

 

カムイの考えを理解したヨタロウは顔を真剣にさせるが口元だけは違った。余程自分の好きなように素材を使える事が嬉しいのだろう、自覚してはいないだろうが口だけが笑っていた。この様子ならばアオアシラの素材もしっかりと活用してくれるとカムイは確信した。

 

するとアオアシラの素材を丁寧にしまった後ヨタロウは小声で尋ねてきた。

 

「ところで蜂蜜に関してだが……正直なところどうなんだ?」

 

口に出すのは村で一番熱い話題だ。そして目の前にいるカムイはその話題に深くかかわっている。聞かない手はなかった。

 

「これはもうアヤメ達の頑張り次第ですよ。どうなるかさっぱりわかりません」

 

これは予想できるものではなかった。そもそもカムイの頭の中にあった不確かな情報をもとに始めた事で、どちらかと言えば失敗する可能性が高いとカムイは考えていた。だがアヤメ達、女衆の出す気迫を前にしてみれば、もしかしたら成功させてしまうのではと考えてしまう。正直どうなるかは蓋を開けてみるまで分からないのだ。

 

「そうか……、そうだよな~」

 

そう言って残念そうな顔をするヨタロウ。そうなっても仕方なかった。なぜなら彼も中毒者の一人なのだから。

 

既に今回得られた蜂は渡した。後はアヤメ達の仕事であった。正直なところカムイはアヤメ達が成功するとは考えていなかった。

 

 

 

 

 

 

結果から言えば養蜂は成功した。……いや、養蜂の目途が立ったといえばいいだろう。蜂蜜という甘味を知った村人達、いや、村の女衆の蜂蜜に対する執念は凄まじかった。

 

まずカムイが言った蜂が過ごしやすい環境を整える。これは蜂については現時点でよく知っているであろうカムイから聞くことから始まった。巣を作っていた場所はどこか、日影か日向か、巣の材料は、周りはどんな環境だったか、等々……。カムイが持つ情報を絞りだすように行われた尋も……、もとい、質問は長く続いた。そうして得られた情報をもとにして村の利用されていない土地にいくつかの蜂が住みやすいような環境を整えた。

 

次は蜂を村に連れてくること。これはカムイにしかできないことだった。一回村を出るたびに複数の蜂の巣を持って帰り、加えて蜂が逃げ出さないように、また蜂が死なないよう注意しながらの作業だった。ある時は巣を布に包んで持ち帰り、ある時は特製の木箱の中に蜂の巣を入れて背負うこともあった。それを平原で、川辺で、森の中で、崖で、カムイは泣き言を言わずにやり遂げた。一応カムイも責任を感じていたのだ。持ち帰った蜂蜜のせいで村は混乱し、村長が画策していた村の拡張計画はいったん中止になる有様。まだ会議に上がっていないことがせめてもの救いだった。

 

だがそれにも限度があった。六回、それがカムイが蜂を村に持ち帰った回数だった。汗水たらして連れてきた蜂はすぐさま村のアヤメを頭目とした蜂蜜計画(カムイ命名)者たちに引き渡され、飼育が試みられた。だが誰も経験したことがない蜂の飼育は当然失敗した。だが計画に携わった者、女衆は諦めなかった。失敗した原因を考え改善する、そしてまた飼育を試みる。当然カムイもそれに付き合ったが、失敗回数が四回になった時には計画については半分諦めていた。そして五回目では諦めた。だからと言って計画から抜けることは出来なかった。寧ろ抜け出した後の女衆が恐ろしくて満足するまで付き合う以外の道しかなかった。六回目では周辺の蜂の巣を取り尽くしてしまった。七回目以降は遠くまで行く必要があり考えただけでカムイは気が滅入りそうになった。そして案の定六回目も失敗した。

 

だがここで事件が起こった。カムイが重い足取りで家に帰り、翌日の準備を行った次の日、死んだような目で出発しようとしたところを突然関係者に呼び止められたのだ。そして巣がある場所まで連れてこられ、そこで目にしたものは巣を作ろうと集まっている蜂達の姿。それはカムイが連れてきた蜂ではなかった。そして理解した、何処からかやって来た蜂が勝手に住み着いたのだと。

 

この事件に蜂蜜計画の女衆は喜び、そしてカムイはその場に蹲り静かに泣いた。

 

だがここで誰かが言った

 

「蜂が住み着いたのはいいんだけど、どうやって蜂蜜を取るの?」

 

その瞬間、喜んでいた女衆は一気に静まった。そして互いに顔を見合わせ、最後にはアヤメに見て、アヤメはカムイを見ていた。

 

「カムイ、何かいい考えある?」

 

「今はそっとしてくれ……」

 

間髪入れずに答えたカムイは蹲ったままだ。余程ショックだったようでシクシクと泣いている。

 

「そうはいかないわよ、ここで何か考えないと蜂を飼っただけで終わってしまうもの」

 

だがアヤメもこればかりは譲れない。

 

「確かにあたし達はカムイに苦労を掛けたわ。何回も失敗してその度に蜂を持ち帰ってもらって、けどその失敗のおかげで此処まで来れたのよ!無駄じゃなかったの!」

 

何とかしてカムイを励まそうとする。実際のところカムイの協力が無ければここまで辿り着けなかったのは間違いないのだ。失敗も無駄ではなく、そこから得られた経験によって蜂が住み着いてくれるようになったのだ。だがカムイは変わらずに俯いたままだ。

 

「えーと、じゃあ……」

 

褒めてもダメならどうすればいいか。アヤメは考え抜き、そして取って置きの手札を切る。

 

「蜂蜜はカムイに多く支給する」

 

ピクリとカムイが動いた。

 

ーーもう一押し!

 

「蜂蜜が収穫出来たら必要な分だけ優先して支給するってのはどう」

 

これが今アヤメに提示できる限界だ。村人の多くが虜となった蜂蜜だ、カムイも例外では無い。勿論これは考えなしに出した条件ではない。突飛なことを考え付くのが得意なカムイの事だ、自分達だけだと食べるしかない蜂蜜の有効利用を考えてくれるとアヤメは踏んでいるのだ。

 

「……まぁ、それなら」

 

そんなアヤメの裏の考えを知らずに見事カムイは釣られた。

 

「そう、なら決まりね。ハイ、そこ文句言わないの!カムイがいなかったら蜂蜜なんて知らずにいたんだから!」

 

文句を言う女衆を宥めるのは流石村長の娘と言ったところか。

 

「それで何かある」

 

「う~ん……、巣を回す?」

 

カムイが頭を抱えて捻り出したのがそれだった。だが全く要領を得ないその言葉にアヤメを含めた女衆は困惑する。

 

「回すってどうゆうことよ?」

 

「それは……」

 

カムイは言葉で説明しようとするが話している途中で言葉の意味が伝わっていない事に気付く。簡単に言えば語彙が足りないのだ。カムイには中途半端で役立たずではあるがそこそこの量の知識を持っている。当然それは自分が理解できるものであり、その知識に使われる言葉の意味も理解できる。だがそれはカムイに限った話だ。アヤメ達にしてみればカムイが話している言葉は意味が分からない音の繋がりだ。

 

再び頭を捻ったカムイ。そうして出した答えが絵で伝えることだった。地面に指で絵を描けばアヤメ達が覗いた。

 

「こんな感じの装置を作って、巣から蜂蜜だけを取り出す。巣を壊さないから蜂にとってもいいと思うんだけど?」

 

カムイが描いたのは遠心分離器だ。上手に書かれていないそれを指さしながら説明を再開する。すると村の女衆も理解できたようで時々質問しながら話が進んでいった。

 

「……つまり、あたし達が洗濯で服から水を飛ばす為に振り回していたりするけど、それと同じ事をしているのよね」

 

だがアヤメは違った。カムイの描いた絵を見ながら黙って考える。

 

「これ使えるかも」

 

そう言ったアヤメは女衆を集めてヒソヒソと話し始めた。話している内にアヤメの考えが分かったのだろう。ヒソヒソ話は大きくなりカムイにも聞こえる位にはなった。

 

「ここをこうすれば……」「もっと大きくしてみて……」「とりあえず最初は手回しで……」

 

そんな会話から抜け出してきたアヤメは笑顔でカムイに言う。

 

「やっぱり、カムイに頼って正解だわ。これ蜂蜜以外にも使えそう」

 

「それは良かった」

 

そうカムイは答えるしかなかった。なぜならアヤメの目が蜂蜜の時とはまた違った風にギラギラと輝いていたからだ。もしかしたらヤバい知識をヤバい人に伝えてしまったのではないかと考えてしまう程だ。

 

兎にも角にも、こうして蜂蜜が採れる算段が付いたことで蜂蜜によって起こった狂騒はやっと終結した。

 

 

 

 

 

その後、落ち着きを取り戻した村では会議が行われた。村の集会所には村長を含めた村の上層部と医者兼薬師のケンジ、ハンターであるカムイが参加するという形になり、今後の村の方針を話し合う。そこで村長が村の拡張を提案すると参加者の半分以上が賛成することになる。残った者も反対ではなく賛成することに躊躇しているだけだった。そこで村長が計画に関して詳しく説明、ケンジとカムイによって行ってきた準備を知ることで賛成となった。

 

ここに村の拡張計画は会議で承認され正式な計画として動き出すことになった。

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